2020年のはじめ頃から全世界を巻き込んだコロナ禍は、ほぼすべての企業や事業主に大なり小なり影響を与え続けています。
現在も苦戦を強いられている事業者は多く、飲食店やホテル・旅館、アパレル業など多くの業種で倒産や廃業を余儀なくされる企業が出ています。しかし新型コロナの影響だけが、企業の倒産の理由ではありません。
実は数年前からの傾向として、歴史や看板商品を持ち体力があるはずの、創業100年を超えるような老舗企業の倒産・事業整理が相次いでいます。
こういった、地域を代表するような企業が倒産した場合、関連企業の連鎖倒産など地域経済に与える悪影響は甚大です。
また、たとえそれほど知名度が高くない、あるいは規模が小さい企業であっても、「倒産」となれば広範囲に影響が出るものです。
この記事では、地元企業の倒産や廃業によって、地域経済がどのような影響を受けるのかを考察します。
目次
増え続ける倒産件数!2025年問題とは?
一般的に「2025年問題」といえば、団塊の世代と呼ばれる第一次ベビーブーム世代の中心年齢が「75歳=後期高齢者」の年齢に達することによる、社会保障制度に与えるインパクトを指します。
具体的には、医療や介護の利用する人の数が激増することになり、関連機関の負担や必要とされる社会保障費の急増が懸念されているのです。
中小企業においても、「経営者の高齢化」という2025年問題に直面しつつあります。
倒産理由のトップは「後継者不足」
団塊世代が75歳を迎える2025年には、中小企業の経営者のうち約245万人が70歳以上に達する超高齢化社会となります。
これはすなわち、引退を考える経営者たちが増加することを意味します。
しかし、適当な後継者がいないという理由により引退=廃業を選ぶ経営者が多い実態があり、事業継承問題が大きな影を落としています。
地方の中小企業の場合、経営者の力量を見込んで融資や取引が成り立っているケースも多く、子どもや従業員への事業継承が難しいことも大きな要因となっています。
これについては国も早急に取り組む課題と認識しており、2018年からは事業承継税制として、贈与税・相続税の納税猶予および免除制度の運用が始まりました。
具体的には、事業承継時の贈与税・相続税の納税を10年間限定で猶予するというものです。
10年という猶予期間によって、相続時の税負担が軽減されることで、スムーズな事業継承が期待されています。
実は老舗企業ほど倒産リスクを抱えている
コロナ渦以前から増加していたのが、老舗企業による倒産廃業です。
時代の急激な変化に対応できず、旧態依然としたやり方に固執するなどの理由により、営業悪化が倒産を招いたケースが増えています。
老舗企業といえども、顧客のニーズを敏感にとらえ、多角経営によるリスクマネジメントなど、柔軟な対応が必要不可欠になっています。
地元企業の倒産は想像以上に影響が大きい
では、実際に企業の倒産が地域経済にどのような影響を及ぼすのか、具体的な影響事例をリストアップしました。
地元企業倒産の影響 1 . 雇用機会を消失
地域内の企業の倒産は、貴重な雇用機会の消失を招きます。
地域の企業が倒産することによって、まずダイレクトに影響を受けるのが雇用されていた従業員たちです。職場がなくなることによって当然仕事がなくなり=給料を受け取れなくなり、経済的に大打撃を受けます。
なにしろ日本企業の約99%は中小企業であり、国内全体の給与所得者(従業員)の数では実に7割を占めています。大企業の数が多い都会とは異なり、地方においては、地域の中小企業以外に就職する選択肢はほぼありません。
地元企業倒産の影響 2 . 連鎖倒産を招く
「一社が倒産したからと言ってさほど影響はない」と思えるかもしれません。
しかし、倒産した企業が貴重な取引先だったとしたらどうでしょう。かかわりのある企業も経営に少なからず影響を受けることになります。
結果、連鎖倒産を招いてしまうおそれもあるのです。
その企業と地域の零細企業が何社も取引をしていた場合、連鎖によって数社あるいは数十社が倒産してしまうことにもなりかねません。
地域の経済に大きなマイナスの影響を及ぼすのはもちろん、前述のとおり地域の働き手の失業という大きなダメージを与えてしまいます。
地元企業倒産の影響 3 . 地場産業が失われる
地域には、その地の特産物を使った製造業や、独自に発展してきた伝統産業などがあることも少なくありません。その一角を担ってきた企業が倒産することは、その土地の文化が失われるリスクを意味しています。
貴重な産業が失われることは、その地域に限らず日本国内全体にとっての大きな損失となってしまいます。
資金繰りが苦しい!倒産防止のための制度はある?
では、企業が経営危機に陥った時に倒産を防ぐには、どうすればよいのでしょうか。
現在、国による次の2つの倒産防止制度が用意されています。
もしもの場合のリスクマネジメントとして、ぜひ知っておきたい制度です。
中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)
これは「独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)」が運営する共済制度です。
取引先企業が倒産してしまった場合に、無担保・無保証人で積立金額の10倍以内(掛金総額の上限が800万円のため上限8,000万円)の貸し付けが受けられます。月額5,000円から20万円までの範囲で上限800万円まで積立可能です。
また、取引先が倒産していなくても臨時に借り入れできる、この共済の契約者向けの「一時貸付金」という制度もあります。
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信用保証制度
こちらは中小企業の資金調達をサポートする公的機関「信用保証協会」による制度です。取引先の倒産や事業活動の制限などにより経営が不安定になった中小企業を対象としています。
経営支援や再生支援を目的として信用保証協会と金融機関が責任共有の上で融資を行っており、企業は「保証料」を負担することで利用できます。
保証限度額は、「中小企業信用保険における普通保険の限度額2億円」+「無担保保険の限度額8,000万円」です(令和3年8月現在)。
また、中小企業信用保険の特例措置による別枠限度額も設けられています。
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経営に黄信号が灯ったら早めに支援相談を!
事業を経営していれば、いつ売り上げが減って資金繰りが苦しくなってもおかしくありません。
また、自身が経営から引退しようにも後継者が見つからず、事業継承を断念せざるを得ないのでは、と悲観的になることもあるでしょう。
しかし倒産や廃業を選ぶことによって、自社だけでなく地域社会へも大きなマイナスの影響をもたらしてしまうおそれがあります。
打開策を模索すべく奮起したいところですが、経営に関しては1人で立て直しを図ろうとしても困難なため、上記の制度を使ったり専門家に相談したりして早めに対処することをおすすめします。
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