震災からの復興支援や、アニメ映画や絵本の制作、登山家の冒険費用などを集めるのに使われ話題となったクラウドファンディング。今やSONYなど大手企業からベンチャー企業まで幅広く活用されていますが、個人での資金調達にもクラウドファンディングは使えます。
クラウドファンディングは、個人や団体が自分の夢や目標を実現させるために必要な資金を集めるための手段のひとつです。
プロジェクトを立ち上げて何がしたいかを世に伝え、不特定多数の人から支援金を集めます。
ただ、 クラウドファンディングを主催するプラットフォームはネット上にいくつもあり、 寄附や投資といった参加の仕方や、リターン(見返り)によって複数のタイプが存在します。
この記事では、個人の資金調達に向いているクラウドファンディングの種類とその代表的なプラットフォーム、使い方やコツについて説明します。
クラウドファンディングの分類と特徴
一口に「クラウドファンディング」といっても、その特徴からいくつかの種類に分かれています。
それぞれに適した目的があるので、選んで利用する必要があるのです。
クラウドファンディングの4つの種類と特徴
まずは主なタイプとその特徴を見てみましょう。
ここでは4つの分類で紹介しますが、これ以外の分類がなされていることもあります。
大まかな違いとして見てください。
種類 | 特徴 |
寄付型クラウドファンディング | ・被災地支援や動物保護など、公益事業を行う団体の利用向け ・支援者へのリターン(対価やサービスの提供)なし |
株式投資型クラウドファンディング | ・非上場の法人の利用向け ・支援者は非上場の会社の株式を取得 |
融資型(貸付型)クラウドファンディング | ・投資家から集めた出資金による融資 ・支援者には返済時の利息から分配金が支給 |
購入型クラウドファンディング | ・個人から企業まで利用可能 ・調達した資金で商品やサービスを開発し、支援者に提供・販売 |
東日本大震災の復興支援で有名となったのが、購入型のクラウドファンディングです。
営利団体や個人では利用できないプラットフォームもあります。
株式投資型や融資型のクラウドファンディングは、個人投資家による資産運用の手段の1つとして知られています。
融資型クラウドファンディングは貸付型とも呼ばれ、「ソーシャルレンディング」とほぼ同義です。
ソーシャルレンディングとは?
ソーシャルレンディングとは融資型のクラウドファンディングであり、「お金を借りたい企業や人」と「融資して利息を得たい投資家」をネット上で結びつけるマッチングサービスです。
個人の資金調達に向くのは「購入型」
上記の分類の中で、個人が資金調達をするのに最も適しているのは購入型のクラウドファンディングでしょう。
購入型のクラウドファンディングは、商品やサービスを提供する対価として支援金を募る仕組みです。
といっても流れとしてはまず「こういう製品を開発したい」といった思いをプロジェクトとして立ち上げ、それを実現させるための費用を募ります。
プロジェクトに共感するなどして応援してくれる人たちから、いわゆる「前払い」の形で資金を集めるのです。
「購入型」は募集方式も2パターンある
購入型クラウドファンディングのプロジェクトには、募集方式にも大きく分けて次の2種類があります。
- All-or-Nothing方式
- All-in方式
これは、支援が目標金額に達しなかった場合について決めておくものです。
募集時には募集の期限を決めると同時に、All or Nothing方式とAll in方式のいずれかを選択します。
All-or-Nothing方式
All-or-Nothing(オール・オア・ナッシング)方式では、支援金の総額が目標金額をクリアした場合のみ、プロジェクトが成立したものとして資金調達ができます。
期限までに目標金額に達しなかった場合には、プロジェクトはキャンセルとなり、支援金は全額返還、もちろんリターンも発生しません。
多額の資金が必須で、その額を用意できなければ実現不可能、という場合にはこのAll-or-Nothing方式が向いています。
ただし集まらなかった場合には、金銭的だけでなく時間的なロスも生まれてしまいます。
All-in方式
All-in(オール・イン)方式では、目標額に達しなかった場合でも期限までに集まった支援金を資金として得ることができます。
そして、「プロジェクトは必ず実行しなくてはならない」という義務が発生します。もちろん、支援者へのリターンも必要です。
そのため目標額に足りない分については自己負担しなければいけません。
支援が集まらなくても必ずプロジェクトを行う、と決めている場合にはこのAll-in方式を選ぶとよいでしょう。
主なクラウドファンディングサイト5つとその特徴
クラウドファンディングを手掛けるプラットフォームはネット上にいくつもあります。
これから増えていく可能性もありますが、ここでは主なサイトとして次の5つを紹介します。
- CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
- Makuake(マクアケ)
- READYFOR(レディフォー)
- Kibidango(きびだんご)
- COUNTDOWN(カウントダウン)
それぞれの特徴や利用にかかる手数料などについて見ていきましょう。
CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
国内最大手のプロジェクト掲載数を誇る「CAMPFIRE」は、支援者数、支援額ともに業界トップクラスのクラウドファンディングサイトです。
2011年6月にサービスを開始、すでに累計支援額は500億円近くになっています。
業界大手なだけあって取り扱うプロジェクトも幅広く、ファンクラブ型のプロジェクトなど特徴的なクラウドファンディングにも対応しています。
項目 | 概要 |
主な特徴 | ・プロジェクト掲載数が最大手水準 ・ジャンル別のクラウドファンディングあり |
累計支援額 | 490億円 ※2021年9月時点 |
運営会社 | 株式会社 CAMPFIRE |
向いているプロジェクト | ジャンル問わず |
起案者手数料 | 17% |
CAMPFIREにはジャンル別にもいくつかのサイトがあります。
例えば 「GoodMorning」は社会問題を解決するためのプロジェクト向け、「3rd Table」は飲食店専門のクラウドファンディングです。
Makuake(マクアケ)
CAMPFIREに並んで知名度が高いのが「Makuake」です。
IT業界大手のサイバーエージェントによるクラウドファンディングサービスで、クリエイティブ系やガジェット(小型のデジタル機器など)系、飲食店関連にも強いのが特徴です。
プロジェクト数・支援者数ともに業界トップクラスで、個人が資金調達をするのにも役立ちます。
項目 | 概要 |
主な特徴 | ・購入型クラウドファンディングのみ ・モノづくり・クリエイティブ系に強い |
累計支援額 | 非公開 |
運営会社 | 株式会社マクアケ |
向いているプロジェクト | ガジェット系 |
起案者手数料 | 20% |
Makuakeでは、プロジェクト実施中あるいは終了後の商品を目で見て購入できる「Makuake SHOP」も全国のデパートなどに出店しています。
READYFOR(レディフォー)
「READYFOR」は、2011年3月に誕生した日本初のクラウドファンディングのプラットフォームで、累計支援額も200億円を超えています。
社会貢献型のプロジェクトに強く、寄付型のプロジェクトが多く進行しているのが特徴です。
株式投資型などの金融系クラウドファンディングは取り扱っていません。
項目 | 概要 |
特徴 | ・日本初のクラウドファンディング ・社会福祉や国際協力系のプロジェクトに強い |
累計支援額 | 200億円 ※2021年4月時点 |
運営会社 | READYFOR株式会社 |
向いているプロジェクト | 社会貢献に直結するもの |
起案者手数料 | 12%または17% |
READYFORには、サポートの手厚さによって2種類の手数料体系があります。
メールサポートのみの「シンプルプラン」は手数料が12%、専任担当者のキュレーターからサポートを受けられる「フルサポートプラン」の手数料は17%です。
Kibidango(きびだんご)
「Kibidango」は、クラウドファンディングとネット通販を組み合わせたプラットフォームを展開しています。規模としては中堅クラスながら、手数料が10%と業界最安値レベルです。
プロジェクト成功率も80%と高水準を保っており、世界最大規模の購入型クラウドファンディングサイト「Kickstarter」の公認アドバイザーにも認定されています。
項目 | 概要 |
特徴 | ・クラウドファンディング+ECサイト ・手数料が業界最安レベル |
累計支援額 | 非公開 |
運営会社 | きびだんご株式会社 |
向いているプロジェクト | 社会貢献系 |
起案者手数料 | 10% |
Kibidangoで利用できるのは、購入型クラウドファンディングのみ、All-or-nothing方式のみです。
COUNTDOWN(カウントダウン)
海外へも発信するグローバルなクラウドファンディングサービスを行っているのが「COUNTDOWN」です。
手数料は20%とやや高めですが、グローバルに通じる事業を展開しようとしている場合には、海外からも支援が期待できるのは大きなポイントでしょう。
項目 | 概要 |
特徴 | ・海外にもプロジェクトを発信可能 ・東京・大阪のオフィスでサポートあり |
累計支援額 | 非公開 |
運営会社 | アレックス株式会社 |
向いているプロジェクト | ジャンル問わず |
起案者手数料 | 20% |
COUNTDOWNも、購入型クラウドファンディングのみ、All-or-nothing方式のみの取り扱いです。
ここでは代表的なサービスのみを紹介しましたが、地方自治体が行うクラウドファンディングなども存在しています。
民間のサービスより好条件の可能性も高いので、住んでいる自治体の公式サイトなどで情報を得るとよいでしょう。
クラウドファンディングの利用方法
クラウドファンディングを利用したいと思ったら、どうすればいいのでしょうか。
利用の大まかな流れは次のようになっており、どのクラウドファンディングサービスでも同じです。
STEP.1 目標やゴールを決める
STEP.2 利用するクラウドファンディングサービスを選ぶ
STEP.3 プロジェクトを登録し、審査を受ける
STEP.4 プロジェクトを公開し、支援金の募集を開始
STEP.5 募集終了、支援者に感謝を伝える
STEP.6 プロジェクトのスタート
STEP.7 プロジェクト実施後、リターンの送付
「CAMPFIRE」によると、登録から募集の開始までには2週間から4週間程度の期間が必要です。
では購入型クラウドファンディングの立ち上げを例に、スタートからゴールまでのプロセスを見ていきましょう。
目標・ゴールの設定をする
どんなプロジェクトを立ち上げるにも、まず行うべきは事業の目標やゴールの設定です。
次のようなことを事前に考える必要があります。
- クラウドファンディングで調達した資金を、どのように使うのか
- 支援してくれた人に、どんな価値、見返りを提供できるのか(自身のプロジェクトを選ぶメリットは何か)
- 目標金額はいくらで、期限はいつまでにするのか
もっとも重要なのはやはり、プロジェクトの中身です。
どのようなプロジェクトが多額の資金を調達できているのか、各サイトの事例を見てみると参考になるかもしれません。
利用するクラウドファンディングを選ぶ
事業内容や希望金額を決めたら、どのサービスを利用するか選びます。
大手の信頼度や注目度から選ぶなら「CAMPFIRE」や「Makuake」、手数料をできるだけ少なくしたいなら「Kibidango」、海外に発信するようなプロジェクトであれば「COWNDOWN」など、自分に合ったものを選びましょう。
プロジェクトを登録し、審査を受ける
どのクラウドファンディングサイトにするかを決めたら、事業内容などをプロジェクトに落とし込みます。
必要なのは次のような情報です。
- プロジェクトのタイトル
- キャッチコピー
- 事業の理念やビジョン
- 目標とする金額
- サムネイルに入れる画像
- 支援者へのお礼・特典
- 連絡先
もっとも力を入れて考えるべきなのは事業の理念やビジョンです。
この内容で、支援してもらえるかどうかが決まります。
また、プロジェクトのタイトルにも気を配るべきでしょう。
タイトルを見て気になり、クリック(タップ)して中身を見てもらわなければ支援にはつながりません。
同様にリターンが何かも注目される部分です。
どんなものかがよくわかるような説明にすることで選ばれやすくなります。
クラウドファンディングのサイトにプロジェクト登録をすると、運営側の審査が入ります。
プロジェクトの遂行能力や社会的に問題がないかなど、あらゆる点でチェックされます。
サイトによっては改善策やアドバイスをもらえるところもあるようです。
プロジェクトを公開し、支援金を募る
運営側の審査に通れば、プロジェクトが公表され、資金集めがスタートします。
募集期間は2~3カ月が目安です。
サイトによっては相談して決めることができます。
クラウドファンディングは、プロジェクトがいかに多くの人の目に止まるかが勝負です。
SNSで知る人も多いので、積極的に情報を拡散していきましょう。
募集終了、支援者に感謝を伝える
プロジェクトの公開・支援金の募集期間が終了したら、まずは支援してくれた人にお礼を伝えましょう。
支援してくれたことに感謝するのは当然ですが、感謝の意を伝えることによって、自分がプロジェクトを進めていく上での責任感も高まります。
プロジェクトスタート
集まった資金をもとに、プロジェクトを実行に移します。
支援してくれた人に向けて、活動内容の報告も随時していく必要があります。
プロジェクトが確実に遂行されていること、資金が有効に使われていることがわかる内容で、進捗状況などを伝えましょう。
途中、何らかの事情でプロジェクトの進行が遅れそうな場合には、その旨も伝えておかなくてはなりません。
プロジェクト実施後、リターンの送付
リターンの送付は、支援者の数が多いほど大変になるので注意が必要です。
プロジェクト終了後すみやかに行う必要もありますし、ただ物を送るだけでは不十分です。
活動内容を含めたプロジェクト成功の報告や感謝の気持ちを書いたレターを添えるため、あらかじめひな形を用意しておくとスムーズです。
ここで支援者をがっかりさせてしまうと、SNSによくない情報として拡散されてしまうおそれもあります。
その後の事業経営にも影響をもたらすため気を付けましょう。
もちろん、送付先は支援者の個人情報ですので、管理に注意を払う必要もあります。
目的額の達成に欠かせない4つのコツ
では、具体的にどのようにプロジェクトを作成し、どのように拡散すればクラウドファンディングを成功させられるのでしょうか。
目標額を達成するために欠かせない4つのコツを紹介します。
- 支援者が多く集まっているサービスを選ぶ
- 「支援したくなる」プロジェクトを作る
- 「支援したくなる」プロジェクト説明をする
- SNSを最大限に利用する
これだけではどうすればいいのかわかりませんよね。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
1.支援者が多く集まっているサービスを選ぶ
有名であればいい、というわけではないのですが、やはりできるだけ支援者が多く集まっているサイトを選ぶとよいでしょう。
どんなに良いプロジェクトでも、支援者の目に触れなければ興味を持ってもらうことができません。
そのサイトを訪れる人が多いほど、偶然見つけてもらえる可能性も高まります。また、サイトによって得意分野もあるので、どんなプロジェクトに多くの支援が集まっているのかも確認して選んでください。
2.「支援したくなる」プロジェクトを作る
クラウドファンディングで資金調達をするには、「共感」や「応援してあげたいという気持ち」を引き出すことが最重要の課題です。
ただ「作りたい」でなく、「なぜ、何のために必要なのか」が大きなポイントです。
「誰のために」という点も重視されやすいので、考える際のヒントとしてください。
3.「支援したくなる」プロジェクト説明をする
支援を募る際のプロジェクト内容は、具体的かつシンプルに説明しましょう。
タイトルは一目で内容がわかるようにし、インパクトを持たせましょう。
プロジェクト内容は具体的であるほどイメージしやすくなりますし、熱意も伝わります。
しかし長文では読む気にならないので、簡潔にすることもポイントです。
伝えたいことの要点を押さえて文章に表しましょう。
4.SNSを最大限に活用する
人はどのようにクラウドファンディングを知るのか。
その方法には主にSNSが挙げられます。
SNSなら、「クラウドファンディングをしよう」と思っている人だけでなく、「何か面白そうな情報がある」「自分も参加してみよう」とあらゆる人の目に止まる可能性があるからです。
また、自分のアカウントでさまざまな情報を発信することで、自身を応援してくれる人がプロジェクトも応援してくれる可能性があります。
プロジェクトだけでなく、人となりや思いなどのわかる投稿をしておくとよいでしょう。
特に日本人には、沈没船ジョーク※にもあるように「他の人に倣う」という性質もあります。
プロジェクトに興味を持っても、支援者がゼロの状態では「とりあえず様子を見よう」と見送られてしまう可能性もあるので、1人でも多くの人に見てもらい支援者を集めることが重要です。
※沈没船ジョーク…
世界各国の人を乗せた大型客船が沈没しそうになり、船長が救命ボートに女性や子供を優先して乗せるために行った説得の言葉に国民性が表れているというもの。
アメリカ人には「ヒーローになりたいなら」、イギリス人には「ジェントルマンなら」、日本人には「みんなそうしているから」と説得するのが効くという。
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まとめ
クラウドファンディングは、企業や団体だけでなく個人でも資金調達の手段として利用することができます。
幾つかの種類がありますが、個人が使える・使いやすいのは購入型のクラウドファンディング。商品やサービスの開発のために資金を募り、その商品やサービスなどをリターンとして提供します。
個人がクラウドファンディングでの資金調達を成功させるには、いかに共感や応援したいという気持ちを支援者から引き出すかということ。
魅力的なプロジェクトを作成し、SNSなどを使って幅広く情報を発信するとよいでしょう。
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