会社設立の手続きを自分でするには?メリット・デメリットも解説

会社設立を自分でする方法
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会社を設立するにあたり、出費を抑えるために「自分でできることは自分でやりたい」と思う人も多いのではないでしょうか。

もちろん、会社の設立手続きは専門家でなくても行えます。
ただ、株式会社の設立に必要な定款認証の手続きや登記申請などは難易度が高く、知識のない人が一から自分でやるには相当の時間と手間がかかります。

この記事では、会社設立に必要な手続きとその流れを詳しく説明。設立手続きにかかる費用や自分で行うメリット・デメリットなどを解説します。

自分でする場合と専門家に依頼する場合の比較もするので、ぜひ参考にしてください。

目次

自分で会社設立する際に必要な手続きとその流れ

自分で会社設立する手順

まず、会社設立に必要な手続きを自分でやるにはどう進めていけばいいのか、必要な手続きとその流れを把握しましょう。

Step1 会社の基本情報を決める
Step2 定款を作成する
Step3 定款の認証を受ける
Step4 資本金の払い込みを行う
Step5 登記書類を準備する
Step6 設立登記の申請を行い、登記を完了する

ちなみにこの記事では、会社の形態として最も数が多く一般的な「株式会社」を1人で設立することを前提に説明します。

1. 会社の基本情報を決める

会社設立の手順その1

はじめに、会社の基本となる次の事柄を決めます。

  • 会社の商号(会社名・店名)
  • 会社の所在地
  • 事業内容
  • 発起人
  • 資本金の額
  • 取締役会などの機関設計、役員の選任
  • 事業年度(決算の区切り)

発起人」とは、簡単に言えば会社を設立する人のこと。発起人は、資本金の出資や定款作成、役員の選定を行います。

自分1人で会社を設立すると決めた場合は、発起人も役員も自分1人です。会社設立後には、発起人は株主となります。会社には必ず1人以上の「取締役」を置く必要があり、1人で立ち上げた会社なら自分が取締役になります。

株式会社を設立する場合、資本金とはすなわち株主からの出資です。
自分1人で会社設立をする場合には、自分が出せる金額が資本金の額です。

法律上は、資本金が1円でも株式会社の設立は可能。しかし現実的には、少なくとも「開業費用+向こう3カ月分の運転資金」はないと続けていくのは困難です。

1人での起業でない場合、役員の構成や役員数についてはこちらの記事も参考にしてください。

2. 定款を作成する

会社設立に必要な定款の作成

会社法には、「株式会社の設立時には発起人が『定款』を作成しなくてはならない」と定められています。
定款とは、会社の憲法とも呼ばれるルールを定めたもので、先に決めた基本情報に近い内容です。

必ず記載すべき内容(絶対的記載事項)が次のとおり決まっています。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 出資額またはその最低額
  • 発起人の住所・氏名

さらに、「発行可能株式総数」についても会社の登記申請までに定款に記載することが義務付けられています。定款に記載された数以上の株式を発行することはできません。

またこのほかにも、状況によって定款に記載しておくべきこと(相対的記載事項)や、任意で記載できること(任意的記載事項)もあります。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

3. 定款の認証を受ける

会社設立に必要な定款の認証

株式会社の場合、作成した定款はそのままでは効力がありません。
各都道府県の公証役場にて、公証人による認証を受ける必要があります。

記載内容が法令に反していないか、正式な方法で作成されたものかなどを審査され、問題がなければ正式な定款として認証されます。
そのため、認証を受ける前に、作成した定款を公証人にチェックしてもらいます。

定款認証には、次の書類が必要です。

  • 定款 3通
  • 発起人の印鑑登録証明書
  • 3~5万円の収入印紙

認証の申請は、委任状などがあれば代理人でも可能です。

また、定款認証には、認証手数料として5万円、謄本代として約2,000円の費用もかかります。
詳しくは「会社設立の手続きにかかる費用 」の章で説明します。

4. 資本金の払い込みを行う

会社設立に必要な資本金の払込

定款の認証が済んだら、銀行の口座に資本金の払い込みをします。

この段階ではまだ会社(法人)としての口座は作れないので、発起人が普段から利用している個人名義の銀行口座を使います。このために新たな個人口座を開設する必要はありません。

振込が完了したら、通帳のコピーをとります。
必要なのは、表紙と表紙の裏、振り込み内容が記帳されているページのコピーです。
これは、次に説明する設立登記の手続きで必要となります。

ちなみに、資本金として定めた額のお金がすでに口座に入っている場合でも、会社のための「払込」という手続きを踏むことが必要です。

5. 法務局に提出する登記書類を準備する

会社設立の手順その5

正式に会社を設立するには、法務局に法人設立登記の申請をする必要があります。
法人設立登記とは、設立する会社(法人)の情報を公的に登録する手続きです。

株式会社の法人設立登記を申請するには、次のようなものが必要です。

  • 定款(公証人によって認証されたもの)
  • 株式会社設立登記申請書(様式あり)
  • 登録免許税の収入印紙貼付台紙
  • 登記すべき事項をまとめた文書(データ)
  • 資本金の払込証明書
  • 印鑑証明書
  • 印鑑届出書(様式あり)
  • その他の添付書類(ケースによって異なる)

定款は、公証人による認証を受けたものを提出します。設立登記申請書は様式をダウンロードし、必要事項を記入し、押印します。登記申請も、書面だけでなく電子申請が可能です。

上記のリストで「様式あり」としたものは、法務局の公式サイトからダウンロードできます。
このほか、わかりにくい3点の項目について見ておきましょう。

登録免許税の収入印紙貼付台帳

法務局に各種登記を行う際には、「登録免許税」が課されます。
株式会社設立の登録免許税は、税率が資本金の額の「1000分の7」。これが15万円に満たない場合は一律で15万円と決められています。つまり最低でも15万円です。

登録免許税は収入印紙で納めます。登記申請書の様式の最後にある貼付台紙の指定の位置に貼ってください。押印(消印)があると無効になるので、収入印紙に印鑑は押しません。

登記すべき事項をまとめた文書(or データ)

登記すべき事項をまとめた文書を入れたCD-R

設立登記で登記すべき事柄は、会社法に定められています。
事業の目的や商号、本店所在地のほか、場合によっては29もの項目を記載する必要があります。

このすべてを記載するにはかなりのスペースを要するため、登記申請書のほかに別紙として、あるいはCD-RやUSBメモリで添付するのが一般的です。
この際、申請書には「別紙のとおり」などと記入します。


この他に添付書類として何が必要かは、各々のケースで異なります。
例えば発起人以外の人が取締役となるなら取締役の、監査役を置く「監査役設置会社」なら監査役の「就任承諾書」も必要です。

また、発起人が出資する資金を「モノ」で支払う「現物出資」をした場合には、裁判所が選任した検査役の調査報告書やその附属書類も添付しなければなりません。

資本金の払込証明書

会社設立に必要な資本金の払い込み証明

発起人の口座に資本金を振り込んだ際の通帳コピーは、ここで使います。
かつては金融機関が発行した払込証明書が必要でしたが、今は簡略化され、通帳のコピーを提出するだけでよくなりました。

コピーとは別に、別の用紙で「払込証明書」を作成し、それにコピーを合わせて綴じたものを提出します。

必要な書類が揃ったら、法務局への法人設立登記申請を行いましょう。 

6. 登記を申請し、設立登記を完了させる

法人設立登記を行う法務局

出資金の払込完了日、あるいは発起人が定めた日から2週間以内に、登記の申請を行わなくてはいけません。

申請は管轄の法務局の窓口に出向くほか、郵送やオンラインでも可能です。

申請後、登記の審査には1週間程度かかります。
申請書に不備があれば修正などの指示がなされます。修正の期日も決められるので、必ず守りましょう。
問題がなければ、設立登記は完了。法人としての存在を認められたことになります。

会社設立の手続きが済んだ後、事業を始める前にすることについて紹介した記事もあります。
こちらも参考にしてください。

会社設立後にすべきお金にまつわる手続き

設立登記の手続きは、あくまで会社の存在を社会に示すためのもの。事業を行うには、税金や社会保険などに関する手続きも必要です。

必要となる手続きについて、主なものを見ていきましょう。

法人名義の銀行口座の開設

会社設立に必要な法人口座の開設

設立登記をすれば、法人名義の銀行口座が開設できるようになります。
しかし法人口座を作るには審査があり、近年では防犯の点から確認も厳しくなっています。必要な書類は確実に揃えてください。

すぐに開設できるとは限らないので、早めに手続きをしておきましょう。

ちなみに、個人名義の口座をそのまま利用しても、法的に問題はありません。
ただ、プライベートのお金と公私混同の状態なのではないか、と金融機関や税務署、取引先などから疑われるおそれがあります。
法人口座であれば、信用度が高くなるのは確かです。

銀行口座を開設するには、次のような書類を金融機関に提出します。

  • 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
  • 印鑑証明書
  • 会社実印
  • 銀行印
  • 定款など事業内容がわかるもの
  • (許認可が必要な事業の場合)事業の許認可証
  • 開設手続きをする人の本人確認書類

必要となる書類は金融機関によって異なります。
必ず口座を開設する金融機関で事前に確認をしてください。書類の提出だけではなく、口頭での聞き取り、面談などが行われる場合もあります。

また、登記簿謄本や印鑑証明などは「発行日から6カ月以内のもの」などの指定があるケースも多いので注意が必要です。

会社設立後に課税対象となる税金

会社設立で納税が必要となる税金

会社を設立したら、個人とは異なる税金が会社にかかります。
主な税金とその税率を見ておきましょう。

税の種別 税率
法人税・課税所得金額800万円以下:15%
・課税所得金額800万円超え:23.2%
消費税・10%
法人住民税・法人税割 + 均等割
税率は自治体により異なる
法人事業税・税率は都道府県により異なる
税率は執筆当時のものです。

それぞれもう少し詳しく説明していきます。

法人税

個人がその所得に対して納める所得税に対し、法人が納めるのが法人税です。
税率は、所得が多くなるほど高くなる所得税とは異なり、基本的には一律です。

ただし中小企業の場合、課税所得の額が800万円以下であれば軽減措置が適用されます。

消費税

消費税は、原則として売上高が1000万円を超えた年度の2年後から課されるようになります。
会社設立から2年間は納税が免除されるのです。

ただし、資本金が1000万円以上の場合は設立直後でもその年から課税業者です。

法人住民税

個人がその居住地とする地域に納める住民税と同じく、法人にも法人住民税を納める必要があります。
法人住民税は、法人税額の額に応じて加算される「法人税割」と、所得にかかわらず発生する「均等割」で成り立っています。

均等割の部分については、事業が赤字となっても納税する義務があります。

法人事業税

法人事業税は、事業活動を行うにあたり受けている公共サービス(公道など)にかかる税金で、都道府県に納めるものです。

税率は、資本金の額や事業の開始年度、都道府県により異なります。

会社の設立で加入義務が生じる社会保険(健保・年金)

会社設立時に加入する社会保険

法人登記を済ませたら、厚生年金保険や健康保険への加入義務が生じます。
具体的には「常時従業員を使用する場合」とされていますが、これには従業員を雇わないいわゆる「一人起業の社長」も含まれます。

設立登記の完了後、5日以内に管轄の年金事務所に次の書類を提出します。

  • 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届(扶養する人がいる場合)

添付書類として次の書類も必要です。

  • 登記簿謄本
  • 法人番号指定通知書のコピー

健康保険・厚生年金の保険料は、給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)に保険料率をかけて算出します。
厚生年金の場合、保険料率は18.3%で固定されていますが、健康保険の料率は年度や都道府県によって異なります。

健康保険・厚生年金とも、保険料は労使折半となり、一人社長の場合も半分は会社負担、半分は個人負担です。

従業員を雇うと加入義務が生じる保険

会社設立で必要となる労働保険への加入

従業員を1人でも雇う場合には、上記の健康保険と厚生年金のほか、雇用保険と労災保険(いわゆる「労働保険」)に加入する義務が生じます。

労災保険は雇用の種類に関係なく、雇用保険はパートでも条件を満たせば加入が義務付けられています。
役員は雇用関係にないため適用されず、一人社長も加入対象とはなりません。

加入の手続きは、労働基準監督署・ハローワークにて行います。申請書類の提出先や提出期限、必要な書類は次のとおりです。

提出先 必要書類・添付書類
労働基準監督署・労働保険 保険関係成立届
・労働保険 概算保険料申告書
※それぞれ事業主控えをもらう
ハローワーク・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届
・労基署に提出した書類2種の事業主控え
・事業所の確認書類
 (登記事項証明書など)

いずれも、従業員を雇い入れた日の翌日から10日以内に、事業所のある地域を管轄する届け出る必要があります。

雇用保険料は、従業員本人も一部負担します。労災保険料は全額、事業主の負担です。

会社設立後にやるべきその他の開業準備

税金や保険に関する手続きのほか、事業を行う際にしておくべき手続きもあります。

主な2つについて見ておきましょう。

個人事業の廃業届の提出 (法人成りの場合)

会社設立時に行う個人事業の廃業届

個人事業主だった人が会社設立をした(法人成りした)場合には、個人事業の廃業手続きをしなくてはなりません。
法人設立の登記をしても個人事業は自動的に廃業とならないので注意してください。

廃業するには、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
法人設立に伴う廃業のため、届出書にある法人名や代表者名などの欄にも記入してください。

青色申告をしていた場合には、青色申告の取りやめ届出書も提出します。ただし、個人の自宅を法人の事務所として使う場合の家賃収入など、不動産所得がある場合には青色申告を続けた方がいいので提出不要です。

従業員を雇い、給与を支払っていた場合には、給与支払事務所の廃止届出書も提出します。
さらに、消費税の課税事業者だった人は、不動産所得がなどがない場合「事業廃止届出書」も提出する必要があります。

また、事業を廃止したことは税務署だけでなく都道府県や市町村にも届け出る必要があります。
開業時に届け出をしたものに関しては廃業の手続きも必要と見ておきましょう。

社内インフラなどの整備

実際に事業を始めるためには、社内の設備も整えておかなくてはなりません。ここでは一般的なオフィスを想定し、主なものを挙げてみます。

  • 電気・ガス・水道等の公共インフラ
  • インターネット環境
  • 電話番号の取得・電話回線の設置
  • パソコン・複合機等のオフィス機器の整備
  • 各種ITツール・ソフトの購入

それぞれ見ていきましょう。

電気・ガス・水道等の公共インフラ

会社設立で必要となる電気設備

電気・ガス・水道は事業開始までに必ず手続きをしておきましょう。
電力会社とガス会社については自由化により、契約する会社を自分で選べます。

複数の会社の料金やサービスを比較して最適な会社のプランを選び、ランニングコストを少しでも抑えたいものです。

インターネット環境

会社設立で必要なインターネット環境の整備

インターネット回線も、複数の会社のサービスを比較検討して決めてください。対応エリアや通信速度、同時接続台数などは運営会社によって異なります。自社に最適なプランを選びましょう。

契約しているスマホやプロバイダとセットにすることで、割引が適用される回線もあります。
もちろん、セキュリティ対策も重視してください。

電話番号・電話回線

会社設立で必要となる社内インフラ整備

会社を設立したら、基本的には固定電話を備え付ける必要があります。
携帯電話のみでも事業はできますが、やはり固定電話がある方が信用もされやすいです。

インターネット回線を利用したIP電話などは、工事や加入権不要で電話番号を取得できるので、NTT加入電話より手軽に固定電話を開通できます。

パソコン・スマホ等の電子機器

会社設立で必要となるパソコンやスマホ

パソコンやスマホも、今やビジネスの必需品と言っていいでしょう。パソコンは値段によって性能も大きく異なります。
利用の仕方によって、必要なスペックや台数も異なります。
自社の事業にはどの程度のスペックのパソコンが何台必要なのかをよく考えて決めてください。

中古品などで揃えれば安く済ますこともできますが、故障のリスクがあるためかえって高くつくおそれもあります。

各種ITツール・ソフト

会社設立時にあると便利なweb会議ツール

経理・会計ソフト、勤怠管理システムなどのITツールは、あれば業務効率化に確実に役立ちます。
なくても処理は可能ですが、会社の規模が大きくなるほど作業負担が大きくなるため、必要性も高くなるでしょう。

そのほか、Web会議やビジネス用チャットツールの使用も主流になりつつあります。
取引先とのやりとりにも便利なので、検討をおすすめします。

その他、事業開始をスムーズにするための準備

会社設立時に作っておきたい名刺

上記のほか、事業開始をスムーズにするための準備として次のようなものが挙げられます。

  • 公式webサイトの制作
  • 会社のロゴ・ロゴマークの作成
  • 名刺の作成

webサイトを作っておくと、知名度を上げたり集客ツールとしての使用ができたりするほか、信用度も上げられます。

ロゴマークは会社をブランディングするのに役立ちますし、対面での取引が多い事業なら名刺も用意しておきたいところです。

会社設立の手続きにかかる費用

会社設立手続きにかかる費用

ではここで、会社設立の手続きにどのくらいの費用がかかるのかを改めて見ておきましょう。

株式会社と合同会社に分けてまとめているので比べてみてください。

株式会社設立の費用

株式会社の場合、設立には次のような費用が必要です。
資本金や設備資金といったものでなく、設立する手続きだけにかかる費用です。

定款認証における公証人への手数料・資本金100万円未満:30,000円
・資本金100万円以上300万円未満:40,000円
・資本金300万円以上:50,000円
登記申請にかかる登録免許税150,000円
定款の謄本交付手数料1ページにつき250円(約2,000円)
収入印紙代・(紙の定款の場合のみ)40,000円
電磁的記録の保存・(電子定款の場合のみ)1件につき300円
情報の提供・(電子定款の場合)1件につき700円
・書面の場合は用紙1枚につき上記に20円加算

定款認証の手数料は、令和4年から変更となりました。均一料金だったものが、資本金の額に応じて30,000円~50,000円の3区分に分かれています。

書面での定款認証か電子定款かによっても金額は異なります。収入印紙代は電子定款では必要ないためかかりませんが、電子定款にするためのソフトなどの費用が別途かかります。

定款認証の紙と電子の比較については、こちらの記事も参考にしてください。

合同会社設立の費用

次に、合同会社の設立にかかる費用を見てみましょう。
株式会社との大きな違いは、定款認証が不要なため手数料がかからず、登録免許税が安いという点です。

定款認証における公証人への手数料認証不要のため0円
登記申請にかかる登録免許税60,000円
定款の謄本交付手数料 1ページにつき250円(約2,000円)
収入印紙代40,000円(紙の定款を作成した場合のみ)
電磁的記録の保存 ・(電子定款の場合のみ)1件につき300円
情報の提供 ・(電子定款の場合)1件につき700円
・書面の場合は用紙1枚につき上記に20円加算

公証人による定款の認証は不要ですが、定款を作成すること自体は必要です。

専門家に頼んだ場合との費用の違い

会社設立を自分でするか専門家に頼むかを比較解説する人

会社設立を自分でしようとする人のほとんどは、専門家に払う報酬分のお金がもったいないからではないでしょうか。

しかし結論から言えば、自分で設立の手続きをしても専門家に依頼しても、費用はそこまで大きく変わりません

確かに、専門家に依頼するためには手数料などとして40,000~50,000円ほど必要となります。
しかし紙でなく電子定款で作成するので収入印紙代40,000円がかかりません。
また、電子定款に必要なソフトウェアなどを自分で購入しなくて良くなるため、約50,000円程度が浮くことに。
そのため、結果的には専門家に依頼する場合と費用はほぼ同じになるのです。

自分で会社設立手続きをすることで、費用は専門家に頼むのと変わらないのに、手間が余分にかかる形とも言えるのではないでしょうか。
専門家に頼むメリットについては、最後の章でも説明します。

会社設立を自分で行うメリット・デメリット

費用的にそれほど得にはならないとしたら、会社設立を自分でするメリットはどこにあるのかが気になるところ。

自分で設立手続きをするメリットとデメリットを順に紹介するので、どちらをより大きく感じるか見てみてください。

会社設立の手続きを自分でするメリット

会社設立の手続きを自分でするメリット

会社設立の手続きを自分でするメリットには、次のようなことがあります。

  • 会社に関する法律や税金などの知識が増える
  • 専門家に支払う分のコストが浮く
  • 信頼できる専門家を探す手間が省ける
  • 自分のペースで設立手続きを進められる
  • 自力で手続きした経験や達成感が得られる

会社設立には法律や税金が密接に関係します。
自分で調べながら手続きをすれば、法律・税金の知識も身に付きます。
法律用語などに慣れれば、今後の事業運営で必要となる手続きをするにも精神的なハードルが下がるでしょう。

専門家に依頼するコストが浮くのはもちろんですが、信頼できる専門家を見つけるのも難しいもの。料金とサービスを比較する手間と時間もバカにできません。

また、専門家の場合はその営業時間などに合わせて連絡を取る必要がありますが、自分でやるならその必要もなし。難しく感じながらも無事に手続きが完了すれば、達成感も得られるでしょう。

会社設立の手続きを自分でするデメリット

会社設立の手続きを自分ですることのデメリット

自分で会社設立の手続きを行うには、次のようなデメリットもあります。

  • 手続きに時間をとられる
  • 書類不備や記入間違いなどで二度手間の恐れがある
  • 手続のやり直しなどにより費用がかかることもある
  • 知らずに法に反してしまう可能性がある

定款の作成から設立登記まで、慣れない手続きをすべて自分で調べながら進めていくのには相当な時間がかかります。
本業の準備と同時進行するのは容易ではありません。

必要な書類が足りなかったり、ミスをしてしまったりした場合には、法務局への出直しや修正などが必要です。また定款や登記を変更するには、手間だけでなく費用もかかります。

また、「面倒だから」「こんなことしなくても別に問題ないだろう」と手続きなどを省くことで、知らないうちに法に反してしまう可能性もあります。

会社設立を専門家に頼む大きなメリット

会社設立を専門家に頼む大きなメリット

設立時だけでなく、専門家のサポートはその後の会社経営にも必要となる場面は数多くあります。
依頼するべきかどうかは、目先の利益だけでなく長期的な視点で考えてみてください。

会社の設立時には、次のような専門家の手を借りるとスムーズに進められます。それぞれ専門分野が異なり、「この専門家でないと受託できない業務」も存在します。

例えば会社設立の登記については、司法書士でないと請け負えません。

税理士定款の作成、税務、決算
司法書士設立登記の代行
行政書士・定款等の行政書類作成
・各種許認可申請

担当外の業務を請け負おうとする業者もいるので注意が必要です。
ただし、税理士法人や司法書士などが連携している総合事務所もあり、そういった所なら便利に使えるでしょう。

では改めて、会社設立を専門家に頼んだらどんなメリットがあるのか見ていきます。

  • 時間的なロスがない
  • 万全な手続きができる
  • 無駄になる作業をしなくてすむ
  • 設立後もあらゆる場面で頼れる

それぞれ具体的に説明します。

時間的なロスがない

時間の無駄

専門家に依頼すれば、設立に関する手続きをすべて任せることができ、本業に専念できます。

会社の設立前後は、事業をスムーズに始め、軌道に乗せるための大切な時期です。
手続きについて調べものをするより、人に会って人脈を広げたり事業の戦略を練ったり、本業の情報収集をする時間を確保したいものです。

万全な手続きができる

会社設立に必要な書類の書き方を教える専門家

専門家なら、手続きに抜かりはありません。
実状に合った定款の作成や認証の申請、登録申請など必要な手続きを取りこぼしなく行えます。
必要書類の不足や不備、記入漏れといったミスも防げるでしょう。

自分で手続きをすると、知識不足や情報不足から、提出すべき書類の漏れや記入漏れ、記入間違いをしてしまう可能性も高いです。
意図せず実質と異なる組織で登記してしまうようなことも、ないとは言い切れません。

仮に自分が作りたい会社と定款の内容が合っていなくても、形式的な問題がなければ会社設立自体はできてしまいます。

後から間違いが発覚した場合には定款の変更が必要で、繰り返しになりますが費用がかかります。

無駄な作業をしなくてすむ

数多くの会社設立に携わってきた専門家なら、さまざまなケースで実際に必要となる書類や手続きについて精通しています。
そのため、会社設立も無駄なく効率良く進められます。

会社設立の手続きやそれに伴う手続きは、さまざまな事情やケースによって必要書類が異なるなど、複雑になっています。

そのため、自社の場合どんな書類が必要かがよくわからず、必要のない書類まで作成してしまう可能性もあるでしょう。
また、表向きは必要とされていても、実務上はなくて済むような書類もあったりします。

設立後もあらゆる場面で頼れる

会社設立後にも頼れる専門家

専門家に頼れるのは、会社設立時だけではありません。
会社の経営にはあらゆる場面で法律が絡んでおり、さまざまな義務や規制を遵守する必要があります。すべてを自分で調べて実行していくのは難しいものです。

その点、例えば税理士と契約すれば、顧問契約をすることによって決算など会計業務のサポートや、収益を上げるためのアドバイスなども受けられます。資金調達にも強い味方となるはずです。

会社設立にあたり融資を受けるにも、申請に必要な創業計画書の提出や面談についてアドバイスをもらえば、融資審査にも通りやすくなります。
創業融資の申請に何件も続けて携わっていれば、審査に通りやすくするには計画書にどんな内容を盛り込めばいいか、逆にどんな内容では不十分か、といったポイントも熟知しています。

登記の専門家である司法書士なら、設立登記だけでなく住所変更や役員の就任・退任、本社の移転などの登記手続きの際にも頼れる味方となるでしょう。

節約を考えるなら「合同会社」の設立も視野に

会社設立の形態を考えている人

必要な手続きを見ていくと、株式会社の設立にはやはり費用の負担が大きいと感じます。

設立できる「会社」には、株式会社のほかに合同会社、合資会社、合名会社と現時点で法律上4つの種類があります。
中でも少ない費用で設立できると注目されつつあるのが「合同会社」です。

そこでこの章では、合同会社の特徴やメリット・デメリットなどを、株式会社との違いを含めて解説していきます。

合同会社とは

会社設立の選択肢の1つ合同会社とは

合同会社は、会社の所有者と経営者が一致する「持分会社」の1つです。
「合同」という名称ですが、1人での設立も可能です。

株式会社では、基本的には所有者と経営者は異なります(所有と経営の分離)が、1人起業などの場合には、所有者と経営者が同じになることもあります。

また、持分会社の中でも、出資者全員が有限責任を負うという特徴があります。
有限責任とは、会社が倒産などで負債を抱えた場合、出資額を限度として責任を負うということ。それ以上の責任は問われません。
ちなみにこの点は、株式会社も同じです。

もう1つ、株式会社と大きく異なる点は議決権です。
株式会社では出資の比率に応じて決議の際の権利内容が異なりますが、合同会社では「一人一議決権」が原則となっています(定款に記載すれば異なる設定も可能)。

合同会社のメリット

合同会社のメリット

合同会社には、主に次の3つのメリットがあります。

  • 設立費用が安い
  • スピーディーな意思決定が可能
  • 株主総会の開催や決算公表の義務がない

合同会社の最も大きなメリットは、株式会社より安い費用で設立可能なことです。
合同会社の設立には、定款の作成は必要でも、認証を受ける必要がありません。また、設立登記にかかる登録免許税の額も低く設定されています。

そのため、設立手続きに必要な費用を比べると、合同会社なら株式会社より約15万円の節約が可能です(詳細は「会社設立の手続きにかかる費用」の章で説明)。
株主会社に必要な株主総会の開催や決算公告にも、準備の手間や費用が発生しますが、その必要性がないのも合同会社の利点です。

また、所有者と経営者が同じで株式会社のように経営の意思決定に株主総会を通す必要がありません。
そのため、経営について何らかの判断や変更をするにも意思決定に時間がかかりません。

さらに、株式会社には決算を公表する義務がありますが、合同会社にはありません。
決算公表には手間や費用がかかりますが、それが要らないというのも大きなメリットと言えるでしょう。

合同会社のデメリット

合同会社のデメリット

合同会社には低コストで設立可能などのメリットがある一方、次のようなデメリットもあります。

  • 認知度が低く信用が得られにくい
  • 意思決定が長引くこともある
  • 資金調達の方法が限定される

合同会社は近年ITベンチャーなどの新興によって認知度を上げつつあり、新たに設立される数も増えています。
しかし、合同会社は2006年に誕生した比較的新しい会社形態であるため、全体的な数はまだ株式会社に遠く及ばないのが実情です。

そのため「合同会社」と聞いてもピンと来ないという人も多く、社会的な信用も株式会社のようにはまだありません。

また、合同会社のメリットとして株主総会を通さない分スムーズな意思決定を挙げましたが、場合によってはデメリットとなることも。「一人一議決権」で社員全員が同等の議決権を持っているので、意見が対立した場合には意思決定に時間がかかることもあります。

資金調達の面で言えば、合同会社は株式会社のように株式を発行して出資を募ることができません。
そのため、広くたくさんの人から資金を集めるのは難しく、資金調達方法は融資などに限られます。

こんな場合は合同会社がおすすめ

合同会社の設立に向いている人

株式会社と合同会社にはそれぞれのメリット・デメリットがあり、「いったいどっちを設立すべきなのか」と疑問に思う人もいるでしょう。

それぞれのメリット・デメリットなどを踏まえると、次のような人には合同会社の方が向いていると言えます。

  • 開業資金を少しでも安くしたい人
  • 仲間と少人数で起業する人
  • スピーディーな意思決定で動きたい人
  • 社名でなく「屋号(店名」で商売する人

自分の会社を立ち上げたくても、資金がなくて踏み出せないという人は多いもの。少しでも費用がかからない方法で設立を、となるとやはり合同会社が最有力候補です。

株式会社のように株主総会を開く義務がなく決算広告の費用がかからないことで、ランニングコストを抑えることもできます。
仲間うちで小さな会社を立ち上げ、自由でスピーディーなビジネスを展開したいという人にも、合同会社の立ち上げはおすすめの形態です。

合同会社には「認知度・信頼度が低い」というデメリットがあるともお伝えしました。
しかし、例えば飲食業や小売業のように社名でなく店名を表に出す商売なら、「合同会社」という肩書は目立ちません。

まとめ~会社設立は専門家への依頼が得策です

会社設立には定款の作成から設立登記の申請、税金や社会保険・労働保険の加入手続きまで、数々の専門的で手間のかかる手続きを行う必要があります。

手続きをすべて自分ですることも可能ですが、手続きやその準備に多くの時間を費やすこととなるでしょう。そのうえ、記入漏れや必要書類の抜けといったミスをするおそれもあります。

実際のところ、専門家に依頼しても費用に大きな違いはなく、頼んだ方がメリットが大きくなることも。迅速かつ確実に手続きするには、専門家に依頼する方が得策です。

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