不動産業を開業するには様々な要件が必要です。
元手となる資金や、宅地建物取引業の免許の取得、事務所や宅地建物取引士(宅建士)の設置、などの条件を満たさなくてはなりません。
目次
宅地建物取引士の資格取得の仕方について
宅建士は、営業所に一定数配置しなければならない資格です。
従業員5名につき、1名以上の宅建士の設置が必要とされます。
そのため、不動産業界での独立開業に必要な資格として、受験者数が毎年約20万人前後と人気の資格です。
まずは、宅建士の資格の取り方について解説をしていきましょう。
宅建士資格の取得の仕方
不動産業界で仕事をする際には、宅建士の資格を取得するのをおすすめします。
宅建士の資格があると、不動産に関する深い知識が身につくため、顧客に適切な不動産のアドバイスができるようになり、「不動産の専門家」として信頼されるからです。
ここでは、宅建士資格の取得の仕方について、簡単に解説をしていきましょう。
宅地建物取引士資格試験を受験する
まずは、宅建士の試験を受けて、資格を取得することから始まります。
試験の要項は下記の表の通りです。
受験資格 | 年齢、性別、学歴に制限なし |
試験日 | 10月の第3日曜日(午後1時~午後3時)通常、年1回 |
試験の基準・内容 | 1.土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別 2.土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令 3.土地及び建物についての法令上の制限 4.宅地及び建物についての税に関する法令 5.宅地及び建物の需給に関する法令及び実務 6.宅地及び建物の価格の評定 7.宅地建物取引業法及び同法の関係法令 |
受験手数料 | 7,000円 |
試験会場 | 現在の住所付近で選択 |
試験の方法 | 50問・四肢択一式による筆記試験(マークシート) |
実施公告 | 毎年6月の第1金曜日に官報とホームページで発表 |
合格発表 | 通常、12月第1水曜日または最終水曜日 |
合格率 | 約15%前後 |
毎年、10月の第3日曜日に宅建士試験が実施され、受験資格は特になく、どなたでも受けられるのがメリットです。
ちなみに合格率は例年15%程度ですが、令和元年は少し増加し17%だったようです。
法律系の試験では難易度は高くない方と言えるでしょう。
ちなみに、他の法律系の国家資格と難易度を比較すると下記のイメージです。
司法試験:★★★★★★
公認会計士★★★★★
司法書士:★★★★
弁理士:★★★★
税理士:★★★★
社会保険労務士:★★★★
行政書士:★★★
宅地建物取引士:★★
また同じく不動産に関する国家資格である、不動産鑑定士や土地家屋調査士に比べても、比較的取りやすい資格と言えます。
試験に合格後、宅建士の登録をする
実は、宅建士の試験に合格しただけでは、不動産業務に従事できません。
試験に合格した後は宅建士に登録し、宅建士証の交付を受けることが必要で、宅建士の登録に必要な条件には、下記の3つがあります。
【宅建士の登録に必要な条件】
1.宅建士資格試験に合格
2.実務経験2年以上
3.登録の欠格要件に該当しない
資格試験に受かった後、実務経験が2年未満の人は、宅建士の登録実務講習を受講して講習を修了すれば、宅建士の登録資格が得られます。
登録実務講習の費用は実施機関により異なり、2万円前後のところが多いようです。
【資格登録の手続きに必要なもの】
登録に必要な書類、費用は以下の通りで、これらを都道府県知事に提出します。
資格登録申請をしてから、登録通知書が届くまでが約2か月程度。登録手数料は37,000円です。
1.登録申請書(記名・押印)
2.誓約書(記名・押印)
3.身分証明書(本籍地の市区町村が発行。成年被後見人及び被保佐人ではないこと、破産者で復権を得ない者ではないことを証明する)
4.登記されてないことの証明書(法務局が発行。成年被後見人及び被保佐人ではないことを証明する)
5.住民票(申請者本人のみ記載、本籍・続柄は記載不要)
6.宅建試験合格証書のコピー
7.顔写真(縦3cm×横2.4cmのカラー写真)
8.登録資格を証する書面(実務経験証明書や、登録実務講習の修了証など)
試験を実施した都道府県知事の資格登録を受け、さらに宅地建物取引士証の交付を受けたら、宅建士として業務が行えるようになります。
店舗取得など開業のスケジュールについて
不動産会社を開業するには、 「宅地建物取引業(宅建業)」の申請をしなければなりません。
その際には、あらかじめ事務所を設置しなければなりません。
ここでは、開業するのに必要な店舗取得など、開業のスケジュールについて解説しましょう。
不動産会社を開業する流れ
不動産会社を開業する流れとしては、次のようになります。
STEP.1 開業前の準備をする
まずは、開業する前の準備からスタートします。
準備事項としては、
- 経営形態を個人か法人かで選ぶ
- 業種形態を選ぶ
- 開業資金を用意する
- 営業保証金を用意する
などがあります。
個人で開業することもできますが、法人で経営したい場合には、事前に会社を設立することが必要です。
また、「売買」「賃貸」「管理」などメインとする業種を選んでおきましょう。
3つの業種をトータル的に行うことも可能です。
当座の運転資金や事務所設置にかかる費用など開業資金や、供託所に支払う営業保証金なども準備をしておきます。
STEP.2 事務所を開設する
業務を営むにあたっては、その拠点となる事務所を開設します。
会社を設立した場合は本店もしくは支店となり、宅地建物取引業の免許を申請する際には、事務所の所在地で免許の申請先が決まります。
STEP.3 宅地建物取引士の設置
不動産業を開業するには、専任の「宅地建物取引士」を5人に1人以上の割合で設置しなければなりません。
宅地建物取引士は、消費者への重要事項の説明や契約書への記名押印など、有資格者だけが行える独占業務があります。
「専任宅地建物取引士」の人数は、法律で厳しく定められており、退職などの理由で不足した際は2週間以内に補充することが必要です。
STEP.4 免許の申請
不動産業を営むためには、宅地建物取引業(宅建業)の申請が必要です。
免許取得には、
- 欠格事由に該当しないこと
- 事務所の形態を整えていること
- 専任の宅地建物取引士を設置していること
の3条件をクリアしていなければなりません。
免許を申請する前には、この3つの条件を満たしているか確認しておくようにしてください。
STEP.5 営業保証金を供託所に払う、もしくは保証協会への加入
免許の許可が下りたら、次は営業保証金を供託所に払います。
不動産業を営む際には、営業保証金を供託所に「主たる事務所(本店)の場合は、1,000万円、その他の事務所(支店)の場合は、1か所につき500万円」を納めなければなりません。
しかし、開業したての会社がそのような高額な費用を用意するのは大変です。
中小企業レベルの不動産会社の場合は、保証協会に加入して「弁済業務保証分担金」制度を使えば営業保証金が免除になります。
弁済業務分担金は、「主たる事務所(本店)の場合は60万円、その他の事務所(支店)の場合は、1カ所につき30万円」を供託すれば事業を行うことが可能です。
保証協会に加入すれば入会金などを含んだ金額が、約120万円~160万円(保証協会により違う)程度の金額で済むようになります。
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まとめ
今回は、宅建士資格の取得試験やその後の流れについて解説しました。
宅建士は、少し勉強して簡単に取得できる資格ではなく、よほどタイミングよく進まない限り、未経験からであれば取得までに1年間は必要であると考えておいたほうが良いでしょう。
また、資格を取得したからといって、安易に独立開業をするのは避けたいところ。
どの業種でも独立開業をする前に、しっかりとした事業計画を立てることが重要です。