今は0円から起業できる時代と耳にします。
またパソコンを使えば元手のかからない仕事というのもたくさんあります。
しかし、会社を興すのに本当にお金がかからないのでしょうか。
今回は特に起業するのに必要ですが、忘れられがちな「お金」についてご紹介します。
個人起業より会社設立の方が費用がかかる
事業を開始する際は「開業届」の提出が義務付けられています。
ですが、実は罰則規定はないので、実際には提出していない個人事業主の方も少なくないようです。
ただ、決まりですし、確定申告で青色申告をするにはあらかじめ承認申請書を出す必要があるので、どうせなら一緒に提出するのが得策です。
ちなみに開業届の提出は所得税法上、開業日から1カ月以内に提出しなければならないとされています。
一方、会社設立の場合は登記が必須です。会社の登記のことを「商業登記」と呼びます。
商業登記をしないと、過料が科されます。法律上、過料は100万円以下となっていますが、実態としては数万円程度で済むことが多いようです。とはいえ、登記をした内容の証明書が必要な手続きなどもあります。登記は必ず行ってください。
会社の設立にかかる費用は20~25万円
株式会社として商業登記をする場合、登録免許税、定款謄本手数料、定款認証、収入印紙、などのお金がかかります。
合計で20万円~25万円程度は見ておかなくてはいけません。
2006年の会社法改正により、資本金の下限額はなくなりましたが、登記にはお金がかかります。
ちなみに、税理士などの専門家に依頼すれば、収入印紙代の4万円を省けます。
そのため税理士に今後依頼する予定があるのなら、なるべく早めに依頼しておいた方がメリットは大きいでしょう。
お金のことだけでなく会社を起業するには手間がかかるので、自分で調べてやるという選択肢もありますが、依頼した方が自分の時間は作りやすいです。
自分の時間を作って業務に集中した方が、トータルで見たときにお得という考え方もできます。
また合同会社の場合は株式会社よりも商業登記のコストは抑えられ、10万円程度で設立が可能です。
株式会社と比較すると10万円~15万円程度の差があるので、創業当初と考えると大きな金額差でしょう。
他にも一般社団法人、一般財団法人、NPO法人もそれぞれ登記費用がかかります。
資本金は本当に0円でいい?
事業によっては資本金0円でも問題ないケースもありますが、そもそも資本金には以下のような役割があります。
- 事業に必要な資金
- 取引先、銀行などからの信用力アップ
- 事業の許認可取得・税制上のメリット
そのため、資本金の額が低いことがデメリットとなる可能性もあります。
まず資本金が事業資金であることは説明するまでもないでしょう。
事業のために備品、設備、広告、オフィスなどが必要なら、その分の費用は資本金から捻出します。
事業の性質上、資本金が不要なパターンとしては、パソコン一台で仕事ができて、作業も自宅で行うような場合です。
この場合は資本金がなくても仕事ができます。
次に、資本金が信用力につながる場合もあります。
特に融資を受けたいのであれば、資本金が0円だとかなり心もとないです。
取引先に関しては資本金をどのように判断するかはケースバイケースです。
資本金0円を見て取引をやめようと考える企業もあれば、特に気にしない企業もあるでしょう。
融資に関しては、担当者の印象というだけでなく内部のルールでも一定の要件があるので、融資を受けたいのであれば資本金額は増やした方が良いです。
事業の許認可取得に関しては、特定の事業に限った話です。
例えば建設業や旅行業は、一定の資本金がないと許認可が下りない場合があります。
許認可が必要な事業で開業を検討している場合は、事前に調べておく必要があるでしょう。
数百万円、数千万円の資本金が必要な場合もあります。
最後に税制面に関しては今までの話とは逆で、資本金が大きい場合に不利になります。
具体的には、資本金が1,000万円以上になると消費税がかかります。
消費税は、売上が1,000万円以上になると課税事業者になって消費税が課されるというイメージがあるかもしれません。
この認識は間違いではありませんが、資本金が1,000万円以上だと最初から課税事業者になります。
厳密には消費税が課されるのは2年目以降ですが、創業時の資本金が影響するということです。
広告宣伝費【10万円~】
諸々の開業費用の中で、広告宣伝費を見落とすケースは多いかもしれません。
今の時代どの業種であっても、これから開業するならホームページは必須と言えるでしょう。
SNSで代用したり、あえてネットを使わないという選択肢もないわけではありませんが、法人として開業するのであればそれは厳しいでしょう。
なぜなら集客できないだけでなく信用問題にも影響するからです。
他社と取引が発生した場合、会社の信用を調べるためにネットで検索されるケースは多いはずです。
そのときにホームページがないと印象として不審に思われる可能性が高く、結果的に取引がなくなるかもしれません。
個人事業主が個人名で取引している分には、そこまでホームページが見られることは少ないかと思いますが、法人にはホームページがあって当たり前の時代です。
そのためホームページを制作する費用として、最低でも10万円程度は必要でしょう。
ホームページを自作するという手もありますが、引き換えに相応の時間と労力がかかります。
またホームページのプラットフォーム自体は用意できても、中のコンテンツを充実させるのは難しいです。
本業もあるので、ホームページに関しては外注化した方が効率的かと思います。
税理士などの専門家への依頼料【数万円~】
専門家への依頼をせずに起業する人も多いですが、いずれかのタイミングで必要に迫られるケースも少なくありません。
早ければ起業段階で必要に迫られるでしょう。
理由としては、本業の準備をしながら専門的な手続きを進めるのはかなり大変だからです。
もともと事務的な知識があったり、人並み外れた集中力があるような超人なら事務も本業も集中してこなせるかもしれません。
しかし、多くの人はパンクしてしまうでしょう。
結果的に事務も本業も嫌になり、開業自体をやめたくなるかもしれません。
そうなっては本末転倒なので、それなら本業に集中して事務作業は外注化した方が良いです。
また開業は自力でなんとか乗り越えても、経理、特に年末の確定申告でパンクするかもしれません。
本業が軌道に乗っていると特に脱税はできないのですが、軌道に乗っている分忙しいので事務作業をする余力がありません。
時間自体は捻出できても、人間の労力には限界があるので無理が生じます。
金銭的に余力があるなら、専門家に外注した方が無理なく事業を継続できるということです。
まとめ
起業自体は0円でできても、商業登記にお金がかかり、またそもそも資本金0円で問題ないのかという疑問が生じます。
そしてホームページ制作などの広告宣伝費、専門家への外注費などが生じる可能性が高いということでした。
これらの費用は忘れがち、もしくは必要ないと思っていたけど実際は必要だった、といったことがよくあります。