
メロンパンブームに塩パンブーム、そして最近では高級食パンブームと、度々話題になっているパン市場。
小売業はコロナ禍での売上低下が気になるところですが、そんな中でも自分でパン屋を開業したいという人は少なくないでしょう。
この記事ではパン屋の市場動向から開業の仕方、そして開業に必要な手続き・費用に関する情報などをまとめました。
これからパン屋を開業したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
パン屋の開業を取り巻く市場動向

出典:矢野経済研究所「パン市場に関する調査を実施(2021年)」
かつては米食文化が中心の日本でしたが、2011年には一世帯当たりの消費金額でパンが米を抜いており、その後もパンの市場規模は年々拡大していきました。
矢野経済研究所の調査によれば、2020年コロナ禍の影響で市場規模が前年度比マイナスになったものの、2021年以降は回復の兆しが見え、今後も市場規模は増加していくとみられています。
(上記の矢野経済研究所「パン市場に関する調査」参照)
その一方で、帝国データバンクの調査では、パン屋の廃業が2019年に前年の倍以上になっており、同じパン屋でも明暗が大きく分かれる結果となっています。
おそらく今後も小規模チェーンや個人店のある程度の廃業は避けられないでしょう。
(帝国データバンク「パン製造小売業者の倒産動向調査(2019 年)」参照)
このような市場動向を踏まえると、単にブームだからといって開業しても簡単にはいきません。
これからパン屋を開業するなら、事前にしっかりとした計画・戦略を立てることが重要です。
パン屋にはどんな形態がある?
パン屋を開業するにあたり技術や経営に不安があるという方には、フランチャイズで開業するという選択肢があります。
そこでまずは、フランチャイズで開業することのメリット・デメリットを知っておきましょう。
フランチャイズのメリット
フランチャイズの一番のメリットは、開業から店舗運営全般に関して本部からのサポートを受けられるということです。
美味しいパンを焼くためには、長年経験を積んで知識や技術を身に付けなければなりません。
そのため専門学校に通ったりお店で働いたりしながら修行する必要がありますが、フランチャイズなら営業に必要な知識・ノウハウを短期間で修得することができます。
仕入れから製造までの作業も体系化されており、経験が浅い人でも美味しいパンを作れるので、開業のハードルは各段に下がるでしょう。
その他にも新商品の開発や接客の仕方、開業に適した立地選びなども、本部のデータを参考にできるなど、店舗運営の全般でサポートを受けられます。
店舗経営初心者で堅実な経営をしたいのであれば、フランチャイズでの開業も検討してみましょう。
フランチャイズのデメリット
フランチャイズに加入すると、加入金やロイヤリティを支払わなければなりません。
ただでさえパン屋の開業には高額な費用が掛かるので、フランチャイズの加入によりさらに支出が増えることはデメリットでしょう。
またフランチャイズとして開店するなら、本部の経営方針に従いお店を運営する必要があります。
仕入れ先から商品のラインナップ、お店のデザインまで基本的には一律であり、自分の思う通りのお店づくりはできないかもしれません。
フランチャイズにはこういった負担や制約もあるため、加入するべきかどうかは自分が開業する目的から考えてよく検討してください。
オリジナリティにこだわるのなら独立店がおすすめ
パンの製法には大きく分けて「オールスクラッチ製法」と「ベイクオフ製法」の2種類がありますが、フランチャイズの多くは工場で一括して生地を作るベイクオフ製法を用います。
そのためオールスクラッチ製法でパン作りにこだわりたいという人は、個人経営で開業するのがよいでしょう。
このようにパンの製法と経営形態は密接に関係するので、ここではパンの製法2種類についても解説しておきます。
オールスクラッチ製法
これは原材料の仕入から焼き上げまで全工程を店舗で行う製法であり、個人店ではこの製法を採用することが多いです。
オールスクラッチ製法のメリットは原材料の選択・生地の作り方が自由であり、自分好みでこだわりの商品を作ることができるという点です。
デメリットは、パン生地を一から作るため、職人の技術や製造の設備が必要であること。
そのためパンを作る技術にそこまで自信がなく、作業工程をできるだけ簡単にしたいという人にはあまり向きません。
ベイクオフ製法
工場で一括して作ったパン生地を冷凍し、各店舗で焼いて仕上げるという製法がベイクオフ製法です。
大手チェーンではこのベイクオフ製法が用いられることが多く、店舗では生地を焼くだけなので技術に関わらず安定した品質のパンを販売できます。
またお店に必要な設備も少なくて済むため、コストを抑えられるというのもメリットです。
一方、パン生地はどの店舗でも同じものを使うため、他店との差を付けにくいというデメリットがあります。
フランチャイズでは基本的にベイクオフ製法なので、自分で生地や原材料にこだわってパンを作ることはできません。
そのためパンによりこだわったお店にしたいという場合には、独立店で開業した方がよいでしょう。
パン屋の開業の流れ

開業までの大まかな流れは、次の7ステップです。
STEP.1 市場調査・コンセプト作り
STEP.2 物件探し・施工会社の決定
STEP.3 資金調達
STEP.4 設備導入
STEP.5 パン製造や接客オペレーションの確認
STEP.6 広告宣伝・プロモーションなど
STEP.7 開店
以上の流れに沿って、詳しく解説します。
市場調査・コンセプト作り
まずは市場調査とコンセプト作りです。
パン市場にはそのときどきでブームがあるので、トレンドを押さえつつ出店する場所の人口分布・年齢層もしっかり調査し、どのような商品が売れるのかを分析しましょう。
その上でメインターゲットとなる客層を決め、ターゲットに合わせてコンセプトを決めます。
例えばターゲットが若い層であればトレンドを前面に押し出したり、主婦層であれば高級食パン売りにしたりといった感じです。
競合店に負けないためには、オリジナリティがあるコンセプトで差別化を図らなければなりません。
その際、近隣の競合店分析も重要です。
コンセプトが決まれば、それに合わせて店舗デザインや商品・メニューも設定します。
市場調査・コンセプト作りをしっかり行い、お店作りを形にしていきましょう。
物件探し・施工会社の決定
パン屋の立地には駅前が適していますが、単に駅前で開業すればよいとは限りません。
お店の設備・従業員の人数によって製造できるパンの数には限りがあるため、小規模のお店を人通りの多い地域に出しても、製造が追いつかない可能性が出てきます。
立地は店舗の規模も合わせて考えましょう。
パン屋を利用する人の特徴は、駅から家・職場・学校になどの途中に立ち寄ることが多いということです。
このような人の流れを意識してうまく立地を定めれば、駅から離れた比較的安価な土地でも十分に集客が可能でしょう。
良い立地で開業するためには、競合店の立地なども参考にしながら綿密に分析しなければなりません。
立地が決まったら、施工業者を決めて店舗の着工に入ります。
資金調達
パン屋の開業には1,000万円~2,000万円ほどの資金が掛かるため、すべて自己資金で賄うのはあまり現実的ではありません。
そのためどうやって資金調達を行うのか、事前に考えておく必要があります。
預金しておいた自己資金のほかにも、会社員であれば退職金などを利用したり、家族・知人からの援助が受けられるのであればそれを活用することもできます。
それでも足りない分は融資を受けることになるでしょう。
融資には民間金融機関・保証協会の制度融資・日本政策金融公庫の融資などの選択肢があるので、どこから融資を受けるかも考えておきます。
後ほど説明しますが、開業資金の調達には日本政策金融公庫の創業融資を活用するのがおすすめです。
設備導入~開店まで
物件が決まって資金調達の計画も立てたら、店舗の設備を揃えましょう。
フランチャイズの場合は使用する設備も指定されることが多いですが、個人店であればすべて自分で決めることになります。
パン製造や接客、広告宣伝活動も、個人店かフランチャイズかで大きく異なります。
フランチャイズであれば本部のマニュアル等で体系化されていますが、独立店であれば接客や広告宣伝も自分で考えなければなりません。
合わせて読みたいおすすめ記事
集客には、チラシ配布やグルメサイトへの掲載、ホームページ開設やSNSを活用した情報発信など、様々な手法を駆使しましょう。
「パンを作ることが好き」で開業する人は、開業にはこのような経営に関する知識も必要になることを頭に入れておかなくてはなりません。
以上の準備が整えば、いよいよ開店です。
開店当初は予想通りの売上が出ないことも多いため、それを見越して十分な運転資金を用意しておくことが大事です。
パン屋の開業に必要な資格・手続き
最近ではサンドイッチのような「調理パン」を取り扱うパン屋やイートインスペースを設けたベーカリーカフェなど、店舗の多様化が進んでいます。
パン屋の開業に必要な手続きはお店の形態によっても異なりますが、まず必要な資格・手続きをまとめてみます。
【資格】
食品衛生責任者 | 食品に関わる事業に必要な資格 |
パン製造技能士 | パン職人の国家資格 |
【手続き】
菓子製造業の営業許可 | 自分で焼いた菓子などを店頭販売するのに必要な許可 |
飲食店の営業許可 | 飲食店を開業するときに必要な許可 |
食料品等販売業の営業許可 | 製造もしくは仕入れた食品の販売に必要な許可 |
まず開業するには「食品衛生責任者」の資格と「食料品等販売業の営業許可」は基本的に必須です。
ただし食料品等販売業の営業許可は自治体に申請するものなので、自治体によっては許可が不要であることもあります。
一方「パン製造技能士」は就職・転職で自分の技術を証明するとき有利ですが、開業に必須ではありません。
パン製造技能士の取得には実務経験などの要件もあるので、要件を満たさないのであれば無理に取得することはないでしょう。
取得が難しいのは「菓子製造業営業許可」と「飲食店営業許可」です。
まず食パンやあんパン・チョココロネなどの「菓子パン」を作って販売する場合、菓子製造業の営業許可が必要です。
反対に、サンドイッチや惣菜パンのような「調理パン」は「菓子パン」には入らないため、飲食店営業許可をとる必要があります。
一方、テイクアウトのないカフェなどであれば、パンを販売しても菓子製造営業許可は必要ありません。
ただしテイクアウト可能なベーカリーカフェのようなお店では、菓子製造営業許可が必要なこともあります。
このように区分自体が煩雑で「総菜パン」の定義も自治体によって違うなど、必要な許可を明確に判断がするのは難しく、多くのお店が飲食店営業許可と菓子製造業許可の両方を取得しているようです。
最近は菓子パンの他にサンドイッチを販売するお店も多いので、基本的には両方の許可が必要と考えておいてよいでしょう。
合わせて読みたいおすすめ記事
パン屋の開業費用はいくら必要?
開業に必要な費用をまとめると、おおよそ以下のようになります。
【物件取得費用・例】
保証金 | 500万円 |
礼金 | 50万円 |
仲介手数料 | 50万円 |
前家賃 | 50万円 |
【店舗投資費用・例】
店舗内外装工事 | 400万円 |
厨房機器 | 500万円 |
備品等 | 100万円 |
【運転資金・例】
仕入れ | 100万円 |
人件費 | 100万円 |
家賃・水道光熱費 | 30万円 |
宣伝・広告費 | 10万円 |
こちらはあくまで例であり、実際には立地や店舗の規模、イートインスペースの有無などで費用も大きく異なります。
物件取得費から運転資金まですべて含め、およそ1,000万円~2,000万円程度と考えておきましょう。
パン屋は店舗経営なので、それなりに多額の費用が掛かることは覚悟しなければなりません。
開業を考えているのであれば、早い段階で少しずつ貯蓄をしておくことが大事です。
開業の資金調達なら日本政策金融公庫がおすすめ
パン屋の開業では、多くの人は融資を受けることになるでしょう。
融資を受ける際におすすめなのは、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。日本政策金融公庫は中小企業支援を目的とした公的機関であり、創業融資には特に力をいれています。
日本政策金融公庫のメリットはまず、民間の金融機関ほど審査が厳しくないということです。
まだ実績のない創業前であっても、将来性や可能性を考慮して融資をしてくれます。
また無担保・無保証でも融資可能なので、保証人を立てられない人でも利用でき、民間金融機関より低金利であるため返済の負担を減らすこともできます。
さらに融資実行までの期間も民間金融機関とは違いがあります。
民間金融機関ではプロパー融資で1カ月、保証協会を利用すれば1.5カ月程度かかりますが、日本政策金融公庫ではスムーズにいけば2~3週間で審査が終わります。
審査期間が長くなればその分だけ開業も遅くなるため、審査期間は売上に影響する重要なことです。
このように開業の資金調達では日本政策金融公庫を利用するメリットが多いので、ぜひ日本政策金融公庫の利用を検討してみてください。
合わせて読みたいおすすめ記事
まとめ

パン屋の開業にはフランチャイズという選択肢もあるので、経験がそこまで長くない方でも開業は可能です。
個人で開業するのであればしっかりと市場調査をしたうえで、コンセプトを明確にして他店との差別化を図りましょう。
またパン屋の開業には多額の資金が必要なため、日本政策金融公庫の創業融資などで支援を受けることになります。
融資を受けるためには事業計画書をしっかり作り込み、融資担当者に将来性を評価されなければなりません。
認定支援機関である「税理士法人Bricks&UK」では、創業時の資金調達サポートや事業計画書の無料診断、そして開業後の集客までお手伝いをすることができます。
これからパン屋を開業しようと考えている方は、ぜひ一度Bricks&UKにご相談ください。
創業時の融資相談もBricks&UKにおまかせください!
当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」は、顧問契約数2,100社以上、資金繰りをはじめ経営に関するコンサルティングを得意とする総合事務所です。
中小企業庁が認定する公的な支援機関「認定支援機関(経営革新等支援機関)」の税理士法人が、日本政策金融公庫の資金調達をサポートします。
資金調達に必要な試算表、収支計画書などを作成していきますので、資金調達のサポートと、借入後の資金繰りをしっかりと見ていくことができます。
そのため、皆様の経営の安定化に、すぐに取り掛かることができます!
まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。

