行政書士として開業しようと考えたとき、一番に気になるのは開業費用ではないでしょうか。
「士業」ということもあり、一般的な会社や事業とも性質が異なるため、いくらくらい用意すればいいのか見当もつかない方も少なくないでしょう。
本記事では、行政書士として開業しようと考えている人のために、開業資金の内訳や資金の調達方法について解説します。
行政書士の仕事を順調に進めるための集客方法についてもお伝えしますので、ぜひ開業準備の参考にしてください。
目次
行政書士の開業資金・概算相場は100~150万円
まずは結論からですが、行政書士は比較的に低資本で開業できると言われており、開業資金について概算相場はおよそ100~150万円とされています。
では内訳はどうなっているのでしょうか。以下で解説していきます。
行政書士登録費用:約28万円
行政書士として仕事をするためには、行政書士会への登録が必要です。
入会費、登録料、会費などで約28万円かかります。
事務用品の購入費用:約10万円
名刺や印鑑、デスクやキャビネット、金庫など、事務用品の購入に約10万円かかるでしょう。
もっとも、これらは中古品を購入するなどで節約も可能です。
ホームページ開設・販促費用:約5万円
ホームページ作成、サーバーやドメイン使用料、チラシの作成などで約5万円みておきましょう。
ホームページの作成をプロに依頼すると、数万円~数十万円プラスでかかります。
資料・書籍などの購入費用:約10万円
行政書士は、開業後もしばらくは猛勉強が必要です。
専門書を購入したり、講座を受講したりするなどで約10万円かかるでしょう。
事務所の貸借料:約100万円
家賃にもよりますが、事務所を借りる場合は保証金や敷金、当月分の家賃といった初期費用が約100万円程度かかると想定されます。
行政書士で開業する形態について
士業は必ずしもオフィスを借りる必要はありません。
広い倉庫や設備投資も必要ないので自宅での開業も可能な業種であり、開業の形態にはいくつかの選択肢があります。
ここでは複数ある行政書士の開業形態について解説します。
1.事務所を借りる場合
事務所を借りて開業する方法として主に次の3つがあります。
独立事務所
独立事務所は、個人で事務所を開業する形態のことです。
地域によって家賃は大きく変わりますが、例として東京の場合、6畳程度の1ルームで毎月6~13万円ほどが相場です。
共同事務所
共同事務所は、複数の行政書士が所属する事務所のことです。
事務所を共有するため自分で自由に物事を決めることはできませんが、仲間と切磋琢磨できる、独立事務所に比べて維持費を抑えられるといったメリットもあります。
毎月の家賃負担は3~6万円ほどが相場のようです。
シェアオフィス
「シェアオフィス」とは、ひとつのオフィス空間や設備を、複数の企業や個人などが共同で利用するという形態の賃貸オフィスのことです。
さまざまな業界でシャアリングエコノミーという考え方が普及するのに伴い、オフィスについても共有部分や備品をシェアする時代が始まりました。
安いところなら毎月2万円ほどで借りられますが、専用スペースというものはなく空いている机を都度利用するフリーアドレス制が多いです。
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2.自宅開業する場合
行政書士は、守秘義務を厳守でき業務を問題なく遂行できるなど、所定の条件を満たせば自宅での開業も可能です。
自宅開業なら毎月の家賃を抑えられ、通勤時間がかかりません。
育児や介護などとの両立もしやすいといったメリットがあります。
また、自宅の家賃や光熱費、通信費など業務上必要だと認められるものは、経費計上することも可能です。
反面、自宅住所や電話番号が行政書士会のWebサイトに公開されたり、休日でも相談を断れなかったりするなど、プライバシーやプライベートを守りにくいというデメリットもあります。
人によっては、自宅と別に事務所を構えているほうが信頼できると考える人もいるため、よく考えた上で後悔しない選択をしましょう。
行政書士会への登録料が必要
行政書士試験に合格した後、日本行政書士連合会(行政書士会)に登録しなければ、行政書士としての仕事ができません。
これは士業ならではの費用と言えます。
事務所を構える地域によって異なりますが、例えば東京なら登録時に次の費用がかかります。
登録手数料 | 25,000円 |
入会金 | 200,000円 |
登録免許税 | 30,000円 |
月会費 | 21,000円 |
バッジ | 3,000~10,000円程度 |
名刺 | 4,000円程度 |
この他にも、事務所の賃借料や事務用品の購入費用などがかかるため、開業費用はトータルで約100~150万円となります。
開業後に必要な運転資金
前章までは行政書士の開業に必要な費用について見てきましたが、ここからは開業後に触れていきます。
開業後に必要な運転資金は、事務所の毎月の家賃と消耗品代程度と、開業資金のようにまとまった出費はありません。
しかし、開業してしばらくはよほどのコネクションがない限り、仕事を獲得できる保証がありません。
無収入期間ができる可能性もあるため、経費以外に、毎月の生活費がどれくらいかかるかも考慮しておきましょう。
開業当初をどう乗り切るか
行政書士は、知名度や信頼によって仕事を獲得していきます。
開業当初は行政書士としての実績がないため、仕事が受けられず無収入になることも珍しくありません。
ここでは、無収入の時期を乗り越えるためのポイントを解説します。
1年分の生活費を貯金しておく
開業当初は無収入であることを想定し、1年分の生活費を用意しておきましょう。
中には、行政書士として独立開業しつつ生活費を稼ぐためにアルバイトをする人も見受けられます。
しかし、アルバイトに時間を奪われて仕事の機会を逃したり、知名度を上げるための宣伝活動に時間を割けられなくなる可能性もあります。
そうならないよう、あらかじめ開業資金とは別に1年分の生活費約300万円を用意しておくことをおすすめします。
広告費用やプロモーション費用を用意しておく
仕事が入らなければ貯金が減り、生活費が心配になって広告宣伝費用やプロモーション活動を削ろうとする人も見受けられます。
しかし、行政書士としての認知を広げるためには広告宣伝が不可欠です。
広告費用やプロモーション費用として、目安として50万円ほど用意しておきましょう。
つまり、開業資金100~150万円、1年分の生活費300万円、広告・プロモーション費用50万円、合計450~500万円ほどを用意した上で独立開業するのが望ましいです。
他の士業関係者とコネクションを作っておく
開業当初は行政書士の会合や異業種交流会などに積極的に参加し、コネクションを広げましょう。
同じ行政書士でも、忙しくて手が回らなかったり苦手分野の案件だったりすると、顧客を紹介してくれることがあります。
お互いに情報交換する意味でも、同業者間でコネクションを作っておいて損はないでしょう。
また、司法書士や税理士、社会保険労務士、中小企業診断士、宅建士、ファイナンシャルプランナーといった法律にかかわる仕事と行政書士は相性がよく、複数の資格を取得し業務領域を拡大していく人もいます。
副業からのスタートはありか?
開業してすぐはなかなか仕事が得られず収入面に不安を感じることから、行政書士を副業にしたり、週末だけ開業したりする人も見受けられます。
本業の収入があるため生活が安定し、気軽に始めやすいといったメリットがある反面、行政書士の業務に割ける時間が限られたり、週末や祝日は官公庁が閉まっていたりするため、業務に支障をきたす可能性もあります。
そこはメリット・デメリットを比較してみて冷静に判断するべきでしょう。
もし本業が時間に融通の利く仕事である、平日でも休みやすいようであれば、副業としての開業も選択肢のひとつになるとは言えます。
また、行政書士の仕事を軌道に乗せて本業にしたいと考えている人なら、副業や週末開業へチャレンジすることをおすすめします。
開業資金の調達方法
数百万単位の開業資金をどうやって調達したらいいのか悩む人もいるでしょう。開業資金の調達方法について解説します。
自分で貯金する
開業資金の調達と聞いてまず思い浮かべるのは、毎月コツコツと貯金をしていくことではないでしょうか。
自己資金での開業であれば開業後の無収入期間も借入金の返済を心配する必要がありません。
しかし、収入によっては貯金のために数年必要となることもあり、その間に行政書士として開業する機会を逸する可能性もあります。
まずは、現在の貯金額と開業に必要な費用を照らし合わせ、開業までにどれくらいの期間が必要なのか計画を立ててみましょう。
場合によっては、自己資金にこだわらず、金融機関などからの借入れも検討してみてください。
親・親戚・知人などから借りる
人脈のある人なら、親や親戚、知人などから開業資金を借りるという方法もあります。
金融機関からの借り入れに比べて返済期間や毎月の返済額に融通が利きやすく、利子も発生しないことから、開業資金の調達方法としてよく見られる選択肢になっています。
ただし、親や親戚とはいえ大きなお金を借りることになるため、開業への心構えや収入の見込みといった事業計画は簡単にでも伝えておくようにしましょう。
また、友人や親族とのトラブルを防ぐためにも、開業資金を借りる際は口約束などにはせず、借用書などをきちんと交わしておいたほうが安心です。
金融機関からの借入
金融機関から開業資金を調達する方法も一般的です。
事業計画などの提出は必要ですが、金融機関の審査が通れば融資を受けられ、元金と利子を毎月きっちり返済することで、次に資金が必要になったときに融資を受けやすくなる、節税対策になるといったメリットがあります。
創業者向けに低金利の融資プログラムを用意している金融機関もあるため、調べてみるとよいでしょう。
ただし、開業前の資金調達の場合、審査が厳しくなる可能性もあります。
金融機関に納得してもらえるよう、事業計画や資金計画はしっかり練りましょう。
日本政策金融公庫の「新創業融資制度」
政府系の金融機関である日本政策金融公庫が用意する「新創業融資制度」は、これから新しく開業しようとする人や開業後間もない人に、担保も保証人も原則不要で運転資金を融資してくれます。
一般的な金融機関よりも金利が低いため、個人事業主や中小企業ならぜひ検討してみてください。
ただし、「新創業融資制度」の単独利用はできず、「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」といったほかの融資制度と組み合わせる必要があります。
また、申し込みから融資実行までに1~2カ月かかるため、スケジュールに余裕をもって申し込みましょう。
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各自治体の「中小企業融資あっせん制度」
「中小企業融資あっせん制度」は、中小企業の安定経営を目指し、自治体が窓口となって事業に必要な資金の融資をあっせんしてくれる制度です。
自治体が指定する金融機関から融資を受けることになりますが、自治体が利子を補給してくれたり、信用保証料を補助してくれたりするといったメリットがあります。
ただし、自治体窓口へあっせん申込をしたのち、指定の金融機関へ融資申し込み、信用保証協会へ保証申し込みと関連期間への手続きが必要となります。
申込から融資実行までに少なくとも2カ月はかかるため注意しましょう。
融資で資金調達するなら事業計画書が重要
「事業計画書」とは、今後数年にわたってどのように経営し利益を上げるのかを示した書類のこと。
精度が高く実現可能な事業計画を立て、事業の将来性をしっかり伝えられる事業計画書を作成しましょう。
融資を受けるにあたり重要な役割を果たす事業計画書ですから、作成に不安を感じる場合はサポートしてくれる企業に依頼することをおすすめします。
当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、中小企業の支援に関して一定レベルの知識があると国に認められた認定支援機関です。
融資の際に金利優遇を受けられたり、開業後の税務顧問や確定申告、決算申告などの支援が可能だったりするため、一度相談してみてください。
経験豊富な融資コンサルタントが、審査担当者との面談対策をサポートします。
行政書士で開業して成功するための集客方法
続いて、行政書士として成功を掴むため、集客のポイントを解説します。
自社ホームページ作成
自社ホームページは、新規顧客の獲得が見込めるツールです。
開業に合わせて公開できるよう、開業を決めた時点から準備を始めましょう。
士業に対して敷居の高さを感じる顧客も多いため、顔を見せたり、コンテンツを充実させたりするなど、自分の強みを活かした内容にしてみてください。
また、広い世代が気軽に情報収集できるようスマホ対応にするのはマストです。
開業後もこまめに情報を更新して、顧客の目に留まる努力をすることが大切です。
SNSの活用
InstagramやTwitter、FacebookといったSNSからの集客も侮れません。
幅広い世代の顧客を取り込むためにも、ぜひSNSを活用しましょう。
お役立ち情報をこまめに発信したり、狙ったターゲット層へ向けた有料広告を出したりするなど、SNSの活用方法は多岐にわたります。
またSNSは、行政書士事務所のブランディング、ブログや自社ホームページなどへの誘導ツールとしても利用できます。
YouTubeでのセミナー動画
最近では、YouTubeを集客ツールとして利用する人も増えています。
行政書士として得た知識をセミナー形式で発信して同業社とのコネクションを広げたり、行政書士を必要としている人がわかりやすいよう難しい内容を簡単な言葉で解説したりすることで、ファンを増やしていきましょう。
「こんなことをやってもらえる」ということが伝われば、依頼のハードルが下がります。
基本的に低コストで始められるため、SNSとの併用を考えてみてください。
行政書士マッチングサイトの利用
行政書士に仕事を依頼したい人と、行政書士を結びつけるためのマッチングサイトも複数登場しています。
プロフィールや得意分野を登録しておくことで顧客からの相談が見込めるため、これを利用してみるのも良いでしょう。
成功報酬型のマッチングサイトなら、無料で登録可能です。
利用料やシステム内容を比較しつつ、自分にあったマッチングサイトをいくつか併用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
行政書士は、官公庁への提出書類を作成したり、依頼者に代わって代理申請をしたり。
また、顧客の相談に乗ったりするなど、行政と人々とのパイプ役としてなくてはならない仕事です。
国家資格を取得し、行政書士会へ登録すれば、独立開業も夢ではありませんが、100~150万円の開業資金や備品の購入費用、当面の生活費など450~500万円ほどの資金が必要になります。
融資で開業資金を調達するなら、綿密な「事業計画書」の作成は不可欠。確実な融資獲得のために専門家にアドバイスをもらうのが有効でしょう。
質の高い事業計画書を用意し融資を得て、行政書士として成功をつかみましょう。
創業時の融資相談もBricks&UKにおまかせください!
当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、顧問契約数2,500社以上、資金繰りをはじめ経営に関するコンサルティングを得意分野とする総合事務所です。
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