株式会社を設立しようと情報収集していると必ず出てくるのが「発起人」というワードです。
例えば何かの祝賀パーティーの発起人、というのは聞いたことがあっても、会社の発起人とは何なのか、いまいちピンとこないかもしれません。
しかし、発起人は株式会社の設立には欠かせない存在です。
自分1人で会社を作るなら、その会社の発起人は自分です。発起人は会社法で定められた存在であり、発起人にはしなくてはならない義務もあります。
本記事では、株式会社設立時の手続きに必須の「発起人」について、その要件や役割、義務などを解説します。
目次
株式会社の発起人とは?
発起人とは、簡単に言えば「会社設立を決意・企画し、手続きを行う人」です。
発起人のない会社は存在しません。会社の設立は「会社法」に基づいて行う必要があり、発起人についても定められています。
例えば、会社の設立には定款の作成が必要です。発起人はこの定款を作成し、署名あるいは記名捺印しなくてはなりません。
また、詳しくは次の章で説明しますが、発起人は会社設立後に株主ともなります。
発起人は何を行う?
発起人が行うべきことは、会社についての基本事項や重要事項を決めること、そして会社設立の法的手続きをすることです。
【発起人が行うべきこと】
●会社の基本事項・重要事項を決める
●定款を作成し認証を受ける
●法人の印鑑を作る
●資本金の払込をする(出資する)
●会社設立の登記申請をする
●取締役を選任する
まず、発起人は会社の事業内容や社名、本店所在地など基本的な事項を決めます。
また、役員の数や発行可能な株式の数、株式の譲渡に制限を付けるかどうか、取締役会を置くかどうかなどの重要事項を決定します。取締役の選任も発起人が行わなくてはなりません。
定款とは、会社の基本事項などを記載したもの。定款を公証人に認証してもらった後、法務局で会社の設立登記を申請します。
設立登記とは、会社を法人格として公的なものとする手続きです。
登記の申請には、定款のほか、法人用の印鑑、資本金の払込も必要です。発起人は株式を1株以上は必ず引き受ける必要があり、資本金の払込がその証明となります。
会社設立後、発起人がそのまま取締役となる場合には、会社設立後に会社の代表者として役場や税務署、年金事務所などへの届出手続きをする必要もあります。
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発起人には負うべき責任がある
発起人には、株式会社の設立時に関してさまざまな責任を負うことも義務付けられています。
1.出資した財産の価値が低い場合の責任
発起人による出資は、現金だけでなく不動産・動産などの現物出資も可能です。
現物出資の場合、その価値を示す「価額」を定款に記載する必要があります。
現物出資された物の価値が実際の価値よりも著しく低い場合、つまり定款に実際以上の高い価額を記載した場合、発起人にはその差額を支払う義務があります。
これを「財産価額補填(ほてん)責任」といいます。
2.出資の払込を仮装した場合の責任
出資の仮装とは、出資金の払い込みを行ったかのように偽装することです。
例えば、払込の事実を作るために一時的な借金をし、法人口座への払込記録を作った後、すぐに引き出して返済するような「見せ金」がよく使われる手法です。
出資を仮装した場合、発起人は仮装した出資の全額を支払う責任を負います。
仮装に関与した別の発起人や取締役がいれば、連帯責任が問われます。現物出資でも同じです。
これは「仮装出資履行責任」と呼ばれます。
3.会社および第三者への損害賠償責任
発起人は、次の2つの場合の損害賠償責任についても負うべきとされています。
任務を怠り会社に損害を与えた場合の賠償責任
発起人が会社設立の際に行うべき任務を怠り、結果として会社に損害を与えた場合には、その責任を負わなくてはなりません。
これは「任務懈怠(けたい)責任」とも呼ばれます
第三者に損害を与えた場合の賠償責任
発起人は、会社設立のために行うべきことについて、悪意を持って、あるいは重大な過失によって第三者に損害を負わせた場合には、その損害賠償責任を負います。
4.株式会社が不成立となった場合の責任
会社設立に向けて手続きを進めていたものの、何らかの事情で最終的な会社設立に至らなかった場合、設立のために行った手続きやその費用については、発起人が負担しなくてはなりません。
不要となった印鑑の作成にかかった費用や、定款認証のために支払った手数料などもすべて戻ってこないということです。
ちなみに、最後の第三者への賠償責任を除いては、株主全員の同意があれば責任を免除してもらうことも可能です。
また、これらはあくまで、会社設立時に発起人が負うべき責任です。会社設立後、運営上で起きたことに関する責任は、発起人ではなく会社の役員が負うこととなります。
発起人と株主、取締役とは何が違う?
発起人以外に、株式会社の設立では「株主」や「取締役」という言葉もよく使われます。
株主と言えば会社の株式を保有する人、取締役と言えば会社の代表者、というイメージはあるものの、何がどう違うのかわかりにくいですよね。
ここで発起人と株主、取締役との違いを見ておきましょう。
株主との違い
発起人は、一株以上の株式を引き受けなければなりません。そのため、会社設立後は自動的に株主となります。複数の発起人がいる場合、それぞれが一株以上を引き受けます。
ただ、「発起人=株主」ではあるものの、「株主=発起人」ではないので注意が必要です。
発起人は株主になりますが、もともと発起人でなかった株主が発起人になることは不可能です。
取締役との違い
発起人が会社設立を行い、出資する「オーナー」であるのに対し、取締役は設立後の会社の代表として事業運営を行う立場です。
発起人が行うべきことの1つに、取締役の選定があります。
1人での会社設立を含め、多くの場合は発起人が自らを取締役に選任しますが、発起人が必ずしも取締役となるわけではありません。
取締役は社内の人に限らず、社外取締役として外部から迎える場合もあります。
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発起人になるための要件
発起人になるにはどうすればいいのか、何か条件があるのかについても見ていきましょう。
発起人になれない人はいる?
会社法には、発起人になるための要件はありません。年齢や国籍などの制限もありません。
ちなみに、自己破産などの経歴も問われません。
では誰にでもできるかと言えば、現実的には年齢についての制限があります。本人が発起人となれるのは15歳以上のみです。
会社設立の手続きでは、発起人は定款や登記申請書に実印を押すと同時に、印鑑登録証明書を提出しなくてはなりません。しかし、印鑑登録は15歳以上にしかできません。
また、民法では、法律に基づく行為ができるようになる年齢が18歳とされています。
それまでは自分ひとりでの会社設立はできず、親など法定代理人の同意が必要です。
発起人は何人必要?
発起人については人数の制限もありません。もちろん1人以上は必要ですが、上限はないので何人でも発起人になれます。
とは言え、手続きをするには、発起人の数は少ない方が簡単です。複数の発起人がいる場合、全員の同意が必要な事項も多いからです。
ただ、1人では出資できる金額に限りがあることは否めません。
発起人には法人でもなれる?
法人でも発起人になることはできます。
新事業に乗り出したり、子会社を設立したりする場合などは会社を発起人とすることもあるでしょう。
ただしその場合、設立する会社の事業目的は発起人となる法人の定款に記載された「事業目的の範囲内(関連のある事業)」でなくてはなりません。
そうなると「事業目的の範囲内」がどこまでをいうのかが気になるところ。
これは定款に明記された目的そのものに限られず、その事業を行うために間接的にでも必要な事業であればよい、という幅広い解釈がなされています。
とは言え、営業許可が必要となる事業の場合は要注意。定款に事業目的として明記されていなければ許可が下りないため、ない場合は定款に事業目的を追加する必要があります。
また、法人は発起人にはなれますが取締役にはなれないことも頭に入れておきましょう。
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発起人を複数にする場合の注意点
1人で会社設立をするには資金が足りないなどの理由から「発起人を複数にして出資を増やそう」と考える人もいるかもしれません。
しかし、複数の発起人がいることには、次のようなデメリットや注意すべき点があることも知っておくべきです。
注意点.1 手続きに時間がかかる
発起人の人数が増えれば、書類作成時の手間も増えます。全員が押印すべき書類には全員の印鑑証明が必要です。
手続きを専門家に委任するにしても、発起人全員分の委任状を用意しなくてはなりません。
資本金の払込も、発起人全員が行わなくては手続きが進まないため、人数が増えるほどその分だけ時間がかかるおそれがあります。
注意点.2 意見が割れる可能性がある
会社設立の意思は同じでも、事業に関することでは意見が割れる可能性があります。発起人の数が多いほど、会社としての意思決定には時間がかかることも少なくありません。
会社設立には基本的な事項から重要事項まで、発起人で決めるべきことがたくさんあります。意見が分かれれば苦労することになるでしょう。
注意点.3 株式の所有割合で力関係が変わる
発起人が複数の場合は、株式を各自どれくらい保有するかも重要なポイントです。設立登記が済んで株式会社となれば、重要事項は株主総会で決めることとなります。
決議には、株主の持ち株比率(出資した額の割合)が大きく影響します。
例えば、持株比率が3分の2以上あれば、定款の変更や取締役の解任といった重要事項(特別決議)を単独で可決できます。それが自分でなければ、他の発起人に経営権を奪われかねません。
とはいえ、発起人の持ち株比率が全員同じだと、意見が割れた場合の意思決定に時間がかかります。
発起人の中でも誰がイニシアチブをとるのかを決めておくとよいでしょう。
発起人が用意しておくべきもの
では、株式会社の設立手続きをするのに、必要となるものは何でしょうか。
書類の作成を行政書士に任せたり、登記手続きを司法書士に任せたりすることも多いですが、少なくとも自分で用意しておかなくてはならない書類について説明します。
1.個人が発起人になる場合
発起人が個人である場合には、次の書類が必要です。
●個人の印鑑登録証明書
●発起人名義の預金通帳
個人の印鑑登録証明書は市町村役場などで取得します。3カ月以内に発行されたものでなくてはならないことに注意しましょう。
発起人として必要なのは1通ですが、取締役にもなる場合はさらにもう1通必要です。
預金通帳は出資金の振込先となる個人口座のものが必要です。
定款に記載した出資金額をその口座に払い込んだら、その通帳のコピーをとり、出資金の払い込み証明書として提出しなくてはなりません。
2.法人が発起人になる場合
発起人が法人である場合には、以下の書類が必要です。
●法人の印鑑証明書
●法人の登記簿謄本
印鑑証明書と登記簿謄本は、いずれも3カ月以内に発行されたものであることが必要です。
登記簿謄本が必要である理由は、前述の通り法人が発起人となる会社設立の場合には会社の目的範囲内での権利能力しか認められていないため、設立する会社の目的がその範囲内に含められているかどうかを確認するためです。
なお、ここでは会社設立の手続きを司法書士や行政書士などの専門家に依頼した場合に、最低限必要となる書類について説明しました。
しかし、一人で手続きを行う場合などには、他にも設立に必要な書類を用意する必要があることに注意が必要です。
設立に必要な書類については、こちらの記事もぜひ読んでみてください。
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まとめ
発起人は、会社設立のすべての手続きを担い誕生する会社の礎を築くキーパーソンです。
会社設立をお考えの方は、この記事を読んで発起人の役割や準備すべき事項などを理解しておきましょう。
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