個人事業主が会社を立ち上げる(法人成りする)ことには、社会的に信用されやすくなったり、節税対策がしやすかったりするメリットがあります。
そのメリットや会社形態によって異なるメリット・デメリットについては、「会社設立のメリットとは?会社形態別のメリット・デメリットも解説」の記事で解説しました。
この記事では、会社設立に伴うデメリットと、それに対して何ができるのかについて解説していきます。デメリットがあるからと会社設立を諦めてしまうのはもったいないことです。ぜひ参考にしてください。
目次
会社を設立することのデメリット
個人事業主が会社を設立することには、次のようなデメリットがあります。
- 設立手続きに費用がかかる
- 会社運営や税金申告など事務が複雑になる
- 赤字になった年も法人住民税の納付義務がある
- 社会保険への加入義務がある
- 本社移転などのたびに登記費用がかかる
- 役員報酬は定期・同額支給でないと経費にできない
- 代表取締役の氏名と住所情報は誰にでも見られる
- 廃業にも手間と費用がかかる
それぞれ具体的に見ていきましょう。
設立手続きに費用がかかる
会社設立をするには、商業登記の手続きをしなくてはなりません。商業登記とは、国が会社の存在を公的に法人格として認め、その情報を公開するものです。株式会社の場合、定款を認証してもらい、登記申請をするのに約25万円の費用がかかります。
合同会社であれば定款の認証などが不要となりますが、それでも10万円程度は必要です。
最後の章で、会社設立にかかる費用を安くする方法について解説します。
税金の計算が複雑になる
会社を設立して法人となったら、個人の所得税にあたる「法人税」を納めます。法人税の計算は、個人の所得税の計算より複雑で、経理や会計の知識がない人には難しいものです。
そのため、多くの企業が税理士と顧問契約を結び、税務関係のサポートを受けています。
税理士と顧問契約を結ぶと、顧問料として月に2万円~5万円程度、決算時には月額顧問料の3カ月~5カ月分を支払うのが一般的です。
痛い出費かもしれませんが、法人税は正しい知識で申告・納税を行わなくてはなりません。ミスでも故意でも、申告漏れなどが発覚すれば多額の追徴課税などのリスクがあります。
経理や給与計算などの事務が煩雑になる
会社という組織になって人が増えれば、売掛金や買掛金などの管理や給与計算など、経理的な処理も複雑になってきます。
専門知識がなければ正確な処理は難しいですし、本業のかたわら経理業務をこなすのも難しいでしょう。経理部門に知識のある人を雇えば、その分の人権費も必要です。
赤字の年も法人住民税の納付義務がある
個人事業では、利益がなかった年についての税金の負担はありません。しかし法人の場合、利益が出なかった年についても法人地方税の均等割部分の税金がかかります。
法人地方税には市区町村民税と都道府県民税の2種類があり、資本金の額や従業員の人数によって額が決まります。例えば資本金1千万円以下、従業員50人以下の場合、市民税の均等割は5万円、県民税の均等割は2万円の計7万円を納めなくてはなりません。
これは法人として事業を行う際の最低限の必要経費ととらえておいた方がよいでしょう。
社会保険への加入義務がある
すべての法人に、社会保険への加入が義務付けられています。社長1人の会社であっても同じです。
保険料は従業員との折半になるため、従業員が増えれば負担も大きくなります。
パートやアルバイトであっても、条件を満たせば加入義務があることにも注意が必要です。
本社移転などのたびに登記費用がかかる
法人の場合、「主たる営業所」として届け出た住所と異なる場所に移転する際には定款の内容変更を行う必要があります。
定款は勝手に変更することが許されず、株主総会で変更を決議し、その際の議事録を法務局で登記する必要性が出てきます。これには、手続きの手間だけでなく、1件につき3万円という登録免許税を納める必要もあります。
住所変更のほか、資本金額の変更や株式の譲渡制限などの局面でも登記と登録免許税の納付が必要となってきます。
役員報酬は定期・同額支給でないと経費にできない
法人になることのメリットの1つに、役員報酬を経費にできる、というのがあります。経費にできれば節税になるのですが、それは主に定期的に同額で支払われる給与である必要があるのです。
正確には「定期同額給与」といい、大まかに言えば1カ月以下の期間ごとに支払われる給与で、各支給時期の支給額が同額であるものが該当します。
節税のために役員報酬の額をその都度変更するようなことは認められないので注意が必要です。
代表取締役の氏名と住所情報が公開される
法人化したら、作成する定款には経営者の氏名や住所を掲載します。定款は閲覧可能なので、実質的に経営者の個人情報が公開されている形となるのです。
個人情報の保護が当たり前となってきた現在、おかしいと感じる人もいるでしょう。
しかしこれは、取引相手や顧客からすれば何らかの問題があったときの連絡先として必要な情報です。消費者保護の観点からは致し方ないと言えるでしょう。
廃業にも手間と費用がかかる
個人事業の場合、廃業しようと思ったら「廃業届」(開業届と同じ様式)を提出するだけで手続きは完了です。
しかし法人の場合は、法律に則って会社の解散・清算の手続きを行う必要があります。具体的には、株主総会での解散決議や、法務局での解散登記、税務署への解散の届け出、債権者への通知や決算承認、解散確定申告、精算確定申告など。
廃業すると決めてから手続きが完了するまでには、数カ月かかるのが一般的です。また、解散登記や清算人専任登記などには登記費用などのお金が必要となります。
会社設立のデメリットを克服する方法
会社設立には上記のようなデメリットがあります。とはいえ、事業を立ち上げ事業を軌道に乗せている会社が少なくないのは誰もが知るところですよね。
ここではデメリットを克服する方法を考えていきましょう。
経理などの業務に代行サービスを利用する
経理の知識がある人材が社内にいない、いるけれども本業に専念させたい、という場合、経理代行サービスを利用する、という選択肢があります。
従来なら新たに社員として人材を雇うのが普通でしたが、今は経理業務をアウトソーシングする会社も増えています。
専門業者にアウトソーシングすることで、正確な経理業務ができるのはもちろん、業務の効率化や改善につながる可能性があります。料金はかかりますが、求人を出して書類選考して面接して・・・という手間や人件費に比べれば安いケースも多いものです。
業者によって対応できる業務の範囲などが異なるため、見積もりなど相談してみるとよいでしょう。
税金は税理士、労務は社会保険労務士の力を借りる
法人成りのデメリットには、税金の申告や計算が難しくなることも挙げました。また、従業員を雇うことによって、社会保険や給与計算などの事務的な作業が発生し、人数が多くなるほど大変になることも課題となります。
これを解決するには、やはり社外のリソースに頼るのが一番の方法でしょう。税務は税理士、雇用や社会保険、給与計算など労務については社会保険労務士がプロとして存在しています。
正しく最新の知識を持った専門家に依頼すれば、本業の事業拡大に専念することができます。報酬の費用はかかりますが、専門家を味方につけるメリットは大きいものです。
数多くの企業が税理士や社労士と顧問契約を結んでいることが、それを証明しています。
会社設立の費用を安くするには
株式会社の設立に法律上の手続きだけで約25万円がかかるのは上記で伝えた通りです。
事業資金の確保も難しい中、この25万円という費用も頭の痛いものですよね。
費用をできるだけ抑えるにはどうしたらよいのでしょうか。考えられるのは次の3点です。
- 株式会社でなく合同会社を立ち上げる
- 定款を電子認証にする
- 会社設立の代行業者に依頼する
それぞれ説明していきます。
株式会社でなく合同会社を立ち上げる
合同会社の立ち上げには、定款の認証が必要ありません。そのため、認証にかかる印紙代4万円が不要です。また、登録免許税についても合同会社の場合は6万円(資本金の額の1000分の7、6万円未満は一律6万円)で済みます。
ただし設立後の法人税や社会保険などは株式会社と同様の負担があります。
合同会社で設立するかどうかは、メリット・デメリットなどを踏まえて選ぶことをおすすめします。こちらの記事もぜひ参考にしてください。
定款を電子認証にする
定款は、紙だけでなくインターネットを通じて電子認証にすることもできます。電子認証にすれば、印紙代4万円分が不要になります。
ただし、電子認証の手続きをするには、市販の文書作成ソフトやICカードリーダライタが必要で、その購入費用として2万円程度の出費がかかります。
▼会社設立の費用について詳しくはこちら▼
会社設立の代行業者に依頼する
会社を立ち上げたいけれども手続きがよくわからない、という人のために、会社設立を代行するサービスを行っている業者があります。インターネット上でも多数のサイトが見つかります。
代行サービスを利用すれば、確かに料金は安く抑えられます。ただし、業者によってサービス内容は異なるので、選ぶ際には料金だけでなく慎重に内容を比べる必要があります。
例えば「設立費用0円」とうたっていても、文書作成だけで手続きはほとんど自分でしなくてはならないケースもあります。また、業者=専門家とは限らないので注意が必要です。
会社設立に関しては、定款など書類の作成は税理士や行政書士が代行できます。登記手続きについては、司法書士でないと代行できません。そのため税理士と司法書士が連携している業者を選ぶのが最適といえるでしょう。
「その後の顧問契約が必要なんでしょ」という声も聞こえてきそうですが、実際に事業を始めて拡大させていくには、税理士など専門家の助言は欠かせないものです。今後の付き合いも考えて、適切な業者を選んでください。
まとめ~会社設立はBricks&UKへ
個人事業主から法人成りするには、手続きにお金がかかる、法人税がかかって手続きが難しくなる、従業員に関する社会保険などの手続きや出費が増える、といったデメリットがあります。
しかし、こちらの記事でお伝えしたように、会社設立にはメリットが多数あり、事業を拡大していくには会社の設立が必須です。
メリット・デメリットを踏まえた上で、なるべくデメリットを減らせないかを工夫する、例えば費用面であればいかに節税対策を講じるか、助成金、補助金を利用できるか、といった部分も重要です。
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