女性ならではの視点を活かした事業で成功する「女性起業家」の活躍が、近年では多くみられます。
自宅で開業して仕事と家事・育児を両立し、いきいきと働いている姿には多くの女性が憧れを抱くのではないでしょうか。
しかし、いざ起業をするにしても、どんな知識が必要で何から始めればよいのかわからないという人も多いでしょう。
そこでこの記事では、起業前にすべきことを5つに分けて解説し、起業へのステップを順番にわかりやすく説明します。
目次
女性の起業、その実態とは
日本の男女格差はかねてより問題視されており、日本でも男女格差是正の取り組みが推進されるつつあります。とはいえ現実的にはいまだ男女格差は埋まりきっていません。
実際、世界経済フォーラムの発表する「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本の男女格差は120位という低順位にあります。
(出典:内閣府男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数(2021年3月31日発表)」)
例えば、起業者のうち女性の占める割合は19.3%でにとどまっており、男性が約8割を占めているのが現状です。
(出典:総務省統計局「平成29年就業構造基本調査」)
このように今の日本では女性起業家の活躍はまだ少なく、女性がビジネスで成功するための土台が万全とは言い難いでしょう。
ニーズに応じた身近なサービスで成功する女性起業家
このような現状から考えると、特別なスキルもない状態で起業してもうまくいかないと感じるかもしれません。
しかし、そんな中でもニーズに応じた身近なサービスできちんと成果を出し、活躍している女性起業家もたくさんいるのです。
女性起業家の特徴は、飲食店・宿泊業・教育学習支援業・生活関連サービス業など個人向けの身近なサービス分野の割合が40%を占めているということ。
( 出典:中小企業庁「中小企業白書2012年版」)
これらの分野は今後社会の成熟化とともに成長が期待され、ニーズが高まる分野でもあります。
また、起業時の平均年齢は女性が36.5歳で男性より4.5歳低く、若くして起業する人が多い傾向にあります。
以上のような女性起業家の特徴を押さえて、これから紹介する起業までの手順を順番に実践していけば、女性が起業で成功することも決して夢ではありません。
起業前にすべきこと1. どんな事業をするかを決める
起業したいと思ったら、まずはどんな事業をするのか、起業のアイデアを考えてみましょう。
とはいえ、起業においてはアイデアを考えるのが一番難しい作業でもあります。
ここではアイデアを生み出すためのポイントを紹介するので、考えるヒントにしてください。
自分の強み・得意なこと
職務経験があるのなら、仕事で身に付けたスキルや専門知識は強みになります。
特に専門的なスキルを身に付いていれば、起業をする際も大いに役立つでしょう。
また仕事に限らず、家事や趣味で続けていたことも得意なことに含まれます。
家事代行・カフェ・自作品販売などは、家庭で身に付けたスキルを生かせる分野です。
自分の強みや得意なことがすぐに思い当たらなければ、まずはこれまでの経験や自分の好きなことを思うままに書き出してみてください。
そこからビジネスに繋がりそうなものがないかと考えてみると、起業のアイデアが思い浮かぶかもしれません。
女性が起業する際の課題としては、「経営に関する知識・ノウハウ不足」「事業に必要な専門知識・ノウハウ不足」が多くの割合を占めています。
( 出典:中小企業庁「中小企業白書2012年版」)
これは女性の就業経験が男性より短い傾向にあり、経営や事業に関する知識・経験を得る機会が少ないことが要因でしょう。
だからこそ女性が起業で成功するためには、「いかにして自分の強みや得意を生かせる分野をみつけるか」ということが大事なのです。
身近な課題を解決できるもの
自分自身が「こういうことが不便だ」「もっとこういうサービスがあったらいいな」と感じることの中に、消費者のニーズがあるものです。
日常的な気付き・疑問に敏感になりましょう。
女性ならではの目線というのも大きなカギとなります。
そしてアイデアが生まれたら「誰のためにどんな商品・サービスを提供したいのか」とより具体化してください。
ターゲットを明確に決め、それに合わせて商品・サービスを作っていくのです。
ビジネスは地域や社会の課題を解決することで成り立つもの。
人の悩みを解決するために「どんな商品・サービスがあればよいか」「消費者のニーズを満たす商品・サービス とは何か」を考えるのです。
成功事例にプラスアルファ
自分でゼロからアイデアを生み出すことが難しければ、成功事例にプラスアルファするという方法もあります。
もちろん単に成功事例を真似するだけでは、新しいアイデアは生まれません。
しかし、ビジネスのアイデアは既存のもの同士の組み合わせによって生まれるものです。
つまり、成功事例に自分の知識・経験などを踏まえてプラスアルファすることで、新しいビジネスのアイデアが生まれることもあるのです。
アイデアがなかなか浮かばないという人は、まず起業の成功事例をたくさん調べてみてください。
そこに自分・女性ならではの視点で「もっとこうしたらどうか」「こうすればさらに良くなる」というように、プラスアルファできることを考えてみましょう。
収益が生み出せるもの
収益を生み出せるということは、「お金を払ってでもその商品が欲しい」と思ってもらうということ。
ビジネスとしてやっていくためには、「やりたいこと」「好きなこと」だけではなく「ニーズがあること」も重要なのです。
自分が参入しようとしている市場をしっかり分析し、そこで顧客が何を求めているのかをよく考えましょう。
また、どうやってその市場の競合と差別化を図るかという視点も大事です。
ビジネスとしてやっていく以上、自分のやりたいことだけではなく消費者のニーズをきちんと把握して、ニーズを満たす商品を作らなければなりません。
起業前にすべきこと2. 起業の方法を選ぶ
起業と言えば、会社を設立して銀行から融資を受け、設備投資したり従業員を雇ったりするといったイメージが強いのではないでしょうか。
しかし会社設立は起業方法のうちの一つにすぎず、会社設立をしなくても起業することはできます。
ここでは起業の方法を3つ紹介します。自分に合ったスタイルの起業をしましょう。
個人事業主として始める
会社を設立せず、個人で事業を営むのが個人事業主です。
個人事業主であれば法人設立の手続きをする必要もなく、開業届を出せばすぐに事業を開始することができます。
副業から小さく事業をはじめたいという人は、まず個人事業主として事業を開始し、軌道に乗ったら会社を設立するというのがおすすめです。
最近ではひとりで事業をスタートして初期投資を極力抑え、最低限の収益のみ目指す「プチ起業」が注目されています。
働き方改革やコロナ禍の影響で副業を始める人が増えたことで、小さく事業を開始できるプチ起業が人気を集めているのです。
加えて、個人事業主であれば仕事と家事・育児との両立がしやすいというメリットもあります。
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会社を設立する
法人を設立して事業をスタートすることは、一般的な起業の方法としてイメージしやすいと思います。
起業は複数人でもできるため、仲間を集めて共同代表として会社設立することも可能です。
会社は個人事業主と比較して社会的な信用力が高いため、会社を設立することで取引先が広がったり融資を受けられる可能性も高まります。
収益が高くなれば節税対策にも効果があるでしょう。
ただし事業規模が大きくなれば、そのぶん固定費をはじめとしたランニングコストが大きくなります。
また、会社の代表者は法人の個人保証をすることが多いので、事業に失敗したときのリスクが高くなってしまうというデメリットもあります。
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フランチャイズに加盟する
フランチャイズ本部の看板を掲げて営業を行うのが「フランチャイズ経営」です。
コンビニや飲食店などがフランチャイズの典型例ですが、その他にもクリーニング店・学習塾・整体院・美容院・介護事業者など様々な分野があります。
フランチャイズに加盟すれば本部の知名度が使えるので、事業開始当初でも一定の集客は期待できるでしょう。
また、仕入れ先が確保されており、マニュアルによって経営のノウハウも学べるため、未経験の分野でも安定した収益を得やすいというのが最大のメリットと言えます。
一方、フランチャイズではロイヤリティを支払う必要があるため、収益を圧迫されて利益がほとんど出ないということもよくあります。
未経験でも安定した収益を得やすいというメリットがある反面、高い利益を出すのは難しいというのがデメリットです。
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起業前にすべきこと3. 経営に必要な知識を得る
起業するなら商品のアイデアや実務の知識・経験だけでなく、経営に関する知識も必要です。
良いアイデアがあっても経営面を疎かにしては失敗の原因となってしまいます。
ここでは経営に必要な知識を3つ紹介するので、頭に入れておきましょう。
お金の知識
まず重要なのは決算書の読み方・作り方についてです。
決算書の作成は、会計ソフトを使ったり税理士に依頼したりするのが一般的なので、一からすべて作れるようになる必要はありません。
ただし「財務3表」といわれる貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書は会社の財務状況を知るとても重要な指標なので、ある程度内容が理解できる知識は身に付けておきましょう。
また、会計に関する知識もお金の流れを理解する上では重要です。
経理と財務は密接に関わるので、会計の知識も企業経営には欠かせません。
起業をすると自分で確定申告をしなければならないので、自分が支払う税金に関する知識も必要です。
きちんとした知識があれば節税対策にもなるので、税金に関する知識もできる限り身に付けてください。
マーケティング
商品やサービスを売るためには、単に自分の好きなものを作っているだけではなく、誰にどんな商品・サービスを提供するのかを明確にしなければなりません。
この「自社のターゲットや提供する価値を明確にする」ことがマーケティングです。
また顧客に選ばれる商品・サービスを作るためには、競合との差別化も意識する必要があります。
自分の強みを生かして競合との差別化を図りつつ、消費者のニーズに合った商品・サービスを提供できるようにしましょう。
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集客
起業して自分でビジネスをするためには、営業・広告宣伝などで集客をしなければなりません。
どんなに良い商品を作っても消費者に認知されなければ売れないため、どのように認知してもらうか戦略が必要です。
集客方法としては従来、チラシや広告掲載などが一般的でしたが、現在はインターネットの活用が集客成功のカギです。
特に、SNSは少ない費用で大きな集客効果を生む可能性があるので、最大限活用しましょう。
SNSにもいくつかの種類があり、集客に活用するにはそれぞれの特徴を知ったうえでうまく活用することが大事です。
例えば、Twitterは利用者とのコミュニケーションがとりやすいのが特徴であり、Instagramは画像を前面に押し出してアピールしやすいという特徴があります。
以上のように経営に必要な知識をいくつか紹介しましたが、自分で学ぼうとすると時間がかかってしまい、事業に専念できなくなる恐れがあります。
特に税金のように専門的な知識を要する部分に関しては、専門家に依頼するという選択肢も検討することをおすすめします。
起業前にすべきこと.4 創業計画書を作る
起業で成功したいのであれば、創業計画書の作成が必須です。
ここでは創業計画書が必要な理由や創業計画書の内容、そして添付資料などについて解説します。
創業計画書の書き方についても詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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創業計画書が必要な理由
理由は大きく2つあります。
1つは、創業計画書が融資を受ける際に必須であるということです。
融資の審査では「貸したお金がきちんと返済されるのか」をチェックされますが、創業時は事業実績で判断することができません。
そこで創業計画書の内容をみることで熱意や金銭管理能力などを測り、事業の将来性を判断するというわけです。
そしてもう1つの理由は、自分自身が創業にかける思いをより強固にすること。
創業計画書をまとめる作業を通し、経営者に求められる資質を備えているかについて問い直すよい機会になります。
以上の理由から、創業計画書の作成は起業をする時には欠かすことができないのです。
時間をかけて何度も修正を繰り返し、細部までしっかり作り込んでください。
創業計画書の内容
創業計画書の記載項目には、次のようなものがあります。
- 創業の動機
- 経営者の略歴等
- 取扱商品・サービス
- 取引先・取引関係等
- 従業員
- 借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し
「創業の動機」では主に熱意が測られます。
起業に対してどれだけ真剣なのか、成功させるためにどんな準備をしてきたのかなど、起業にかける思いを書き込んでください。
「取扱商品・サービス」「取引先・取引関係等」からは事業内容がわかるので、自社の強みは何か、他社との差別化ができているかといった点が明らかになります。
そして「必要な資金と調達方法」「事業の見通し」では、貸したお金がきちんと計画的に返済できるのかがわかります。
この点は融資の際にも厳しくチェックされるので、細かな点まで注意してできるだけ詳細に書き、万全な計画書を仕上げましょう。
創業計画書に添付する資料
創業計画書は自分で立てた計画に過ぎません。
そのため書かれた内容に現実味をもたせるためには、客観的な根拠が必要です。そこで創業計画書には、次のような資料を添付します。
- 収支計画書
- 資金繰り表
- 業種、業態を示す資料
- 事業経験書
- 売上根拠、人員計画
- 商圏分析
収支計画書・資金繰り表によって、事業の収益性がどの程度あるのかを具体的に数字で示すことができます。
また、事業経験書では勤務経験や事業に関する知識がわかり、売上根拠・人員計画は利益の根拠を示します。
創業計画書の内容に説得力を持たせるためには、これらの添付資料もしっかり用意しなければなりません。
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起業前にすべきこと.5 資金を調達する
起業では資金調達も大きな課題の一つです。
創業時に自己資金が多く用意できないことは、起業家にとって悩みの種でしょう。
そこで、ここでは女性起業家が利用できる資金調達方法を3つ紹介するので、資金調達に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
新創業融資制度【日本政策金融公庫】
新創業融資は、新たに事業を始める方や事業を開始して間もない方を対象にした、無担保・無保証の融資制度です。
審査のハードルも民間金融機関に比べれば低く、実績よりも起業にかける熱意や計画の実現可能性をみて審査をします。
そのため創業時や起業当初でまだ実績がなく、民間金融機関の融資を受けにくい起業家にとってはとても利用しやすい制度と言えるでしょう。
新創業融資制度の限度額は3,000万円ですが、実際には3,000万円満額の融資を受けることはなかなかできません。
実質的な上限は、1,000万円程度と考えておくのが無難です。
女性若者シニア起業家支援基金【日本政策金融公庫】
こちらも日本政策金融公庫の融資であり、事業開始後おおむね7年以内の女性の方、または35歳未満か55歳以上の方を対象とした無担保・無保証の融資制度です。
融資の対象者に限定があるぶん融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)と、新創業融資よりもさらに高額の融資を受けられるチャンスがあります。
ただし、一般的には新創業融資と同様1,000万円程度の融資になることが多く、限度額一杯の融資を受けることは難しいでしょう。
金利は基本的に1.66~2.05%なので、低金利で融資を受けることができます。
女性起業チャレンジ制度【日本起業アイディア実現プロジェクト】
「日本起業アイディア実現プロジェクト」は、産業界・教育界の有志が集まり女性の起業家育成を支援するプロジェクトです。
「女性起業チャレンジ制度」ではプレゼンによる選考を経て、グランプリ受賞者に200万円の支援金が無償で支給されます。
18歳以上で新しく起業を目指している女性が対象であり、「女性ならではの視点」「その人だからこそできる事業であるか」などの点が選考基準です。
選考はプレゼン形式で行われるため、起業に対する強い思いがあり、プレゼンが得意な人はぜひチャレンジしてみるとよいでしょう。
女性に多い?失敗を招く2つのNG行動
女性が起業する際ありがちな、失敗を招くNG行動を2つ紹介します。
起業してから失敗することがないよう、ここで紹介するNG行動は意識的に避けるようにしてください。
NGその1 . 経営を直感で判断してしまう
良いアイデアが思い浮かぶと、つい直感で判断して行動してしまうものです。
しかし自分で思いついたアイデアが市場のニーズにマッチしているとは限りません。
経営を直感で判断してしまうと、市場のニーズを無視した独りよがりの商品・サービスになってしまう危険があります。
成功している経営者はあらゆるところにアンテナを張って情報収集し、綿密な分析を怠りません。
良いアイデアが思い浮かんだらきちんとした手順を踏み、ビジネスになるかどうかを冷静に考えてください。
NGその2 .好き」の気持ちだけで起業してしまう
ビジネスとして成功させるためには、売れる商品・サービスを作って収益を上げていかなければなりません。
しかし自分の「好き」という気持ちだけで起業してしまうと顧客目線が疎かになり、消費者のニーズに合った商品を提供できなくなってしまうことがあります。
もちろん仕事が好きであることは大きなモチベ―ションになりますし、辛いことも耐える原動力になります。
しかし「ビジネス」として成り立つかどうかという視点では、市場のニーズや収益性も考えなくてはならないのです。
好きなことをビジネスにするためには、集客やマーケティングなどの事業戦略もしっかり立てて収益を上げる努力を怠らないようにしてください。
まとめ
女性起業家はまだ数が少ないものの、ニーズに応じた身近なサービスで成功している人も大勢います。
起業をしたいと考えたら、まずはどんな事業をするのかを決めましょう。
自分の強みや身近な課題を解決できるアイデアが、起業成功のもとになります。
開業費用を自己資金のみで賄えないときは融資を受けることもありますが、融資の際も創業計画書が必須です。
創業計画書を作成するときは、ぜひ当サイトの事業計画書無料添削を活用してください。
運営会社である「税理士法人Bricks&UK」は認定支援機関です。
創業融資に関する無料相談も受け付けています。お気軽にご相談ください。
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