【創業融資の審査基準】押さえておくべきポイント④―資金使途

資金使途
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創業時に不足する資金の調達手段としてもっとも心強いのが「創業融資」です。
政府系の金融機関である日本政策金融公庫による融資がよく利用されていますが、融資を受けるには審査に通る必要があります。

融資において審査基準となるポイントは、大きく分けて次の4つです。

  1. 自己資金
  2. 経験と能力
  3. 返済可能性
  4. 資金使途

この記事では、このうち最後の「資金使途」について解説していきます。

審査基準その①自己資金についてはこちら

審査基準その②経験・能力についてはこちら

審査基準その③返済可能性についてはこちら

資金使途とは

資金使途

資金使途とは、資金の使いみちのことです。

生産設備や事務所内装費用、事業に使用する自動車や事務所建物・土地といった事業に必要な「資産」を取得する「設備資金」と、「仕入れ」、人件費の支払いや外注費、交際費や事業所の家賃といった「諸経費」を支払う「運転資金」に大きく分けられます。

対象にならない資金使途

資金使途

創業融資をおこなう金融機関の代表格である日本政策金融公庫の場合を例にとりますが、そもそも融資対象とならない資金使途があります。

事業とは関係がない使途

自宅の購入資金や自家用車購入資金、教育資金や生活費などは創業融資の融資対象とはなりません。

資本金や増資

会社設立の基礎たる資本金、資本増加を目的とする増資も融資対象としては認められません。
実質的に国や金融機関が出資するのと変わらなくなってしまうからです。

借り換え資金

借り換えだけを目的とするような融資は創業融資の目的ともなじまないため、認められません。

創業融資における設備資金のポイント

資金使途

設備資金についてのポイントとなる基準は以下の通りです。

根拠は適正か

設備となる資産を購入する資金ですから、通常は購入先が発行した見積書があると考えます。
見積書がなければその理由を確認することになりますし、その理由に納得がいかなければ使途として認めないこともあります。
また、見積書があればいいというものでもありません。審査担当者は該当品目の妥当な金額と比較しますので、明らかに相場と違う金額でその理由もはっきりしない場合は創業計画自体に疑念を持つこともあります。
根拠が適正かも需要な審査基準です。

適切な規模か

自己資金の額からみて妥当な事業規模か、その事業規模に対して設備計画があまりに過大でないかも重要な審査基準となります。
分かりやすい例として、自己資金が10万円のところに事業計画が全体で1000万円、そのうち特定の設備に900万円必要な場合で考えます。
審査担当者としては余りに準備不足の借り入れ依存計画ではないか、設備に900万円もかかるようなら本当の事業計画はもっと大きいのではないか、自己資金割合を高めるためにわざと事業計画を圧縮しているのではないかと考えることがあります。
設備計画が適正な規模かも審査基準として重要なポイントになります。

不可欠か、今でないとダメか

創業期は実績がないため、あまりリスクの大きい設備計画は危険と考えるのが普通です。
購入ではなくリースではだめなのか、新品ではなく中古ではだめなのかを十分検討しているかは重要なポイントです。
設備は購入でしか無理でその上中古ではなく新品でしか無理との「無理無理尽くし」の創業計画では、資金計画も硬直したものになってしまうでしょう。
そうなると創業融資の審査にも大きく影響を及ぼすことになります。

 

分かりやすい具体例として、設備計画が1000万円となっている創業計画で解説します。
【ケース1】
全部の設備が新品かつ購入でなくてはならず、どうしても1000万(融資希望額も1000万円)必要なケース

【ケース2】
設備の一部はリースで対応でき購入分も中古での対応が可能と検討した結果最低400万円でも可(融資希望額は1000万円だが難しければ400万円でも可)のケース

ケース1の場合のデメリット

どうしても1000万円必要となった1のケースでは、1000万円の融資が可能と判断されればそれで問題ないのは当然です。
しかし様々な材料を判断した結果1000万円の融資は難しいものの、400万円での融資は可能と判断された時が問題です。
1000万円の融資が難しい以上他の金融機関からの資金調達が見込めない限り、融資自体が難しいとの結論を出さざるを得ません。総額1000万の資金調達がおこなえなければ、創業計画自体が成り立たないからです。

ケース2の場合のメリット

一方最低400万円でも可との考えが事前に示されている②のケースでは、1000万円の融資が可能であれば1000万円の融資判断をおこなうことは当然です。可能であれば1000万円で融資可と判断するでしょう。
また様々な材料を検討した結果400万の融資なら可能となった場合、それでも創業計画が成り立つと事前にわかっているわけですからこれも400万円の融資判断をおこなえばそれで済むことになります。
2のケースの方が結果として、創業融資を受けることができる可能性が高くなります。

 

言葉を変えていえば「設備購入が不可欠か、今でないとダメか」を十分に検討しているかといった問題は、「創業計画自体の弾力性があるか」との問題と同じともいえます。
不可欠か、今でないとダメかについて十分に検討しておくことは資金使途における審査基準の大きなポイントですが、同時に創業計画全体の弾力性を高めることにつながり、結果として創業融資を受ける可能性を高めることとなります。
同様の理由で、その設備の購入がリスクの高い創業期に必要かどうかが検討されているかも、重要なポイントです。
稼働当初に必ずしも必要とはいえない設備を外部調達の資金で補うことはそれだけ返済負担を大きくし、事業開始後の資金繰り、返済可能性にも影響を与えます。
その設備購入はどうしても必要なのか、その方法でしか無理なのか、今でないとダメなのかについて十分検討されているかどうかも、創業融資の審査基準である資金使途の重要な着眼点です。

創業融資における運転資金のポイント

資金使途

一方、商品仕入れや諸経費支払といった運転資金が使途となっている場合のポイントは以下の通りです。

根拠は適正か、違う名目でないか

本来設備資金として計上すべき資金使途ではないか、家賃支払いとあるが本当に事業として必要な家賃の支払いなのかなど、創業融資の対象としての運転資金が正しく計上されているかという審査基準です。
違う名目で取り扱うべき資金、特に融資対象とならない資金を運転資金として計上されていれば非常に問題視されます。
本来の事業計画を圧縮していたり、偽装していたりしていることが疑われるからです。
単なる無知や過失で計上されていれば修正するだけで済むと思われがちですが、そうではありません。
ひとつ疑わしい部分が出てくれば、他の部分にもあるのではないかとなるのが審査担当者の思考のパターンです。そういう意味では税務署の職員の考え方に近いのかもしれません。
不要な項目が融資対象として計上されているかは、融資審査上大きなポイントです。

額の算定は正しいか

本来運転資金は収入と支払のタイムラグがあるときに、その資金繰りを緩和するために外部資金を導入することが目的です。
創業期においては、売り上げが実現し現金化するまでの仕入れや諸経費支払当がその目的でしょう。
にもかかわらず運転資金としての申込金額が大きければ、それだけあれば十分なはずの運転資金を何らかの理由で膨らまそうとしているのではないか、事業計画全体は本当はもっと大きいのではないか、本当は他から資金を調達していてその返済のために融資金を使うつもりなのではないか等の疑念を審査担当者は持つことがあります。
先程の解説と同様、この運転資金としての算定が正しいかも創業融資における審査基準として重要なポイントとなっています。

審査担当者の心理

資金使途

創業融資の審査担当者として、また金融機関として重要な問題のひとつは、「虚偽の創業計画を見抜けないこと」です。
虚偽の程度は自己資金の金額だったり計画全体だったりといった大きなものから、勤務歴が半年不足していたり少しの備品を水増ししたりとかの小さいものまであるでしょう。

しかしいくら程度が小さくても、「虚偽」は非常に融資判断上マイナスとして考えます。
いうまでもなく融資は信頼関係を前提としておこなうものです。いくら程度小さくても「虚偽」の申し立てをおこなう相手は、ほかのことも「虚偽」の申し立てをしているのではないかと考えてしまうのは普通のことではないでしょうか。
まして数百万円、数千万円の融資の審査をおこなう状況ではそう考えることこそが求められる場だといえるでしょう。
従って、単なる「無知・過失」と「虚偽」には大きな違いがあります。そしてそのことは次回、次々回の申し込みがあった場合にも情報として引き継がれます。
自己資金における「見せ金」と同様、資金使途における「虚偽」の申立ても創業融資の審査に大きくマイナスの影響を及ぼしますので、注意して下さい。

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まとめ

資金使途

いかがでしたでしょうか。
資金使途もやはり創業融資において、非常に重要な審査基準となっています。
しかし返済可能性と同様、これから創業する方にとって審査担当者がどのような基準に則って判断しているかは、事実ほとんど知られていないと思います。
今回の記事を参考にして創業計画全体を練り上げることで、創業融資が受けやすくなるだけでなく創業してからの事業が軌道に乗りやすくなるはずです。
自身で創業計画を練り上げる自信がない方は、事業者に最も近い専門家である税理士に相談してみてはどうでしょうか。
多くの税理士事務所で資金調達の相談は初回無料でおこなっています。まずは気軽に相談してみてはいかがでしょう。

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