起業するほとんどの人が苦労するのが、開業資金の調達です。
全額自己資金でまかなえればよいのですが、なかなかそうはいきません。たいていの場合は、銀行などからお金を借りて起業しています。
この記事では、開業資金の調達方法について、知っておきたい11の方法を紹介。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
「開業資金」とは
開業資金とは、実際に事業を開始するのに最低限必要な資金のことを言います。
例えば、事務所・店舗を借りる場合の保証金や、内装工事費用、机、椅子、応接セット等の備品購入費用、PC、プリンターなどの事務機器取得費用や事業用車両の購入費用などがあり、開業する事業の形態により内容も異なります。
その他に、ホームページを作成する費用やネットを通じた販売システムの構築費用なども含まれます。
「運転資金」とは
また、実際に起業する際には「開業資金」だけではなく、当面の「運転資金」も準備する必要があります。
運転資金とは、企業が事業を行うために必要な資金のことを指し、商品の仕入れ、従業員の給与、広告などさまざまな費用が該当します。
創業融資を受ける際には開業資金のみでなく、運転資金も含めていくら必要となるのかを、しっかりと確認するようにしましょう。
当面の「生活費」も忘れずに
なお、開業の前後は事業のことで頭がいっぱいになるため、自分や家族の生活費を忘れてしまっていた、というケースもよくあります。
開業資金と当面の運転資金のほか、自分、家族がいるなら家族の生活費、学費等も頭に入れて資金計画を立ててください。
このあと複数の資金調達方法を紹介していきますが、ほとんどは使途が「事業に関すること」に限られています。事業のための融資を生活費に充てることはできないので注意してください。
以下で紹介する資金調達方法のうち、ノンバンク融資であれば使途が限られないものもあります。その場合は生活費に使うことも可能です。
しかし生活費も事業資金も融資で調達するとなると、生活が立ち行かなくなる恐れもあります。高リスクとなるため、返済計画をきちんと立てた上で利用してください。
開業資金と運転資金、それぞれの主な使いみち
ここでは開業資金と運転資金の主な使い道として、代表的な内訳を紹介します。
開業資金
- 店舗取得費
- 設備の導入費用(設備資金)
- 備品購入費用
- 保証金・仲介手数料(物件を借りる場合)
開業資金には、不動産会社に支払う店舗取得費や、事業に必要な設備の導入費用が該当します。
また、机・椅子・応接セットなどの備品購入費用、物件を借りる場合であれば保証金・仲介手数料などがあります。
物件費用のうち、敷金・礼金については開業資金に含まれないため、注意が必要です。
運転資金
- 仕入れ代金
- 人件費(従業員がいる場合)
- 広告宣伝費
- 事務所の家賃
- 借入金の返済・利子
運転資金には、仕入れ代金や従業員に支払う人件費、広告宣伝費が該当します。また、店舗や事務所が賃貸であれば家賃が、事業の借入金があれば返済元金や利子も運転資金に含まれます。
開業資金の調達方法11選
開業資金の調達方法にはさまざまな方法がありますが、この記事では次の11の方法を挙げていきます。
- 自己資金
- 親戚や知人からの借り入れ
- 日本政策金融公庫の創業融資
- 保証協会の制度融資
- 民間金融機関の創業融資
- ノンバンクからの融資
- 助成金・補助金
- ビジネスプランコンテストの賞金
- ベンチャーキャピタルからの出資
- エンジェル投資家からの出資
- クラウドファンディングの活用
それぞれの資金調達方法の特徴と、メリット・デメリットを見ていきましょう。
1. 自己資金でまかなう
自己資金は最も基本的な資金の用意の仕方でしょう。自分のお金ですから返す必要もなく安心です。
主に、開業前までに貯めた預貯金がこれに該当します。
自己資金のメリット
事業資金を自己資金(自分のお金)でまかなうことには、大きく次の2つのメリットがあります。
- 誰にも返済する必要がない
- 金融機関からの信用度が上がる
開業資金を自己資金だけでまかなえれば、資金繰りにも精神的にも余裕ができます。
自己資金だけでは足りない分を融資などで補う場合にも、自己資金が多いほど計画性や事業への熱意・誠意があると見なされます。そのため、金融機関などからの融資も確実に受けやすくなります。
自己資金のデメリット
開業資金を自己資金でまかなうことの最大のデメリットは、自分の個人資産が直に減ってしまう点です。
自己資金を何でどれだけ用意するかにもよりますが、例えば預金の大部分を使ってしまえば生活費の心配などが出てきます。生命保険を解約すれば、一時的にお金は手に入りますが、何かあった場合の医療的な補償がなくなってしまいます。
2. 親族や知人からの借入
自己資金が足りないとなれば、まず考えるのは親族や知人からの借入かもしれません。
親族・知人から借入するメリット
親や兄弟、配偶者や親戚などの親族、信頼できる知人から資金を借り入れることには、主に次の2つのメリットがあります。
- 借りる際の取り決めや審査が必要ない
- 返済日などに融通がききやすい
親族や知人から借りる場合、貸してくれるということは関係が良好なケースが多いでしょう。融資の際のような厳しい審査もなく、多少であれば返す期日も延ばしてもらえる可能性も高いです。
ただし、金銭のトラブルは事件に発展するケースもあります。口約束だけでなく、借用証書なども作成しておくべきです。
親族・知人から借入するデメリット
親戚や知人からの借金には返済にある程度の融通が利くのがメリットです。とはいえ限度はあるでしょう。
事業が失敗して返済が不可能になれば、トラブルになる危険性もあります。「金の切れ目は縁の切れ目」ということわざもあるほど、金銭が絡むと人間関係は悪化しやすいものです。
また、親類からの借り入れには贈与税がかかるケースもあるので、注意が必要です。
【自己資金と贈与税】
贈与税は、個人から財産を受け取った場合にかかる税金で、貸し借りには生じないものです。
しかし親族などとのお金の貸し借りには、利息なしにするケースも多いでしょう。その場合、借りた側は利息を払わずに済む=利息分の利益を得たと見なされ、贈与税の対象となり得るのです。
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3. 日本政策金融公庫からの創業融資
「日本政策金融公庫」というのは、主に中小企業の支援を目的とした公的な金融機関です。
中でも「新創業融資制度」は、新たに事業を始める人や事業を開始して間もない事業主を融資の対象にしています。
日本政策金融公庫利用のメリット
日本政策金融公庫の新創業融資制度には、主に次のようなメリットがあります。
- 無担保・無保証人で借りられる
- 民間の金融機関よりも低金利である
- 創業時の事業主や小規模事業主も融資を受けやすい
- 返済期間も比較的長い
日本政策金融公庫は、民間の銀行などのように営利目的が第一ではありません。そのため、比較的借りる側に良い条件で融資を受けられるようになっています。
また、創業時など返済能力が測りにくい事業主への融資にも、積極的な姿勢を取っています。
日本政策金融公庫利用のデメリット
日本政策金融公庫は政府出資100%。つまり運営には税金が使われています。そのため、融資審査のハードルは低いわけではないのです。事業計画書や必要書類、面談などの内容で事業の将来性や成功の見通しが審査され、融資の可否が決まります。
現実は、事業計画の内容が不十分、見通しが甘い、といった理由で融資を断られるケースも多いもの。申し込む前にしっかりと準備をする必要があります。
また、自己資金の額も判断基準となるので、すべてを融資でまかなうことはできません。
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4. 保証協会の制度融資
保証協会(信用保証協会)は、中小企業が融資を受ける際に公的な保証人の役割をしてくれる機関です。地方自治体と金融機関、保証協会が連携して行う融資のことを「制度融資」と呼びます。
融資が決まったら、保証協会に保証料を支払います。返済ができなくなった場合、信用保証協会から金融機関への返済(代位弁済)が行われ、その後は信用保証協会への返済をすることになります。
保証協会は全国の県や市など約50カ所に設置され、その地域に事業所を持つ中小企業者(個人や会社など)が利用できます。居住者を対象とするところや開業前でも対象となるところもあります。
保証協会の制度融資のメリット
保証協会を通して制度融資を受けることには、次のようなメリットがあります。
- 保証があることで融資のハードルが下がる
- 金利が比較的低い
- 長期の借り入れがしやすい
- 自治体によっては有利な条件で融資が受けられる
信用保証を利用すると、融資が受けやすくなるほか、県や市町村独自で保証料や利息の補助があるなど、有利な条件で融資が受けられる可能性も高いです。ただし、「制度融資」と一口にいっても、自治体によっていくつもの制度があります。内容も自治体によって異なります。
自治体としては地元企業が発展してくれれば地域経済も発展します。そのため、経営に関する相談受付なども積極的に行っています。
保証協会の制度融資のデメリット
信用保証協会を利用したとしても、ある程度の自己資金は必要です。制度によって、必要とする資金額の5分の1、あるいは10分の1の自己資金が必要、などと決められています。
また、保証料の支払いが必要なこと、公的な保証人の役割とは言え、自身の返済責任はなくならないので注意が必要です。
審査も信用保証協会と金融機関の双方で行われるため、融資の実行までに時間がかかることも覚悟しておかなくてはなりません。
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5. 民間金融機関の創業融資
一般的に「融資」と聞いて思い浮かぶのは、都市銀行や地方銀行、信用金庫や信用組合など民間金融機関による融資でしょう。
もともと民間金融機関では、創業融資は貸倒れのリスクが高いとして審査が厳しい傾向にありました。しかし近年では開業率を挙げようとする政府の意向なども相まって、民間金融機関による創業融資の実績も徐々に増えてきています。
民間金融機関利用のメリット
増えてきているとはいえ、創業期の融資はまだまだハードルが高いのが現状です。そのため、民間金融機関からの融資が獲得できたという実績ができれば、外部からの信用度が高まるというメリットがあります。
また、民間金融機関とのつながりができれば、融資だけでなく取引先の紹介や補助金などの情報提供も受けられるなど、事業経営にプラスとなる可能性も高いです。
民間金融機関利用のデメリット
民間金融機関はやはり利益を得なければ存続できません。そのため、返済が可能かどうかを見極める目は厳しくなっています。借り入れには担保や保証人も必要ですし、自己資金の要件も高めです。もちろん、事業計画書など多くの書類を提出しなくてはなりません。
返済にあたっても、金利が高く返済期限が比較的短いなど、楽な条件ではありません。
6.ノンバンクからの融資
ノンバンクとは、文字通り「銀行ではない金融機関」のこと。消費者金融や信販会社などが当てはまります。
銀行から資金を借り入れ、一般の人などへの貸付を行っています。ビジネス向けに設けられているのが、ビジネスローンと呼ばれる事業資金の貸付制度です。
ノンバンク融資のメリット
ノンバンク融資のメリットは、融資までのスピードが速いこと。即日融資や30分のスピード審査でお金が借りられるものもあります。
審査に必要な提出書類が銀行などよりも少なく済むという手軽さもノンバンクのメリット。無担保で借りられるローンもあります。
ノンバンク融資のデメリット
ノンバンクで融資を受ける最大のデメリットは、その金利の高さです。
銀行から借入して貸し付ける、というノンバンクの性質上、金利が高くなるのはやむを得ないでしょう。しかしそれはすなわち返済額が大きくなることを意味します。
また、上記のメリットに見られる「借りやすさ」も、債務が大きくなりやすいというデメリットにつながります。
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ノンバンク融資についてさらに詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
7. 補助金・助成金
政府や地方自治体が設ける補助金や助成金の制度の中にも、創業期の企業を支援するものがあります。補助金と助成金の違いは主に次のような点です。
制度 | 特徴 |
補助金 | ・経済産業省の管轄 ・審査倍率が高く、受給が難しい |
助成金 | ・厚生労働省の管轄 ・要件を満たせば受給できる |
助成金の要件とは、たとえば雇用保険の滞納や労働法に関する違反がない、就職困難といわれる人や高齢者を新たに雇った、など。制度によって要件は異なります。
補助金・助成金のメリット
補助金や助成金の最大のメリットは、返済が不要ということです。また、経営への介入が少ないこともメリットと言えるでしょう。
助成金であれば、基本的には要件を満たし、必要書類などを揃えれば受給可能です。
補助金・助成金のデメリット
国や自治体による公的な制度のため、補助金は採択される必要がありますし、助成金は数多くの要件をすべて満たし、審査に通らなくてはなりません。特に補助金はおおむね高倍率であり、簡単には受けられません。
また、申請できる期間が決まっていたり、多くの提出書類が必要だったり、申請してから受給できるまでには長い時間がかかったりするデメリットもあります。
8. ビジネスプランコンテストの賞金
起業家支援や地域振興の一環として、ビジネスコンテストが全国的に行われています。コンテストにビジネスプランを応募し、審査に勝ち抜けば、賞金を得ることができます。
ビジネスプランコンテストのメリット
ビジネスプランコンテストでの受賞による賞金は、助成金や補助金のように返済の必要がありません。
それだけでなく、 自身のプランが実現性や将来性が高く、オリジナリティあるものとして高い評価を受けたことになります。
受賞者は新聞などのメディアで紹介されることが多く、自身の名を広めるチャンスでもあります。
ビジネスプランコンテストのデメリット
各地で開催されるビジネスプランコンテストは、その地域で開業する人を対象とするものがほとんどです。
また、いつでも行われているものではありません。期間が絞られているので、定期的にチェックする必要がありますし、タイミングが合わない可能性も。審査には3カ月~半年などの期間もかかります。
自身が起業する地域で行われるコンテストや、全国的に募集しているコンテストの情報収集をマメに行いましょう。
経済産業省の公式サイトでも、ビジネスプランコンテストの開催概要が確認できます。
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9. ベンチャーキャピタル
「ベンチャーキャピタル(VC)」は、金融機関ではなく投資会社です。近い将来に有望なベンチャー企業やスタートアップ企業など未上場の企業に投資し、上場した後に株式を売却して収益(キャピタルゲイン)を得るのが狙いです。金融機関系のベンチャーキャピタルも数多く存在します。
銀行などと異なり、リスクを負ってでも大きなリターンを得ようとすることもベンチャーキャピタルの特徴の1つです。
ベンチャーキャピタルの投資によるメリット
ベンチャーキャピタルが行うのは「投資」なので、返済不要というのが第一のメリットです。また、資金調達の規模も大きく、多額の資金を得られる可能性も高いです。
また、ベンチャーキャピタルから投資を受けた事実により、事業内容や将来性が認められたという一定の評価を得ることもできます。そうすれば、その後も別の金融機関などから融資を受けやすくなると期待できます。
さらにベンチャーキャピタルには「ハンズオン」と「ハンズオフ」と呼ばれる出資スタイルがあり、ハンズオンでは実質的な経営介入や人材のあっせん等も行います。経営ノウハウがなく困っている場合には頼れる存在となるでしょう。
ハンズオフでは経営への介入はありません。
ベンチャーキャピタルの投資によるデメリット
ベンチャーキャピタルが出資するのは、確実に株式上場が見込める企業です。また、そのため、創業時には大幅な成長が期待できる、高いレベルの事業計画が不可欠です。
また、メリットとして挙げたハンズオンについては、経営に介入されたくない、と考える人にとってはデメリットとなります。
より大きなキャピタルゲインを得るのが目的なので、業績が上がらないなど見込みがないと判断されれば、M&Aをすすめられるなどして資金回収に動くことになるでしょう。
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10. エンジェル投資家からの出資
創業から間もないベンチャー企業に対して出資をする個人投資家のことを「エンジェル投資家」と呼びます。単に「エンジェル」、あるいは「ビジネスエンジェル」とも呼ばれます。
エンジェル投資家からの出資のメリット
エンジェル投資家からの出資も、ベンチャーキャピタルと同様に「返済しなくてよい」というのが大きなメリットです。創業期の企業への投資にはベンチャーキャピタルよりも積極的な傾向にあります。
個人の投資家なので、出資するかどうかも独自の判断で行います。そのため、ハイリスクでも革新性や独自性などを評価して出資してくれたり、新たな起業家を応援する目的で出資してくれたりと、さまざまな目的の投資家が存在するのも出資される側にとっては可能性が広がります。
自身に経営経験がある人が多いので、経営へのアドバイスがもらえたり、自社に合う人材を紹介してもらえたりする可能性もあります。
エンジェル投資家からの出資のデメリット
エンジェル投資家の中にも、経営に関わろうとする人はいます。
それを必要とする場合は良いかもしれませんが、それによって意見の食い違いが起きる、事業に支障が出るなどの恐れも。株式比率によっては経営権を握られてしまう恐れもあります。
また、個人のため信用度にも問題があるケースもあります。最悪の場合は詐欺などの被害に遭う恐れもあるので注意が必要です。
11. クラウドファンディング
「クラウドファンディング」とは、不特定多数の人を相手にインターネット上で支援を募り、資金を調達することです。
クラウドファンディングで資金を調達するには、事業の内容や熱意について支援者に対してプレゼンする必要があります。しかし、事業の魅力などを効果的にアピールして多くの人の目にとまれば、多額の資金調達も期待できます。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングと一口に言っても、その資金の集め方などで大きく3つの種類に分けられます。
- 購入型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
- 金融型クラウドファンディング
金融型クラウドファンディングは投資型クラウドファンディングとも呼ばれています。その中でさらに株式投資型クラウドファンディング、融資型クラウドファンディング、ファンド型クラウドファンディングの3種類に分かれます。
クラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングは、金融機関による融資やベンチャーキャピタルによる投資と異なり、資金を集めるのに厳しい審査を受ける必要はありません。
また、一般的に資金調達に使われる購入型クラウドファンディングは、集めた額を返済するのではなく、事業で生産した商品やサービスなどをリターンとして返すのが基本的な仕組みです。
開発や発売前に関心度やニーズが測れる可能性があるほか、商品やサービスを実際に利用してもらうことで、知名度のアップなど売上向上にも期待が持てます。
クラウドファンディングのデメリット
クラウドファンディングでは、事業を開始する前に事業内容を不特定多数の人に公開し、資金を募ります。
そのため、独自性の高い製品や他にないサービスなどを取り扱う場合には、資金を集める前に事業を真似されたり、類似する商品などを作られたりする恐れがあります。
クラウドファンディングには、プラットフォーム型のサイトを利用するのが一般的。資金調達ができれば、プラットフォーム会社への手数料を支払う必要もあります。
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開業資金の調達によくある疑問を解消!
開業資金の調達方法を考えたときに湧く、主な2つの疑問をここで解消しておきましょう。
再就職手当は開業資金にも使える?
上で紹介した方法のほか、退職した後に再就職をすると受け取れる「再就職手当」が使えるのでは、と思う人もいるでしょう。
結論から言えば、たまたま条件に当てはまれば受け取れるものの、退職前から意図して受け取る、というのは現実的ではありません。
再就職手当とは、失業中にハローワークの紹介で再就職が決まった場合、受け取っていない失業手当の残りをまとめて支払ってもらうようなシステムです。
企業などへの就職だけでなく、自分が事業主として開業する場合にも受け取れる可能性はあります。
ただし、開業を前提とした退職では、もともと再就職のつもりがないということなので対象外です。
受け取るには、失業後に開業を決意し、7日間などの待期期間と、自己都合退職の場合は3カ月の給付期限を過ぎてから開業届を提出する必要があります。しかも失業手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上は残っていないと給付の対象となりません。
つまり、開業資金とするために再就職手当を受けるには、条件がかなり絞られます。もちろん、虚偽の申告などをすることは許されません。
日本政策金融公庫の融資審査に通るには?
日本政策金融公庫の融資は、中小規模の事業主にやさしく、民間の銀行などと比べればハードルが低いと言えます。とはいえ、審査に通らない人も多いのが現実です。
事業の計画性や実現性は審査に通るための重要なポイント。もちろん、返済能力がないと判断されれば融資は受けられません。
次の5つのポイントは押さえておきましょう。
- 自己資金はなるべくたくさん用意する
- 公共料金の滞納歴は抹消されるのを待つ
- 実務経験を1年以上は積む
- 創業計画について理解を完璧にしておく
- 融資希望額の算出根拠を明確にしておく
それぞれ説明します。
自己資金はなるべくたくさん用意する
自己資金だけで開業資金をまかなうのは、事業によっては難しいでしょう。とはいえ、自己資金はなるべく貯めておきましょう。
自己資金がまったくない、常識的に考えてすぐに貯まるような額しかない、というのでは問題です。
日本政策金融公庫の新創業融資制度では、必要な開業資金の10分の1以上の額の自己資金が必要とされています。
事業を行うにはそれなりの準備が必要です。資金もその1つで、まったく貯金をしてこなかったとなれば、事業への計画性が疑われます。
資金のほとんどを借金にして事業を行った場合、当分の間は赤字状態となるのが一般的なことを考えれば、「月々の返済はできるのか」と返済の可能性にも大きな疑問が生じます。
延滞歴は抹消されるのを待つ
過去に税金や公共料金を滞納したり、クレジットカードの支払いに延滞歴があったりする場合には、延滞・滞納の記録が信用機関に残っている可能性があります。記録が抹消されるまで創業時期をずらすというのも1つの方法です。
税金や公共料金、携帯電話の料金などの延滞・滞納は、「支払うべきものを期間内に支払っていなかった」という、返済にも関わる大きなマイナス。融資の審査で問題視される可能性も高いです。
延滞歴については、信用情報機関であるCICなどに確認をすることができます(有料)。CICでは、支払いなどの状況は返済終了後5年以内は保持されます。
ちなみに、信用情報には債務の情報も含まれるため、他からすでに多額の資金を借り入れている場合にも融資が難しくなる可能性があります。
実務経験を1年以上は積む
まったくの業界未経験で事業を始めるのはリスクが高いことから、審査も厳しくなります。業務知識や業界の勉強をしておくのはもちろん、副業やアルバイトでもよいので1年以上は実務経験を積むことをおすすめします。
日本政策金融公庫の創業融資では、始める事業が現在勤めている会社と同じ業種で、6年以上の勤務・実務経験があれば自己資金要件を満たすものと見てくれます。
つまりは、それだけ実務経験が事業の成功には必要で、融資審査でも重視されているということです。
創業計画について理解を完璧にしておく
創業融資では、これまでの事業実績での判断ができないことから創業計画書の内容がより重視されます。
創業計画書の作成は、売り上げ見込みや必要とする資金額の算出など、誰にでも簡単にできる物ではありません。そのため、コンサルタントなどの専門家に依頼する人も多いでしょう。
しかし、専門家に任せっきりにしたのでは、面談でボロが出てしまいます。計画の内容については必ず事業主(借りたい人)本人への面談で質問されます。書かれている内容はもちろん、なぜこの数字になったのかなど、聞かれても明確に答えられるようにしておかなくてはいけません。
融資希望額の算出根拠を明確にしておく
融資審査に落ちてしまう人にありがちなのが、「いくらなら借りられるのか」という質問をしてしまうことです。
融資では、「いくら借りられるか」ではなく、自分が事業を始めるのに「いくら必要なのか」をはっきり伝えられなくてはなりません。
もちろん、その金額には根拠も必要です。何にいくら必要なのかも明確にしておきましょう。融資担当者に業界経験がないとしても、さまざまな業界の数多くの事業主の状況を見てきているので、ごまかすことはできません。
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開業資金の調達方法には複数の方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。事業計画や会社の方針などにより、どの方法で資金調達するべきかは異なるでしょう。
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融資担当者は、事業計画の実現可能性や事業にかける熱意に着目して審査をします。融資審査のカギを握るのは「計画的かつ丁寧な準備」と「創業計画書のクオリティ」、そして上記で伝えた5つのポイントです。
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