一般に美容院を開業する人は、もともと美容院に勤務していた美容師です。
そのため美容院を開業して、美容室経営していくための経営ノウハウはみんなが持っていると言えそうですが、実際はみんなが融資を受けられるというわけではありません。
美容院を開業するためには資金が必要なため、融資を受けられないとなると開業を先送りにせざるを得ないか、もしくはあまり好ましくない条件で融資を受けなければならないかもしれません。
このような状況にはならない方が良いので、融資を受ける場合はしっかりとアピールし、事業に成功すると思ってもらう必要があるのです。
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目次
美容室開業の流れ
美容室を開業するにはどのような準備が必要で、どのような流れで行うべきなのか既にご存じでしょうか?
しっかりと開業までの流れを知るために、まずは開業する際の流れをご紹介していきます。
STEP.1 コンセプト設計
まずは開業する店舗の「コンセプト設計」を策定します。
ここで言う「コンセプト」とは「おしゃれな感じ」や「モダンで高級感」といった類の抽象的なイメージではなく、「どのターゲット層に、どのようなサービスメニューを提供して、どうやって他店との差別化を図るか、どのように集客するか」というように具体的な経営方針のことを指します。
STEP.2 資金計画・事業計画の作成
開業には資金が必要です。
およそ開業に必要な額の1/3程度を目安に、自己資金を確保できるようにしましょう。
残りは金融機関などからの融資に頼ることになりますが、融資申し込みには綿密な事業計画を作成しなければいけません。
金融機関は融資審査の際、事業計画を元に将来性を計ります、開業後にどれくらい売上が見込めてどのような返済計画なのか、客観性のある具体的な数字で示せるようにしましょう。
STEP.3 出店候補を選定・商圏分析
物件を決める際に重要なのが「立地」です。
コンセプト設計に合わせて、地域の特性を把握した上で慎重に検討する必要があります。
商圏分析とは、国勢調査など国の統計指標や顧客データなどを活用して、自社店舗や出店候補地周辺の市場ボリュームや地域特性を把握するためにグラフなどで可視化する分析です。
商圏分析は、ターゲット層の動向や外部環境の変化から売上計画を実現する施策づくりにも役立てることができます。
また、テナントを仮契約し、融資申請や店舗のデザインなどを進めていくのもこの段階です。
STEP.4 融資申し込み
先に準備した資金計画・事業計画を元に、金融機関への融資申し込みを行います。
また、融資の申し込みする際には、開業場所が決まっていないと申し込みができません。
内装工事や設備費用にいくらかかるか具体的な金額が必要なので、「仮押さえ」でもいいので、事前にその辺を決めておく必要があります。
開業資金の主な借入先としては、・日本政策金融公庫の新創業融資制度・信用保証協会の制度融資:以上の2つが、これから創業する事業者を支援する融資制度の代表と言えます。
STEP.5 設計施工会社の選定・工事
融資審査に通過したら、内外装工事に取りかかりましょう。
工事の際には、コンセプトと一致する店舗になるよう業者と入念な打ち合わせをすることが大切です。
完成してから理想のイメージと違った店舗になってしまうリスクを避けるためにも、デザインやレイアウトなど細かく要望を伝えて相談するようにしましょう。
後々、保健所や消防署の立入検査がありますので、基準についても事前に確認しておき、業者に確認しながら施工を進めましょう。
内装工事の費用を節約するために「居抜き物件」を選択するのもひとつの手です。
合わせて機材や、シャンプー・カラー剤・パーマ剤といった薬剤、備品なども手配していきます。
STEP.6 各種開業手続き
美容室を開業するには、次のような各種届出をしなければいけません。
組織形態が個人事業主か法人かで多少異なります。
税務関連
【個人事業主の場合】
税務署 |
開業届出書 青色申告承認申請書(青色申告をする場合) 給与支払事務所等の開設届出書 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特定適用者に係る納期限の特例に関する届出書(従業員を雇う場合) 棚卸資産の評価方法の届出書 減価償却資産の評価方法の届出書 消費税課税事業者選択届出書 |
都道府県税事務所(市町村役場) |
開業開始等申告書 |
【法人の場合】
税務署 |
法人設立届出書 青色申告承認申請書(青色申告する場合) 給与支払事務所等の解説届出書 源泉所得税の納付の特例の証人に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書(従業員を雇う場合) 棚卸資産の評価方法の届出書 減価償却資産の評価方法の届出書 消費税課税事業者選択届出書 |
労務関連
年金事務所(雇用保険関連書類) |
新規適用届出 被保険者資格取得届 被保険者移動届 (法人の場合)履歴事項全部証明書又は登記簿謄本 (個人の場合)事業主の世帯全員の住民票 |
労働基準監督署(労働保険関連書類) |
保険関係成立届 |
保健所関連
一般的には、開設届の提出→立入検査→確認書発行のフローを経て申請・許可が完了します。
消防関連
内装や外装工事を行う際、必要となる防災設備について、基準を満たしているかどうかのチェックがなされます。
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STEP.7 広告宣伝・集客
折角、念願の店舗をオープンしても、お客様が来てくれなければ始まりません。
よく「美容室はコンビニより多い」などと言いますが、実際に全国のコンビニが約5万店に対して、美容室は約25万店となっており、日常的に利用する機会が多く、街中でもよく目にするコンビニの実に5倍も存在するのです。
その分、入れ替わりも激しく厚生労働省の統計によれば、毎年7,000~8,000店の美容室が廃業しているのが現実です。
それほど競合が多い美容業界において、新規客やリピーター客を確保するためにオープン前からしっかり準備しておくことが必須です。
- ポータルサイト(ホットペッパービューティーなど)への掲載
- 自社ホームページ、ブログの開設
- ウェブ広告
- Googleマイビジネスへの登録
- SNS(Instagramu、Twitter、Favvebook、LINE@)の活用
- 折込チラシ、ポスティング
など、数多くある手法の中から出店エリアや出店するお店のタイプに応じて、集客効率の良い集客方法を選択しましょう。
とは言え、開業当初は出来るだけ出費は抑えたいものです。
広告宣伝費に余裕がないようなら、まずは無料で使えるGoogleマイビジネスやSNSの活用から始めるのがおすすめです。
美容師としてセールスポイントになる経歴
それではさっそく、美容師としてセールスポイントになる経歴をご紹介します。
美容師として働いた経歴
これは当たり前ですが、美容師として働いた経歴はセールスポイントになります。
とはいえ美容院を開業する人のほとんどは美容師として働いた経歴を持っているので、これだけだとセールスポイントというよりは前提条件でしょう。
では、これをどうすればセールスポイントに持っていけるかですが、経営に携わった経験、教育に携わった経験などを積極的に盛り込んでいくと良いです。
なぜなら、美容院を開業すれば当然経営者になるからです。
経営者になれば美容師としてお客さんと接するだけでなく、経営業務や教育業務を行う必要が出てきます。
美容師の場合は開業後も美容師として店頭に立つケースが多いですが、経営者としての立場に特化していく人もいます。
美容師として腕があるだけでは経営者として十分とは言えないため、経営や教育の部分でアピールしていくことは非常に重要なのです。
また美容師としての腕ばかりをアピールしても、専門的な技術や経験の話になると、融資担当者には判断が難しいという側面もあります。
美容師としての客観的な実績
自身に美容師としての技術力があるだけでは、経営者としては不十分と前述しました。
しかし、逆に言えば美容師としての腕がなければお客さんは離れていきます。
そこで、美容師としての腕もアピールする必要があるのですが、たとえばカットの技などを具体的に説明しても融資担当者には伝わりません。
もちろんある程度は、アピールポイントとしてカットのことに触れる必要があるのですが、それよりも固定客の数、売上、受賞歴、などの客観的な指標の方が美容師以外の人にも伝わりやすいです。
明確な指標がない場合は、お客さんに満足の言葉をいただいているなどでもアピールにはなるでしょう。
お客さんが満足しているのであれば、開業後もお客さんが入る可能性が高いからです。
エリアでの強さ
美容師は他の職種に比べて、お客さんが店ではなく特定の美容師に固定でついてほしいと考えるケースが多いです。
有名なサッカー選手が、わざわざ海外まで美容師を呼ぶというエピソードもあるかと思いますが、さすがにここまでいくとやりすぎな面もあり、また一般人にはまねできません。
普通の人であれば、ある程度近所の美容院でお気に入りの美容師を見つけるケースが多いでしょう。
つまり固定客の多い美容師が独立開業した場合、もともとの固定客がその美容師を求めて店に足を運んでくれるケースが多いということです。
だからこそ融資担当者は、独立開業する美容師がそのエリアでどのくらいの固定客を持っているのかということを気にします。
これを踏まえたうえで、固定客の数をアピールしていくことが重要です。
ただし、独立後に別のエリアで開業する美容師もいるでしょう。
この場合、なぜわざわざ別のエリアで開業するのか、固定客がいなくなるけれど大丈夫か、そもそもあまり固定客がいなかったのか、といった疑問を持たれることになります。
そのため、理由があるのならあらかじめ回答を用意しておいた方が良いです。
アピールポイントになるものなら創業計画書に書くと良いですし、そうでないなら頭の中では回答を用意しておくということです。
特別な経験、スキルがあるならアピールする
美容師によっては店舗での勤務だけでなくカットの講師として活動したことがある、YouTubeに出演したことがある、といった経験を持っている人もいるでしょう。
このような経験があるのなら、積極的にアピールしていくべきです。
これは他の美容師にはない経験なので、効果的なアピールポイントになります。
確かにそれをもって成功につながるとは断言はできませんが、一つのアピールポイントにはなります。
実際はそうでなくても、融資担当者は美容師としての能力があるからこそ別の経験があるのかもしれない、と思うからです。
また特殊なカットなどの経験がある場合は、これもアピールポイントになります。
例えば、海外で流行っている髪型を作るのが得意などです。
開業後にこのような特殊な技術を使う予定がなくても、アピールする価値はあります。
他の美容師と差別化を図るという点では有効だからです。
また特殊な経験やスキルを聞いた融資担当者がなんらかの提案をしてくる可能性もあるでしょう。
こういったことがあれば融資担当者も美容院の成功に対して積極的になるので、融資も受けやすくなるはずです。
事務の経験もアピールポイントになる
美容師として美容院に勤務しているときに、事務作業を任された経験を持つ人も多いかもしれません。
たとえば売上の管理、在庫管理、仕入れ、などです。
これらの経験は雑用のように思えるかもしれませんが、開業にあたってはかなり重要なスキルです。
というのも、経理や事務の作業がずさんなせいで意図しない形で脱税してしまったり、売上が伸びているにも関わらず黒字倒産してしまうようなケースも少なくはないからです。
美容院の場合は、売上の発生と回収でタイムラグが生じるケースはあまりないので黒字倒産もあまりないのですが、資金繰りを考えずに勢いで設備投資してしまうようなケースは考えられます。
また事務、経理業務にストレスを感じ、最悪の場合精神に不調をきたしてしまう、などというケースもあります。
事務や経理業務に不慣れだとここから事業が狂うこともあるので、美容院に勤めていた頃にこれらを経験しているのであれば大きな強みです。
特に美容師の仕事は事務や経理とは離れているため、極端に言えばパソコンの操作が苦手というケースもあります。
融資担当者は当然これを懸念しているので、取るに足らないことと思わずにアピールする価値があるということです。
まとめ
美容師としての経験はもちろん、経営、教育、事務、経理などの経験もアピールポイントになります。
経営者は美容師としての業務に特化できるわけではなく、幅広い業務を行わなければなりません。
開業後に経理や事務を専門家に依頼するケースは多いですが、それでも最低限経理や確定申告については把握しておく必要があるでしょう。
それほど難しいことではないのですが、人によっては拒絶反応を示し、ここから事業が崩れてしまうこともあります。
そのため、美容師としてのスキルと合わせて幅広い業務経験をアピールすることは融資の成功のために有効な手段です。
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