「終身雇用」が当たり前の時代は終わり、多様な働き方が可能になりつつある昨今、会社の独立を考える人も増えています。
とはいえ、独立しても成功するとは限りません。「失敗したらどうしよう」と悩む人も多いでしょう。しかし、成功にはまず一歩を踏み出すことが必要です。
この記事では、同じ轍を踏むことのないよう、起業の主な失敗原因や、失敗しがちな人の特徴、成功させるためのポイントなどを解説します。
目次
独立開業に失敗してしまう主な原因
せっかく独立を果たしても、残念ながら失敗する人も一定数います。その原因は、次のようなことです。
事業計画を適当に立てた
事業計画がいい加減なものだと、失敗の可能性が高まります。
事業計画とは、事業の目的を果たすために作成するものです。事業内容や自社の強み、利益を得る仕組みから必要な資金の額、売上見込みなどを明確にし、第三者にもわかるよう「事業計画書」として形にします。
事業計画が適当なものだと、やるべきことも明確にならず、問題が起きても原因を探るのが難しく、失敗につながります。
経営の知識を学ばなかった
経営知識の習得に必要性を感じ、自発的に勉強するかどうかで、事業の結果に大きな違いが出ます。
例えば美容師ならカットなど施術の腕はプロでも、経営については何も知らない、という人がほとんどでしょう。飲食店などどの事業でも同じです。
しかし、経営を知らないままで事業に成功するのは困難です。
ニーズを二の次にした
事業が成り立つのは、社会や市場、お客様からのニーズを満たしてこそです。
しかしニーズよりも自分のやりたいことを優先し、失敗する人も少なくありません。自分がベストだと思うものは誰にとってもベストだと思いがちですが、残念ながらそうではありません。
多くの人が、自分の理想を実現させるために独立します。しかしその理想が独りよがりでは失敗してしまいます。
初期費用をかけすぎた
開業時に、資金を使いすぎてしまい、経営が軌道に乗る前に破綻してしまうケースも少なくありません。
せっかく独立して新たなスタートを切るのだから、店やオフィスを理想通りに作り、機器や設備も最新・最善のものを揃えたいと思うのは当然です。
しかし、事業の利益が順調に出せるようになるには、早くとも数カ月~半年が必要です。その前に資金を使い果たしては、成功できるものもできません。
流行に乗ろうとした
特に飲食業では、その時その時の流行りものもあります。原材料が安く利益が出やすいものも多いため、「これなら自分もできそうだ」と甘く見てしまうと失敗しがちです。
流行りものこそ、出店の時期や手を引くタイミングが重要です。すでに広く流行状態にあるものをこれから始めるのは遅く、引き際の見極めを間違えれば、大きな負債を抱えかねません。
積極的な営業・売り込みをしなかった
独立するなら、開業前からお客さんの獲得・確保も積極的にしなくてはなりません。自動的にお客さんが来てくれると信じ込み、営業活動をしない人も多いので注意が必要です。
どんなに腕が良くても、品質が良くても、認知されなければお客さんは来てくれません。似たような他の商品やサービスと何が違うのかを明確にアピールしなければ、既存の業界で頭角を現すのは困難です。
独立開業に失敗する人に共通する特徴
状況的な原因のほか、経営者の資質的な部分でも失敗しがちな特徴があります。次のような特徴が当てはまる人、耳が痛いという人は要注意です。
考えや予測・判断が甘い
「独立すれば儲かる」などと簡単に考えていると、厳しい現実に直面することになります。
予測した売上を達成できなければ、資金の返済計画にも影響します。
事業経営には常に先を予測し、状況判断をしていく必要があります。見込みが甘いほど、常に余裕がなくギリギリの判断を迫られることに。資金繰りなど、経営の重要な部分で判断を間違えれば致命的です。
主体的に動けない/動かない
独立するからには、自ら考えて決め、動かなくてはなりません。しかし会社員時代に上司から言われたことしかしてこなかった場合、待ちの姿勢が染みついて、今何をすべきか、どう動くべきかの判断ができません。
自分の事業なのに自分が動かなければ、周りに人がいても助けてはもらえず、窮地に立たされることになります。
問題やトラブルを他者のせいにしがち
よくないことがあった場合に、その責任が自分でなく周りの人や環境にあると考える他責思考の人も、独立での成功は困難です。
事業経営にトラブルはつきものですが、他責思考では本当の原因や正しい解決策にたどり着けません。
問題の解決や課題の克服ができないと何度も同じようなトラブルを招くことになり、立ち行かなくなってしまいます。
自分の能力や感覚を過信している
自分の能力や人望、感覚を過信したことで、売れると思った商品がまったく売れなかったり、集客ができなかったりするケースがあります。
「自分の腕なら独立してもすぐに顧客を確保できる」「自分の料理は有名店よりうまい」など、自己の能力に対する自信や、「ここに店を出せば売れるはず」といった自信は、必要ではあるものの、注意も必要です。
というのも、その感覚がずれている人も少なくないからです。客観的に見てどうか、そう思う根拠は何かなど、冷静に見る必要があります。
人の意見を聞かない
自ら決意する・判断を下すことは重要ですが、他者の意見を聞かず、自分と異なる意見を受け入れないといった姿勢は危険です。どんな人でも自らの知見には限りがあり、間違っている可能性もあります。
共同経営者や部下に聞く耳を持たず、税理士など専門家の助言すら無視し、経営難に陥るケースは多々あります。
また、身近なところでは、配偶者の反対を押し切って独立し、孤立して精神的な支えを失い、事業にも失敗するケースがあります。独立すべきかどうかも含め、人の意見も聞いてみるとよいでしょう。
事業に失敗してしまう人の中には、ビジネスの基本を怠ってしまうケースも。「こんなことで?」という実例を紹介した記事もあるので読んでみてください。
お金の管理ができない
事業経営にお金の管理は欠かせません。経営者がお金にルーズで管理ができないとなると、事業の継続は困難です。
事業のお金とプライべートのお金は区別する必要がありますし、事業の収支はすべて記録・管理しなくてはなりません。経理人材を雇うにしても、自分も把握をしていなければ騙されたとしても気づけません。
会社で常に経理担当に注意される人、自分が生活費を何にどれくらい使っているのかまったくわからない人は要注意です。
あきらめるのが早い
独立して経営者となると、孤独になり、試練に心をくじかれることもあります。しかし、まだあきらめるべきでない段階であきらめてしまうと、成功できるものもできません。
成功した起業家に「成功したのはあきらめなかったからだ」という人も多いのは、よく知られるところです。根気のなさやモチベーションの低さが失敗の原因となり得ます。
ただし、採算が合わない、将来性もないなど、去り際を見極めていさぎよく撤退することが必要となる局面もあるので見極めも大事です。
独立起業に失敗しないための対策
独立開業に失敗すると、多額の借金を抱えることになるほか、出資してくれた人にも損害を与えることとなり、人間関係にも支障をきたします。
家族の理解を得ず失敗した場合、離婚や絶縁などにつながることも。
しないためには、やるべきことがいくつもあります。失敗しないための主な対策方法を紹介します。
実現可能な事業計画を立てる
事業経営では、開業時もその後も、事業計画を立てることが重要です。
ただ計画書の書式を埋めたり、根拠なく実現不可能な売上予測を立てるのでは意味がありません。具体的な数字を入れた、実現可能な計画書を作るのがポイントです。
事業計画の策定は法の義務でもなく、立てていない事業主もいるでしょう。しかし、金融機関からの融資や自治体の支援を求めるなら、事業計画書の提出は必須。いい加減な内容では、審査に通りません。
自己資金を貯めておく
開業までに、できるだけ多くの自己資金(事業用と生活費の両方)を確保しておく必要があります。事業計画だけでなく資金計画も必須です。
飲食業などでは、売上があるにもかかわらず、売掛金の入金日までに支払うべきお金が払えず経営破綻に追い込まれる「黒字倒産」のケースも多いのが現状です。
融資を受けるにも、必要とする資金総額の3分の1程度は自己資金として持っていることが求められます。
経営が軌道に乗るまでには数カ月かかるのが一般的。その間の運転資金や生活費も確保しておかねばなりません。
副業やスモールビジネスから始める
いきなり退職して退路を断ったり、規模の大きな事業を始めたりするのには大きなリスクが伴います。
まずは給料と言う定期収入が確保できる副業や、万一失敗してもリスクの小さい小規模から始めるのが得策です。
独立してもやっていける目途が立ってからの独立、小規模で成功させてからの独立が安心です。
勉強や情報収集をし続ける
事業を続けていくには、どのような業種であっても絶えず勉強や情報収集を続ける必要があります。時にはそれにより、事業を変化させていく必要も出てくるでしょう。
すでに十分なキャリアは積んだ、もう学ぶことはない、と思ってしまうと、社会の流れや新たなニーズに適応できず、ライバルにお客さんを奪われかねません。
配偶者の理解を得る
独立する前に、家族、特に配偶者の理解を得ておくことも、事業の成功に大きく影響します。
経営者は孤独だとよく言いますが、精神的に大きな支えとなるのは配偶者の存在です。独立するなら特に、従業員を雇う経済的余裕がなく、配偶者に手伝ってもらう必要性も出てきます。
独立することも黙っていては、人生のパートナーとしての信用も失いかねません。事業経営に苦しむ中でも、応援してくれる家族のためなら頑張れるものです。
すぐに行動する
成功者の共通点の1つが、思いついたことを即行動に移す、ということです。あれこれと迷った挙句にチャンスを逃したり、結局何もせず終わるようなことはありません。
それで失敗したとしても、そこから学んですぐに別の行動で対処することができます。
独立するまでについても、すぐに行動することで大きく物事が動き始めます。独立するお金がないなら、まずは少しずつでも貯金を始めるなどすべきでしょう。
専門家の力も借りる
経営や法的手続き、税務会計と言った場面では、その分野の専門家にサポートしてもらうことも重要です。
なにより本業に専念できますし、必要な手続きやその方法を知らず法令違反を犯してしまったりするリスクを避けられます。
開業時には多くの出費があり、専門家への報酬は安くないため躊躇するかもしれません。出ていくお金だけでなく得られるものに注目し、費用対効果で考えることをおすすめします。
起業に伴うリスクにはさまざまなものがあります。こちらの記事で解説しています。
独立に成功しやすい仕事の特徴と例
独立・起業するにあたって、会社員時代とまったく同じことをするのではなく、その会社の一員という立場ではできないことに挑戦したい、など違った形での独立を考える人もいるでしょう。
ただしその場合、成功へのハードルが高くなることもあります。一般的に成功しやすいと言える業種の特徴を挙げていきます。
経験を活かせる仕事
独立起業に最善なのは、前職の経験を直に活かせる仕事です。
同じ業種でなくても、共通する必要経験やスキルが多いほど成功の確率も高まります。
例えば、経理担当から経理代行会社の立ち上げ、WEBデザイナーやプログラマーの経験を生かしたフリーランスのエンジニア、メーカー勤務でひらめいた新たな流通方式による事業、営業経験を生かしたコンサルティング業務など。
起業アイデアを考えるところからのスタートなら、まずは自分の経験やスキルを棚卸しした上で、社会のニーズや動向を調べ、自分の力を発揮できる事業を見つけましょう。
専門資格を活かす仕事
資格を活かした独立も、成功しやすい起業方法の1つです。
例えば営業の仕事をしながら宅建士の資格を取り、不動産会社の経営を始める、など。
美容師資格を持っているなら、美容師として独立するのはもちろん、「まつエク」やネイルなどのトータルビューティーサロンを開業するなど、多角的に事業を広げることもできます。
ただし、もしこれから資格を取るなら、働きながら学べる資格、しかも実益につながりやすい、かつライバルがそこまで多くない宅建士や中小企業診断士などの資格を選ぶのがポイントです。
インターネットビジネス
アフィリエイトやアプリ開発、動画編集など、インターネットに関するビジネスは、独立しやすい職種として知られています。
店舗を構えたり、商品を仕入れたり在庫を持ったりする必要がなく、パソコンやインターネットなど仕事ができる環境が整っていれば、比較的少ない自己資金で手軽にスタートできます。
インターネット系のビジネスは、働く時間や場所にも融通が効くため、自由な働き方を求める人に人気があります。
ただし、気軽に始められる分、ライバルも多いです。競合も多いため、やはり営業力などは必須です。
利益率の高い仕事
利益率の高い仕事とは、つまり「儲け」が多い仕事のこと。付加価値などにより原価よりかなり高額で売れるもの、あるいは原価が低いものが当てはまります。
例えば情報やアドバイスなどで対価を得るコンサル的な職業は、いわゆる「無形商材」であり、元手がかからないため利益率も高いです。
無形商材には、他にも専門知識を活かしたスクールの運営、例えば料理教室やプログラミング教室、英会話教室など数多く存在します。オンラインを利用すれば固定費も抑えられます。
また、時代や社会的なニーズによって、これまでにないサービスを生み出せる可能性もあります。
継続受注が見込める仕事
反復・継続して買ってもらえる商材を扱うのも、成功しやすいビジネスの筆頭です。
近年でいえば「サブスク(サブスクリプション)」が主な例。一度契約してもらえれば、定期的な利益が得られます。定期購読のほか、現在ではサプリメントから飲料水やパン、自動車などまで、さまざまなビジネスに用いられています。
広くニーズがあるもの、対象者は限られているものの、毎日のように必要となるものを扱うのがポイントです。
フランチャイズ契約の仕事
独立してすべて自分で一から始めるのではなく、フランチャイズに加盟すると、成功までの道のりが短縮できます。
フランチャイズであれば、すでに確立された知名度やブランドを利用できるので、開業当初から集客しやすい状態です。
ただ、「独立」を「自由」と同義でとらえる人には、本部からの指導やルールが窮屈に感じる可能性が。また、ロイヤリティなども発生するため、資金繰りが楽になるとは言えません。
フランチャイズについては、デメリットも把握しておく必要があります。こちらの記事も読んでみてください。
独立失敗の原因は1つじゃない!対策は必須
独立に失敗する原因は、事業計画が甘かったり、自己を過信したり、自己資金が不足していたりとさまざまです。
いろんなところに失敗の原因が潜んでいることを理解し、いい加減にせず丁寧に準備を進めていくことをおすすめします。
わからないことや迷うこと、不明な点などがあれば、商工会などの窓口や自治体、専門家への相談が役に立ちます。素直に耳を傾け、リスクをつぶしていきましょう。
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