調理済みの食品を自宅に持ち帰って食べるテイクアウトの需要は、独身世帯や共働き世帯の増加などで年々増える傾向にあります。
近年では2019年の消費税増税でも軽減税率の適用で税率が据え置かれたことや、コロナ禍の外出自粛・営業自粛などが影響していると考えられます。
外食需要が落ち込む一方で、テイクアウトを含む「中食」業界は成長し続けています。
テイクアウトの需要が増え注目されたことで、テイクアウト専門店の開業を考え始めた人も多いのではないでしょうか。
本記事では、テイクアウト専門店の開業に必要な許可や手続き、事業を成功させるためのコツについて解説します。
目次
テイクアウト専門店の開業メリット・デメリット
まずは、テイクアウト専門店を開業するメリットとデメリットについて見ていくことにしましょう。
テイクアウト専門店のメリット
通常の飲食店と比べ、テイクアウト専門店を開業することには主に次の4つのメリットがあります。
- 店舗スペースが小さくても営業できる
- 人件費が抑えられる
- 売上が客の回転数に左右されない
- キッチンカーなら立地も融通が利く
テイクアウト専門店なら、店舗スペースが小さくても営業できるため、開業にかかる初期費用を低く抑えることができます。
商品の受け渡しだけなので、客席や客用トイレなどのスペースは不要。雰囲気づくりのために外装・内装に凝る必要性も、なくはないですが低いでしょう。
また、少ない人数で回していけることもポイントです。
ホールスタッフは不要ですし、スペースも狭ければ必然的に人数も制限されます。
テイクアウトなら客の滞在時間や回転率を気にする必要もありません。
多くの来店客があっても、受け渡しなどをスムーズにできれば効率よい売り上げアップができます。
キッチンカーを使ったテイクアウト専門店であれば、立地にも融通が利きます。需要の高いイベントなどを探して出店するなど工夫もしやすいでしょう。
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テイクアウト専門店のデメリット
上記のようなメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 調理から消費までにタイムラグがある
- 衛生管理にはより留意する必要がある
- 原価を下げにくい
- 容器や包装などの資材が必要
キッチンカー以外のテイクアウト専門店では、食品を調理してから消費されるまでに時間がかかるのが特徴的です。
持ち帰って食べるまでの間にどうしても冷めますし、ある程度は味が落ちることも避けられません。
冷めてもおいしいように、なるべく味が落ちないように工夫する必要があるでしょう。
特に夏場は、食中毒などを出さないための厳しい衛生管理が必須です。
また、テイクアウト専門店では原価率が下げにくいというデメリットもあります。
通常の飲食店なら原価率が低いドリンクの提供で全体の原価率を下げるのが一般的です。
しかしフードがメインのテイクアウト専門店では、ドリンクがあまり売れない傾向にあります。
さらに、店内での飲食と違って、持ち帰り用の容器や包装材の費用負担も必須です。
テイクアウト専門店に必要な営業許可
「現在すでに飲食店を経営しているから、テイクアウト専門店を始めても許可的な問題はないだろう」と考えそうになりますが、それは間違いです。
営業許可には数多くの種類があり、提供する料理や商品、提供する形態などに適した許可を取る必要があります。
例えば、お弁当やお惣菜を店舗で調理して店頭で売る。この場合には、飲食店の営業許可で行ってもOKです。
しかし作った菓子類をテイクアウトで販売するには、「菓子製造業」の許可を受ける必要があります。
さらに食品衛生責任者の設置も必須です。
調理師や栄養士、食品衛生管理者などの資格保有者がいない場合、食品衛生責任者の養成講習会を修了することで取得することができます。
食品衛生責任者は、施設ごとに存在していなければなりません。
なお、令和3年6月に食品衛生法の改正法が施行され、営業許可や届出の中身が一部変更されました。
自身の店舗でテイクアウト販売する商品に何の営業許可が必要になるのかは、保健所で事前に確認しておきましょう。
自宅でテイクアウト専門店を始めるには
「テイクアウトだけなら自宅で簡単にできるかも?」と考える人も多いかもしれません。
確かに広いスペースは必要なさそうですし、一人でやれば人件費もかかりません。料理や製菓・製パンが得意な人なら、自宅で得意を活かすことができそうです。
しかし、自宅でテイクアウト専門店を開業するには、次のような条件・デメリットがあります。法律が関係してくるので気を付けてください。
- 営業には保健所の許可が必要
- 自宅のキッチンは店舗用には使えない
- 食品衛生責任者の資格が必要
- 近隣住民とのトラブル発生リスクがある
まず、テイクアウトのみでも飲食物を売るには営業許可が必要です。パンや焼き菓子などを売るなら菓子製造業の許可、から揚げやたこ焼きなどを売るならそうざい製造業の許可など、何を売るかによっても必要な許可の種類は異なります。
この営業許可の取得には、営業を行う施設についても複数の決まりがあり、中でも大きいのが、自宅と営業用のスペースを明確に区別する必要があるということ。つまり自宅のキッチンで調理した物を売ることはできないということです。
そのほか、センサー式など手指を触れずに使える手洗い設備、専用の流水式手洗い設備のあるトイレの設置など、食中毒などのリスクを防ぐためのさまざまな要件があります。
また、調理したものを売る場合に調理師免許は必須ではありませんが、1人以上の食品衛生責任者が必要です。食品衛生責任者には、6時間ほどの講習会を受ければなれます。
デメリットとしては、立地を選べないため、近隣に住む人とのトラブルになる可能性が挙げられます。客による路上駐車などのマナー違反、揚げ物などのニオイに対する苦情なども想定しておかなくてはなりません。
テイクアウト専門店を成功させるコツ
テイクアウト専門店へのニーズが高まったとはいえ、誰にでもどんなお店でも成功できるわけではないのが現実です。
テイクアウト専門店を成功させるには、少なくとも次の3つのコツをおさえておく必要があります。
何を売るかは吟味して決める
「簡単に作れるから」「何となく売れそうだから」と、販売商品を安易に決めてしまうのは避けましょう。
特に、「今」人気のある流行りものに手を付けるのは危険です。
流行というのはあっと言う間に広がり去っていくスピードも早いもの。ライバルが多く価格競争になっていて儲からない、いざオープンしたらブームが終わっていた、なんてことになりかねません。
流行りもので勝負するなら、常に移り変わる流行を先回りしてキャッチする情報収集能力や、引き際を決める判断能力なども必須です。
「売りたいもの」より「売れるもの」を
飲食に限らず、商売を始める際には自分が売りたいものを売ろうと考える人がほとんどでしょう。
でも、それを「お金を出してでも買いたい」と思う人がどれだけいるか。何を売るかを決めるには、そこが重要なポイントです。
とはいえ「売れるもの」が何かを見つけるのは難しいかもしれません。
例えば、テイクアウトで人気なのはどういう商品かを調べる。単にそれを真似るのではなくヒットの理由を探す。さらに、まだ存在していないけれど「テイクアウトできればいいな」と多くの人が思うのはどんなものかを考える。それをヒントにしてオリジナルメニューを開発することもできるのではないでしょうか。
もちろん、出店するエリアの商圏分析をして、どんな層(年齢や家族構成、生活レベルなど)の来店客が想定されるのかを見る必要もあります。
SNSを活用して広告宣伝する
テイクアウト専門店の成功に最も欠かせないのは集客です。
特に、情報発信が広く手軽にできるSNSを活用しない手はありません。
「SNS」と一口に言っても、「Facebook」や「Twitter」、「Instagram」、「YouTube」、「LINE」などいくつもの種類があります。
それぞれに異なる特徴や利用者層を踏まえ、ターゲット層にもっとも届きやすい方法で情報を発信しましょう。
例えば、女性が好みそうないわゆる「映える」メニューならInstagram、味や材料、ネーミングにインパクトがあったりタイムリーな情報を伝えたりしたいならTwitter、など。もちろん併用も効果的ですが、発信する頻度やタイミングも重要です。
常に管理ができる範囲にとどめて、確実に投稿を積み重ねる戦略がおすすめです。
利用しやすい店づくりをする
来てもらわなければ売れないテイクアウト専門店には、サービスの利用しやすさも売上アップの重要な要素です。
長時間待たされれば「もう二度と行かない」と思う人もいます。
どんな商品なのか、各メニューにどんな違いがあるのかがわからなければ選ぶのに困ってしまいます。
質問したくても店員が忙しくしていれば質問もできず不満が募るでしょう。
こうした不満は今やSNSや口コミサイトで広がりやすいので、なるべく不満が生じないようにする必要があります。
SNSのダイレクトメールで事前注文を受けて待ち時間をなくし、かつ出来立てを提供する、商品説明は簡潔にわかりやすく表示するなど、利用しやすい店にすることでリピーターになってもらえる可能性も高まります。
テイクアウト専門で小さなスペースでの接客なら、待っているお客さんに声をかけるなどの気配りでお客さんとの心の距離を縮めることもできるでしょう。
信頼性を上げる
新型コロナ感染症の流行拡大に伴う感染防止への対策は、テイクアウト専門店においても必須です。
感染を防ぐという実質的な目的はもちろん、お客さんからの信頼性にも関わってきます。
withコロナ時代の対応策として非対面・非接触で買い物ができるシステムを導入するところも増えています。
衛生面での取り組みを積極的にアピールすることでも、信頼性を上げることができるでしょう。
例えば、SNSや店頭での発信・表示のほか、公的な認証があればより安心して利用してもらえるようになります。
例えば、愛知県では「あいスタ認証」という第三者認証による感染防止対策の認証制度を設けています。
出店地域で同じような制度があれば、利用するのも1つの方法です。
飲食店の成功のカギはこちらの記事もチェックしてください。
テイクアウト専門店の開業の流れ
テイクアウト専門店を開業する際は、通常の飲食店と同様にコンセプト決めやメニュー設定などをしていくのが適切な流れです。
具体的に見ていきましょう。
STEP 1 店のコンセプトを決める
まずは店舗づくりの基礎である店のコンセプトを決めます。
簡単に言えば「どんな店にしたいか」ということです。
自分が理想とするお店のイメージや世界観も大切ですが、提供するメニューが決まっていればそのメニューや価格帯、ターゲットとなる客層からニーズを考えて決めることも重要です。
そのコンセプトに合わせて、物理的なこと、例えば店の外観や内装、什器やテイクアウト用の包装など細かなことも決めていきます。
STEP 2 出店する地域・場所を決める
飲食せず持ち帰るだけのテイクアウト専門店であっても、立地は重要です。
集客・収益は立地によって大きく影響を受けます。
重要なのはやはり商圏分析です。
その辺りの地域にはどんな店が多く、どんな店が繁盛しているのか、足を運んで見てみるのも1つの方法です。
地域住民の特徴や生活レベルを探ってみることも必要でしょう。
キッチンカーでの営業でも、出店する場所の商圏分析、イベントなら来店客層などの把握は必須です。
STEP 3 店舗物件を決める
出店する地域を決めたら、いよいよ具体的な店舗物件を決めます。
コーヒースタンドやお弁当などの提供であれば、ビジネスマンの多いオフィス街が狙い目でしょう。
ケーキやパン、菓子などの場合は会社帰りを狙ってオフィスから駅までの間という選択肢もあります。
居抜き物件など、なるべく賃料の低い物件を見つけることも重要です。
居抜き物件について、詳しくはこちらの記事も読んでみてください。
STEP 4 外装・内装工事、設備や什器の購入・設置
物件が決まれば、予算に合わせて店舗の外装工事・設備や什器の購入・設置をしていきます。
店のコンセプトに合わせた外装のイメージを固め、施工会社に工事を依頼します。
テイクアウト専門ですから外観や内装には通常の飲食店ほどこだわる必要はないでしょう。
ただし外装や内装に費用を使いすぎると、経営が軌道に乗るまでに資金が底をつく危険性もあります。
初期の大きな設備投資は控えることをおすすめします。
設備や什器については、衛生管理のための設備など営業許可の要件を満たさなくてはなりません。
必要な設備やスペースなどが細かく規定されているので、取るべき営業許可の種類と合わせてあらかじめ保健所に確認しておきましょう。
STEP 5 営業許可の取得・各種届出・申請
店舗の形ができたら、飲食店の営業許可など必要に応じた許可の申請をします。
申請は店舗のある地域の保健所に行います。
店舗が複数あり、保健所の管轄が異なるなら地域ごとに申請する必要もあります。
食品衛生責任者の資格取得も、施設ごとにそれぞれいるように取得しましょう。
テイクアウト専門店の開業資金
テイクアウト専門店の開業には、いくらぐらいの資金が必要かも気になるところです。
必要となる費用の種類や、資金を調達する方法についても見ておきましょう。
必要な資金の種類
テイクアウト専門店の開業には、次のような費用がかかります。
- 物件取得費用・家賃
- 外装・内装工事費用
- 厨房設備費用
- 調理器具・備品の購入費用
- 什器の購入費用
必要となる額は店舗の規模によっても異なりますが、賃貸物件であれば契約時に保証金などの物件取得費が必要です。
家賃などを含めて100万円程度はかかります。
そのほか、外装・内装工事費用や厨房設備、什器その他備品などで、総額500万円程度の開業資金は用意しておきましょう。
また、開業後の当面の運転資金も考慮しておかなくてはなりません。
開業から事業が軌道に乗るまで、数カ月程度の期間がかかるのが一般的です。
生活費を頭に入れずオープンまでにお金を使ってしまうケースも見られますので、自身や家族の生活費も含めた費用の試算をおすすめします。
資金調達の方法
開業資金の調達方法として挙げられるのは、主に次の3つです。
- 自己資金
- 親族や知人からの借金
- 金融機関などからの借入
テイクアウト専門店の開業費用が自己資金だけでまかなえる人は少ないものです。
自己資金だけでは足りないけれど親族や知人に当てがない、あるいは借りたくないのであれば、金融機関の利用が必須となるでしょう。
融資を行う金融機関はいくつもありますが、起業・創業時に利用しやすく有名なのが日本政策金融公庫による「新創業融資制度」などの創業融資制度です。
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中小企業や小規模事業主を支援する目的が大きいため、金利などの条件も他の金融機関より低く設定されています。
ただし、ある程度の自己資金は用意していなければ審査に通りません。
また、事業内容や経営の見込みなどを伝え、返済能力の有無の判断基準となる「創業計画書」の作成も必須です。
開業資金の調達方法については、こちらの記事で解説しています。
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中食市場は年々拡大し、テイクアウト専門店の需要も高まりつつあります。
テイクアウト専門店には、比較的少ない開業資金で始められるというメリットがあります。
しかし一般の飲食店と同様に、営業許可の申請が必要ですし、食品衛生責任者の設置も必須です。
成功させるには、ターゲットを意識した積極的な集客への施策が欠かせません。
開業資金については、融資を考えるなら日本政策金融公庫の創業融資の利用が最適でしょう。
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