起業する前はわからなかった、もしくは覚悟していたつもりでも予想以上につらい、と大方の事業者が口をそろえるのが「経営の悩み」です。
特に資金や人材が潤沢ではない個人事業主、あるいは零細企業は社会情勢の少しの変化にも大きな影響を受けます。
ましてや2020年に、全世界を巻き込んだコロナ感染拡大防止の影響ははかり知れず、飲食店アパレル業観光業を中心に、多くの事業者を苦境に立たせています。
社員や家族に、おいそれと事業の不振について相談するわけにはいかず、「もうウチはだめだ」「事業をたたむしかない」と悲観的になる経営者も少なくないことでしょう。
目次
小規模事業者へのプロサポート「認定支援機関」
しかし、国も手をこまねいているわけではありません。
2020年6月にも、信用保証協会が事業者自身の個人保証を肩代わりする制度を盛り込んだ「中小企業成長促進法」が新設されました。
事業継承を躊躇し、廃業を選択する要因である全経営者の個人補償をどうするか、という問題が軽減されることになりますが、果たしてがどれだけの経営者が認識しているでしょうか。
そこで国そして自治体では、経営者がプロのサポート協力を依頼しやすい体制確立を急務としてきました。
その中核となっている制度が「中小企業経営力強化支援法」制定を機にスタートした「認定経営革新等支援(認定支援機関)」です。
さまざまな補助制度が適用されるなどメリット大!
「中小企業基盤整備機構」から派遣される、認定支援機関のアドバイスを受けたり、また認定支援機関のサポートを受けることで、信用保証協会から融資の保証料の引き下げなどが適用されるなど、事業者側のメリットが極めて大きい制度です。
行き詰まった時にこそ、プロのアドバイスが生きます。
ぜひ一人で悩まず、支援を受けてみることをおすすめします。
この記事では認定支援機関の成り立ちや役割、利用するメリットや利用方法について解説します。
認定経営革新等支援機関のなりたち
本制度は、2012年8月に制定された「中小企業経営力強化支援法」によって整備された、中小企業のための支援業務の一環としてスタートしました。
事業者に、適切な経営相談等ができる専門家サポートが必要と考えられたことから発足しました。
主に、商工会や商工会議所など中小企業支援者のほか、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が認定されています。
公的に登録されている支援機関として広く認知されており、現在では経営革新等支援機関の認定数は全国で「36,726(2020年8月28日 612機関追加時点)」にのぼっています。
認定経営革新等支援機関の役割
認定経営革新等支援機関とは、経営者を支援するための専門スキルを持つプロ集団のことを指しています。
国によって厳しい審査基準に照らし合わせて選出された税理士や公認会計士、金融機関などの専門家によって構成されています。
一般的に個人事業主、そして零細中小企業の経営者は、事業のことには詳しくても、経営ノウハウや法律的知識などについてのスキルや、情報が不足しがちなもの。
そこで税務や法律、そして国の支援制度などの正確なアドバイスを可能とする専門性の高いプロフェッショナルが、経営者に対して支援を行う仕組みが求められてきました。
いま認定経営革新等支援機関に求められるもの
グローバル化が進む一方ITセキュリティの脅威が潜む社会情勢、後継者不足による事業継承の挫折など、小規模事業者をめぐる経営課題は、かつてないほどに多様化しています。
また、2020年からのコロナ感染拡大防止の影響によって、より小規模事業者を取り巻く状況は厳しく、問題は複雑化する一方です。
現在、認定支援機関には複雑化、多様化する経営者の事業課題に対応できる多様性と柔軟性が求められています。
認定支援機関誕生の背景とは?
個人事業主や零細・中小企業などの小規模事業者には、経営相談ができる専門知識を持った人材が常に身近にいるとは限りません。
実は多くの事業主が「経営に困ったときに相談する相手」を持たず、ましてや創業間もない事業者には、金融機関とのつながりも薄い状況です。
そして、日々の業務の中では借入金の返済、運転資金の資金繰りなどの目先の金策に追われているのが普通です。
実に日本の企業の99%が中小企業であり、これまで日本の産業を支える基盤となってきたことから、本業に集中し経営改善を促進することで、本来の潜在力を発揮出来るような支援体制を整えることが課題となっていました。
そこで2012年より、経済産業省と金融庁は「中小企業経営力強化支援法」を制定し、一定の実務経験と専門知識を持ち、小規模事業者に適切な助言アドバイスができる支援機関を認定することにしました。
目標は国と自治体の連携による事業者サポート
「中小企業経営力強化支援法」がスタートするまで、国、そして都道府県や市区町村の自治体は個々で独自の事業者支援事業を行ってきました。
しかし、実際に事業者が直面する深刻な問題への相談業務、および有益な情報提供がスムーズにできているとはいえませんでした。
一例を挙げれば、
- 不況下の大企業による下請切りなどを契機に見直された、中小企業の振興
- あいまいな事業計画による財政悪化を防ぐ財務・税制支援
- 後継者不足などの理由による事業承継困難
などの、迅速な行動かつ専門家知識が求められる支援において、事業者がまずサポートを求めるのは自治体の支援機関ですが、適切かつ効果的なサポートを行えていたとは言えない状況でした。
そこで企業側のニーズを把握しているが、専門知識を有する人材が手薄な自治体、逆に専門家集団を抱えているが企業側の事情に疎い国が、それぞれ連携することによって、効率的な事業支援を行うことが求められるようになりました。
その一環として、自治体の専門スキルの高いサポート人材とサポートを求める企業の、いわばマッチングを行う機関として、認定経営革新等支援機関制度が始まりました。
認定支援機関の定義
認定支援機関とは、財務悪化や販路開拓の苦戦などの経営課題を抱えている零細中小企業や、個人事業主などの小規模事業者の相談サポートを行うとして、国が審査の上認定する機関のことです。
小規模事業者の財務内容や経営状況の分析を行い、実現可能な事業計画の作成を支援します。
また策定された事業計画が、滞りなく実現できるよう適切なサポート(フォローアップとして定期的な巡回監査やモニタリング後の改善策の提案など)を実施できることが求められます。
認定支援機関となる個人や法人団体とは?
- 税理士(個人・法人とも)
- 公認会計士(個人・法人とも)
- 弁護士(個人・法人とも)
- 中小企業診断士(個人・法人とも)
- 経営コンサルタント
- 商工会
- 商工会議所
- 中小企業団体中央会
などが対象になります。
認定支援機関の認定基準
経営者自身および雇用している社員に、専門知識を求めることが難しいのが、税務関連などのスキルです。
そこで専門的知識および実務経験が一定レベル以上の個人や法人を認定し、 中小企業に対して、専門性の高い支援を行うための体制の整備が求められるようになりました。
具体的には、以下の2つの基準を満たす個人および法人団体に、認定支援機関としての認定および更新が行われます。
要件1「専門的知識を有しているか」
税務や金融そして、企業の財務に関する専門的な知識を有すること、知識を証明する国家資格の所有が求められます。
具体的には「経営新計画等の策定に際し、主たる援者として関与し、認定を受けた計画が3件」以上あるかが判断基準となります。
また税理士法人、監査法人、弁護士法人は認められますが、士業に属する社員が所属しているだけの、民間コンサルタント会社は要件を満たしていないと判断されます。
要件2「実務経験を有しているか」
規模事業者等への支援に、3年以上の実務経験(法定業務に係る1年以上の実務経験を含む)があることが求められます。
もしこれらの基準に達する知識が、不足しているとみなされて認定が否認された場合には、中小機構による研修を受講したうえで、試験に合格する必要があります。
認定支援機関に相談するメリットとは?
メリット.1 資金調達のしやすさ
認定支援機関のサポートを受け、国や自治体の補助事業に必要な事業計画書を提出することで、様々な補助制度が適用されるようになります。
しかし申請が受理されるためには、提出した経営計画が将来確実に利益を生み出す、事業を発展させる計画であると承認されることが必要であり、そのためのバックアップ体制が認定支援機関となります。
メリット.2 経営対策の立てやすさ
そもそも、認定支援機関の認定制度がスタートしたきっかけとは、税務や財務などの知識などの本業以外のスキル不足によって、事業経営が行き詰まる事業者の救済措置でした。
そのため、臨機応変に利用できる専門家のサポートを常設することで、日本国内の産業の根幹を担う、中小企業や小規模事業者を護り育成して活性化することを目標としています。
国家資格などの専門スキルを持ち、実際に支援してきた実務経験を持つ独自のノウハウに長けたプロによって、実現可能な経営計画を持ち、事業の発展への可能性が大きくなります。
認定支援機関の支援で適用される補助制度とは?
小規模事業者にとって、国や自治体の補助金や融資利率優遇制度は、大きな助けとなります。
これらの制度が適用されるために、認定支援機関のサポートが必要となります。
具体的には「経営新計画」「経営力向上計画」などの事業計画を、事業所管大臣に申請することによって、中小企業経営強化税制(即時償却等)や各種金融支援が受けられるようになります。
たとえば「経営新計画」ならば「中小企業新事業活動促進法」に基づく様々な公的支援が受けられます。
補助金申請としては「経営革新計画承認企業」のために設置された補助事業(ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金なら1,000万円~2,000万円 負担分1/2~2/3)があります。
また特許料の減免として、審査手数料および最高10年間の特許料が半額となります。
ほかにも
「経営向上計画」
「地域資源活事業計画」
「異分野連携新事業分野開拓計画」
「農商等連携事業計画」
「中企業承継事業再計画」
「ものづくり・商業・サービス産性向上促進補助」
などが挙げられます。
認定支援機関に相談できる課題とは?
多忙な小規模事業経営者は重要課題が後回しになりがち
個人事業主や零細企業の小規模事業者にとって、日々の業務に人的リソースのほとんどを費やしていることがほとんどです。
もちろん経営者自身も、金策や得意先からのクレーム対応など、日々雑務に明け暮れていて、緊急でない問題はつい後回しになることも多いのではないでしょうか。
認定支援機関サポート範囲は広い!実務全般が相談可能
認定支援機関に相談できる課題は、経営実務全般にわたると考えて差し支えありません。
創業時:「創業支援」「創業計画作成支援」
後継者育成:「事業承継」「人材育成」
同業他社への事業継承:「M&A」
生産現場:「生産管理」「品質管理」
販売現場:「販路開拓・マーケティング」「海外展開」「物流」
セキュリティIT:「情報化戦略」「知財戦略」
そのほか一般業務である、人事・労務関連や財務部門まで多岐にわたる相談内容をカバーしています。
認定支援機関のサポートを受けるには?
まず支援機関の選定を行う必要があります。
金融機関に依頼するか、商工会議所や税理士などに相談するかを決めたら、それぞれ認定機関リストで検索します。
- 金融機関:金融庁のホームぺージ
- 金融機関以外:認定経営革新等支援機関検索システム
経営計画書の作成ほか実際の相談
経営の実情や今後の希望などにあわせて、申請する補助制度に必要な事業計画を作成することになります。
長い付き合いになりますから、事前に同業者との情報交換やホームページ情報などは、念入りにチェックしておきましょう。
まとめ~事業の悩みは認定支援機関に相談しよう!~
ここまでご説明してきたように、中小企業経営強化税制(即時償却等)などの優遇税制や、補助金制度ほか金融支援が受けられるなど認定支援機関のサポートには享受できるメリットがたくさんあります。
ここまでご紹介してきた認定支援機関の役割や利用するメリットなどについて、もう一度まとめておきます。
認定支援機関とは2012年に制定された「中小企業経営力強化支援法」の支援制度のひとつ
正規式名称は「認定経営革新等支援機関」
税理士や公認会計士などのプロ集団で構成
認定支援機関に相談できる内容は「創業融資」から「事業継承」まで多岐にわたる
認定支援機関を利用するにはた「経営力向上計画」を提出する必要がある
また認定支援機関の支援を受けるメリットは、下記の通りです。
- 資金調達のしやすさ
- 経営対策の立てやすさ
経営者は孤独なものとはよくいわれることですが、国が準備したプロによる支援制度を活用しない手はありません。
事業経営に行き詰まり感を感じたら、早めに相談してみましょう。
知らなかった救済措置や対応策、そして困難の切り抜け方へのアドバイスなど有益な情報が得られる可能性大です。
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