
「終身雇用」という言葉はもはや過去のものとなり、会社に依存しない自由な働き方を求める人も増えてきました。
書店には起業を促すタイトルの本が並び、YouTubeではチャンネルを立ち上げ、自身の力で収入を得る人がたくさん出てきています。
勤めている会社からの独立や起業を考える人も増えてきた中、起業分野として注目を集めているのが結婚相談所です。
この記事では、結婚相談所の開業が今なぜ人気なのか、その背景や理由、具体的なビジネスの中身について紹介していきます。
結婚相談所ビジネスを成功させるためのポイントも解説するので、ぜひ読んでみてください。
目次
結婚相談所の開業が人気の理由

なぜ、いま結婚相談所の開業が人気なのでしょうか。
そこには、昨今の婚活ビジネスの台頭や、「モノ」を扱わない情報ビジネス特有の低コストというメリットが大きく関係すると考えられます。
具体的に見ていきましょう。
婚活ビジネスの台頭
ある程度の年齢になれば結婚するのが当たり前だった時代とは異なり、近年では結婚や家庭、家族の在り方への価値観も変わりました。
男女で決めつけることなく自由な生き方をすべきという考え方が尊重されるようになり、独身者が便利に生活できる環境も整ってきています。
しかしこうした世の中の動きによる未婚化や晩婚化は、必然的に少子化をより加速させてしまっています。
そのため政府や自治体は、若者の婚活支援に力を入れ始めました。
今年度(2021年度)からは、AI(人工知能)などで高度なマッチングを行う婚活支援事業に対し、国から補助金が下りるようにするといった動きが出てきています。
資格なし・未経験でも開業できる
結婚相談所の経営には保有が必須の資格はなく、未経験でも開業可能です。
そのため、会社として大きく立ち上げるだけでなく個人で、例えば主婦や脱サラした人など、参入できる人の幅が広いことも人気の要因と考えられます。
とはいえ、結婚相談所は生涯の相手を探す人々を相手に、人と人とをつなぐ仕事です。
自身のスキルや利用者からの信頼性を高めるために、「婚活アドバイザー」や「結婚アテンダント」といった民間の資格などを取る人も少なくありません。
パソコン1台あれば仕事ができる
婚活ビジネスは、特殊な機器や設備を必要としません。
そのため設備費用を低く抑えられるというメリットがあります。これも参入しやすい要因の1つでしょう。
最低限の設備として応接用のテーブルやソファーなどは必要ですが、集客や会員の管理などの基本的な作業はパソコン上で行え、システムを導入すればスタートが可能。
家賃の面で考えれば、スペースが小さくて済むというのも大きなメリットです。
仕入れや在庫管理などの必要がない
結婚相談所は人と人との縁を結ぶのが仕事です。
モノを扱う商売であれば材料や商品の仕入れ、在庫管理などが必要ですが、扱うのが人なのでいずれも必要ありません。
そのため、運転資金の面でもリスクを小さく抑えることができます。
副業でも可能
結婚相談所は、副業などスキマ時間を活用できるビジネスとしても注目されています。
仕事内容としては会員の相談に乗ったりアドバイスをしたり、お見合いのセッティングをしたりすることです。
直接会う必要性がないこと、会員側が忙しいこともあり、インターネットや電話などでのやり取りでも間に合うことから、副業でも可能なのです。
結婚相談所の業務内容

起業分野として結婚相談所が注目されている理由には参入のしやすさが大きなウエイトを占めているようです。
では、業務はどのように進めていくのでしょうか。
結婚相談所の業務としては、主に会員集め(集客)や会員の管理、マッチング相手の紹介、お見合いのセッティング、成婚への相談・アドバイス、売上の管理などがあります。
具体的には次のようなことを行います。
会員集め(集客)
結婚相談所を長く続けていくために最も重要な仕事は集客です。
会員が集まらなければマッチングもできません。
集客方法のメインは、インターネットを活用した集客、例えばホームページやブログ、SNSを活用した情報発信です。
婚活パーティーなどのイベントを開催して、会員となり得る参加者との接点をつくるのも重要な戦略の1つでしょう。
会員(顧客)の管理
お見合い相手候補の検索や紹介、日程調整などを行うには、一人ひとりの会員の情報を適切に管理することが必須です。
連盟やフランチャイズに加盟する場合は、本部から提供される管理システムを活用するのが一般的となっています。
顧客の個人情報が含まれるほか、婚活というデリケートな事柄でもあるので、セキュリティは万全にしておかなくてはなりません。
マッチング相手の紹介
会員同士を結び付けるマッチングは、結婚相談所の業務の中でも結果に直結する重要な要素です。
マッチング方法には従来からの「仲人型」やAIなどを活用した「データマッチング型」があります。
近年では結婚相談のキャリアを積んでいなくてもでき、精度も高まっているデータマッチング型が主流となっています。
お見合いのセッティング
会員にマッチング相手を紹介し、双方の意向を聞いたら次はお見合いの場のセッティングです。
日程を調整し、スムーズに場の進行ができるよう情報確認や会員とのコミュニケーションを行います。
成婚への相談・アドバイス
最終目標である成婚に導くには、相談への対応やアドバイスが欠かせません。
会員の性格や気持ち、意向を重視しつつ、必要かつ適切なアドバイスなどを行う必要があるでしょう。
たとえばデートにはどんな服装で行くべきか、女性をどういう所に連れていけばいいのか、など、個人的かつ具体的な相談にものり、場合によっては買い物に付き合ってコーディネートを見立てたりする人もいます。
売上の管理
結婚相談所をビジネスとしてやっていくなら当然、売上の管理も重要な業務です。
収支の管理をしっかりと行い、未収金がないかなどの管理を行う必要があります。
業務内容としては以上のようなことですが、感情を持つ人を相手にする仕事であり、しかも結婚という当人たちにとって人生の重大な局面となるデリケートな問題を扱う仕事です。
感情のもつれからトラブルに発展する恐れもあるので、一人ひとりに合わせた気づかいをしていくことが大切です。
結婚相談所の収益となるもの

では結婚相談所を経営するうえで、収入源となるのはどのようなものなのかも見ておきましょう。
入会金
結婚相談所のサービスは、まず入会時に入会金を受け取って会員になってもらうところから始まります。
入会金は30,000円~100,000円が相場ですが、入会金を安くし、それ以外に初期の登録費用などを設定している相談所もあります。
月会費
継続して紹介や相談などのサービスを利用する会員からは、月ごとに会費を受け取ります。
金額は10,000円~20,000円程度が相場です。
パーティーやセミナーの参加費
一人ひとりをマッチングして紹介する方法だけでなく、ホテルのパーティー会場などを貸し切りにして婚活パーティーや婚活に関するセミナーなどを開催することもあります。
その際、参加者から参加費用を徴収します。
参加費用は1人5,000円~10,000円程度が相場です。
お見合い料
会員同士のお見合いが成立した場合に会員から受け取る料金で、相場は1回あたり5,000円~15,000円です。
お見合い料でなくマッチング料として徴収する相談所もあります。
成婚料
紹介した会員同士が「成婚」となった場合に会員から受け取る、いわば成功報酬です。相場は50,000円~300,000円程度です。
ただしこの場合の「成婚」の定義は相談所によってさまざまです。
例えば「結婚を前提に交際を始めたタイミング」や「婚約に伴う退会のタイミング」など、何をもって「成婚」とするかはあらかじめ明確にしておかなくてはなりません。
明確にしておかないと、破談になった場合や曖昧なケースで払う払わないのトラブルになることがあるからです。
成婚料を設定していないところもあれば、結婚相談所によって金額にかなりの差があります。
ブライダル業者への紹介料
結婚相談所で結婚が決まった会員を、提携する結婚式場やブライダル業者に紹介することもあります。
その際には、紹介先の業者から紹介料を受け取ります。
紹介料の相場は、100,000円~300,000円程度です。
結婚相談所の中には、結婚式場が運営しているところもあります。
これらが結婚相談所の主な収入源となります。
それぞれをいくらで設定するのかは慎重に決めなくてはなりません。
結婚相談所の開業に失敗する3つの原因

結婚相談所は比較的低コストで始められるビジネスですが、誰でも成功するというわけではもちろんなく、失敗し、撤退せざるを得なくなる人もいます。
結婚相談所の開業で失敗してしまう原因について、ここでは主な3つの要因を解説していきます。
集客ができない
他のどの事業でも同じですが、集客ができなければ利益が得られません。
集客するためにはまず知ってもらう必要がありますし、継続して利用するサービス形態のため、同業他社との差別化を打ち出して選んでもらう必要もあります。
しかし、集客の重要性をよく理解していないと、適当に広告を出して待つだけで終わってしまいます。それでは会員は増えてくれません。
今はSNSなどでの情報発信が重要な集客ツールとして使われています。FacebookやInstagram、Twitterなど、それぞれの利用者層を意識してこまめな情報発信をしていくことが集客につなげる秘訣です。
また、利用者は結婚相談所に万単位のお金を払って入会し、その都度費用を払ってサービスを受けます。
数ある結婚相談所の中から、そのお金を払うにふさわしい相談所として選んでもらわなくては会員になってすらもらえないでしょう。
集客力を高めるためには、他社のサービスを十分に研究し、収益性は確保しつつ、選ばれやすい料金体制を組む、差別化したサービスを売り込むなどする必要もあるでしょう。
成婚につなげられない
お見合いセッティングまではスムーズにいっても、その先がまとまらない、というケースは多いものです。
例えば会員費などを安くする代わりに成婚料を高く設定していると、成婚に至らなければ収入が少なくなり、経営が苦しくなってしまいます。
簡単に成婚に至らないのは、会員の誰もが失敗したくない、より良い相手を見つけたいと願っているわけですから無理もないことです。
その先は、アドバイザーとしていかにその価値観や考え方を柔軟にさせ、可能性を広げられるか、という点にかかってくるでしょう。
会員からの信頼を得、説得して受け入れてもらうだけのコミュニケーション能力が必要です。
経営に関する知識やノウハウがない
婚活ビジネスが流行っているから需要があるだろう、誰にでもできるだろう、などの考えで業界研究その他の勉強をすることなく開業してしまうことも、失敗の原因の1つです。
参入は簡単にできても、事業を継続して運営するには経営に関する知識やお金に関する知識が欠かせません。
特に経営が軌道に乗るまでには時間がかかるため、運転資金をどうマネジメントしていくかが重要な課題です。
自己資金が少ないにもかかわらず応接スペースの内装にお金を継ぎ込みすぎてしまうなどすれば、生活費にも困る状況になりかねません。
創業時には、運転資金の運用を含めた事業計画をしっかり立てておくことが重要です。
結婚相談所の開業を成功させるポイント

ではどうすれば結婚相談所をビジネスとして成功させることができるのか、ここで主な3つのポイントを紹介します。
自身のライフスタイルに合わせたやり方があるとは思いますが、参考にしてみてください。
まずは副業で始める
これまで結婚相談所の業務に携わった経験がない、事業の経営経験がない、という場合には、まずは副業として始めることをおすすめします。
結婚相談所ビジネスは副業でも始められるのがメリットだというのは冒頭でも解説しました。
いきなり本業で始めてしまうと、経営がうまくいくまで無収入の状態が続くなどして焦りが生じる可能性が高く、収入面も精神面も安定しない状態が続いてしまいます。
副業として行うことで、安定した収入を確保した上で進めていくことができます。
勉強が必要だと思えば、本業のかたわらで開業前にしておきましょう。
その方が成功の確率も高まります。
まずは個人で始める
結婚相談所を始めるのに、いきなり「会社」という形をとる必要はありません。まずは個人事業主としてスタートするのも1つの方法です。
法人として会社を設立することには、たしかに節税や社会的な信頼性という点でメリットがあります。
しかし、法人登記費用が必要となるため費用もかかりますし、経営が赤字の場合にも法人住民税を納めなくてはならないなどのデメリットもあります。
まずは小さく始めて、事業が軌道に乗ってから法人化することも視野に入れましょう。
フランチャイズや連盟に加盟する
結婚相談所には、事業をサポートしてもらえる機関があります。
たとえば「日本結婚相談所連盟(IBJ)」や、「NOZZE.(ノッツェ)」など結婚相談所のフランチャイズです。
結婚相談所での業務経験がない場合には特に、完全な個人経営で結婚相談所を立ち上げて成功させるのは難しいかもしれません。
何らかの組織に加盟するのが一般的となっています。
こういった組織に加盟すれば、知名度やブランド力のもとでビジネスを行えます。事業運営のノウハウを教えてもらうこともできるでしょう。
ただし、加盟には加盟料やシステム利用料など一定の費用がかかります。
このため、資金が十分にない場合には事業が軌道に乗る前に経営が破綻してしまうおそれも。開業までに十分な資金を調達しておくことも重要です。
結婚相談所の開業資金の目安と調達方法
開業資金は多いほど安心ですが、最低限必要なものなどでどれほどのお金がかかるのかも知っておきたいですよね。
最後に、結婚相談所の開業に必要な資金の目安と、その調達方法も見ておきましょう。
結婚相談所の開業資金の目安

結婚相談所の開業に必要なのは、オフィスの家賃や光熱費、パソコン、デスクと椅子、応接セットといった設備にかかる費用のほか、連盟やフランチャイズ本部に支払う加盟料、集客のための宣伝広告費などの費用です。
家賃などはオフィスを構える場所やスペースの大きさなどによっても異なりますが、それぞれの目安は次のとおりです。
項目 | 費用の目安 |
オフィス家賃 | 5万円~20万円 |
備品費用 | 20万円~40万円 |
加盟料 | 50万円~200万円 |
宣伝広告費 | 30万円~50万円 |
開業資金を安く抑えるために、自宅をオフィスとして開業する人もいます。
自宅開業であれば家賃がかからず、光熱費などの負担も軽減できます。
また、ここで忘れてはいけないのが、経営が軌道に乗るまでの当面の生活費です。
本業として行うなら、数カ月の無収入期間を覚悟し、余裕を持った資金調達を行っておく必要があります。
開業資金の調達方法
開業資金としてまず必要なのは自己資金です。
融資を受けるにもある程度の自己資金が必要なので、開業までになるべく貯めておかなくてはなりません。
自己資金でまかなえない部分は、融資を受けることが一般的です。
創業時によく使われる資金調達方法として、日本政策金融公庫の新創業融資制度があります。
日本政策金融公庫は、中小企業者などに対する資金調達を支援する機能をもった政府100%出資の金融機関なので信用できます。
新創業融資制度では、新たに事業を始める人や事業を開始して間もない人に無担保・無保証人で融資をしてくれるので、利用を検討してみてください。
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まとめ

結婚相談所は、少子化問題の解決策の1つとして注目を集め始めているほか、開業費用が他のビジネス分野と比較して低く、特別な資格やスキルがなくても開業できることから、参入しやすいビジネスとしても注目されています。
しかし、事前準備や経営に関する知識のないまま開業すれば、失敗するリスクも当然あります。
まずは自己資金を貯め、経営の勉強をしつつ副業でスタートさせる、フランチャイズに加盟してノウハウを学ぶなどして、失敗に対するリスクヘッジをしておきましょう。
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