個人事業で順調に業績が伸びてくると、会社設立をした方がいいのかどうか、迷い始める時期が来るでしょう。会社を設立することで、節税などのメリットがあるというのもよく聞く話です。
とはいえ、本当のところはどうなのか、メリットだけでなくデメリットもあるのでは、と疑問に思う人も多いでしょう。
この記事では、会社設立を目指すなら知っておきたい会社設立の基礎知識や、会社設立のメリット・デメリット、会社の種類などについて解説します。
まずは会社設立の基礎知識
会社設立とは文字通り会社を立ち上げること、新しく作ることであり、法的な「商業登記」の手続きを行う必要があります。会社には、その形態に株式会社や合同会社などの種類があり、資金調達の方法などが異なります。
登記とは、個人が戸籍を持つように会社に法人格を持たせ、社会的に存在を認めてもらうために記録を作る手続きです。
会社設立で必要となる手続きは、「定款の作成・認証」→「商業登記(設立登記)」→「税務署や自治体への届出」という流れで進めます。ただし定款の認証が必要なのは、株式会社を設立する場合のみです。
なお、実際に会社設立の手続きを行う際には、司法書士など法律の専門家に手続きを代行してもらうのが一般的です。
「自分でやった方が安いのでは?」と思う人はこちらの記事も読んでみてください。
「それでも自分でやりたい!」という人はこちらの記事を参考にしてください。
会社は4つの形態から選ぶ
現在立ち上げることのできる会社の種類は次の4つです。
- 株式会社
- 合同会社
- 合名会社
- 合資会社
4つの選択肢があるものの、現在は合名会社や合資会社を選ぶメリットは特になく、実質的には株式会社か合同会社の二択といえます。
合同会社は株式会社に比べて安い費用で設立できるほか、株主が存在しないことにより、よりスピーディーで自由に物事を決められるメリットがあります。
ただし、株式会社ほど認知度が高くはないため、信用度の点でやや劣ります。とはいえ、最近ではApple JapanやGoogle Japanといった企業が合同会社の形態を取ったことから、徐々に認知度は上がってきています。
なお「有限会社」は、現在は新たに設立することができません。従来から存在する有限会社は、法律上は株式会社と同様に扱われています。
会社設立のメリット
事業をする上で、個人事業でなく会社を設立するメリットは、次のようなことです。
- 取引先や金融機関(銀行など)からの信用が高まる
- 売上が多いほど法人税は一律となり負担が軽くなる
- 役員報酬や任意保険などが経費として処理できる
- 決算月を選べるようになる
- 設立から2事業年度は消費税の納税義務が免除される
- 社長と会社の財産を分けて管理できる
- 後継者への事業承継がしやすくなる
社会的に、個人よりも会社の方が「出所」がはっきりするため信用度が高まります。特に大企業では、取引相手として個人は認めず、法人のみに限定するところも多いです。
また、会社を設立すると、所得税に代わり法人税を納めることとなります。法人税は所得税のように累進課税ではなく比例税率で、企業規模によって異なるものの、税率は一定です。中小企業には軽減税率も設けられています。
その他、会社なら役員報酬や任意で加入する生命保険などが経費にでき、節税につながります。
このようなメリットがあるため、個人事業として始めた仕事がある程度軌道に乗り出したタイミングで会社設立を選択する人が多いというわけです。
より詳しいメリットはこちらの記事で解説しています。
会社設立のデメリット
メリットがある一方で、会社を設立するにはデメリットと感じることもあります。
- 設立の手続きに費用がかかる
- 赤字の年にも税金がかかる(法人住民税の均等割)
- 従業員を社会保険に加入させる義務がある
- 移転や増資などの際に登記費用がかかる
- 税金の計算が複雑になる
- 事業を廃業する際にも費用がかかる
- 会社とプライベートのお金を完全に区別して管理する必要がある
- 社長の個人情報の一部が登記される
個人事業は開業届を出すだけで始められ、事業の開始手続きに費用はかかりません。しかし、例えば株式会社を設立するには定款認証や登記の手続きが必須で、それに約25万円の費用がかかります。
また、設立には登記が必須ですが、その登記内容を変える、例えば移転して本社所在地を変える、資本金の額を変えるなどの場合には「変更登記」と呼ばれる手続きが必要となり、登記費用をその都度納めなくてはなりません。
その他、法人税の申告に必要となる決算書類の作成など、税務管理の負担が増えるほか、会社をたたむ、廃業の際にも登記などの出費が発生します。
そのため、経済的に余裕がある状態で会社設立をしなければ、メリットも少なくなってしまいます。
個人事業主から会社設立する、いわゆる法人成りのタイミングについてはこちらの記事を参考にしてください。
会社設立にかかる費用
会社の設立には、設立するというその手続きだけにお金がかかります。
株式会社の設立費用は約25万円
株式会社を例にすると、定款の認証や登記申請といった法的手続きに約25万円。その他、会社の印鑑を作ったり謄本を取得したりするのに数千円から1万円程度は必要です。
会社設立は自力で行うことも可能ですが、必要書類をすべて正しく揃え、定款や登記の内容にもミスのないようにしなくてはなりません。そのため専門家の手を借りる人が多いのですが、それにはさらに報酬の支払いも必須です。
ちなみに、合同会社であれば定款の認証を受ける必要がなく、登録免許税も株式会社より安く抑えることができます。
会社設立には資本金も必要
会社設立には「資本金」が必要だというのはよく知られていることでしょう。資本金は設立後の事業資金となるものです。
金額は、以前は決められていた最低資本金額がてっぱいされたため、理論上はいくらでもOKです。極端な話、法律上は資本金が1円でも会社設立することは可能です。とはいえ現実はそう簡単ではありません。
目安は、運転資金の3~6カ月分といったところです。こちらの記事も参考にしてください。
まとめ
会社設立とは、登記を行い、会社を法的・公的な存在にすることです。資本金の最低額の縛りがなくなったことで、多くの人が会社を作れるようになりました。
会社設立の大きなメリットと言えるのが、社会的な信用度が上がること。事業を拡大するには、各方面からの信用は欠かせません。ある程度の利益が確保できるようになれば、個人の所得税でなく法人税の方が安くなる可能性も高いです。
しかし、会社設立自体に費用がかかり、税務処理なども複雑になるので、すべての人が会社設立に向いているとは言い切れません。設立するにしても、自身の状況や今後の目標なども含めて、タイミングを計ることも必要です。
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