起業したいけど自己資金がない場合、まず考えが浮かぶのは、金融機関から融資を受けることでしょう。
ビジネスの資金を銀行など金融機関に借りることはごく一般的です。しかし、ある程度は自己資金がないと、融資も下りないというのが現実です。
「自己資金がないから借りたいんだよ」という声も聞こえてきそうですが、自己資金は事業の行く末を見る指標ともなっているのです。
この記事では、自己資金なしで起業できる条件や、創業融資で必要とされる自己資金の額、現金以外で自己資金の代わりにできるものなどについて解説します。
目次
自己資金なしでの起業は可能?
自己資金なしでもすぐに起業できます…と言いたいところですが、すぐに起業するなら次のいずれかは必須です。
- 費用がかからない事業をする(もしくはかけない)
- 親からの贈与・創業融資など、誰かにお金を出してもらう
それぞれ見ていきましょう。
費用がかからない事業をする(もしくはかけない)
事業を始めるには、初期費用や運転資金が必要です。初期費用とは、事務所を構えるための契約金や事業に必要な設備を新たに調達する費用などのこと。
運転資金とは、事業を続けるのに必要な家賃や食材などの仕入れ費、光熱費や従業員の給料など。費用がかからなければ、自己資金なしで始めることも可能です。
例えばウェブライターやウェブデザイナーといったウェブ関連の仕事。自宅を事務所とし、すでに使っているパソコンとインターネット環境があれば、新たに必要となるものはありません。
同じように、「自宅でできる」「設備機器の購入が不要」「仕入れが不要」といった条件が揃えば、ピアノ教室や声楽教室、結婚相談所、家事代行なども可能でしょう。
一方、例えば飲食店の開業には、自宅でも自宅用と営業用に設備を分けなくてはなりません。工事費用がかかるほか、厨房設備から食器、食材の仕入れなど、さまざまな費用がかかります。
ただし、たとえば小さな店舗で、親戚に工事業者がいて無償でやってくれる、自分たちで内装工事をする、食材は畑で育てる、というように、普通はかかる費用をかけずに始める人も中にはいます。
親や銀行など、誰かにお金を出してもらう
自分では資金が用意できない、でも事業を始めるにはお金がかかるという場合には、誰かにお金を用意してもらうしかありません。事業資金を作る方法として一般的なのは、次の2つです。
- 親や親戚などにお金を出してもらう
- 銀行など金融機関から創業融資を受ける
創業融資とは、金融機関が創業前や直後の人を対象に設けている制度です。通常の融資よりは借りやすい条件となっています。
一方、親などに「出してもらう」場合、「借りる」もしくは「もらう」の2パターンがあります。金融機関に融資を申し込まないなら、どちらでも構いません。しかし、融資も受けようとする場合は、借りているお金があると審査で不利になるので要注意です。後に説明しますが、借りたお金は自己資金とは見なされません。
このほか、寄付型のクラウドファンディングで一般に広く支援を募るなどの方法もあります。
「自己資金のない人におすすめの資金調達方法」の章で具体的な方法をいくつか紹介します。
しかし自己資金なしでの創業融資は難しい
自己資金の有無やその額は、金融機関に融資を申し込む際に重視されます。自己資金が多いほど融資も受けやすく、少ないほど難しいというのが現実です。
創業融資で自己資金が重視される理由
創業融資で自己資金の額が重視されるのは、それが事業の成功を左右する大きな要素であり、自己資金が少ないほど失敗のリスクが高まるからです。
金融機関は、貸したら返してもらう(回収する)必要があります。それには貸した相手が事業に成功し、安定・継続した利益を得ることが不可欠。創業時には、過去の実績がなく、事業の将来性や実現可能性を判断する基準がありません。そのため、自己資金の額で次の2つを測ります。
- 事業への熱意や本気度
- 事業継続の可能性
それぞれ詳しく見ていきましょう。
事業への熱意や姿勢、本気度を測る
金融機関は、融資申請者が起業・創業にどれくらいの覚悟を持っているかを見極めようとします。熱意や本気なくして事業経営はできません。
事業への熱意があれば、綿密に計画を立て、資金も着実に貯めてきたであろうと考えられます。
起業は、一時の思いつきや思い込み、中途半端な気持ちでは成功できないことを、融資担当者は経験から知っています。だからこそ、起業時の姿勢が問われます。
事業継続の可能性を測る
どんな事業でも、軌道に乗せるまで早くても数カ月~半年はかかります。その間は貯金を切り崩してでも持ちこたえねばなりません。その前に資金が枯渇すれば、事業そのものは順調でも資金繰りができずに破綻します。
つまり、軌道に乗せるまで経営が持つかどうかは、手元の資金の多さが大きなカギとなります。さらに、本人の計画性や持久力、忍耐力なども必要となります。コツコツと準備してきた自己資金は、保険となるだけでなく計画性や持続力の表れでもあるのです。
創業融資を受けるのに必要な自己資金はいくらか
融資を受けるために必要な自己資金の額として、一般的に目安とされているのは「必要な資金の3割以上」です。
日本政策金融公庫の融資担当者によれば、申請者の自己資金割合は平均して2割~3割とのことでした。そしてやはり、「最低でも3割はほしい」という見解です。
ただ自己資金の額については、金融機関や各融資制度によって異なる要件や基準があります。例えば「資金総額の10分の1以上」が要件となっている場合、それを満たせば申し込むこと自体は可能です。
一方で、「融資可能な額は自己資金の2倍以内」などと定める制度もあります。この場合、100万円の自己資金なら200万円までしか借りられません。
つまり、自己資金がない場合、融資申し込み自体ができないか、融資してもらえる額もないに等しいということになります。
ただ、自己資金以外に事業の計画性や将来性、実現の可能性などを示す強力な材料があれば、融資を受けられる可能性もゼロではありません。
そもそも自己資金とは
「自己資金がない」を前提に話を進めていますが、ここで改めて「自己資金」とは何を指すのかも把握しておきましょう。起業でいう「自己資金」と
は、事業のためだけに自分が出せる自己所有のお金のことです。
具体的にどんなものが自己資金と見なされる/見なされないのかを見ていきます。
自己資金と見なされるもの
融資で自己資金と見なされるのは、「誰かに返す必要がなく、出所がはっきり証明できるお金」です。
ここでは自己資金と見なされる主な例を紹介しますが、自己名義の預貯金以外については、金融機関や個々の状況によって可否が異なるため、絶対ではありません。
1.自分名義の預貯金
自己資金としてもっとも良い例が、コツコツと貯め、自分名義の銀行口座に入れてある預金や貯金です。
口座に定期的に入金されていれば、事業に向け着実に準備をしてきたことがわかり、融資担当者に与える心証も良くなります。
2.もらった(贈与された)お金
親や親戚などから資金援助を受ける場合、そのお金が贈与されたもの、つまりもらったお金であれば自己資金と見なされます。
ただし、相手が親兄弟でも「貸してもらった」お金は自己資金とは認められません。融資を受ける前に、すでに借金がある状態と見なされます。
そのため、受け渡しは口座を通じて行い、贈与契約書を作って「創業資金にするために贈与されたこと」を証明できるようにしておくのがおすすめです。
もう1つ注意したいのは、贈与には贈与税がかかる可能性があることです。1月~12月の1年間に110万円超の贈与を受けた場合、110万円を超えた部分について贈与税がかかります。
3.自身の退職金
会社員の場合、退職金が支給されればそれも自己資金と見なされます。すでに受け取った退職金だけでなく、数年後に確実に受け取る予定の退職金も、自己資金と認められる可能性があります。
すでに受け取った退職金については、退職金だと証明するために源泉徴収票などが必要です。まだ受け取っていない場合には、金額や支払時期がわかる書類を会社に作ってもらわねばなりません。
ちなみに、退職金の支給は雇用主の法的な義務ではないため、退職金制度のない会社もあります。
4.現金化した財産
不動産や車、貴金属や絵画など、いわゆる実物の資産を売却して得たお金も自己資金と認められます。株式などの金融資産も同じです。
その際は、売却時の金額がわかる売買契約書や領収書など、証拠となる資料を求められます。
また、株式や有価証券といった金融資産は、実際に現金化をしていなくても自己資金と見なされる可能性があります。ただしもちろん、証券会社による証明書類が必要です。
5.配偶者名義の預貯金
配偶者名義の口座にあるお金も、自己資金として認められる可能性が高いです。もちろん、配偶者に事前に了解を取り、融資担当者に通帳の原本を提示できるようにするなどしておかなくてはなりません。
場合によっては、配偶者を保証人とするよう勧められることもあります。
6.みなし自己資金
事業のためすでに支払ったお金、例えば事務所として借りた物件の契約費用や内装工事費用、設備機器などは「みなし自己資金」といい、認めてもらえる可能性も高いです。
ただし、それが事業用に調達したものであると証明する必要もあります。事業に必要でない、事業以外でも使うものと見なされれば認められません。
自己資金とは見なされないもの
見なされる場合とは反対に、出所がわからないお金、借りたお金などは自己資金として認められません。
1.タンス預金
現金を自宅に保管している人も多いでしょう。500円玉貯金などいわゆる「タンス預金」も自己資金だと言いたいところですが、タンス預金は自己資金とは認められません。
というのも、現金の状態では、所有者が誰なのか、貯めたのかもらったのか借りたのかといったことが第三者にはわからないからです。同じコツコツ貯めるなら、必ず口座に入金しておく必要があります。
2.預金口座への多額の入金
たとえ自分名義の口座に入っているお金でも、一度に多額の入金がされていると、自己資金として認められるのが難しくなります。
これも、理由は出所が不明だからです。特に入金先がわからなければ、例えばタンス預金をまとめて入金したり、カードローンなどで借りたお金を一時的に入れたりといった場合でも区別がつきません。
3.返済義務のある・返すつもりのお金
借りているお金は返さねばならず、自分のお金ではないので、自己資金とは認められません。
仮に親戚から「利息はいらない」と言われて借りたような場合でも、自己資金と言えないのは同じです。親に工面してもらい、「いつか返そうと思っている」というケースも、借りているのと同じだと見なされる恐れがあります。
自己資金なしで創業融資を受けるには
「融資を受けるには3割以上の自己資金がほしい」とされている中、それでも自己資金のない状態で融資を申し込むなら、かなりの工夫が必要です。
考えられるのは、比較的ハードルの低い融資制度を利用し、さらに自己資金に代わる何かを用意して事業の将来性や実現性、ひいては借入金の返済能力を強くアピールすること。
具体的には次の5つを押さえておきましょう。
- 日本政策金融公庫や制度融資を利用する
- 現金化できる財産で自己資金とする
- 自己資金の代わりとなる要件でアピールする
- 融資に通る事業計画書を作る
- 専門家や認定支援機関のサポートを受ける
順に見ていきます。
1.日本政策金融公庫や制度融資を利用する
自己資金なしで融資を申し込むなら、融資を申し込む先も選ぶ必要があります。創業時の支援により積極的な、日本政策金融公庫や自治体の制度融資を利用しましょう。
銀行など民間の金融機関にも創業融資制度はあります。しかし審査はより厳しく、自己資金なしでの融資獲得はほぼ不可能です。
ちなみに、消費者金融などいわゆるノンバンクは「借りやすい」というメリットがありますが、創業時の利用は避けましょう。
金利が高く、返済が経営を圧迫する可能性が高いです。
日本政策金融公庫:政府100%出資の金融機関
融資を行う金融機関の中で、創業時にもっとも利用しやすいのが「日本政策金融公庫」です。個人や事業主を対象とした各種の融資を行っています。
メガバンクや地方銀行などは民営ですが、日本政策金融公庫は国が100%を出資。国の経済活性化などが使命のため、起業家の支援にもより積極的で、金利なども好条件となっています。
制度融資:自治体と保証協会と銀行との連携融資
制度融資とは、地方自治体が地元の信用保証協会と民間銀行などと連携して行う融資です(名称や具体的な制度内容は自治体により異なる)。
融資を行うのは金融機関ですが、信用保証協会が文字通り保証人の代わりとなって間に入ってくれます。自治体によっては、金利を一部負担してくれるところも。そのため、個人で銀行に直接出向くより、融資が受けやすくなるのは確実です。
ただ、日本政策金融公庫や制度融資の利用でも、自己資金なしでの融資獲得はかなり難しいという事実に変わりはありません。
そのため、次の2か3のいずれかの方法で申し込みます。
2.現金化できる資産で自己資金とする
前述のとおり、自己資金は資産を現金化したものでも問題ありません。
例えば趣味で集めていた高級ブランドの時計や、昔プレゼントでもらった貴金属など、売却できるようなものはないでしょうか。生命保険などの解約返戻金・満期返戻金も自己資金となり得ます。
ただしもちろん、現金化してある程度の額になるほどの価値がなくてはなりません。
3.自己資金の代わりとなる要件を満たす
融資を受けるには条件があり、ほとんどの場合、必要となる自己資金の額(自己資金要件)が決められています。
ただし、融資制度には、ある程度の年数の実務経験がある、あるいは地元経済への高い貢献が見込めるなど、指定の条件を満たせばそれで自己資金要件を満たせる場合があります。
例えば日本政策金融公庫の新創業融資制度では、現在勤めている企業と同じ業種での起業、かつ勤続6年以上、もしくは同じ業種で通算6年以上の勤務経験があるといった場合に自己資金要件を満たすとされています。
また、革新的な技術やノウハウがあるスタートアップについても、自己資金要件を満たせる可能性があります。
「特定創業支援等事業」でも要件を満たせる
創業を考えている市区町村が「特定創業支援等事業」を行っていれば、創業塾やセミナーなど規定の支援を受けることにより、日本政策金融公庫の自己資金要件を満たすことができます。
ただし、特定創業支援等事業を行っている自治体は限られています。また、支援は融資の獲得を約束するものではありません。
特定創業支援等事業を受けることには、自己資金要件を満たせる以外のメリットもあります。
指定された要件以外にも、アピールできるものは最大限に利用しましょう。
例えば営業マンとして挙げた成績、社内コンテストで1位を獲得した企画、経営管理に関する経験といった過去の実績や、すでに確保できている取引先や顧客の名簿など。
事業計画書(創業計画書)も、融資審査ではかなり重要視されます。数字を入れて綿密な計画を立て、経歴と将来性の合わせ技でアピールしてください。
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ちなみに日本政策金融公庫は「自己資金と認められる要件」を下記のページで挙げています。
4.融資に通る事業計画書を作る
融資の申し込みに欠かせない書類の筆頭が、事業計画書(創業計画書)です。事業計画書とは、事業の内容や目的、経営者の経歴などの情報から、取引先や売上の見込み、必要な資金の内訳と総額などを示したものです。
返済能力の指標となる実績のない創業時には、事業計画書が重要な判断材料です。計画書の内容から、融資担当者は事業の将来性や実現性などを見て、融資の可否判断を下します。
そのため、適当に記入欄を埋めたようなものでは審査に通りません。矛盾点などがあればすぐに指摘されますし、計画の甘さも審査に落ちる原因に。自己資金がないならなおさら、事業計画書をしっかりと作り込んでいく必要があります。
5.専門家や認定支援機関のサポートを受ける
事業計画書が重要なカギを握るからこそ、作成には専門家のサポートを受けることをおすすめします。そこで頼るべきなのが、経営に関する専門家や、中小企業庁に認定された「認定経営革新等支援機関(略して認定支援機関)」です。
認定支援機関とは、商工会議所などのほか、税理士や会計士などのうち中小企業の経営に関する知識やサポート能力の高さが認められた人や組織のみが名乗れるものです。
事業計画書には、融資担当者が特に注視するポイントがあります。
認定支援機関なら、その細かいポイントも把握しているため、融資に通りやすい事業計画書の作成が可能です。
自己資金のない人におすすめの資金調達方法
「自己資金がないけれどもすぐに起業したい」という場合、方法は創業融資に限られません。ここまでにお伝えした創業融資の制度と合わせて、創業時におすすめの主な資金調達方法をまとめてみました。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫には、複数の融資制度があります。ただし、どの融資制度を利用するかは、個々の状況に合わせて公庫側が提案します。申し込む側が選ぶものではありません。ここでは主な2つの制度を見ておきましょう。
新創業融資制度
新創業融資制度は、新たに事業を始める人、事業を始めて間もない人を対象とした融資制度です。他の融資制度と組み合わせることで、無担保・無保証人の融資が受けられます。
対象者 | 新たに事業を始める人、または事業開始後の税務申告を2期終えていない人 |
自己資金の要件 | 創業資金総額の10分の1以上 |
融資資金の使途 | 事業運営にかかる設備資金と運転資金 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
返済期間 | 組み合わせる制度により異なる |
利率 | 基準利率:2.10~3.20%(※) 条件により特別利率の適用あり |
担保・保証人 | 原則不要 |
担保も保証人も原則としては不要で、代表者個人にも責任は及びません。ただし、法人の場合は代表者が連帯保証人となれば金利を下げることも可能です。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、あるいは35歳未満の若者、あるいは55歳以上のシニアの起業を支援するもので、「新規開業資金」という融資制度を特別利率で利用することができます。
対象者 | 新たに事業を始める、または事業開始後おおむね7年以内で、女性・35歳未満・55歳以上のいずれかに該当する人 |
融資資金の使途 | 事業運営にかかる設備資金と運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
利率 | 特別利率だが、担保の有無などにより異なる |
返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間2年以内) 運転資金:7年以内(うち据置期間2年以内) |
担保・保証人 | 要相談 |
返済期間のうち据置期間とは、元本の返済が猶予され、利息だけを支払えばよいとされる期間です。据置期間の間は返済が楽になりますが、それ以降の負担は大きくなるので注意が必要です。
自治体による制度融資
「制度融資」とは、各自治体が信用保証協会と金融機関と連携して行う融資制度の総称です。複数の制度があり、内容や条件はそれぞれ異なります。
制度融資の一番の特徴は、各都道府県の信用保証協会が保証人の代わりになってくれること。自治体によっては、金利を一部負担してくれるところもあります。
そのため、金融機関の審査にも通りやすく、好条件で資金調達することができます。
ちなみに、返済不能に陥った場合、信用保証協会が金融機関に代理弁済をしてくれますが、それで借金がなくなるわけではありません。
返済する先が金融機関から信用保証協会に変わるだけだということも知っておきましょう。
具体的な制度の内容は、各都道府県や市、商工会議所などの公式サイトなどで公表されています。
寄付型クラウドファンディング
資金調達方法として最近耳にすることが多くなったのが、クラウドファンディングです。クラウドファンディングにも複数の種類がありますが、創業時の資金集めには、金銭的なリターンが不要な寄付型のクラウドファンディングがおすすめです。
とはいえ、寄付をしてもらうには「見返りを求めず応援したい」という気持ちを引き出す必要があります。そのため、環境保護や地域の課題解決、弱者の救済など、何らかの社会的役割が強い事業の方が支持を得られるでしょう。
クラウドファンディングで事業内容を公開することで、商品やサービスへの興味や関心度の高さをある程度測ることもできます。
ただし逆に言えば新たな事業アイデアも知られてしまうため、事業内容を隠しておきたい場合には不向きです。
番外編:確実なのは今から自己資金を貯めること
上で紹介した方法は最善策ではありますが、融資獲得が確実になるわけではありません。「自己資金を貯めていない」という時点で、融資担当者には大きなマイナス印象を与えるからです。
そのため、元も子もなくなってしまいますがやはり自己資金を少しでも貯めていくことをおすすめします。実際、融資の相談に行き、まずは自己資金を貯めるよう言われるケースは少なくありません。
生活費を切り詰めるだけではなかなか貯まらないので、会社勤めのかたわら副業やバイトなどでお金を作る人もいます。
ただし、会社が副業を禁止している場合もあるので注意してください。
自己資金なしで融資を受ける際の注意点
最後に、自己資金がない状態で融資を申し込む場合に特に注意しておくべきことを解説します。
注意点1) 見せ金は絶対にNG
「見せ金」とは、自分のお金ではないものを自己資金に見せかけるお金をいいます。
例えば、カードローンでお金を借りて自分の口座に入金。自分が作ったお金のように見せかけ、審査が終わればすぐに引き出して返すといった行為をする人も中にはいます。
しかし見せ金はバレるものです。出所が不明なお金は、融資担当者から必ず説明や資料の提出を求められます。見せ金の手口は、担当者も熟知しているものです。説明が曖昧だったり矛盾があったりして嘘とわかれば、信用を一気に失います。
注意点2)融資が下りたとしても条件はよくない
自己資金が少ないと、借りられるお金も少なくなります。繰り返しになりますが、「融資限度額は自己資金の2倍以内」である場合、自己資金が10万円なら20万円しか借りられません。
また、低金利での借り入れができないなど、自己資金が多ければ受けられる恩恵を受けることができません。そのため返済の負担がより重くなります。
注意点3)融資審査に落ちた場合、再挑戦のハードルは高い
融資の申し込みに回数制限などはありませんが、何度も受けられるわけではありません。審査に落ちた後、再度申し込むには、最低でも半年の期間を置く必要があります。
融資の審査はあらゆる面を見て行われます。不可だったとなれば、覆すのは容易ではありません。
改めて申し込むとなれば、自己資金以外の原因を含め、審査に落ちた原因を完全に排除した上でなくてはなりません。つまり、審査のハードルをさらに上げることになります。
注意点4)融資が下りたとしても事業失敗のリスクは高い
自己資金がない状態で、少額でも融資が下り、事業資金が確保できたとします。そうなれば事業は始められますが、リスクは高いままです。
ただでさえ、数カ月から半年は赤字経営の状態が続くのが一般的。その間は、貯金などを切り崩して運転資金や生活費などを捻出しなくてはなりません。さらに借り入れ金の返済が加わるので、資金繰りに追われるのは目に見えています。
資金繰りに困る前に頼りたいのが認定支援機関ですが、税理士や会計士などへの依頼には報酬の支払いが必要です。そのお金を確保できなれば、助けを求めることもできません。
自己資金は少しずつでも貯めておきたい
自己資金がない状態で起業することは、不可能とは言わないまでもかなり難しいと言わざるを得ません。自己資金なしで起業するなら、費用がかからない事業を始めるか、どこかで資金を調達するしかないでしょう。
しかし、費用をかけずに始められる事業は限られます。融資を受けるとしても、自己資金がまったくないとなれば借りられる可能性はかなり低いので、代替となる財産や強みを持っていなくてはなりません。
自己資金以外で強みを示すには、事業計画書の作り込みが必須です。数字などを具体的に入れ、融資担当者を説得できる内容の計画書を作りましょう。
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