起業する人や起業間もない人向けに、低金利で無担保・無保証人という好条件で融資を行う日本政策金融公庫。「創業融資なら日本政策金融公庫で」と考える人も多いでしょう。
日本政策金融公庫でよく活用されている新創業融資制度は、他の金融機関と比べると融資を受けやすいという特徴はあるものの、書類の作成から面談まで、資金調達には多くの手間と時間がかかります。
この記事では、気になる審査期間だけでなく、少しでも振込までの期間を早めるためのポイントをお伝えします。手続きの流れのほか、申し込む人によって異なる3種類の窓口についても解説するので参考にしてください。
目次
日本政策金融公庫の融資実行の流れ
日本政策金融公庫での融資の申し込みは、次のステップで進めていきます。
Step1.制度についての相談、予約相談
Step2.融資の申し込み
Step3.面談
Step4.審査~融資可否の決定
Step5.融資金の振り込み
Step6.返済開始
まずはこの記事のテーマともなっている、気になる融資の審査期間について見ておきましょう。
融資実行までの期間と早めるポイント
融資を申し込むとして、気になるのが「いつお金が振り込まれるのか」です。
平均的にかかる期間と、振り込みまでの日数を縮めるポイントについて説明します。
融資実行まではおよそ3~4週間
融資の申し込みから面談、審査を経て融資の実行までには、3~4週間ほどかかります。ただし審査の内容はケースバイケースであり、提出書類の不備や不足があったり、融資申込者が集中したりなど、状況によってはより長い時間がかかることも考えられます。
融資の申し込みを考えているなら、早めに動き出すことをおすすめします。
融資実行までの期間を早める3つのポイント
日本政策金融公庫の融資を申し込むなら、次のポイントを押さえることで融資実行までの期間が早まる可能性があります。
それぞれについて説明していきます。
具体的かつ現実的な事業計画書を作る
提出する書類のうち、特に創業時に重視されるのは事業計画書です。事業計画がしっかりしており、いわゆるツッコミどころがなければ、審査もスムーズに進む可能性が高くなります。
事業計画書には、これまでの経歴や実務経験のほか、既に決まっている取引先の社名や資金・負債の状況、売上見込みなどを記載します。
ポイントは、具体的な数字を用いるなどしていかに現実的な計画となっているか。それにより、事業主としての計画性や事業への熱意、将来性を図ることができるからです。
必要となる書類の準備を万端にする
事業計画書の実現性を示すには、第三者も納得できる根拠が必要です。どんな資料があればよいかは、あらかじめ相談して聞く、あるいは自分で考えて用意しましょう。
面談で聞かれる事項をなるべく減らし、先に根拠などを示しておくことで、融資決定までの日数を短くできる可能性があります。
根拠を示すには、取引先との契約書や設備資金の見積書など、取引の事実やその内容が明確にわかる資料を用意する必要があります。
必要書類に不備や不足があると、再提出などで日数がかかってしまいますし、資料が不十分では審査にも時間がかかります。
認定支援機関を利用する
認定支援機関(正式には「認定経営革新等支援機関」)とは、中小企業の経営に関する知識や経験が国に認められた、税理士法人などの機関のことをいいます。
認定支援機関では、事業計画書作成など融資申し込みのサポートが可能です。認定支援機関を通して日本政策金融公庫への融資申し込みをした場合には、結果がわかるのが少し早まる可能性があります。
というのも通常、融資審査の結果は郵送で送られます。しかし認定支援機関から申し込んだ場合は、書類の郵送前に認定支援機関への電話連絡があるのです。数日ではありますが、郵送物が届く前に知ることができます。
では改めて、日本政策金融公庫に融資を申し込む際の流れを見ていきましょう。
融資の申し込みはまず相談から
融資の申し込みには、それぞれのケースに応じた必要書類の準備などが必要です。
そのため、日本政策金融公庫に融資を申し込むには、いきなり窓口に申し込みに行くより、相談から始めるのが一般的となっています。
制度や手続きの相談窓口
制度や手続きについての相談は「事業資金相談ダイヤル」で受け付けています。
電話相談の窓口は、申し込む人によって次の3つに分かれています。
- 個人事業主・小規模事業者
- 中小企業の事業主
- 創業を予定している人
ガイダンスが流れたら、自身の状況に合わせて下記の選択番号を押してください。
事業資金相談ダイヤル:
(フリーダイヤル) 0120-154-505
受付時間:平日9時~19時
※情報は変更となる可能性があります。下記のリンク先から公式ページをご確認ください
選択番号は、これから起業する人、創業して間もない人は「0」(創業ホットライン)、個人事業主・小規模事業主は「1」、中小企業の事業主は「2」です。
融資の申し込み前の予約相談
融資を申し込む前の具体的な相談は、予約相談という形で事前予約を受け付けています。こちらの相談はオンラインや支店の窓口で行っています。
中小企業の場合は、日本政策金融公庫の各支店にある中小企業事業の窓口で直接の相談が可能です。 会社案内や事業計画書、決算書などの資料を持って行きましょう。
公庫の相談ダイヤル以外の相談窓口
個人や小規模事業主からの相談は、商工会議所や商工会・生活衛生同業組合・都道府県の生活衛生営業指導センターなどでも受け付けています。
中小企業の事業主を対象とした相談は、日本政策金融公庫の各支店の中小企業事業の窓口で行われているほか、各地の商工会議所でも定例相談が実施されています。
具体的な相談に乗ってもらうには、資料として会社案内や決算書、事業計画書を持参してください。
ここからは、それぞれのケースごとに説明していきます。
個人事業主・小企業の融資申込手続き
融資の申し込みは、インターネット申し込みが推奨されています。
申し込みに必要な書類
インターネットでの申し込みには、次の書類のデータが必要です。
区分 | 準備書類(電子データ) |
---|---|
個人 | ・直近2期分の申告決算書 |
法人 | ・直近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書を含む) ・直近の試算表(※) ・履歴事項全部証明書または登記簿謄本 |
設備資金を申し込む場合 | ・見積書 |
個人・法人とも (初めて利用する場合) | ・創業計画書 ・企業概要書(創業計画書があれば不要) ・許認可証のコピー(飲食業など) ・運転免許証またはパスポートのコピー |
※ 決算後6カ月以上経過している場合、もしくは創業から間もなく決算を終えていない場合
郵送で申し込む場合は、上記の資料に加えて「借入申込書(国民生活事業用)」も必要となります。各書式は次のリンクからダウンロード可能です。
日本政策金融公庫|創業する人向け、借入に関する各種書類ダウンロードページ
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面談の内容とは
面談では、融資担当者が提出書類を確認しながら、資金の使いみちや事業計画、事業の状況を確認します。
資金や負債の状況なども見られるので、聞かれてもすぐ答えられるよう資料を揃えておきましょう。面談は担当者が店舗や工場に出向くこともあります。
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面談後から着金、返済について
面談後、審査で融資の可否が決まります。融資が決定したら、 契約センターもしくは支店から、契約に必要な借用証書などの書類が送られてきます。
書類を提出して契約手続きが終わったら、指定した金融機関の口座に融資金が送金されます。
返済は月賦払いが原則。毎月同じ日付に口座引き落としされます。返済方法には、元金均等返済や元利均等返済、ステップ返済などの返済方法があります。
中小企業の場合の融資申込手続き
中小企業の場合は、前述のように日本公庫の中小企業事業の窓口で相談した後、申し込み手続きを行います。
申し込みに必要な書類
中小企業が融資を申し込む際は、次のような書類の提出が必要です。
- 会社案内や製品カタログ
- 法人の登記事項証明書
- 直近3期分の決算書や税務申告書
- 納税証明書
- 最近の試算表
- 設備投資の場合は見積書
- 担保の内容がわかる資料
担保内容がわかる書類には、例えば登記事項証明書などが挙げられます。
審査から決定・送金、返済について
融資審査では、日本政策金融公庫の職員が本社や事業計画予定地などに出向きます。現場を見て事業計画の内容と照らし合わせたり、状況を具体的に把握したりした上で融資の可否が検討されます。
設備資金の融資には、対象となる物件についても現地確認などが行われます。
融資が決定したら、貸付契約の打ち合わせに進みます。契約や抵当権設定などの手続きが完了したら、融資金が送金されます。
返済は、原則として「元金均等割賦返済」で自動振替ですが、その他の支払い方式も応相談となっています。
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創業予定の場合の融資申込手続き
これから創業予定の場合もまずは上記の「事業資金相談ダイヤル」への相談または予約相談から始まります。予約相談で支店の窓口に行く場合は、創業計画書を持って行きましょう。
申し込みの窓口
個人で創業する場合も、申し込みはインターネットが推奨されています。窓口は、創業予定地の近くにある日本政策金融公庫の支店です。
会社を設立する場合は、開設する事業所の本店所在地にある日本政策金融公庫の支店が窓口となります。遠方の場合は、最寄の支店に相談してみてください。
申し込みに必要な書類
融資の申し込みには、次のような書類が必要です。
- 創業計画書
- 法人の場合は履歴事項全部証明書か登記簿謄本
- 設備資金の場合は見積書
- 担保がある場合はその内容がわかるもの
- 運転免許証かパスポートのコピー
- 飲食などの許認可証のコピー
担保がある人は、不動産の登記簿謄本か登記事項証明書も提出します。
郵送での申し込みには、このほか「借入申込書(国民生活事業用)」も必要となります。
生活衛生関係の事業を行う場合には、都道府県知事の「推せん書」(借入申し込みの額が500万円以下なら不要)または生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」が必要です。
面談から融資可否の決定、返済について
面談では、事業計画書の内容に基づきさまざまな質問がなされます。そのため、事業計画書だけでなく、付随する資料や資産・負債状況がわかる書類も見られます。
店舗や工場がある場合には、担当者が現地に出向いての審査も行われます。
融資可能と判断されれば、借用証書などの必要書類が契約センターまたは支店より送付されます。融資金は指定した銀行などの口座に入金されます。
返済は原則として月払いで、支払い方法には元金均等返済、元利均等返済、ステップ返済などが使えます。
まとめ~事業計画や融資の相談は認定機関Bricks&UKへ
日本政策金融公庫の融資の申し込みから融資金の振り込みまで、期間は3~4週間かかるというのが一般的。ただし審査の進み具合や他社からの融資の申し込み状況などによっても異なります。
融資の申し込みは、まずケースによって異なる相談窓口への相談から始めましょう。どのような書類が必要なのかを把握して揃え、提出する事業計画書には具体的な数字などを盛り込んで審査が通りやすいようにするのがポイントです。
融資についての相談はもちろん、起業や事業経営に関する相談は、当サイトの運営会社で認定支援機関でもある税理士法人Bricks&UKにて承っています。ぜひお気軽にご相談ください。