フリーランスとして一本立ちしたとき、あるいは法人設立を実現したとき「あれ?こういう時は創業?それとも独立?」と言葉の選び方に迷うことがあるものです。
事業をスタートした事業者をあらわす言葉には、つぎの5つがよく使われています。
- 創業
- 起業
- 開業
- 独立
- 設立
しかしこれらのワードはよく似ているけれど、微妙なニュアンスの違いがあります。
たとえ用法を間違ったとしても、法的ルールに抵触するような致命的な失敗につながることは少ないものの、社会人としての常識を疑われかねません。
しかし、逆に多くの人が間違いやすいこれらの単語を、適切な場面で使い分けできることで、社会人としてのマナーやスキルをアピールすることにつながります。
そこでこの記事では、創業、起業、開業、独立、設立それぞれについて、知っておきたい
- 本来の意味
- 語句を利用する場面
などについてまとめました。
事業をスタートしたときの状況をあらわす言葉の違いを知り、適切な使い分けに役立てくださいませ。
ご参考になれば幸いです。
目次
創業の意味や使い方について
創業とは?語句の意味するところ
事業を新しくおこす、会社や店舗を実際にスタートする場面で利用します。
店舗や事務所立ち上げ、あるいは法人設立準備など、具体的に事業をはじめた期日や行動の総称です。
法人のみが使用するとは限りません。
例えば個人事業主としてはじめる雑貨ショップであっても、開店日や開業届提出日を創業と表現されます。
ただし、具体的に事業を開始するめどが立っていない段階で使用することはありません。
準備すら始めていない段階なのに「来年創業予定です」といわれれば、聞いた人は「いつ?」と質問することでしょう。
事業内容、および事業開始のスケジュールなどが具体的に決まらないうちは「創業」ではなく、「立ち上げる予定です」「起業希望です」などの言い回しが適切でしょう。
創業が使われる場面や例文
事業を新しくおこす、会社や店舗を新しくスタートする場面で利用します。
「起業」とよく似ており、以前はほぼ同じ意味で使われてきました。
しかし起業に「ベンチャー」「スタートアップ」という意味合いが込められるようになった昨今、利用場面に違いが出るようになりました。
- 例「A社は創業〇〇年になる我が国を代表する老舗企業だ」
- 例「来月の10日はわが社の創業記念日です」
※通常「起業記念日」とは表現しない。
起業の意味や使い方について
起業とは?語句の意味するところ
起業は創業と同様に「会社を作る」「事業を興す」という意味を持つ語句です。
ただし、創業がすでに確定した事実に基づき使われるのに対し、起業は「これから起こる」未来の出来事という微妙なニュアンスを持ちます。
いつか会社を持ちたいと思っている、という段階にいる事業者が利用すると自然に映る言葉です。
なお最近では「チャレンジ起業」など「挑戦する」「新規事業」という意味あいの言葉が付加される場面が多くなりました。
起業が使われる場面や例文
事業を興すことを考えていることをあらわす語句として最も使用されます。
- 例「退社した後は温めていたアイデアをもとに起業する予定だ」
- 例「将来は就職せずに起業を希望する若者が増えています」
開業の意味や使い方について
開業とは?語句の意味するところ
開業もまた「事業をスタートする」という意味を持つ語句です。
起業や創業と異なる点は、主に事務所や店舗で営業するタイプの事業において使用される語句であることです。
また法人形態の事業に使用することはあまりなく、「商店主」や「開業医」などの個人事業主として事業を行う経営者に対して用いられます。
開業が使われる場面や例文
法人ではない、商店や医院などを対象に使用します。
- 例「先週開業したパン屋がおいしい」
- 例「今度○○市に歯科医院を開業する予定です」
独立の意味や使い方について
独立とは?語句の意味するところ
独立は雇用される立場を離れて、自分で事業を営む、みずから事業をスタートする、という状況で使われる語句です。
もともとが「他からの干渉や拘束を受けない」「みずからの権限を法律の許す範囲で行使する」「自分の意志決定によって行動を選択する」という強い意志を感じさせる言葉です。
独立が使われる場面や例文
大抵の場合つとめていた職場の同業で独り立ちすることを「独立」として、表現する場合がほとんどです。
- 例「勤めていた事務所から独立した」
- 例「独立したての仕事がない時期はサラリーマン生活が恋しくなる」
設立の意味や使い方について
設立とは?語句の意味するところ
設立の意味するところは、事業をスタートする、というよりも「組織」「団体」「施設」などを新しく立ち上げるというものです。
新しくつくる、という意味では共通なのですが、「何を」という点で微妙に異なります。
またビジネスシーンにおいて「設立」といえば「法人登記を行い会社を立ち上げた」と理解されると覚えておきましょう。
設立が使われる場面や例文
会社に限らず会合や、団体の発足をあらわすにもよく使われます。
- 例「現在皆さんに参加いただいている○○会の設立者は○○さんです」
- 例「このたび○○社では社会福祉を目的とした財団を設立する」
そのほかのよく似た語句など
そのほかの類似語句「創立」
先にあげた5つの語句以外にも「創立」も非常によく似た言葉です。
こちらは「創立記念日」でよくしられるように、初めて会社や学校などの組織を立ち上げたときに用います。
創立と創業、どちらにするか迷うときは、創業は「組織」がスタートした時を、「創立」は事業がスタートした時をあらわす、と使い分ける、と覚えておくとよいでしょう。
そのほかの立ち上げ事業表現ワード
立ち上がったばかりの起業を「スタートアップ企業」と表現することも珍しくなくなりました。
創業して間もない企業を総称したワードですが、意欲的かつチャレンジ精神旺盛なニュアンスを持ちます。
また「ベンチャー企業」という言い方も、新興企業をあらわす時によく使われています。
こちらは「革新的なサービスや技術に取り組む企業」「何らかの投資を受けている企業」などの意味合いをあわせ持ちます。
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よく似た用語は社会的慣習を理解して使い分けよう
事業をスタートするとき、個人事業主は「開業届」会社を設立するなら「法人設立届出書」を提出しますが、書類が違うように形容する言葉も変わってきます。創業、起業、開業、独立、設立、非常によく似た意味を持つ用語は社会的慣習や雰囲気を考慮してうまく使い分ける必要があります。ここでもう一度それぞれの語句の大意や使い方などをまとめます。
創業:具体的な事業のスタート期日をあらわす(原則開業未定のあいだは利用しない)・起業:将来的に事業をはじめたい、など未来の事業開始予定をあらわす・開業:個人事業主(商店や医者)の事業スタートをあらわす・独立:被雇用者の立場から、経営者の立場への変化をあらわす・設立:法人登記など、組織が発足した期日をあらわす
まとめ
このように「創業」「起業」「開業」「独立」「設立」は意味するところはほぼ同じでも、会話や文章の中での用法は微妙に異なります。使い分けが難しいところですが、経営者の立場に立つとよく接する言葉ですから使い分けを間違えないようにしたいですね。