新型コロナウイルス感染症はわが国だけでなく、全世界の生活を一変させました。
その影響は一個人の生活にとどまらず、社会全体に及んでいます。
人と人の接触を極力制限されることが求められたため、飲食業界を始めとした対人での営業を前提とする事業は、大きな打撃を受けています。
そのうえ新型コロナウイルス感染症は、未だワクチンの実用化に至っておらず、一過性のものではないとして「withコロナ」の中で、経済活動を行わざるを得ない状況です。
今回はそんな「withコロナ」時代に、人の生活に欠かせない飲食業を開業するポイントについて、わかりやすく解説します。
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現時点での飲食業における新型コロナ対策
現在飲食業において、新型コロナ感染防止のために取られている対策は、以下が挙げられます。
【店舗での対策】
・入り口で来店客を非接触型体温計等で体温計測
・入り口で来店客の手をアルコール消毒
・来店客のマスク持参を依頼(食事時以外の店舗内移動時に着用を依頼)
・ソーシャルディスタンスを確保するため座席の間隔を離す
・隣席との間にビニールシート等の遮蔽板を設置
・注文を極力店員と非接触で行うシステムの設置
・店内が三蜜にならないよう時間帯別価格を導入
・キッチン
・レジスターをビニールシート等の遮蔽板を設置
・キャッシュレス決済の導入
・無人レジスターの設置
・来店客帰店後の座席等アルコール消毒
以上のほか店舗側として、従業員自身の体温計測、アルコール消毒の徹底やマスク着用などは当然とされるでしょう。
また大きな対策として持ち帰りへの対応、宅配への参入なども対策のひとつとして考えていいでしょう。
以上の対策を踏まえ、飲食店開業のポイントを分野ごとに解説していきます。
1.営業戦略のポイント
飲食業界を見ると基本的に外食へのニーズはあるものの、新型コロナウイルス感染を恐れて、以前よりは外食を控えている状況と推測されます。
郊外で昔からの老舗が、持ち帰りや座席の間隔を確保するなどの対策を取っていれば来店があることからも、そのように考えられます。
従って、最も押さえるべき営業戦略のポイントは「新型コロナウイルス感染症対策をしっかりとる」ことでしょう。
新型コロナウイルス感染症騒動がワクチンの開発により収まったとしても、今後新たな感染症が発生する恐れもあります。
飲食店としての営業の片手間に、コロナウイルス感染症対策を行うのではなく、営業に不可欠な戦略のひとつとして行う必要があります。
中途半端な対策では顧客に新型コロナウイルス感染症を軽視している印象を持たれ、来店を控えることにつながるでしょう。
なお、提供する商品の質が求められることは、今に限ったことではありません。
むしろそれは飲食店営業にとっては当たり前です。
商品の質を追求することはもちろんのこと、新型コロナウイルス感染症対策をしっかりすることが、これからのwithコロナ時代には求められるでしょう。
2.広告戦略のポイント
新型コロナウイルス感染症対策をしっかりとっていても、来店客に知ってもらわなければ来店には結び付きません。
ましてや新規開業の場合既存顧客はいないわけですから、店舗の存在と併せて、各種広告への入稿やSNSで発信して周知していく必要があります。
ここでもポイントは、「この店は新型コロナウイルス感染症対策をしっかりとっている」と知ってもらうことです。
アルコール消毒の様子、座席やレジ周りの隔壁の設置や隣席との距離などを、広告でわかるようにしていく必要があります。
店舗の雰囲気や料理と同等かそれ以上に、新型コロナウイルス感染症対策をとっていることを広告で訴える必要があります。
コロナウイルス感染症対策をとっていると知ってもらわないと、来てさえもらえさえないでしょう。
3.収支計画のポイント
収支計画とは、要するに売上予測、仕入や人件費・家賃などの経費等の予測をすることです。
飲食業においての月間売上予測は、提供する料理や業態にもよりますが、通常「客単価×席数×回転数×営業日数」で算出します。
withコロナ時代では食事中にあまり話をしないこと、総じて外食への意欲が低いことなどから滞在時間が短いと考えられ、客単価は以前より低くなっていると思われます。
また客席の間隔を取ることが求められていることで、店舗面積当たりの実稼働できる席数も以前より少なくなっています。
以上の理由から、これまでの売上予測をそのまま使うことはできません。
客単価は低め、席数も少なめ、回転数も少なめで試算する必要があります。
4.設備計画のポイント
これまでで解説した新型コロナウイルス感染症対策には、少額で済むもの(店舗入り口へのアルコールの常備等)から相当な金額を必要とするもの(客席間の隔壁設置費用や無人レジスター、非接触型注文システムの構築費用)まで多岐にわたります。
当然ながらこれら新型コロナウイルス感染症対策にかかる費用を、創業時の設備計画に含めることが必要です。
コロナ前は考慮しなくて済んだ設備計画ですが、withコロナ時代の飲食業開業には必須の設備計画といえるでしょう。
従来必要とされていた設備計画に上乗せとなる形となるため、資金計画に限りがある場合は他の設備(什器や備品、あるいは賃借物件の保証金等)の削減も検討するようにしましょう。
低めの売上予測とバランスがとれた設備計画に留めたいところです。
5.資金調達のポイント
開業資金が不足する場合は、創業融資をはじめとする資金調達を行うことになります。
その際注意すべきポイントが2つあります。
一つ目のポイントは、創業融資を申し込む際は収支予測をしっかり行うことです。
簡単に言うと、収支計画のポイントで解説したように悪目悪目に予測した収支でも、利益が出る計画を立てる必要があります。
もともと創業融資においては、楽観的な収支予測を立てる方が多いのですが、このwithコロナ時代という先行不透明な状況では、更に悪目悪目にすべきです。
よく利益から経費、売上を逆算する方がおられますが、目標としてその方法で収支予測を立てるのは構いません。
しかし融資を受ける金融機関に提出する収支計画は、楽観的なものでは実現可能性を疑われ融資を受けられないことにつながりかねません。
最低限、実現可能な収支計画を提示するようにしましょう。
二つ目のポイントは、補助金の活用です。
新型コロナウイルス感染症対策の中には、日本商工会議所や全国商工会連合会が行う小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型含む)の補助対象となるものがあります。
例えば、非対面ビジネスモデルへの転換に必要なシステム導入費用などがあります。
しかしこの補助金は、創業予定の段階では申し込むことができません。
事前に他の手段で資金を調達し、創業後に支払う必要があります。
本来補助金は採択後に設備等の支払を行う必要があり、採択前の支出は補助金の対象となりませんが、このコロナ関連の補助金だけは採択日前の支出も対象となります(採択されるかどうかは別問題です)。
従って、補助金の対象となる新型コロナウイルス感染症対策については、一旦創業融資などで資金を手当てして創業後支払をしておいて、後から補助金を申請することも可能です。
ただし採択されなければ補助金は支給されないため、採択されない時のリスクも考慮しておく必要はあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。withコロナ時代に飲食店を開業するポイントについて解説しました。
ただでさえ多産多死と呼ばれ開業も廃業も多い飲食業は、慎重な開業計画が求められます。
創業支援の経験豊富な税理士事務所であれば、的確な支援が得られるのでおすすめです。
競合の激しい飲食業界で生き残りをかけるためには、あらゆる手段を用いて、用意周到に事を進める必要があります。
必要があれば、専門家のコンサルティングに頼るのも良い手段です。
客観的な意見も参考にしながら、開業準備を進めていきましょう。