スキルを活かして独立し、自分の世界観を自宅サロンという形に現実化できたら最高ですよね。
「自宅でサロンを開業したい」と思ってはいるものの、何から始めればいいのか、開業にどんな手続きを踏めばいいのかわからない、という人も多いでしょう。
そこで今回は、自宅サロンを開業するまでの流れや、自宅サロン開業のメリット・デメリットをはじめ、必要な経費や資格、成功のポイントまで、サロン経営について知っておきたいことをまとめました。
目次
自宅で開業できるサロンの種類と人気の業種
自宅サロンには、ネイルやまつ毛エクステ、エステやリラクゼーションのような美容系のほか、フラワーアレンジメント教室、料理教室、手芸教室といった趣味系など、さまざまな種類があります。
この記事では、人気の美容系サロン5種の開業に絞って説明します。
まずはそれぞれの特徴を見ておきましょう。
ネイルサロン
ネイルサロンとは、手や足の爪をきれいに整え、マニキュアやジェルネイル、ネイルアートなどを施すお店をいいます。
始めるのに大掛かりな機器やベッドといった設備が必要なく、利益率(売上に対する利益の割合)が高いことが特徴です。
自宅サロンに必要な最低限の備品は、施術者用と客用のイスと作業机、ネイル用品一式。施術者が自分だけなど小規模で始めるなら、2人分のスペースで始めることができます。
スケジュールなどの管理さえできれば自宅サロンと出張型サービスの両立も可能です。
まつ毛エクステ (まつエク) ・アイラッシュサロン
「まつ毛エクステ」とは、まつ毛に専用の接着剤で人工の毛(エクステ)をつけることを言います。しかし、まつエクだけでなくまつ毛パーマも可能だったり、ネイルなど別の施術も行っていたりするサロンが多く見られます。
こちらもネイル同様にベッドでなく椅子でも施術ができ、大きな機器も必要ないので、自宅でも開業しやすい業種の1つです。
ただし、施術には美容師資格の取得が必須です。保健所に開設届を出して美容所登録をし、施設として 「作業所と待合所を区分して設けること」 などの基準を満たしているかどうかの検査にもクリアしなくてはならず、未経験や無資格での開業はできません。
エステサロン
エステサロンは、正確にはエステティックサロンといい、全身の美容に関するケアを行うお店です。
ただ、一口に「エステサロン」といっても行うサービスの内容はさまざまです。手で行う、機器を使うといった違いもあれば、スキンケアを目的とするもの、体型を整えるものもあります。また、アロマテラピー、アーユルヴェーダなどのサロンもエステサロンと呼ばれます。
行うサービスの内容によっては資格・免許が必要となる可能性があるので、あらかじめ確認しておく必要があります。
マッサージ・リラクゼーションサロン
マッサージやリラクゼーションを行うサロンにも、さまざまな種類があります。もみほぐしを行う「クイックマッサージ」や「スポーツストレッチ」、整体を行うお店もありますし、リフレクソロジーや小顔コルギなど女性をメインターゲットとするお店もあります。
また、マッサージよりエステ寄りの「リラクゼーションサロン」として運営する店もあります。施術内容には流行り廃りもありますが、オリジナルの施術メニューを生み出すことも可能でしょう。
ただ、マッサージ系のサロンには注意すべき点もあります。それは、サロンでの施術はあくまで「癒し」を与えるものであり、「治療」目的でのマッサージはできないということ。サービスの説明などにも気を付ける必要があります。
ヘアサロン (美容室) ・ヘアセットサロン
ヘアサロンはいわゆる美容室のこと。一方ヘアセットサロンは、カットやパーマなどの施術はせず、髪を結ったりヘアアイロンやカーラーで巻いたりといった「セット」やメイクアップをするお店です。
自宅でヘアサロンを営む人も多いですが、この場合は敷地内に美容室用の建物を建てたり、自宅を増築したりすることになるでしょう。
ヘアサロン・ヘアセットとも、自宅サロンとして開業するには美容所として保健所に開設届を提出し、施設検査を受けなくてはなりません。
カットやパーマをしないヘアセットサロンでも、美容師免許は必須なので注意してください。
自宅でサロンを開業するメリット
自宅サロンの大きなメリットは、金銭的な負担が抑えられることと、利便性が高いことです。自分のペースで店舗運営ができたり、子育てなどと両立できたりすれば、より長く働くことも可能になります。
具体的なメリットには、主に次の4つが挙げられます。
メリット1.費用が抑えられる
自宅サロン経営の最大のメリットは、開業に必要な費用が抑えられることです。初期費用だけでなく、ランニングコストも抑えることができます。
美容系サロンの場合、資本は施術する自分の腕とも言えます。
材料費はそこまで高くないので、利益率が高くなるメリットもありますね。
自宅サロンに必要な初期費用
初期費用とは、店舗を構えるための物件購入費や設備・備品などの費用、内装工事費など、開業までに必要となる費用のことです。
まず自宅でサロンを開業する場合には、物件の購入費や敷金・礼金などのコストがかかりません。
居住している建物の一部スペースを使うため、改修工事・内装工事も店舗を設けるよりは安く済むでしょう。
あとは機材や備品、施術に使う消耗品などをそろえれば、営業をスタートできます。
ただしもちろん、自宅サロンを開くために自宅ごと新築や引っ越しを考えている場合にはそれだけのコストがかかります。
自宅サロンに必要なランニングコスト
サロンを営業していくのに必要なお金がランニングコスト(運転資金)です。これも、自宅での開業なら抑えることができます。
持ち家なら新たな家賃の負担はありません。光熱費も自宅の一部であれば通常の店舗より少なく済みます。自宅ですでにインターネット通信環境が整っていれば、Wi-fi環境などを新たに用意する必要もありません。
Wi-Fi環境については、営業に必須というわけではありません。しかし予約受付やPOSレジなどに使えば便利ですし、待合室で使えれば顧客満足度も高められます。
自宅サロンでは、スタッフを雇わず自分だけを施術者として完全予約制にするケースも多く見られます。人を雇わなければ人件費もかかりません。
光熱費については、自宅分と合わせて支払った料金のうち、事業に使った部分を時間や面積の割合に応じて計算し、一部を経費とすることもできます(家事按分)。
メリット2.通勤しなくていい
自宅サロンなら、通勤しなくていいというのも大きなメリットです。会社勤めをしている人のほとんどが、通勤のストレスから解放されたいと思っていることでしょう。
もちろんストレスのみならず、悪天候や交通機関の遅れ、車の渋滞などに悩まされることもありません。
片道1時間を通勤に費やしていたとすれば、往復で2時間が自由になり、時間的にも精神的にもゆとりを持って過ごすことができます。
メリット3.家事や育児などとの両立がしやすい
上記2のメリットにもつながりますが、出産などを機に仕事をやめてしまったという人にも、自宅開業のメリットは大きいです。
自宅サロンで開業すれば働き方は自分次第で、仕事の合間に家事をこなすことも不可能ではありません。育児や介護との両立も、お客様の了承を得られれば十分に両立可能でしょう。
完全予約制であれば、子どもを預けて送り迎えの時間は確保する、食事の用意などの時間も予約を受けないといった工夫で乗り切りやすいのではないでしょうか。1人での開業なら、同僚に迷惑をかけると気をつかう必要もありません。
通勤時間もないので、無駄な時間なく効率よく動けます。
メリット4.お客様との距離を縮めやすい
マンツーマンで施術を行うのはもちろん、自宅の一画というプライベートに近い空間で施術を行う自宅サロン。施術する自分とお客様が親密になりやすい環境が整っています。
サロンの経営は「いかにリピーターを増やせるか」にかかっています。自宅サロンでお客様に「話しやすい」「信頼できる」「居心地がいい」と感じてもらえる空間を作れば、リピーターにもなってもらいやすいでしょう。
プライベートで小さめの空間を活かして丁寧に接客し、個人的な悩みを打ち明けられるような関係が築ければ、自宅サロンの成功ともいえるのではないでしょうか。
そのお客様が友人・知人に口コミなどでよい評判を広めてくれれば、さらなる集客につながります。
自宅でサロンを開業するデメリット
自宅サロンの開業にはメリットも多いですが、デメリットもあります。主なデメリットとして挙げられるのは次の4つです。
それぞれ説明していきます。
デメリット1.オン・オフの切り替えがしにくい
店舗勤務では、家に帰ることが仕事モードをオフにするスイッチとなります。しかし自宅サロンとなると環境はずっと同じ。オン・オフの切り替えがしにくくなるのがデメリットです。
店舗には責任者もいますし、交通手段の関係もあり、無理にでも仕事を切り上げるきっかけとなります。しかし自宅では「仕事のやめどき」が見つけにくいものです。加えて、1人ならすべての作業が自分の仕事。後片付けや清掃、次の準備や消耗品などの確認、会計は必須です。SNSの発信やサンクスメールの送信などもしようとすれば、夜遅くまで仕事モードのまま、となることも多いでしょう。
家族がいる場合には、家族に負担がかかる可能性も。仕事をする時間(終わらせる時間)をしっかり決めて、自分で業務の進行をコントロールする工夫が必要です。
デメリット2.公私の区別がつけにくい
自宅でサロンを開業するということは、つまり自宅を顧客に知られることでもあります。お客様との距離が近くなるのはメリットの1つでもありますが、そうとも言えない場合も。
どんな人がお客様となるかはわかりませんので、お客様となるすべての人に必ず自宅住所が知られる、というのはデメリットといえるでしょう。玄関を共用したり、サロンスペースへの動線によっては、プライベートな空間にも他人を入れなくてはならなくなります。
なるべく区別をつけるには、自宅玄関を入ってすぐの部屋をサロン用にするなどして工夫をしましょう。
また、考えたくはないですが何かトラブルになった場合、自宅を知られていることがリスクになるため、十分に気を付けなくてはいけません。
デメリット3.立地条件を選べない
住んでいる自宅をサロンにして開業するということは、必然的に店舗の立地が決められているということです。
サロンを開業するには本来 、商圏やターゲット層などをリサーチし、アクセスなども考えて最適な場所を探すことが重要です。
しかし自宅で開業する場合は自宅=店舗の立地。家が住宅街の真ん中にあるなどの場合には、通りがかりの人に見つけてもらうのも難しいでしょう。
独立前に人脈を広げておく、SNSで情報を発信する、モニター料金を設定して広告を出すなどして、立地のデメリットを補う必要があります。
自宅が賃貸マンションなど集合住宅である場合は、商売ができない契約となっている可能性が高いので要注意です。
不特定多数の人が出入りするとセキュリティや騒音、においといった問題が生じるからでしょう。事前に必ず、物件のオーナーや不動産会社に確認してください。
デメリット4.ご近所トラブルの可能性がある
自宅での開業となると、不特定の客が不定期に訪れることとなります。住宅街など自宅の立地によっては、それによりトラブルになるリスクも頭に入れておかねばなりません。
例えば、自宅の改修工事の際の騒音、出入り業者や客による路上駐車・違法駐車や、ごみのポイ捨てなどのマナー違反が考えられます。あらゆる可能性を想定して、近隣住民にはあらかじめ説明をし、理解を求める必要があるでしょう。
自宅が賃貸物件の場合には、契約に関する注意点もあります。後の章で説明しているので読んでみてください。
自宅サロン開業の8つのステップ
では、次に具体的な自宅サロン開業までの流れを追ってみましょう。8つのステップで説明します。
Step1.業種(施術内容)を決定
まずは、自分がサロンで何をしたいのかを明確にしましょう。まつエクやネイルなどは明確ですが、エステやリラクゼーションサロンでは具体的にどんなサービスメニューを用意するのかも決める必要があります。
市場には流行り廃りもあるので、長い目で見て決めることをおすすめします。
自分が持つ能力やスキルと、やりたいこと、そして社会やお客様から求められることが一致するのがベストです。起業のアイデアを練る際、この3つは必須と考えてください。
サロンの種別を決めるにも、メニューのラインナップを決めるにも、この考え方が応用できます。
Step2.必要な資格を取得
業種を決めたら、開業に必要な資格や免許、登録などのうち、取得もれがないかを確認しましょう。
必要な資格については、主な業種について後の章で紹介します。
また、開業に必要な資格だけを取っておけばよい、というわけでもありません。資格には「持っていると信頼性が上がる」という側面もあります。
何も肩書がない人より、持っている人が選ばれがちですし、自身のスキルの証明にもなります。必須ではない民間資格の取得もおすすめです。
特に自宅で1人で開業するのであれば、常に自身で勉強しつづけ、技術をブラッシュアップしていく必要もあります。
さらに、1つの資格だけでなく、複数の資格を取っておくと他店との差別化もしやすく、お客様のニーズも満たしやすくなります。
Step3.サロンのコンセプトを決定
サロンを作る前に、サロンの「コンセプト」、つまり「お店の目指す方向性や考え方」の指針を決めましょう。
特に次の3点はサロンの軸となるものなので、明確にしておく必要があります。
- どんな人のためのサロンにしたいのか
- お客様のどんな悩みを解決するのか
- どのような雰囲気のサロンにするのか
サロンのコンセプトが明確でないと、特徴や独自性のないサロンとなってしまい、お客様の定着も難しくなります。そうなると他のサロンに勝つことも難しいでしょう。
集客の面でも、誰にどうアプローチすればよいかがはっきりしなければ、効率的かつ的確な集客ができません。
コンセプトが決まったら、サロン名も決めましょう。サービス内容(施術内容)なども練っていきます。
コンセプトをどうするかで、必要な費用の額も大きく変わってきますよ。
Step4.開業資金を用意
開業費用がどれくらい必要なのかを調べ、その資金を準備します。
業種によっても、どんなサロンにするかによっても必要な金額は異なります(資金の目安は後の章で説明します)。
サロンスペースを整えるための初期費用のほか、半年分以上のランニングコストや生活費も考慮して資金調達する必要があります。
自宅サロンはコストが抑えられるとはいえ、「開業資金を自己資金だけでまかなうのは難しい」という人がほとんどではないでしょうか。融資や補助金、助成金など、利用できるものがないかを調べ、活用することも必要です。
▼補助金・助成金について詳しくはこちら▼
融資についても不安があれば、税理士など専門家に相談することも検討しましょう。こちらの記事もぜひ読んでみてください。
Step5.必要な設備の整備
資金が用意できたら、サロン運営に必要な設備を揃えましょう。
インテリアなどは、コンセプトに合ったものを選びます。機器にもさまざまな機能のものがあるので、価格だけでなく機能や利便性、耐久性などを考えて選んでください。
自宅サロンで必要となる設備には、次のようなものがあります。
- 施術用ベッドまたは机・椅子、ソファー
- エアコンなどの空調
(加湿器、空気清浄機など) - 化粧品やネイル、オイルなどの保管棚
- 洗濯機、乾燥機
- 会計用レジシステム
- 顧客管理用のPC
自宅サロンでの開業の場合、限られたスペースで必要な設備を整えなくてはなりません。まずは必要最小限のものを揃え、資金は経営を軌道に乗せることに優先して使いましょう。
スペースに余裕があれば、子ども用のいすを置くなどキッズスペースの設置も検討するとよいでしょう。新型コロナの影響による「新しい生活様式」に対応しておくことも大切なポイントです。
Step6.サロン空間づくり
必要な物が揃ったら、空間作りと動線を考えて設置します。
全体の内装は、自分で決めたサロンのコンセプトに沿った雰囲気に作り上げていきます。
居心地のいい空間になっているかが最重要となるので、自身が客になったつもりで常に俯瞰してみてください。友人など第三者に来てもらい、感想を聞くのも1つの方法です。
コンセプトが明確な空間作りができれば、その世界観を気に入った人がリピーターになってくれる可能性が高まります。「また来たい」と思ってもらえる場所を作りましょう。
Step7.開業届を提出
自宅サロンを開業したら、所轄の税務署に「開業届出書(開業届)」を提出します。
開業届は国税庁のホームページから様式がダウンロードできますし、記入は難しくありません。
また、「開業届出書」の提出と同時に「青色申告承認申請書」も提出しておくのがおすすめです。
こちらも様式は国税庁のホームページからダウンロードが可能です。
確定申告の際、節税メリットの大きい青色申告をするには、この申請書をあらかじめ出しておく必要があります。
ここでは個人としての開業を想定しています。会社を設立する場合は会社設立の手続きを行いましょう。
まつエクサロンやヘア系サロンは先に美容所登録を
まつエクサロンの開業には、施術者が美容師でなくてはならないことから、保健所への「美容所登録」をしておく必要もあります。
保健所に開設届を出し、検査を受ける必要があります。医師の診断書などの提出も必要です。
そのため、税務署への開業届よりも先に保健所への届け出を行いましょう。
法人の場合は、保健所に登記簿謄本を提出する必要もあります。
検査では、施設が美容所としての要件を満たしているかなどが確認されます。内装工事が必要となる場合もあるでしょう。
入浴・シャワー設備の設置も保健所に届出を
マッサージサロンなどで、施術後に利用してもらうシャワールームを併設するなどの場合もあるでしょう。
その場合は、「公衆浴場法」という法律に基づき都道府県の保健所への届け出が必要です。脱衣所の床面積などの基準を満たす必要もあるので、工事前の設計段階で保健所に相談してください。
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開業届については、こちらの記事で詳しく説明しています。
青色申告のメリット・デメリットや青色申告承認申請書の書き方については、こちらの記事を参考にしてください。
Step8.集客(広告・宣伝など)
繰り返しになりますが、自宅サロン経営の成功には一般的な店舗よりさらに「いかに集客するか」の戦略がカギとなります。あらゆる手を尽くして集客に努めましょう。
知り合いなどに広めるのはもちろんのこと、 チラシを作ってポスティングしたり、近くの飲食店などにおいてもらったりして広めていくのが堅実な方法です。 例えば、正式なオープン前に「プレオープン」でモニター募集をするなど、目玉となるサービスを用意するのもよいでしょう。
また、現代ではブログやSNSなどネットでの発信は必須です。
美容業界の比較サイトなどへの掲載もよいですが、その場合は他店との差別化をより明確に打ち出す必要があります。また掲載には広告宣伝費もかかるため、初めから広告に多大な費用をかけるのにはリスクもあります。
コンセプトやターゲットによって、集客の手段を変える必要もあるでしょう。
富裕層を狙った隠れ家的サロンなら、外に看板など設置せず「紹介のお客さまのみ」としてあえて広めないのも一つの手。しかしその場合は付加価値を付けて単価を高くするなど、別の工夫が必要です。
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集客・マーケティングについてはこちらの記事で解説しています。
自宅サロンの開業費用の目安
自宅サロンの開業には、設備費込みで300万円~400万円ほどかかるのが一般的です。
でも、ネイルサロンのように設備が大掛かりでなかったり、内装にお金がかからなければ、数十万でも可能でしょう。とはいえ、100万円は見ておくのがおすすめです。
この章では、業種別の開業費用の目安を見ていきましょう。ただし目安金額には運転資金は含んでいないので、別で用意しておく必要があります。
ちなみに運転資金は、営業経費(売上を得るのに必要な経費)の3~5カ月分で計算します。
また、自宅での開業ということで、一度に施術する人数を1名として想定、内装や外観の工事費用も抜いた額です。
業種 | 開業資金の目安 |
ネイルサロン | 60万円 |
まつ毛エクステサロン | 60万円 |
エステサロン | 80万円 |
リラクゼーション(マッサージ)サロン | 50万円 |
ヘアサロン | 100万円 |
ネイルサロンの開業費用
ネイルサロンを自宅で開業する場合には、少なくとも60万円程度の費用は必要です。
欠かせない費用としては、施術用のチェアやスツール、デスクなどの家具のほか、硬化用ライトや拡大鏡、ネイルポリッシュやジェルといったネイル商材、溶剤などの消耗品、広告宣伝費、ネット予約の仕組みの整備費用などが挙げられます。
商材や家具などの価格はピンキリですが、商売道具にはある程度の品質のものを選ぶ必要もあります。家具から商材、消耗品などに平均的なレベルのものを買うとすると、ざっと計算して約20万円です。
その他、エアコンや空気清浄機などを揃えたりすればより高額となります。
集客については、広告宣伝や予約受付などがトータルでできる「ホットペッパービューティー」などに掲載すれば、効率の良い集客が可能です。しかしそうなると、月額で数十万円の掲載料がかかります。
これは、どの美容系サロンでも同じことが言えます。
まつ毛エクステサロンの開業費用
まつ毛エクステサロンを自宅で開業する場合も、60万円程度の開業費用が必要です。
特に高額なのは施術用のベッドあるいはリクライニングチェアでしょう。そのほか、器具を乗せるワゴン、タオルウォーマー、人口まつ毛やグルーなどの消耗品、広告宣伝費などが必要です。
まつエクサロンの施術に必要な備品や消耗品などをざっと計算すると、約20万円。エアコンや空気清浄機などを買い足せば、10万円以上となります。
ネイルサロンと同じくネット予約と広告宣伝で約30万円と考えると、60万円以上の費用がかかります。
また、前述の通りまつエクサロンには保健所への美容所登録が必要で、都道府県により異なりますが約2万円ほどの料金もかかります。
エステサロンの開業費用
エステサロンを自宅で開業する場合は、80万円程度の開業費用が必要です。
最も高額となるのは、やはりエステ用の機材・機器です。どんな施術をするか、どの機材を使うかによっても費用が大きく異なります。
高い機材を使うならリース契約するなど、費用を少しでも抑える方法を考えましょう。
例えばイオン導入美顔器やスチーマーを導入するとします。ベッドはごく一般的なもの、その他リネン類や化粧品、消耗品など諸々の費用を概算して、約30万円といったところです。
広告宣伝とネット予約に関しては他のサロン同様に約30万円と見積もって、合算で約60万円です。
ヘアサロン・ヘアセットサロンの開業費用
ヘアサロンを自宅で開業する場合、100万円ほどの開業資金が必要となります。
・カットシザー 10万円
・シャンプーユニット(シャンプー台+チェア)20万円
・ワゴン 7,000円
・デジタルパーマ機器 20万円
・タオルウォーマー、タオル、ラック 1万円
・ウォールミラー 1万円
・ドライヤー 3万円
・ハンドミラー&バックミラー 4,000円
・ケープ 2,000円
上記で合計55~65万円ほどです。シャンプー台や椅子を2台以上にするとその分費用もかかりますし、給湯器を自宅用とは別で用意する必要性も出てきます。席数によって必要な湯の量も変わるため、給湯器のランクも変わってきます。
その他、ダッカールやピンといった小物や、シャンプ―やリンス、パーマ液といった消耗品なども必要です。
広告宣伝とネット予約に関しては他のサロン同様に約30万円と見積もると、あわせて100万円ほど。
ヘアセットのみの場合は、カット用のシザーやシャンプー台などは抜いて計算してください。
美容機器については中古品も数多く市場に出ています。新品へのこだわりがなければ、品質の良い中古品を使うのもよいでしょう。
パソコンや、レジ用のタブレットなどの購入も必要ならさらに15万円以上、エアコンや空気清浄機の設置、水道設備を追加するなどの内装工事が必要なら、その分の費用も考慮しておかなくてはなりません。
リラクゼーションサロン(マッサージ)の開業費用
リラクゼーションサロン(マッサージ)を自宅で開業する場合には、80万円程度の開業費用が必要です。
マッサージは主に手で行うので、主な出費は施術用のベッド、タオルやシーツなどの消耗品、マッサージに使うオイルなどの化粧品。このほか、他サロンと同じく広告宣伝や予約システムの整備などに費用がかかります。
その他、リラックスできる音楽を流すための機材やスピーカー、照明やアロマなど空間を作り上げるための物も必要となるでしょう。
施術方法によって必要な機材も違いますが、オイルマッサージを例にすると施術用のベッドやマッサージ用のオイル、タオルやアロマオイルなど、少なくとも10万円ほどは必要です。
マッサージを手技でなく機器で行う場合にはさらに機器代が必要です。リラクゼーションサロンの中でも、アーユルヴェーダなどオイルを使う場合には、シャワールームの設備を整える必要性も。
その場合は、内装工事などに加え、「公衆浴場法」に基づき保健所に届け出なくてはなりません。登録には、都道府県により異なりますが約2万円ほどの費用がかかります。
自宅サロン開業にスペースはどれくらい必要?
自宅サロンの必要スペースについては、美容所としての届出が必要なヘアサロン・ヘアセットサロンとそれ以外の場合で異なります。
まつエク・ヘアサロン系以外の場合
ネイルサロンやエステなど、美容所登録が不要なサービスを始める場合、1人を施術するのに必要なベッドと機材、備品を置くことができるスペースがあれば、自宅サロンとしての開業は可能です。
例えばネイルサロンであれば、机を挟んでお客様と向かい合えるスペースがあれば問題ないでしょう。
自宅で言えば6畳のスペースで間に合いますし、中には4畳や4畳半といった小さなスペースから始める人もいます。
ただし最低限のスペースで回していくためには、一度に受けるお客さんは1人のみ、お客様を待たせないスケジュールにする、といった工夫が必要です。
まつエク、ヘアサロン・ヘアセットサロンの場合
まつエクサロンや、ヘアサロン・ヘアセットサロンの場合には、開業の際に美容所としての許可を取る必要があることは前述の通りです。この届出の際に、満たすべき基準が設けられており、その中に作業スペースについても決まりがあります。
ただ、この基準は保健所によって異なるので注意が必要です。必ず、自分が開業する地域(自宅サロンなら自宅のある地域)の基準を確認してください。
例えば東京都港区の場合、「1作業室の床面積は13㎡以上」で、13㎡の場合は「作業椅子6台まで」という決まりがあります。
滋賀県では、「床面積は9.9㎡以上」であり、9.9㎡に設置できる椅子の数は2脚までです。
開業に必要な資格・許可は?
自宅サロンとしての開業でも店舗を設けての開業でも、必要な許可や資格は同じです。開業にどんな資格が必要か、提供するサービス別で見ていきましょう。
ネイルサロン開業に必要な資格
ネイルサロンを開業するにあたり、必須の資格はありません。
美容室など「美容所」を開設する場合は保健所への事前申請が必要ですが、ネイルサロンには(現在のところ)その必要もありません。
ただし前述のように、知識や高い技術力をアピールするためには、資格を持っていることが有効に働くことも多いです。
民間団体の発行する資格として最もポピュラーなのが「公益法人日本ネイリスト協会(JNA)」が主催する「ネイリスト技能検定試験」「ジェルネイル検定」です。
まつ毛エクステサロン開業に必要な資格
まつ毛エクステサロンを開業するためには、国家資格である「美容師免許」が必須です。かつては不要でしたが、施術後のトラブルが多く発生したことから美容師免許の保持者のみが施術可能というルールが定められました。
さらに自宅サロンとして開業する場合には、保健所に自宅を美容所として登録する必要があります。
保健所の環境衛生監視員による検査もあり、問題がなければ「美容所確認済証」が交付されます。
健康被害を防ぐための美容師免許ですが、その国家資格には2022年2月現在、まつ毛エクステに関する内容は入っていません。
そのため、技術を確かなものにするにはまつ毛エクステ独自の資格を取っておくのがおすすめです。例えば「JEA日本アイリスト協会」「JECA日本まつ毛エクステンション認定機構」「NEA日本まつ毛エクステ協会」「JEBA日本まつ毛美容協会」などの各団体による技能検定があります。
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エステサロン開業に必要な資格
エステティシャンになるのに必須な資格はありません。しかしメニューに整体や針灸、指圧を取り入れる場合には、それぞれの国家資格が必要です。
無資格でこうした施術を行うのは違法なので避けてください。
アロマテラピーやリフレクソロジー、ハンドマッサージなどについては、特に資格は必要ありません。
こちらも、エステティシャンとしての民間資格がいくつかあります。有名なのは「一般社団法人日本エステティック協会」の認定エステティシャン、認定トータルエステティックアドバイザーや「一般社団法人日本エステティック業協会(AEA)」のAEA認定エステティシャンです。
リラクゼーションサロン(マッサージ)開業に必要な資格
治療目的でないリラクゼーションやマッサージのサロンにも国家資格はありません。
「セラピスト」という呼び名もありますが、資格の有無にかかわらず施術を行う人の総称として使われています。
ただし厚生労働省による通達で、「マッサージは柔道整復師・あんま鍼灸師などの国家資格保持者でないと行えない」と規定されています。それらの資格がない場合には、「ボディケア」「もみほぐし」といったメニューにし、リラクゼーションを軸としたもので「治療行為ではない」ことを明示する必要があります。
リラクゼーション系の民間資格には、「ボディケア系」「リンパ系」「アロマ系」などさまざまな種類や団体ごとの違いがあります。
ヘアサロン・ヘアセットサロン開業に必要な資格
繰り返しになりますが、ヘアサロン(美容室)やヘアセットのサロン開業には、美容師免許が必須です。
また、美容所の開設にあたり保健所への届出が必要となります。
自宅サロン成功の2大ポイント
立地を選べない自宅サロンの開業。コストを抑えた開業は可能でも、成功するとは限りません。
自宅サロンは、場所が不便だったり、スペースが狭かったりしがちです。
せっかく開業するなら、次の2点は確実に押さえて マイナスポイントを帳消しに、あるいはプラスに変えて成功させましょう。
自分のサロンならではの強みをつくる
他の人にない自分の良さを強みとして、サービスに生かすことが成功につながります。他店にない強み、自分ならではの何かを探してみてください。
レストランの場合、料理がおいしければ僻地でも人が集まります。サロンなら、施術のスキルを磨くことは当然のこと、接客にも丁寧さや細かな心配りは欠かせません。ドリンクやスイーツなどのサービスも喜ばれる施策の1つです。
また、環境面ではサロンの清潔感を保つことも必須です。住宅地の真ん中や交通量が多い場所にある場合、窓の外に木を植えて景色をよくするのも1つの方法です。
美容の知識が豊富なら、悩みを聞いて解決することで頼りにされ、信頼関係をつくることもできるのではないでしょうか。
美容関係には流行もあるので、新たな施術メニューを取り入れるなどの進化も必要でしょう。
積極的な集客活動でリピーターをつくる
立地が選べない自宅での開業では、より積極的に集客活動を行いましょう。状況に応じて集客方法も変える、複数の集客方法を併用するのがポイントです。
まずは前述のように、知ってもらうことを目標にチラシのポスティングや広告出稿などを行うこと。SNSでの集客ももはや必須と言ってよいでしょう。
来てもらったお客さんに対し、「お友達紹介キャンペーン」として割引メニューを用意する、特典付きのスタンプカードを作る、DMで呼びかけるなどして、1度の来店で終わらせない工夫をするのも効果的です。
集客に力を入れることは不可欠ですが、広告には多額の費用がかかるものもあるので使いすぎには要注意です。
10%~20%の利益率は確保できるようにしましょう。
自宅サロン開業に失敗しないための注意点
自宅サロンの開業には、失敗しないために知っておくべき注意点もあります。
賃貸なら必ず契約内容の確認を
上の方でも少し触れましたが、賃貸のマンションやアパートなどで自宅サロンを開業したい場合には、必ず大家さんか不動産管理会社に確認してください。
賃貸物件は、「居住用」か「事業用」のどちらかで賃貸借契約を結んでいます。事業用でない物件でエステサロンやネイルサロンを開業することは禁止されています。
自分が所有する分譲マンションで自宅サロンを開業する場合にも、確認は必要です。
マンションの管理組合の管理規約で、営利目的の事業を行うことを制限しているケースもあるからです。
開業後に判明すると、さまざまな問題が起こります。トラブルを避けるためにも事前の確認は怠らないでください。
1人起業は健康面などの自己管理が必須
スタッフが複数人にいる場合には、1人が体調不良などで仕事を休んだとしても他のスタッフが助けてくれるなどして、大変ではあっても営業はできるでしょう。
しかし、サロンを1人で運営するとなると、自分が倒れたときに代わってくれる人はいません。
まずは自己管理をしっかりと行い、お客様に迷惑をかけないようにしなくてはなりません。また、もし体調不良などで営業ができない場合には、予約客への連絡なども確実にする必要があります。
体調不良など営業できない期間が長引けば、当然のことながら収入も激減します。会社員と違い休業補償もありませんので、保険に入っておくなどの対応も考えておくべきでしょう。
クレームへの対応も考えておく
サロン経営は美容や健康にかかわる仕事です。そのため施術後に肌のトラブルが起きた、状態が悪化した、といったクレームが発生することもあります。
また、熱を持つような機器を使う場合、火傷などのトラブルが起きないとも限りません。
そういった不測の事態が起き得ることを把握し、何が起き得るか、その際はどう対処するか、といったことも考えておくのをおすすめします。
万が一のために、損害賠償保険などに入っておくのも1つの手でしょう。
家族の了承を得ておく
自宅サロンを開業するということは、当然ですがお客様(=他人)を自宅に招くことになります。
そのため、家族の了承を得ておくことは欠かせません。
サロンへの出入り口を共有すると、家族とお客様が鉢合わせすることもあり得ます。家族が落ち着かない気持ちになるかもしれませんし、玄関に生活感あふれるものが散乱していれば、お客様は非日常感を味わうこともできなくなります。
双方に不満を持たれないよう、家族には必ず了承を得たうえで、協力を仰ぎましょう。
自宅サロン開業にもBricks&UKはお役に立ちます
ここまで、自宅サロンでの開業について考えてきました。
サロンでの施術自体には経験があっても、開業など届出などはわからないことだらけですよね。サロンを経営するということは、集客や会計も自分でしなくてはなりません。そこで役立つのが、専門家である税理士のサポートです。
「税理士法人Bricks&UK」は、そうした事業経営のサポートを行っています。
自宅サロンの開業で気になる税務会計のほか、人事労務・法務・広告宣伝についても、グループトータルでサポートすることが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
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