【倍返しだ!】「半沢直樹」を現実のビジネス視点で解説!・第六話

【倍返しだ!】「半沢直樹」を現実のビジネス視点で解説!・第六話
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「半沢直樹 第六話」の解説・今後の考察※ネタバレ注意

後半戦に入って二回目の第六話では、東京中央銀行に国家権力の魔の手が迫ります。
白井国土交通大臣の再生タスクフォースから、帝国航空へ融資した700億円の7割、500億円の債権放棄を迫られる東京中央銀行でしたが、半沢達は拒否をし、自力再建する案を出していました。

今回は、国家権力がこの半沢達、東京中央の自力再建案をあらゆる手を講じて潰しにかかってきます。
その切り札が、不正融資の摘発による「業務改善命令」。
銀行にとっての業務改善命令とはどのような意味を持つのか、そして、なぜ銀行が不正融資をしてしまうのかという動機の裏について、実際の事例と交えながら解説をしていきたいと思います。

前回分はこちらから

半沢直樹セカンドシーズン第六話のあらすじ

何としても、政府の要求する500億の債権放棄を拒否したい半沢は、自らの目で、現場で働く人々を見て苦心の末、再建案を作り上げます。
大臣直轄の「帝国航空再生タスクフォース」のリーダーである弁護士・乃原は、権力を傘に着た高圧的態度で、政府の要求に従うよう告げます。
再生タスクフォースの債権放棄要求には、そもそも何の法的根拠もないと指摘し、激しく反発する半沢。
「国民の総意」を振りかざす乃原に、明確な根拠を示し銀行に頭を下げるべきと主張。
傍若無人な振る舞いに「今時ヤクザだってしない」とまで言い切り、徹底抗戦の構えを示しました。

ところが、半沢達の作成した再建案は、帝国航空内で暗礁に乗り上げていました。
赤字路線の廃止はもちろん、人員整理に対する従業員の反発は激しく、その対応に財務部長・山久はすっかり疲弊していました。
そんな中、半沢の否定的な態度を乃原から聞いた白井大臣が直接、東京中央に乗り込んできます。
政府の脅威を実感する中野渡頭取と大和田。
債権管理担当常務の紀本はとっさに、非礼の謝罪と債権放棄を改めて前向きに検討することを告げて、その場を収めます。

白井大臣が退出した後、大田和は納得いかない半沢に「謝らなかったのはある意味では正しい」と認めながらも「謝った紀本常務も正しい」とし、あくまでも銀行員にとっての正義は「頭取の立場を守ること」と諌めるのでした。

一方、帝国航空のリストラ対象となった従業員たちの転職先探しも半沢達の尽力により残りは506名となりました。
そんな中、半沢は開発投資銀行の谷川より、引き受け先としてLCCのスカイホープ航空を紹介されます。
そこで東京セントラル証券時代の部下・森山と再会。
目下、事業拡大中のスカイホープの新規路線開設に伴う増員計画を知り、受け入れを打診することにしました。

そこへ突如、金融庁から東京中央銀行に、過去に実施された帝国航空への融資に対するヒアリングの通達がきます。
与信判断に問題があったことを金融庁から指摘されれば、業務改善命令などの重い処罰が科せられます。

事前に、ヒアリングの担当者は落合と言われていましたが、現れたのはなんと黒崎検査官でした。
どうやら証券会社の監査担当から、銀行担当に戻った様子。 再び半沢と会えた喜びに、

「あなたが担当者だなんてね~。おかげで、ファイト、満々よー!」

とご満悦でヒアリングが開始されました。

ヒアリングの中で、過去に金融庁検査で問題無しとされていた融資事例のうち、意図的に改ざんされた数字があるのではないか、ということを指摘されます。
双方の資料を比較したところ、金融庁に提出した再建案と帝国航空が実際に発表した再建案に、数字の差異があることが判明。
廃止する赤字路線の数と、削減する人員の数を少なく見積もって誤魔化したものだったのです。
これを見逃した東京中央の重大な過失ということになります。

当時の帝国航空の融資審査担当は、曾根崎でした。
曾根崎は、山久に確認したところ「こちらのミスでした」と言われたといいます。
つまり、帝国航空側の数値のミスだとしたのです。
半沢がそのメールを確認しようとしても、山久は自社側のミスと言い張り、なにも話そうとしません。

時を同じくして、紀本常務は半沢を危険視し、帝国航空再建の担当から外す話が取りざたされ始めます。
さらに白井大臣から中野渡頭取あてに、半沢の担当更迭を暗に迫る電話が入り、頭取は半沢と曽根崎に事情が聞きたいと指示しました。
その頃、半沢に森山からいい知らせが入ります。
人員受け入れの件、スカイホープも乗り気とのことでした。
半沢は早速、山久に報告に向かいます。

翌日、今後の処遇を決めるべく頭取と役員の前で、半沢と曽根崎の聞き取りが行われました。
曽根崎は、半沢が執拗に付きまとい、通常業務に支障が出ているとの山久からの要望書を読み、半沢を東京中央の恥さらし呼ばわりします。
ところが、半沢は山久から全く違う内容の状況説明書を預かっていました。
それは、金融庁に報告された数字が違っていた件については、帝国航空は一切関与していないことを述べ、曾根崎の作成した要望書は事実とは言えないため破棄するように願い出たものでした。

どちらの書類にも山久の捺印がありますが、内容はまったく食い違っています。
半沢の要望書を「ねつ造」と嘯く曽根崎に、半沢は状況説明書が本物である証として、ボイスレコーダーを取り出しました。

そこには、曾根崎が500人の再就職先を見つけることと交換条件に、山久に対し自分たちのミスであると嘘をつくように、強要している会話が録音されていました。
加えてそれが、東京中央銀行の「役員の誰かの指示」であることを示唆していたのです。
半沢達の尽力によりスカイホープへの500人の受け入れが決まり、嘘をつく必要が無くなった山久の協力で入手した証拠です。

「お前は東京中央銀行の いや 日本中の全バンカーの 恥さらしだ!」

完膚なきまでに叩きのめされた曽根崎は、自身の行為を認め、大和田に促され頭取に土下座までするのでした。
しかし結局のところ、曽根崎に指示した「役員の誰か」は不明なままに終わります。

ひとまず一段落と思ったところでなんと、スカイホープの東京~ホノルル間の新規路線の認可が、白井大臣の意向で却下される事態に陥りました。
帝国航空の500人の受け入れは、新規路線開設に伴う増員を前提としているため、この路線が認可無しでは頓挫してしまいます。

許認可権限は白井大臣の伝家の宝刀。
そして、書類の改ざんによる不正融資が明らかになったため、金融庁は東京中央銀行に業務改善命令をだします。
全国放送されている記者会見の場で謝罪する中野渡頭取。
その姿を観て、モニターの前で責任を痛感した半沢は、悔しさをかみしめて誓うのでした。

「やられたらやり返す。倍返しだ!まずはこの銀行に潜むとんでもない裏切り者をあぶり出す!」

金融庁が指摘した東京中央銀行の不手際

ドラマの中で、金融庁が指摘していたこととは、どのようなことだったのでしょうか。
東京中央は前年、帝国航空に150億円を追加融資していました。
この融資に問題があったとされたわけです。

銀行とは預金者から預かったお金を運用している以上、融資したお金をきちんと回収できる保証がなければ貸してはいけません。
ここがきちんと行われているのかについて、金融庁は銀行を監督しているわけです。
このことを説明するには、銀行内部で行われている貸付審査の大まかな仕組みを知る必要があります。

債務者区分のこと

銀行は貸出先を、おおむね次のように区分しています。

  • 正常先…融資を行っても問題がない貸出先
  • 要注意先…有利な条件で貸し出さないなど条件に気を付けなければならない貸出先
  • 破綻懸念先…破綻が懸念されておりよほどのことがない限り融資は実行しない貸出先
  • 実質破綻先…融資は不可能な貸出先
  • 破綻先…すでに法的整理に入るなどしており、早急に回収若しくは貸倒処理が必要な貸出先

これらの債務者区分の決定は、それぞれの企業に決算書を提出してもらったうえで判断がなされ、結果については銀行内部で検査も行われています。

帝国航空の格付けはどのようになされていたのか

帝国航空に150億円の融資をするにあたっては、すでにかなり問題があったはずです。
なぜなら、翌年に政府が再建に自ら乗り出してくるほどの財務状態だったわけですから、東京中央がこのことに気が付いていませんでしたとはいえません。

この融資を実行するにあたっては、帝国航空が再建プランを東京中央に提出する必要がありました。
つまり、「150億円調達できれば、リストラや赤字路線を削減することで見事に復活できます」と、具体的な根拠を書面で示すことが条件として求められたのです。
条件付きですから、債務者区分で言うと「要注意先」だったということになります。
ここまでは、正しい手続きだったと思われますが、問題は帝国航空の出した再建案が十分なものではなかったことです。

東京中央が金融庁に提出した再建案の要点をまとめると以下になります。

  • 赤字20路線の廃止
  • 人員削減5,000

ところが、帝国航空の出した再建案は次のようなものでした。

  • 赤字15路線の廃止
  • 人員削減3,000

赤字路線はもっとたくさんあり、余剰人員ももっとたくさんでるはずなのに、これでは、再建策としてとても十分なものとは言えません。

帝国航空の、自分に甘い体質が出ている再建策と言わざるを得なかったのでしょう。
この時点では、自力再生はもう無理だったのかもしれません。
東京中央銀行の審査部、曾根崎はこのままでは債権者区分が「破綻懸念先」に落ちてしまうことがわかっていたと思われます。

ランク落ちはどのような結果を生むのか

巨額の融資を行う帝国航空のような大口融資先になると、その動静は東京中央の財務状況に与える影響も小さくありません。
銀行はある程度貸したお金が戻ってこないことを見越して、貸倒引当金を計上しますが、銀行の決算にとってはこの計上がいくらになるのかが最も重要になります。

貸倒引当金は、負債の一種です。
貸したお金が最初から戻ってこない率を設定しておき、実際に戻ってこないことがはっきりしたら、この引当金から取り崩して処理を行います。
また、貸倒引当金の額を公表することで、外部の投資家などステークホルダーに対し、融資内容の健全性を数値として示すことにもなります。

しかし、よくよく考えてみると、これは負債ですから、額が大きければ大きいほど、引当金に繰り入れる際に損失がでて、東京中央の決算書に与える悪影響はおおきくなります。
ちなみに、貸倒引当金の繰入率を債務者区分ごとに書くと次のようになります。

  • 正常先…0.2%~7%
  • 要注意先…48%
  • 破綻懸念先…52%
  • 実質破綻先…100%

追加の150億円を合わせると、帝国航空への融資額は700億円であるとの設定でした。
帝国航空は「要注意先」なので、貸倒引当金は49億円ほどになります。
ところが、財務内容が相当に悪いため、再建案が「無理である」と判断されれば「破綻懸念先」になりますので、貸倒引当金は700億×52%で364億円にもなってしまうのです。

実に前年度と比較して、315億円ものマイナスを被ることは確実。
これは、東京中央にとっては誠に都合の悪い事態です。
株主総会や決算報告で実に報告しにくい。

そこで曾根崎は「役員の誰か」の指示を受け、再建案が修正されたかのように見せるため、数値改ざんをしており、帝国航空の山久から修正を要請するメールが届いたということに、後から工作を施したのです。
ところが半沢によって、これが嘘であったことが暴かれました。
よって金融庁のからみると、東京中央が帝国航空への信用度を偽装するために、書類を改ざんしていたことになってしまいました。
こうなれば、もう業務改善命令は避けられません。

業務改善命令の実例

業務改善命令は、銀行にとって最も避けなければならない行政処分です。
過去に実際に出た業務改善命令の事例と、銀行がどういう処分を受けるに至ったかを見てみましょう。

三菱東京UFJ銀行 業務改善命令(2007年)

2007年4月15日、三菱東京UFJ銀行は金融庁から業務改善命令と業務停止命令(一部)を同時に受けました。

同行の前身である旧三和銀行は、財団法人飛鳥会に対し1970年代から長年にわたり、内部規則に反した与信採り上げや現物預かり、法人課長の事務所駐在など「極めて異例な取引」をつづけていたというものです。
財団法人飛鳥会は、地域生活や福祉改善の促進を標榜して設立されていましたが、実態は部落解放同盟飛鳥支部長で暴力団員が運営する収益事業を営んでいるいわゆる反社会的な団体でした。

旧三和銀行の姫路支社は、法人向け営業拠点として活動していましたが、長年の取引慣例なのか、面倒を避けたかったのか、不適切な融資を把握しながらも反社会的な同団体とのつながりを断ち切ることができずにいました。

2006年5月、飛鳥会の理事長、小西邦彦氏が業務上横領と詐欺罪で逮捕されたのをきっかけに、小西氏に手を貸していたとして淡路支店の次長兼取引先課長も、業務上横領幇助で大阪府警に逮捕されています。
この時、金融庁の検査も同行に入ることとなり、結果として三菱東京UFJ銀行に対し一部業務停止を命令しました。処分は次のとおりです。

  • 新規法人向け融資の1週間停止
  • 法人向け営業拠点の新設は半年間認可しない

同時に、このようなことが二度と起こらないよう内部管理体制を強化する様、業務改善命令も出されています。
金融庁は、歴代の経営陣が飛鳥会に対する不適切な融資を把握しながら、長期にわたり問題を放置していたことを問題視し、厳しい処分に踏み切ったもので、三菱東京UFJ銀行はこれで、長年の因習にけじめをつけることができました。

スルガ銀行 業務改善命令(2018年)

スルガ銀行は、静岡の地方銀行です。
地元では「スル銀」の略称で親しまれていましたが、経営が少し強引なほど積極的なことでも有名でした。

2018年4月、東京に本社がある不動産会社スマートデイズが経営破綻。
同社はシェアハウス「かぼちゃの馬車」をサラリーマン向けに販売していました。
その販売方法とは実際の家賃よりも高い金額の家賃保証を約束、その代わり物件は実際の価格より高い価格で販売していたもので、家賃保証の赤字を販売収益で補う自転車操業を続けていたのです。

スルガ銀行は、カボチャの馬車のシェアハウスを購入する高給サラリーマンに1億程度の住宅ローンを融資していました。
1億円のローンなど簡単に通るわけがありませんが、スマートデイズは購入希望者から預かった通帳の写しや源泉徴収票などを改ざんしてスルガ銀行に提出、スルガ銀行はそれをろくに調査もせずに融資していました。
この経営破綻を発端に金融庁の調査が入り、次のような処分が下りました。

  • 平成30年10月12日(金)から平成31年4月12日(金)までの間、新規の投資用不動産融資を停止
  • 上記の期間、役職員が融資業務や法令等遵守に関して銀行員として備えるべき知見を身につけ、健全な企業文化を醸成するため、全ての役職員に対して職場を離れてでも研修を行うこと
  • その他7項目の内部管理体制の改善命令

スルガ銀行とかぼちゃの馬車の不正問題に関しては、報道でもずいぶん話題になりました。
これでスルガ銀行から借りたローンが払えず、破産してしまった人もたくさんおり、大きな社会問題になりました。

まとめ

【倍返しだ!】「半沢直樹」を現実のビジネス視点で解説!・第六話

半沢直樹を見ていると、お金を貸すという行為が人の役に立つことであると同時に、その後の運命を狂わせる行為でもあるように思えます。
第一シーズンでも、半沢の実家だった工場が、銀行の貸し剥がしにより経営破たんした悲劇が描かれていましたね。
しっかりと与信審査をするのは、銀行の利益の為だけではありません。
借りた人の為でもあり、銀行にお金を預けている預金者の為でもあります。 

「貸して金利さえ頂けば、後のことは自己責任だから知らない」ということでは、道義的責任がたちません。
ドラマの内容を深読みすればするほど、お金と人生を考えさせられるドラマ「半沢直樹」。

次回から、帝国航空編は怒涛の後半に入ります。

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