自社で行う給与計算の落とし穴?
給与計算での源泉所得税の計算方法

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1.給与から控除しないといけないもの

雇用している従業員がいる場合、彼らに対して毎月支払うお給料からは、さまざまなお金を控除して預かる必要があります。
具体的には、健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料や、所得税や住民税といった税金を預かることとなります。
預かったお金は、当然ながら彼らの代わりに公的機関に対して納付を行わなくてはなりません。

従業員の立場からすれば、自分が受け取るお給料からお金が差し引きされているわけですから、その金額にもし間違いが発生してしまうと、会社への信頼感を大きく下げることになってしまいます。
給与から控除すべき保険料や税金の計算方法や納付のルールを正しく理解しておくようにしましょう。

従業員に対して支払うお給料からは、以下のような項目を控除(天引き)して支払わなくてはなりません。

・健康保険料
・厚生年金保険料
・介護保険料
・雇用保険料
・源泉所得税
・住民税の特別徴収

以下、それぞれの項目の意味や金額計算の方法について解説いたします。

健康保険料

健康保険料は、従業員が病気やけがによって病院にかかる際に、支払う医療費の一部(通常は7割:従業員が自己負担するのは3割)を国に補填してもらうための保険です。
毎月支払うお給料の金額に一定の保険料率をかけ算することによって保険料を計算し、お給料からその金額を天引きして雇用主が代わりに年金事務所に納めます。
(なお、保険料は雇用主と従業員が2分の1ずつ負担します)

1人でも従業員として雇用している事業所では、従業員を健康保険に加入させるのは雇用主の法律上の義務となります。
ただし、アルバイトやパートとして従業員を雇用している場合には、以下の条件に当てはまる場合に健康保険に加入させる義務があります。
(次で説明する厚生年金についても条件は同じです)

・正社員の労働時間(1週間および1か月)の4分の3以上働くアルバイトやパート従業員

なお、上の条件に該当しないアルバイトやパート従業員であっても、以下のすべてを満たす場合には社会保険に加入させなくてはなりません。

・1週間の所定労働時間が20時間以上である場合
・お給料の月額が8万8000円を超える場合
・1年以上にわたって雇用が継続する見込みの従業員である場合
・社会保険の被保険者である従業員が501人以上いる企業の従業員である場合

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、従業員が現役を退いて老後の生活をしていく際に、年金として受け取る生活費を保障するための保険です。
厚生年金に加入させないといけない従業員の範囲は、上で説明した健康保険の加入条件と同じです。

厚生年金の保険料も、健康保険料と同様に「毎月のお給料の金額×保険料率」で計算し、雇用主が従業員のお給料から天引きして年金事務所に納めます。
なお、お給料の金額から計算する保険料を、雇用主と従業員が2分の1ずつ負担しあうのも健康保険料の場合と同じです。

介護保険料

介護保険料は、将来的に介護のための費用を支払ったときに、支出した費用の一部を国に負担してもらうための保険です。
現状、介護保険料を支払う義務があるのは40歳以上64歳までの従業員です(介護保険第2号被保険者と言われます)

保険料の計算は、上で見た健康保険料の上乗せという形で行います(納付も健康保険料や厚生年金保険料とまとめて行ないます)

具体的には、介護保険第2号被保険者に該当する従業員については、通常の健康保険料率(40歳未満の人に適用されます)である9.90%に、介護保険料率である1.73%を加算した11.63%で保険料を計算し、雇用主と従業員が2分の1ずつ負担します。

源泉所得税

雇用保険は、従業員が将来的に失業などをしてしまった際に、最低限の生活費を保険金として受け取るために加入する保険です。
雇用保険に加入するための雇用保険料は、従業員に対して支払うお給料から天引きして、雇用主が代わりに納めます。
(従業員に支払う給与額に1000分の3という割合をかけ算して保険料を求め、お給料から天引きします。なお、雇用主も別途1000分の6という割合で計算した保険料を納めます)

雇用保険料の納付は年に1度の「年度更新」という手続きによって行わなくてはなりません。
その際、雇用保険とは別の労災保険という保険料も負担しますが、労災保険については従業員の負担割合はありません(全額雇用主負担となります)
なお、雇用保険に加入させる従業員の条件は以下の通りです(従業員を雇用保険に加入させる手続きの窓口はハローワークです)

・1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・31日間以上にわたって雇用継続する見込みがあること

雇用保険料

従業員は、自分が得たお給料の金額に応じて所得税を負担しなくてはなりません。
本来的な形でいえば、従業員が自分の年収の金額から所得の金額を計算し、最終的に所得税額を自分で算出して国に納めるべきところです。
しかし、日本では国民のほとんどの割合がサラリーマンとして収入を得ていますから、すべての人が自分で自分の税金の金額を計算して税務署に申告する…というのは現実的ではありません。

そこで、法律では従業員が所属する企業に対して、雇用している従業員の税金を、従業員本人に代わって計算して申告納付する義務を課しているのです。
さらに、本来は税金の申告と納付は年に1回の手続きで済むべきところですが、納税を確実に行わせるために「毎月のお給料から概算額を計算して毎月納付し、さらに年に1回確定額を計算して納付する」という2段階の仕組みをとっています。

給与計算の実務上、前者の毎月行う概算税額の計算納付を「源泉所得税の納付」、後者の年に1回行う確定額の申告納付を「年末調整」と呼んでいます。
雇用主は、従業員の毎月のお給料から「所得税の概算額(これを源泉所得税と呼びます)」を天引きして翌月10日までに税務署に納めなくてはなりません。

源泉所得税の金額は、従業員に対して支払うお給料の金額と、その従業員の扶養親族等の人数を、国税庁が毎年改定する「源泉所得税の税額表」にあてはめて計算します。
源泉所得税の税額表は、国税庁のホームページで最新のものを閲覧することができますので、常に手元に参照できる形にしておきましょう。

住民税の特別徴収

従業員が自分のお給料に応じて支払う税金には、上で見た「所得税」のほかに「住民税」があります。
所得税を毎月のお給料から天引きして雇用主が代わりに納めるのと同じように、住民税についても雇用主が従業員のお給料から天引きして納付を代行しなくてはなりません。

所得税の天引き額は「源泉所得税」と呼びますが、住民税の場合は「特別徴収額」と呼んでいます(いずれも意味はまったく同じで、「税額を給料から天引きする」という意味です)
住民税の計算は、前年に雇用主が行った所得税の申告額(年末調整によって行います)をもとに、市役所が自動的に行って通知してきます。

毎年5月末までに、事業所に対して従業員の住民税特別徴収額が通知され、毎月納めるべき納付書(12回に分けて納めます)が同封されてきますので、お給料から徴収した翌月の10日までに納めなくてはなりません。

控除した保険料や税金の納付義務

上で説明したルールに従って控除した保険料や税金は、雇用主が従業員の代わりに毎月納めなくてはなりません。

具体的には、それぞれ以下の期限までに所定の納付先に納める義務があります(なお、これらは納付書さえあれば、コンビニや金融機関の窓口などでも支払ができます)

健康保険料毎月20日ごろまでに保険料納入告知書が届くので、記載されている納付期限までに支払います
厚生年金保険料同上です
介護保険料同上です(健康保険料に上乗せの形で払います)
雇用保険料年に1度、労災保険と一緒に「年度更新」の手続きによって納めます
源泉所得税お給料を支給した翌月10日までに税務署に納めます
住民税の特別徴収お給料を支給した翌月10日までに市役所に納めます

従業員の立場からすると、雇用主に天引きしてもらった社会保険料や税金は、雇用主を信頼してお金を預けている状態といえます。
もし預かったお金の処理を誤ってしまうと、従業員の企業に対する信頼を大きく損なうことにもつながりかねませんから、給与計算事務は法律のルールに従って正しく行うように注意しましょう。

保険料控除の計算例

以下では、次のような状況の人を想定して、実際に控除すべき社会保険料や税金の金額を計算してみましょう。

・正社員として働く45歳男性
・給与支給額:4月30万円、5月32万円、6月29万円
・標準報酬月額は(30万円+32万円+29万円)÷3か月=30万3333円なので、30万円
・家族は専業主婦の奥さん、子供が2人

上のような人の場合、それぞれの控除項目の金額は以下のように計算できます。

健康保険料30万円×保険料率9.90%×従業員負担2分の1=14,850円
厚生年金保険料30万円×保険料率18.30%×従業員負担2分の1=27,450円
介護保険料30万円×保険料率1.73%×従業員負担2分の1=2,595円
雇用保険料30万円×保険料率1000分の3=900円
源泉所得税1,900円(300,000円-上記保険料合計45,795円=254,205円と扶養親族等3名を税額表に当てはめます)
住民税の特別徴収市役所が前年の所得に基づいて計算して通知してきます(年間の住民税額の1/12の金額となります)

これらを毎月のお給料から差し引きし、雇用主が所定の窓口に対して代わりに納めることとなります。

毎月の給与計算事務に限界を感じている方へ

ここまで、毎月のお給料から控除すべき社会保険料や税金の計算方法について解説してきました。
ここまで読まれた方の中には、「自社内で毎月こんなめんどうなことをちゃんと処理できるか不安」と感じてしまった方や、「経営者である自分はもっと売上につながる仕事に注力したい」と感じている経営者の方も少なくないでしょう。

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まとめ

今回は、従業員を雇用している経営者の方向けに、お給料から控除する保険料や税金の扱いについて解説いたしました。
こうした控除項目は、従業員の立場からすると「自分のお給料から直接取られているお金」ですから、給与明細を見ながら毎月きびしくチェックしているものです。

もし、控除金額に計算間違いが生じてしまうと、「この会社大丈夫かな…」という不安を与えることにもなりかねません。
給与からの控除項目の計算は、間違いが生じないように慎重に計算を行うようにしましょう。