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なぜ黒字倒産と、赤字経営の会社があるの?
黒字なのに倒産する、赤字なのに経営が続いている、といったことは多々あります。
一見すると不思議な状態ですが、実際は不思議なことではありません。
黒字倒産にも、赤字経営にも明確な理由があります。
ではなぜ黒字倒産や赤字なのに経営が成り立つ会社があるのでしょう?具体的な事例を挙げ解説していきます。
黒字なのに倒産してしまう理由
一番多くの方が不思議に思うのは、黒字なのに倒産する理由ではないでしょうか。
なぜ利益が出ているのに倒産してしまうのか?これには明確に理由があります。
現金の入金が遅れる
日本の企業が黒字倒産する理由としては、現金の入金が遅れるというものが非常に多いです。
まず、基本的に売上が発生してすぐに現金が入金されるわけではありません。
だいたい代金の支払いが1カ月程度先であったり、売掛金の状態で3カ月程度そのままになっているケースも多々あります。
この間、売上がどんどん発生していれば、仕入もそれに伴ってどんどん発生していくことになります。
つまり帳簿上は儲かっているのですが、売上の回収が追い付かず、実際のお金の動きとしては支出ばかりが増えている状態です。
売れているのに仕入の代金が膨らんだ結果、そのまま倒産してしまうということです。
また、予定していたタイミングで入金されないということもあります。
たとえば入金日が守られない、売掛金の支払い日を支払いがないまま過ぎている、などです。
先方の事情もあるかもしれませんが、契約なので期日が守られていない場合は指摘して回収すべきでしょう。
ただし、残念ながら期日を明確に設定していなかったり、設定していてもなかなか強くは言えないことが多いのが現状です。
なぜなら日本の文化として「お客様は神様」といった考え方があり、どうしても買い手側が強くなっているからです。
売り手としては顧客を失うことを恐れるので、多少入金が遅れても我慢することになります。
多少の我慢で済めば問題ないのですが、待てど暮らせど入金がなく、そのまま黒字倒産してしまう、という悲しい結末はありがちなものです。
赤字でも倒産しない理由
逆に、なぜ赤字でも倒産しない企業があるのかを解説します。
ただし黒字倒産とは違って、こちらはわかりやすいでしょう。
単純に、もともと資金力がある、融資を受けている、などです。
要するに赤字を補てんするだけの資金を持っているので、倒産せずに済んでいるということです。
黒字倒産のように裏事情があるわけではありません。
また多くの企業は、創業間もないうちなどは特に赤字です。
赤字というだけで企業が倒産してしまうのであれば、ほとんどすべての企業は創業後しばらくして倒産してしまうことになります。
ある程度赤字が続いても倒産しないだけの資金力が重要なのです。
ただし、赤字が続けば当然、いつかは倒産につながります。
赤字でも体力が残っているうちに、黒字に持っていく必要があることは言うまでもありません。
黒字倒産しないための方法
黒字倒産しないための方法はシンプルです。
現金の動きを把握する
売上が伸びていて、それに伴って仕入が増えているのであればまったく問題ない。
この考えは至って普通でしょう。
しかし、実際はそうではありません。
売上が伸びているときほど盲目になっているかもしれませんが、現金を手元に残しておかないと経営は行き詰まり、やがては倒産に至るのです。
そのため貸借対照表だけでなく、キャッシュフローの考え方も不可欠になります。
現金の回収に力を入れる
上でも説明しましたが、日本の企業は現金の回収にあまり力を入れない傾向にあります。
これは買い手側が有利ということもありますが、売上が出ればそれで良くて、その後のことをあまり考えていない、という事情もあります。
実際他国と比べると、日本では不払いなどのトラブルは少ないと言えます。
これは支払いが遅れはするものの、最終的には多くの場合、回収できているので問題になっていないためです。
しかし、会社の状況によっては支払いが遅れるのは死活問題です。
最悪の場合、黒字倒産してしまうということは上述の通りになります。
黒字倒産の可能性があることを視野に入れ、現金の回収にも力を入れることが重要です。
具体的には、少なくとも現金支払いの期日を決めておき、その期日を遅れた場合きちんと督促することです。
連絡がないと先方も忘れてしまっている可能性があり、忘れていなかったとしても連絡がないからそのまま置いておこう、あわよくば支払わなくて済めばいいな、と考えている取引先もあるかもしれません。
自社から催促しないと動いてくれないケースもあるので、支払い日はきちんと管理しておいて、遅れたらすぐさま連絡すべきでしょう。
連絡がなければ支払いをしない取引先はあるかもしれませんが、連絡しているにも関わらず支払いをしない取引先は稀かと思います。
相手もトラブルになるのは避けたいと考えているためです。
評価指標をチェックする
評価指標としては、決算書が王道です。
決算書をマメにチェックして財政、経営状態を把握し、無理な資金繰りは行わないことが重要になります。
上でも少し触れましたが特にキャッシュフローに着目することが重要で、貸借対照表の数字だけに惑わされてはいけません。
キャッシュフローには、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3種類があります。
まず営業キャッシュフローは一番基本的なキャッシュフローで、本業で得た利益の流れを表しています。
次に、投資キャッシュフローは固定資産、株、債権などで得た利益の流れを表しています。
基本的には投資キャッシュフローもプラスの方が好ましいですが、設備投資などもキャッシュフローに含まれるため、マイナスになっているケースが多いです。
財務キャッシュフローは、銀行や株主からの資金調達を行う際のお金の動きを表します。
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローに関してはプラスの方が好ましいですが、この財務キャッシュフローに関してはマイナスの方が好ましいです。
なぜなら、プラスは融資を多く受けていることを意味し、逆にマイナスは借入金を返済したり、自社株を購入していることを意味しているからです。
つまり財務キャッシュフローがプラスの状態は、借金がある状態ということになります。
そして評価指標としてもっとも重要なのは営業キャッシュフローです。
営業キャッシュフローに注目しておくことで、仕入、売上、売掛金などに対するお金の動きがわかります。
ただしお金の動きは営業キャッシュフローだけではないので、投資キャッシュフローや財務キャッシュフローも踏まえて、お金の流れ全体を把握していくイメージです。
黒字倒産してしまった事例
業界内では有名な企業で、利益も出ていたのに黒字倒産してしまった事例があるので紹介します。
株式会社アーバン・コーポレイションの事例
株式会社アーバン・コーポレイションはかつて黒字倒産を起こしたことで有名です。
株式会社アーバン・コーポレイションは大手企業で、なおかつ黒字倒産した年度も含めて過去数年間黒字を継続していました。
そのため株式会社アーバン・コーポレイションが黒字倒産したとき世間は驚きました。
ではいったいなぜ株式会社アーバン・コーポレイションは黒字倒産してしまったのでしょう。
それは過剰在庫が重なったためです。
貸借対照表上は黒字が続いていたものの、在庫を抱え過ぎたが故にキャッシュフローでは赤字になっていたのです。
またこれとあわせて多額の資金運用も行っていました。
銀行からの融資を前提として無謀とも言える資金運用を行っていたのですが、キャッシュフロー上の赤字が明るみになり、結果的に銀行からの融資を受けられなくなり、負債が膨らみ続けました。
最終的にはそのまま黒字倒産に至ったという経緯です。
在庫を抱え過ぎるリスクという意味では、有名な黒字倒産の事例です。
江守グループホールディングスの事例
江守グループホールディングスも黒字倒産した企業として有名です。
江守グループホールディングスは東証一部上場企業として化学薬品を取扱っていました。
江守グループホールディングスの黒字倒産の原因は、売掛金の回収が滞ったことです。
そのため先の株式会社アーバン・コーポレイションの事例とはやや異なります。また江守グループホールディングスが回収に滞った売掛金の多くは中国の企業に対するものです。
中国市場の拡大とともに、江守グループホールディングスの業績も拡大していきましたが、その後中国市場が停滞し、結果的に江守グループホールディングスの代金回収もうまくいかなくなりました。
最終的には200億円以上の超過債務となり、そのまま黒字倒産しました。
この事例からは、売掛金は早期に回収しなければならないこと、貸借対照表上の黒字とキャッシュフローは必ずしも一致しないことがよくわかります。
専門家に依頼するのが確実
黒字倒産を避けるためにはお金の流れを正確に把握することが必要不可欠です。
しかし専門的な知識が不足していて、なおかつ本業に追われている状態でそれらを完璧にこなすのは困難でしょう。
そのため、リスクを回避するためには専門家に依頼するのがベストです。
専門家に依頼しておけばリスクを回避しつつ本業に専念できます。
ある程度コストはかかりますが、倒産してしまうようなリスクを背負うよりは得策でしょう。
また専門家の具体例としては税理士などです。
税理士は税務だけでなく会計全般を管理してくれるので、黒字倒産のようなリスクを回避するには最適です。
まとめ
黒字倒産も赤字でも経営が続くことも不思議なことではなく、理論的に考えれば当然あり得ることです。
特に重要なのは黒字倒産を避けることです。
自身で気を付けることはもちろん重要ですが、どうしても限界があります。
そこでおすすめなのは専門家に依頼することで、会計の数字は全面的に専門家に任せるのが得策でしょう。
専門家は単に数字を見ているだけでなくリスク管理もしてくれるので、黒字倒産のような取り返しの付かない大きなミスを避けることができます。