藤井 洋一さん
豊田市にある「割烹・すし きさらぎ」店主。
地元産のものを中心としたこだわりの食材に、ひと手間をかけた日本料理が自慢の同店。
こだわりの職人としてのみならず、戦略的な経営にもその手腕を発揮している。
- 【ホームページ】https://kisaragi-sakura.com/
- 【オンラインショップ】https://kisaragi.buyshop.jp/
- 【公式instagram】https://www.instagram.com/y.t2010125/
前編では、飲食業の道に進むきっかけと心境の変化、修行時代のお話から、独立に至るまでをお聞きしました。
後編は、実践的な経営アドバイスや、今後の展望についてお聞きしていきます。
【前編はこちらから】
一番苦労するのは「集客」と「お金」
ビジネスで苦労すること、大切なことは?
人のこと、人を育てることもありますけど、一番苦労するのはお金と集客の問題ですよね。
キャッシュが上手く回るまでには時間もかかりますし。
感情とかやる気とかは置いといて、やっぱりキャッシュと広告、この2つを押さえないと上手くいかないですね。これも結局は、お客さんが求めているものを提供すべきだということにつながるんです。
逆にこの2つが上手くいけば、たいがい成功すると思います。
お客さんのニーズをつかむ方法は?
まずは商圏分析ですね。周辺にはどんな層が住んでいるのか、郊外なのか市内なのか。うちの店の場合は、郊外にあって人口も少ないので、ファミリー層から接待客まで幅広いニーズに応える必要があるんです。
それに合わせて、客単価も2,000円~20,000円と幅広くしています。あとは立地や店の造りを考えることも重要ですね。一言で「コツ」といえるものはなくて、いろんなことを総合的に考えて上手くいくようにするという感じです。
他のいろんなお店に食べに行ったりもしました。「こういうことやってないな」とか「これだったら勝てるな」とか。料理のラインナップや出し方なんかもチェックしました。
(※商圏分析サポートもございます。関連記事と合わせてぜひご覧ください)
いろいろな面から見られているんですね
それはそうですね。せっかく苦労して開業するんだったら、上手くいかないと開業する意味ないと思うので。
やる気っていうのはまた別の話で、やりたい理由には入らないし、成功の秘訣でもないですよね。
話を一個で考えず、そこは分けて考えた方がいいと思います。
これからは付加価値がさらに重要になる
選ばれるお店になるには?
最近はもうエンターテイメント要素も重要になってますよね。
寿司ってエンターテイメントだと思うんです。目の前で切ったり握ったりとかっていう。昔はもっと美味しい店とまずい店との差があったんですけど、最近はレベルが上がってきてどこも美味しくはなってきましたよね。
だったら「どこで食べたい?」っていう話になってくるんです。もうそういう時代ですよね。
人も大事だと思います。「あの人がいるから」「あそこの人知ってるから」とか、前に行ったときよくしてくれた、とかっていうのが、店を選ぶ要素になるので。駅近くの知らない店より、遠くの知ってる人がいる店の方に行くとか。そういうことも変わってきていると思います。
開業するときは、そういった時代の流れにも合わせないといけないと思いますね。
誰かに相談したりは?
相談しましたね。料理のことは料理をやっている人に、集客のことは集客をやっている人に聞く、という風に聞く人を分けていました。
飲食の人に集客のこと聞いても、わかんないんですよ。「うーん、なんでだろ?」みたいな。で、訳のわからないことを言い出したりするんですよね。
だから「メニューが悪いのかな」ってメニューばっかり変えてるんだけど、「いやいやそこじゃない」というようなことはよくあります。
その道の人に聞く、というのは大きいですね。
お客さんに「伝える」ことも大切
コロナ禍でのお店の状況は?
うちの店、売り上げ落ちてないんですよ、コロナでも。むしろ昨対(昨年対比)をクリアしているくらいです。
テイクアウトが当たったこともあるかもしれません。パンフレットも作りましたし。
でもそれは「作ったらたまたま当たった」んじゃなく、前々から当たるだろうと予想していたことなんですよね。
寿司屋には昔から出前店もあるので。
ただ意外と、どの店が持ち帰りができるかを知らない人ってたくさんいるんです。だからそこをしっかり伝えてあげれば、お客さんも頼んでくれる。
上手く伝えたというところがポイントだと思います。
テイクアウトを始めたからって、成功しないお店もたくさんありますよね。
テイクアウトのパンフレット、すごくいいですね!
お持ち帰りって、写真が重要なんですよね。お店に来て頼むのと違って、テイクアウトは絵がないとどういうものが来るかわからなくて頼めませんから。こういう器に入って、こういうものが入ってる、っていうところが見えないと、お客さんって頼みづらいんですよね。大手のファストフードのメニューとかもそうですけど、全部が目で見えるというのがとても大事だと思います。
もちろん、盛りすぎてもダメで、そのままをしっかり見せていく必要もありますね。
「本物の味を家庭で味わってもらう」というのがテーマだったので、価格設定も高すぎないようにしてあります。
どこで配布されたんですか?
パンフレットはすごくいいものができたので、最初は配布しようと思ってたんですけどやめました。配ると捨てられたりするから、もったいないなと思って。
広告とかに載せて、来た人に渡したりしてました。そしたらそれも上手くいったんです。
このパンフレットの制作は、個人でやってる人に頼んだんです。スピード感を求めてたので。
個人=社長でやってる人って、スピードが速いんですよね。やっぱり、決断できる人と一緒に何かをやるっていうことが一番早くて。
企業って大きくなればなるほど、行動が遅くなるじゃないですか。そういうところも、これからの時代はかなりネックになると思います。
いつも動きが早いですよね?SNSとか
そうですね。Instagramは今3,300人くらいフォロワーがついていて、Instagramからのお客さんも多いです。
常連さんになった方もいますし。(※きさらぎ様の公式アカウント @y.t2010125)
うちの店、すごく入りづらそうに見えるじゃないですか。高そうというか。それを壊したってところもあるんです、Instagramとかで。(画像を見れば)イメージが湧くじゃないですか、どういう料理を出してるのかとか。
あとは、コロナ禍になって、いつも外食してた旦那さんが家で食事をするようになって、奥さんが「やめてほしい」みたいなことがありましたよね。
それで「いつもお世話になっている奥さんに、たまにはこういうのどうですか?」みたいな提案をしたりとか。
今後もやりたいことはいろいろある
今後やりたいことはありますか?
いろいろあって、その戦略ももう決まっています。フランチャイズ化みたいなものができたらいいかなとか。
スケジュールは大枠でしかないんですけど、実験をしながらオープンに向かっていこうかなというところです。
でも、それはこうやってお店をやってきて、うまくいっているからこそできるものであって、誰もができることではないと思うんですよね。
開業していきなり実験してみるなんてことはできないので、これから開業する人はスタート前にしっかり考えておかないといけないと思います。
店舗を増やす予定は?
店舗数を増やそうとは思っていません。店舗が増えるほどクオリティが保てなくなるので。
ただ、今はファミリーから接待まで幅広くやってるので、それぞれの業態でお店を構えることなどは考えたりします。
いつか海外に行ってみたら面白いのかな、とも思いますが、具体的には何も決めていないです。
寿司は海外でもいけるので、寿司はやるかもしれません。
オーナーになった方が幸福度が上がる
この先の理想、最終形態みたいなものは?
このコロナの影響で、かなり時代が変わったじゃないですか。前は飲食店っていうと店を増やして、たくさん知ってもらって、上場して、で大箱つくって、というのがステイタスだったんですけど、それが一気に崩れましたよね。
もう大箱や複数店舗を持つお店、従業員をたくさん抱えるお店はダメになってきたという印象があります。
それに僕がオーナーになって思ったのは、オーナーが一番頑張るんですよね。すごくやる気がある従業員よりも、やっぱりオーナーの方が頑張るんで。
これからはオーナーをたくさん作った方が幸せになる、幸福度が上がると思うので、そういう活動もしていこうかなと考えています。
コロナ禍で多くの飲食店が苦境に立っている中、新たな試みに意欲的に取り組む藤井さん。
経営にまい進するイキイキとした姿がとても印象的でした。
実際に起業に挑んだ経営者さまにお話を伺うインタビュー企画は、今後も順次更新の予定です。
戦略的な経営に手腕を振るう「経営者」としての顔から、これまでの歩みや今後のビジョンなどに迫ります。
次回もお楽しみに!