
長年サロンで美容師の経験を積んできたのであれば、一度は「自分のお店を開きたい」と考えたことがある人も多いのではないでしょうか。
個人事業主として独立しお店を開けば、オーナーとして自由に店づくりや経営を行うことができます。
しかしその一方で、それまではお店でやってくれていた店舗運営・管理に関するさまざまな作業も自分で行わなくてはならなくなります。
知識がなければ、どうしていいかわからないことばかりでしょう。
本記事では、美容師が個人事業主として独立するための手続きや、個人事業主になった場合に知っておくべき税金などについて詳しく解説します。
目次
サロン勤務の美容師から個人事業主になる手続き

美容師としてそれまで勤務していたサロンを辞め、独立して個人事業主になる。その場合どのような手続きを踏むべきか、順を追って見ていきましょう。
税務署に開業届を提出
個人事業主として開業する場合には、始める事業の種類に関わらず「個人事業主の開業・廃業等届出書」を店舗の所在地となる区域の税務署に提出します。
個人事業主になれば、所得税の確定申告も必要となります。その際、節税効果が高いのが青色申告。開業届の提出と同時に、青色申告をするために必要な「青色申告承認申請書」も提出するのが一般的です。
青色申告については後の章で詳しく説明します。
保健所に開設届を提出
はじめて美容室を開くには、「美容所開設届」を保健所に提出して、指定されている基準に適合していることを証明する「確認証」の交付を受けなければなりません。
その際、前述の開業届や設備の概要、平面図や付近の見取り図なども提出します。
指定された基準とは、「作業所と待合所は区別すること」「床や腰板にはコンクリートやタイル、リノリュームまたは板など不浸透性材料を使用すること」など、設備に関する10個の要件です。
この基準を満たしていない場合は改善指導を受け、場合によっては施工のやり直しを迫られることもあります。
工事などを行う前に、保健所に相談する、要件を確認するなどしておきましょう。
社会保険の切り替え
もともと独立前に勤務していた美容室で社会保険に加入せず、自身で国民年金・国民健康保険の加入者となっている場合には、独立後もそのままの社会保険が適用されるため手続きをする必要はありません。
勤務先で社会保険に加入していた場合は、厚生年金と組合などの健康保険から国民年金・国民健康保険への切り替えをする必要があります。
脱退(資格喪失)の手続きは退職時に勤務先がしてくれるので、退職後に自分で市区町村の役所に行き、国民年金・健康保険への加入手続きのみ行います。
社会保険は、国民全員に加入の義務があります。空白期間をつくらないよう気を付けてください。
個人事業主になったら必要になる事務的な作業

個人事業主となれば、美容室の経営に関わるすべての事柄を把握し、実行する必要があります。財務や税務などもその一部です。
独立する美容師であれば、スタイリスト1本でやってきた人がほとんどではないでしょうか。
財務や税務と言われてもわからないことばかりかもしれません。しかし、まずは日々の収支管理からこまめに行っていくことが重要です。
雇われて働く美容師との違いとしてもっとも大きいのは、次のような作業が必要になることです。
帳簿付けや領収書の管理
日々の収支は帳簿に記入します。
帳簿とは、店舗運営に関わるすべての取引や財産状況などを記録するための台帳類のことです。
総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳などがあります。
帳簿の種類 | 概要 |
総勘定元帳 | すべての取引を勘定科目ごとに記録 |
仕訳帳 | 取引を「借方」と「貸方」に分け、日付ごとに記録 |
現金出納帳 | 店舗の売上など現金の入金・出金を都度記録 |
売掛帳 | 代金を後日受け取る取引を記録 |
買掛帳 | 代金を後日支払う取引を記録 |
勘定科目とは、「資産」や「負債」「収益」など種類ごとに区別するものです。
青色申告をするには、総勘定元帳と仕訳帳を「主要簿」として作成する必要があります。
また、「補助簿」として現金出納帳やその他の必要な帳簿(売掛帳、買掛帳など)を作成します。
これらの書類は、5~7年の期間は保存しておかなくてはなりません。
事業で使う銀行口座はプライベートのものとは別に作り、公私を区別しておきましょう。
所得税の確定申告

独立開業したら、所得は給与所得ではなく自身の事業所得となります。
税金の天引きがなくなるので、自身で1年間の所得に応じた所得税を算出し、税務署に申告しなくてはなりません。
これを所得税の確定申告と呼びます。
確定申告には、「確定申告書」とともに、青色申告の場合は「青色申告決算書」、白色申告の場合は「収支内訳書」を提出します。
その記載には、上記の帳簿が必要です。
本格的な事業を始めるなら青色申告にするとよく、その理由についてはまたこの後の章で説明します。
各種保険への加入
会社でなく個人事業主でも、人を雇った場合には労働保険(雇用保険、労災保険)への加入義務があります。
正社員でもパートでも同様です。保険料は、労災保険は全額事業主が負担、雇用保険は一部のみ従業員も負担します。
労働保険の手続きは、労働基準監督署または公共事業安定所(ハローワーク)で行います。
また、従業員を5人以上雇う場合には、条件に該当する人を社会保険(厚生年金、健康保険)に加入させる必要もあります。
社会保険は労使折半、つまり事業主と従業員が半分ずつ負担します。
従業員の社会保険に関する手続きは、管轄の年金事務所で行います。
個人事業主になった美容師にかかる税金

自らが事業主となる場合、もっとも気になるのが税金のことではないでしょうか。
給料から天引きされていたものも自分で申告・納税しなくてはならなくなります。
ここでは主な5つの税金について説明していきます。
所得税
所得税は、事業で稼いだ所得に対して課される税金です。
毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得について確定申告をし、算出した納税額を国に納付します。
所得税は、課税所得(所得から各種控除を引いたもの)に応じて、5%~45%の7段階で税率が決まっています。
ちなみに195万円未満なら5%、195万円以上330万円未満なら10%。330万円以上695万円未満なら税率は20%です。
納付手続きは、振替納税やコンビニでの納付などから選べます。
住民税
住民税は、給料をもらっている間は「特別徴収」として給料から天引きされる形となっています。
退職して独立したら、「普通徴収」として自分で納付手続きをすることが必要です。
確定申告を行うと、国から自治体にも必要事項が共有され、住民税の額が決定されます。
店舗所在地の自治体から住民税の決定通知書が送られてくるので、同封されている納付書を使って銀行やコンビニなどで納税します。
個人事業税
個人事業税とは、事業を営むことで受ける行政のサービスに対して負担するものです。
業種によって要不要があり、税率も異なります。
美容業は「第3種事業」に該当し、税率は5%です。ただし、1年を通して事業を継続している場合には、290万円の事業主控除があります。
所得が290万円を下回れば納付は不要です。
事業を行った期間が1年未満の場合は、月割りの控除額が適用されます。
所得税の確定申告書を提出すれば、個人事業税の申告書を改めて提出する必要はありません。納付は、8月と11月の年2回、都道府県に行います。
消費税
施術の対価とともに、お客さんからは消費税を受け取ります。
事業主は消費税を預かる形となり、事業年度ごとに納税する仕組みとなっています。
しかし一部の例外を除いて、消費税は前々年の売上が1000万円を超えた場合のみ課せられます。
つまり開業して2年間は、消費税は課税されません。
納税対象となった場合には、消費税と地方消費税を3月末までに申告して納税します。
国民健康保険税(国民健康保険料)
国民健康保険に加入している場合にかかるのが、「国民健康保険税」あるいは「国民健康保険料」です。
この2つは実質的には同じものです。
前述の通り、独立前の勤務先で組合などによる健康保険に入っていた場合には、国民健康保険への加入と保険料の支払いが必要となります。
住んでいる市町村によって「国民健康保険税」か「国民健康保険料」のいずれかの呼び名を使っています。大都市圏は「保険料」、地方の市町村は「保険税」と呼ぶケースが多いようです。
個人事業の美容師の経費となるもの・ならないもの
収入から経費などを引いたものが課税所得となり、その課税所得に税率をかけたものが納税額となります。
そのため、経費が多いほど納税額を低く抑えられるのです。
そこで気になるのがどんなものが経費として計上できるのか、ということ。
ここでは、美容室の開業にともなって必要となる経費を軸に見ていきましょう。
美容師の経費にできるもの

次のような費用はすべて、美容室の運営に必要な経費として計上できます。
経費の項目 | 対象となる費用 |
地代家賃 | 店舗や事務所の家賃・駐車場代など |
材料費 | シャンプーやコンディショナー、ヘアカラー剤など |
水道光熱費 | 店舗で使用した水道・電気・ガス代 |
通信費 | 店舗で使用した電話、インターネット、郵便など |
消耗品費 | ・クシやブラシ、ドライヤーなどの器具、タオルやケープなど ・イスや鏡など什器や設備に該当するもので、取得に要した金額が10万円未満または使用期間が1年未満のもの ・ボールペンや便箋、ティッシュペーパー、洗剤など |
広告宣伝費 | 名刺やショップカードの制作費、テレビやインターネットなどメディアを介した宣伝や広告の費用 |
荷造り運賃 | 物品の宅配に要した運送料や梱包資材などの費用 |
旅費交通費 | 施術のための出張や、セミナー・講習会に参加するための移動交通費や宿泊費など |
教育訓練費 | 技能の習得などのためのセミナーや講習会への参加費用 |
損害保険料 | 店舗にかける火災保険や賠償責任保険、仕事で使う車の自動車保険などの保険料 |
租税公課 | 租税=個人事業税や自動車税などの税金 公課=国や自治体に払う住民票などの発行手数料や、商工会など公共団体に支払う会費 |
人件費 | 従業員の給与や各種手当、従業員の社会保険料負担分、通勤費、社員旅行などの福利厚生費 |
独立するほどのスタイリストであれば、ツールも質の良いものを使っているでしょう。
カットシザーなどは、10万円未満であれば消耗品にできます。
しかし10万円以上の場合は消耗品ではなく、資産として計上することになります。
また、租税公課に関しては、すべての税金が経費となるわけではありません。
例えば住民税は経費にはできませんが、所得控除が可能です。
美容師が経費にできないもの

美容師としての自分が支払ったものでも、事業と関係のない物の購入費用やサービス利用料などは経費の対象外です。
次のようなものは経費とは認められないので注意しましょう。
個人事業主自身の報酬
従業員の人件費は経費扱いにできますが、個人事業主の場合は自身への出費である報酬を経費とすることはできません。
ただし、法人化すれば役員への報酬も人件費として計上可能です。
個人事業主が個人で納める税金
経費にできるのは、あくまで事業に必要なもののみ。
事業に関係なくプライベートで納める固定資産税や、プライベートでしか使わない車の自動車税、事業以外の所得にかかる所得税なども、経費の対象外です。
衣服・美容代
「美容師は美意識も高く持つべき職業だからよいのでは?」と思われがちですが、ファッションや美容にかけるお金はプライベートとの区別がつきにくく、経費にはできません。
美容師は、モデルや芸能人などのように「見栄えを整えなければ仕事にならない」というわけでもありません。
アクセサリーや時計などについても同じです。
しかし、店舗でのみ着用する制服・作業着的な性質のものや、競合店の調査のための美容院代(レポートなどの書面で事実が確認できるもの)などであれば、経費として認められる可能性もあります。
プライベートと兼用する部分はどうなる?
自宅と店舗が一緒、という人もいるかもしれません。
プライベートな生活で使った電気や水、インターネット料金などは経費にできませんが、事業で使った部分は経費にできます。
この場合は「家事按分」といって、事業で使用している部分の面積の割合などから事業部分の費用を算出し、その分だけを経費として計上するのです。
家事按分の方法は限定されているわけではありません。
家賃であれば敷地面積の割合で決める、電気であれば使用時間やコンセントの数の割合などから計算されるのが一般的です。
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確定申告は青色申告がベター

ここまで何度も「確定申告」について触れていますが、そもそも「確定申告って何?」と思っている人もいるかもしれません。
ここで簡単に説明します。
確定申告には青色申告と白色申告がある
個人事業主になると、自身で所得税の申告をしなくてはなりません。1月~12月の所得にかかる税金をまとめて申告することを「確定申告」と言い、毎年2/16~3/15の間に行います。
この確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
青色申告にするか白色申告にするかは、納税する人が決めます。申告についての大きな違いは帳簿付けの方法で、青色申告では取引を複数の科目で記載する複式簿記を用いるため、やや複雑です。
白色申告では、1つの勘定科目だけで記載する単式簿記での帳簿付けでOKです。
一般的に、事業主となれば青色申告をすることが推奨されます。
青色申告には税制上の優遇装置があり、節税がしやすいからです。
青色申告は節税メリットが大きい
税金をより適正に申告・納税するには、複雑な記帳方法を用いた青色申告がより推奨されます。
そのため、青色申告を行う事業主は税制上で優遇措置が受けられる仕組みになっています。
つまり、青色申告にすれば納める税金を安くできる可能性が高いのです。
青色申告の特典はいくつもありますが、中でも大きいのが特別控除です。青色申告では、最大で65万円の特別控除を受けることができます。
白色申告には特別控除はありません。
特別控除は、課税所得を計算するときに経費と同じように所得から差し引くことができます。
それによって課税所得が安くなり、納税額も安くなるのです。
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青色申告にするには条件がある
所得税の確定申告を青色申告で行うには、やるべきことが大きく2つあります。勝手に青色申告を選んで申告することはできません。
青色申告承認申請書を提出する
青色申告による特別控除を受けたい場合は、「青色申告承認申請書」を提出して承認してもらう必要があります。
提出先は税務署なので、開業届を出すと同時にしておくとよいでしょう。
申請は、開業と同時でなくても、確定申告する年の3月15日までに行う必要があります。
1月16日以降に事業を開始した場合は、その日から2カ月以内であれば提出可能です。
それ以外の期間では提出できず、必然的に白色申告となるので注意が必要です。
複式簿記で帳簿付けをする
青色申告をするには、複式簿記による帳簿付けが義務付けられています。
複式簿記とは、仕訳帳と総勘定元帳の2つの帳簿(主要簿という)と、現金出納帳や預金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳の6つの帳簿(補助簿という)を作成して取引を記録するものです。
青色申告の特別控除は最大65万円ですが、10万円や55万円といった控除もあります。
10万円の控除であれば補助簿があればよいですが、55万円・65万円の控除を受けるには補助簿だけでなく主要簿の作成も必須です。
日々の売上やかかった経費などを「仕訳帳」に記載していき、それを勘定科目別に「総勘定元帳」で転記します。
補助簿については、事業に必要なものについて記帳していきます。
申告時は「総勘定元帳」をもとに「貸借対照表」と「損益計算書」を作成し、確定申告書と青色申告決算書を記入して提出します。
経費の計上や確定申告の手続きは、簿記などの知識がなければ難しいものです。会計ソフトを使ったり、税理士など専門家の手を借りたりすることをおすすめします。
美容室の経営を成功させる方法

スタイリストとしての腕がどんなに良くても、店舗の経営が上手くいくとは限りません。
最後に、経営経験のない人が個人事業主として美容室経営を成功させるためのコツを紹介します。
ぜひ参考にしてください。
商圏分析で出店計画・販売戦略を練る
商圏分析とは、客となり得る人々が生活する地域の範囲について、住民や店舗などのデータを分析し、店舗運営に生かすことです。
美容室を構えるなら、事前に必ず商圏分析を行いましょう。なぜなら、美容室には必ず足を運んでもらう必要があり、立地が重要となるからです。
また、単に住んでいる人が多いというだけで美容室を構えるのにもリスクがあります。もしオープンする美容室が富裕層をターゲットとするなら、富裕層が多く住むエリアに近くなければ集客が見込めません。
立地を決めるときだけでなく、集客をするにも、ポスティングに適したエリアなのか、交通広告などを利用するのがいいのか、といった戦略を練るのに商圏分析の結果が役立ちます。
事業計画書を作成する
事業計画書は、自身のビジネスとその将来性を第三者にもわかるように文書化するものです。
どのようなビジネスモデルでどのような戦略をもって進めていくのか、それにはいくらの資金が必要で、売り上げ見込みはどれくらいあるのかをまとめます。
美容師としてどのような目標を描くかは人それぞれですが、その目標を達成するには計画を立て、それに沿って進めていく必要があります。
事業計画書があれば、途中で問題が発生したときにも事業全体を見直し、改善していくのに役立ちます。
独立開業にあたり、足りない資金は融資で補うのが一般的ですが、その融資の申し込みには事業計画書の提出が必須です。
返済能力があるかどうかを、事業計画書や面談で審査します。
また計画書の記載項目として必須の「職務経歴書」についても、下記の記事で詳しく解説しています。
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集客にSNSを取り入れる
開業直後は以前からの固定客が来てはくれるものの、ただ店で待っているだけでお客さんを増やすことは難しいでしょう。軌道に乗るまでは特に、集客に力を入れる必要があります。
公式サイトを作って、店の売りやサービス内容、料金を分かりやすく伝えたり、「ホットペッパービューティー」や「楽天ビューティー」など、美容系の情報掲載サイトを利用したりして宣伝するのも有効な集客手段です。
また、「Twitter」や「Instagram」など、SNSを使った情報発信や宣伝広告も積極的に行いましょう。コツは、それぞれの特性を生かして利用することです。
SNSは、それぞれの特性や利用者層によって使い方を変えるのもポイントです。例えば画像に特化したSNSであり女性の利用が多い「Instagram」なら、手が込んでいて「可愛い!」と思われるヘアアレンジの画像を投稿しましょう。
それを見て来てくれるお客さんがいたり、情報を拡散してもらえたりする可能性があります。
選ばれる店づくりをする
俗に「コンビニエンスストアより多い」と言われるほど、街なかには数多くの美容サロンがあります。
その中から選んでもらうには、他店との差別化やリピーターを増やしていくことも不可欠です。
集客するにも、何か「この店でカットしてもらいたい」「利用してみたい」「また来たい」と思わせる魅力がなくてはなりません。
競合店がどのようなサービスをしているかを調べ、どのような店に人が集まるのかを研究しましょう。
どのような接客やサービスが求められているのか、ニーズを知ることで魅力的な店づくりが可能になります。
画一的な対応でなく一人ひとりに合わせた接客や、ゆったりリラックスできる空間づくり、非接触など新しい生活様式への対応など、試みるべき施策はたくさんあります。
スキルの向上に取り組む
美容関連業では、流行や最新の技術などにも適応していかなくてはなりません。
これまで勤務先の同僚と情報共有したり勤務先を通じてセミナーや講習会に参加したりしていた場合、独立するとその機会が失われるケースも多いでしょう。
独立してからは、自ら進んで外部のセミナーなどに参加する、美容師仲間との交流の場に足を運ぶなどして、常に情報のアップデートを図る必要があります。
流行以外にも、例えば「時代に合った美容サービスを提供する」という視点で販路の拡大が見込めるかもしれません。
高齢者や障害のある人に安心・快適なサービスを提供する「ハートフル美容師」の資格があれば、社会への貢献度や信頼度も高まり、新たな客層にもアプロ―チできるでしょう。
実際に開業した美容師の方に聞きました!

事務的な作業や税金の申告など、面倒そうな手続きが増えるとはいえ、実際にサロンから独立し、個人事業主となった美容師の方もたくさんいます。
この章では、実際に個人事業主として美容室を開業された方に状況をうかがった内容を簡単に紹介します。ぜひ参考にしてください。
開業3年目と6年目、収支の状況
AさんとBさんは、それぞれ勤務先の美容室から独立を果たし、現在はご自身のお店を構えています。
- Aさん・・・開業6年目、従業員3名
- Bさん・・・開業3年目、従業員なし
このお2人の年間収支を表で見てみましょう。直近2年間の平均値です。
Aさん | Bさん | |
---|---|---|
借入 | 450万円 | 800万円 |
売上 | 2310万円 | 940万円 |
雑収入(協力金等) | 20万円 | 90万円 |
仕入 | 510万円 | 95万円 |
その他雑費 | 1600万円 | 755万円 |
利益 | 220万円 | 180万円 |
所得税 | 10万円 | 5万円 |
消費税 | 80万円 | 0円 |
住民税 | 22万円 | 18万円 |
健康保険料 | 28万円 | 23万円 |
国民年金 | 20万円 | 20万円 |
それぞれのケースで金額が全く異なりますが、この2人の最も大きな違いは、従業員の有無。Aさんには従業員が3名いるのに対し、Bさんは従業員をやとっていません。
スタッフの人数が多ければ、1人で接客・施術するより売り上げも多くなりますし、経費もそのぶん多くかかります。
また、Bさんには消費税の支払いがありません。これはBさんが開業3年目で、開業した年とその翌年には納税義務がないからです。3年目以降は、2期前の売上が1000万円を超えた場合に所得税の課税事業者となり、納税が必要です。
ちなみに、開業2年目であっても前年の1月~6月の間に1000万円を超える売り上げがあった場合には、課税対象となります。
個人事業主3年目、美容師Bさんの状況
Bさんには、開業後の美容室運営についてインタビューにもお答えいただきました。
Q1:開業してよかったことは何ですか?
― 雇われていた時よりも、自分の時間を有効に使えるようになりました!
Q2:開業後に困ったことはありますか?
― あまりないですね。強いて言えば、今後どれくらい続けていけるかわからないってことでしょうか。
Q3:集客はどのようにされていますか?
― 他の美容室ではやっていないことをしていますね。例えば周辺エリアの営業時間帯に合わせて時間帯を変えたりとか。
Q4:これから開業する方にアドバイスをお願いします
― 開業すると、自分の時間ができて自由度が高くなる分、自分に甘くなってしまいがちです。そこをいかに甘くせず、事業に真摯に向き合っていけるかが大切だと思います。
Bさんは、開業後とくに困ったことはないとのこと。事務作業については、従業員がいない分、そこまで負担には感じられていないのかもしれません。
税金関連については、税理士法人に任せられています。
自由に使える時間をどう使うか。そこが開業に成功するか、あるいは失敗するかの分かれ道となりそうです。
まとめ~美容室の開業・経営サポートもBricks&UKへ~

美容師が独立して個人事業主になるには、開業届や美容所開設届の提出を行う必要があります。
特に保健所に行う美容所の開設届では、施設の要件がいくつも定められています。設備の工事を行う前に確認してください。
自分が事業主となれば、スタイリストとしての腕だけでなく経営者としての手腕も問われます。
会計や税務、人を雇うなら労務や人事など、経営に関わるあらゆる事柄を把握し、管理・実行などしていかなくてはなりません。
開業前に簿記や決算書の読み方などは勉強し、理解できるようにしておくべきです。
また、目標達成のための事業計画書も作成し、着実な経営を進めていきましょう。
税金や経営のことで困ったら、専門家の手を借りることをおすすめします。
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