【会社設立の完全版!】準備から登記の流れ、税金・保険まで一挙に解説

会社設立に必要な手続きや考えておくべきこと
【記事を読んで「いいね!」と思ったらシェアをお願いいたします!】

会社を立ち上げたい、事業を始めたいと思っても、いったい何をすればいいのか、どんな手続きが必要なのかはあまり知られていません。

会社の設立は、会社法などの法律に基づいて行わねばならないため、事前に決めておくべきことも多数あります。もちろん、設立の手続きだけでなく、事業を始めるにはさまざまな準備も必要です。

この記事では、会社設立をするなら知っておきたい基本的なことから、会社設立のメリット・デメリット、設立に必要な定款や登記手続きのほか、税金や保険、つい忘れがちな準備事項まで幅広く紹介していきます。ぜひ参考にしてください。

目次

会社設立と会社の定義をおさらい

会社設立と会社の定義

日本全国に存在する企業の数は、約386万社だといいます(平成28年6月 総務省統計局「経済センサス-活動調査」)。

まずは、世の中に多数存在する「会社」とその設立について基礎的な知識をおさらいしておきましょう。

会社設立は起業の手段の1つ

会社設立とは、文字通り会社という組織を立ち上げること。
起業には、個人事業主として事業を始めるケースと、会社を立ち上げるケースの主に2つの手段があります。

会社組織を作ることで、事業の規模を広げやすくなり、より多くの収益を得やすくなります。

そもそも会社とは?

会社とは、利益を得ることを目的に事業を行う人たちの集まりです。

資本や労働力を集め、リスクを分散するために複数人で構成されるのが会社の基本的なスタイルです。しかし1人で会社を立ち上げ運営している人も数多く存在しています。

個人事業主と会社設立の違い

事業を行うのに、会社設立をしなくてはならないわけではありません。個人事業主として事業を行っている人も数多く存在します。

前述のように、会社には、複数の人の力を結集してより多くの利益を求め、リスクは分散しつつ社会に貢献するという特徴があります。また、「会社法」という法律に基づいて事業運営を行う必要があります。

手続きとしては、個人事業主として事業を始めるには、税務署に「開業届」を、都道府県税事務所に「事業開始等申告書」(文書名は都道府県により異なる)を提出します。手続きに費用はかかりません。

一方、会社を設立するためには、定款の認証や登記などの手続きが必要で、費用もかかります。詳しくはこの後の章で説明していきます。

もちろん、個人事業主として起業した後に会社設立する、という段階を踏むことも可能ですし、個人事業主が人を雇うことも可能で、広く行われています。

あわせて読みたい

個人事業か会社設立かで迷っている場合は、この後に説明する会社設立のメリット・デメリットを参考にするか、こちらの記事も読んでみてください。

会社設立のメリット・デメリットを知る

会社設立のメリット・デメリット

会社として事業を行っていくことには、メリットもあればデメリットもあります。それぞれ具体的にどんなメリット・デメリットがあるかを見ておきましょう。

会社設立のメリット

会社を設立して事業を行うと、個人とは異なる次のようなメリットが受けられます。

  • 取引先や金融機関からの信用度が上がる
  • 節税の選択肢が増える
  • 人材の確保がしやすくなる
  • 決算月を自社の都合で決められる
  • 後継者への経営継承がしやすくなる

それぞれ見ていきましょう。

取引先や金融機関からの信用度が上がる

会社設立のメリット

個人と会社とで、大きく異なるのが社会的信用度の高さです。信用度が高ければ、融資や新規契約などの際にも有利になるでしょう。

会社設立をすると、登記という法的な手続きを踏んで公の存在となります。決算書の作成が必要となるなどして、経営の実態も第三者から見えるようになります。

そのため、個人名で事業を行うより会社として事業を行う方が、金融機関や取引しようとする企業からも、信用されやすくなります。

節税の選択肢が増える

会社設立のメリット

税金の面でも、会社にはメリットが多いです。例えば所得にかかる税金として、個人でいう所得税に値するのが法人税。法人税の税率は、所得税の累進課税、いわゆる所得が高い人ほど税額も高くなるのとは異なり、一律の税率が適用されます(中小企業には軽減税率も適用)。

そのため、所得が多くなるほど節税効果が高まるのです。

そのほか、会社では個人事業主には認められない経費の計上ができることもポイントです。例えば役員報酬や経営者の自宅を経費にできます。経費が多いということは、課税対象となる所得額が少なくなるということ。課税所得が少なければ、税率をかけて算出する税金の額も少なくなります。

人材の確保がしやすくなる

従業員を雇うにも、個人事業主として募集するのと会社として募集するのでは、求職者に与える印象が異なります。

終身雇用制度が崩壊したとはいえ、なるべく安定した職場で長く働きたいと思う人が多いのは変わらないでしょう。公式サイトなどで情報を発信することもでき、情報が得られやすく信用度も高いとなれば、求人に応募する人も増えるでしょう。

応募者の母数が増えれば、優秀な人材を確保できる可能性も高まります。

決算期を自社の都合で決められる

会社設立のメリット

決算期とは、1年間の収支をまとめる時期のことです。会計に区切りをつけて年間の実績や財務状況を明らかにします。税額の申告・納税は、決算日の翌日から2カ月以内に行う決まりです。

個人事業の場合、決算という言葉は使いませんが毎年2月~3月の決まった期間に確定申告をし、税金の申告・納税をしなくてはなりません。

会社の場合、この決算期は自社の都合に合わせて決めることができます。2~3月が繁忙期で決算と多忙な業務との両立が難しい場合は、決算期をずらすことで余裕を持たせることができます。

経営継承の手続きもしやすい

会社設立のメリット

事業を続けていくにあたり、経営を子どもなどに引き継がせたい、という時期が来ることも大いに考えられます。その場合、会社設立をしておけば手続きが比較的簡単に済みます。

個人事業主が事業を引き継ぐ場合、引き継ぐと言ってもいったん事業の廃止を届け出て、新たに次の人が事業を開始するという手続きを取らなくてはなりません。取引先や従業員などとの契約も、名義変更や締結のし直しといった手間がかかります。

会社の場合は、子どもに引き継ぐにしても代表者の交代という形で手続きが取れるため、再契約などの手間は必要ありません。

会社設立のデメリット

会社を設立することで生じるデメリットには、次のようなことが挙げられます。

  • 設立・廃業ともに手続きに手間と費用がかかる
  • 会社運営にかかる事務的作業などが煩雑になる
  • 従業員が多いほど社会保険料などの負担も増える
  • 赤字でも法人住民税の納付が必要である
  • 役員変更や本社移転などで登記が必要となる
  • 代表取締役の氏名や住所情報が公開される

それぞれ見ていきましょう。

設立・廃業の手続きに手間や費用がかかる

会社設立のデメリット

会社の設立は、商業登記を行うことで成立します。株式会社を立ち上げる場合、登記の前に定款を作成し、公証人による認証を受ける必要も。一連の手続きには、手数料や登録免許税など約25万円の費用がかかります。

廃業の際にも、株主総会で解散の決議を行い、清算人を選んで解散などの登記を行います。清算が完了すれば清算結了の登記を行うなどの手続きを踏み、その都度登録免許税などの費用がかかります。

解散を官報に公告する義務もあり、それにも出費が必須。少なくとも8万円以上の出費となります。

事務的な作業などが煩雑になる

会社設立で苦労する男性

会社となれば、経営に際して会社法や労働関連法など、さまざまな法律に則って事業を行う必要があります。株式会社であれば、事業年度ごとに貸借対照表や損益計算書などの決算書を作成しなくてはなりません。

帳簿の付け方も複雑になり、税金の申告も専門知識がなければ難しいでしょう。

従業員を雇えば各種保険への加入手続き、保険料の納付が必要となりますし、勤怠管理や教育・指導も必要です。

従業員が増えるほど社会保険料などの負担も増える

会社設立のデメリット

前述のように、従業員を雇うことで労働関連法を順守し、労災保険や雇用保険、健康保険や厚生年金の保険料の負担が必須となります。

労災保険料は会社が全額を、雇用保険は一部、社会保険料(健保および年金)は半額を負担しなくてはなりません。

赤字でも法人住民税の納付が必要である

会社設立のデメリット

法人税は所得に応じて税額が決まるため、赤字となった場合には納税する必要はありません。メリットの章でお伝えしたように、赤字を繰り越して翌年以降の黒字と相殺することも可能です。

しかし法人住民税については、所得によって金額が決まる法人税割と、資本金や従業員数によって異なる均等割とで構成。均等割の部分は所得に関係なく納めねばなりません。

役員変更や本社移転などで登記が必要となる

会社設立のデメリット

会社設立時には登記の手続きが必要で、登録免許税などの費用がかかるのは前述のとおりです。しかし、登記済みの内容に変更があったなどの場合には、変更の登記が必要となり、内容によって異なる登録免許税を納める必要性も出てきます。

例えば、株式会社の役員の任期は最長で10年(株式すべてに譲渡制限がある場合)。任期満了となれば、退任の登記もしくは重任(間を置かず再任すること)の登記が必要となり、1件につき3万円(資本金額1億円以下は1万円)の納税が必要です。

そのほか、支店の設置をした場合には支店1カ所につき6万円、本店や支店が移転となれば1か所につき3万円などと細かく設定されています。

代表取締役の氏名や住所情報が見られる

会社設立のデメリット

株式会社の登記には、代表取締役の氏名と住所も記載する必要があり、登記情報は有料ですがオンラインでも見られるようになっています((一社)民事法務協会「登記情報提供サービス」)。

個人情報保護が強く言われる時代、リスクもあると考えられますが、会社の信用情報でもあり、倒産などのトラブルで連絡が取れなくなるなどすれば、債権者が被害を受けることにもなります。そのため、自身にとってはデメリットでも、公には必要なことと考えられています。

「会社」の種類とその違いを知る

会社と一口に言っても、その特徴によって大きく4つの形態があります。

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 合名会社
  • 合資会社

このほかに「有限会社」も数多く存在していますが、現在は設立できません。ちなみに「相互会社」というのも存在しますが、相互会社は保険会社のみ設立が可能。事業が営利でも公益でもなく、「相互扶助」を目的とする会社の形態です。

上記4つの形態それぞれの特徴を見ておきましょう。

日本でもっとも一般的な会社の形態「株式会社」

会社の種類

株式会社は、株式を発行することで不特定多数の人から資金を集め、事業を行う会社です。株主を購入した出資者が株主となり、会社の所有者という立場になります。

出資者と経営者が分離されている、というのが株式会社の原則とされていますが、中小企業の場合は出資者=経営者となっているのが一般的です。

株式会社が倒産した場合、出資者に問われる責任は自己の出資額を限度とした範囲内にとどまります。これを「有限責任」といい、それ以上の責任は問われないこととなっています。

ただ、経営者として融資を受ける際、個人として会社の連帯保証人となるよう求められることが多く、事実上は無限責任だと言えるでしょう。

近年注目を集めている「合同会社」

会社の種類

AmazonやGoogleなど大手企業が合同会社を設立したことなどから注目を集めているのが、合同会社という形態です。

合同会社は、出資者=経営者である形態で、株式会社のように経営に関わらない株主の意見を経営に反映させる必要がないため、スムーズかつスピーディーな運営ができるメリットがあります。

また、株式会社と違って定款の作成は必要でも認証の必要がなく、登録免許税の額も株式会社より低いことから、設立手続きの費用が抑えられるという大きなメリットがあります。

責任の範囲については、株式会社と同じ「有限責任」です。

小規模の家族経営に多い「合名会社」

合名会社とは、出資者と経営者が同じであり、その全員が無限責任を負う会社形態です。無限責任とは、文字通り責任の範囲に制限がない、つまり倒産した場合にはすべての責任を制限なく負わねばなりません。

株式会社などとの大きな違いは、資本を集めて設立するというより、人が集まって会社を作る「人的会社」と呼ばれる側面があること。

昔から地域の資産家が家族を中心に小規模で事業を行うなどしていたケースに多く、今でも味噌や醤油、酒などの醸造業を営む会社に多く見られる形態です。

2人以上でなくては設立できない「合資会社」

合資会社は他の3つの会社形態と異なり、設立に際し2人以上の人間がいなくてはなりません。というのも、合資会社には、有限責任を負う人と無限責任を負う人がそれぞれ1人以上必要とされるからです。

無限責任社員(この場合の社員とは出資者のこと)が、有限責任という条件で出資の話を持ちかけ、資金を集めるようなケースに適しています。

会社形態によるメリット・デメリットの違いについて詳しくは、こちらの記事を読んでみてください。

このように現在は会社設立にあたり4つの形態から選択することができます。しかし、株式会社の資本金の下限がなくなったことなどから、合名会社・合資会社をこれから設立するメリットはあまりないというのが実情です。

そのため、設立する会社の選択肢は株式会社か合同会社かの2択と言えるでしょう。

株式会社と合同会社、どちらにするかを決める

株式会社の設立か合同会社の設立か

会社設立にかかる手続きと費用だけを考えれば、合同会社を設立した方が得だと言えます。しかし、それだけで決めるのはおすすめできません。

いろいろな面で違いを知り、そのうえで決めてください。

会社設立手続き費用の金額の違い

株式会社と合同会社の設立費用の比較

まず、株式会社と合同会社で、設立手続きに必要な費用の違いを見ておきましょう。

費用項目 株式会社 合同会社
定款の認証手数料3万円~5万円不要(認証の必要なし)
定款の謄本手数料2千円同上
定款に貼る印紙代4万円4万円
登録免許税15万円6万円
合計22万2千円~24万2千円10万円

このほか、どちらの場合でも印鑑の作成費用や印鑑証明書の発行費用などがかかります。

株式会社と比べた場合の合同会社のメリット

合同会社のメリット

手続き費用以外で比べた場合、合同会社には次のようなメリットがあります。

  • 経営の意思決定がスピーディーにできる
  • 決算公告をしなくてもよい

合同会社の大きなメリットは、経営の自由度が高く、スピード感をもって事業を進められるということです。

株式会社では、重要事項の決定は株主総会での決議を経なければできません。そのため、どうしても決定までに時間がかかります。その点、合同会社なら経営陣だけで決められ、無駄な時間がかかりません。

また、決算公告の必要がないというのもメリットの1つ。決算公告とは株式会社に課せられた義務の1つで、経営状態を明らかにするために貸借対照表(大企業は損益計算書も)を一般に広く知らせる必要があります。

株式会社と比べた場合の合同会社のデメリット

合同会社のデメリット

合同会社には、株式会社に比べて次のようなデメリットもあります。

  • 認知度が低く信用度に欠ける
  • 資金の調達手段が少ない

「合同会社」とはどんな会社なのか、日本ではあまり知られていません。そのため、信用度が低いというのが大きなデメリットと言えるでしょう。他者(社)との契約時には、どういう会社なのかよくわからない、と敬遠されるおそれがあります。

資金の調達をするのに株式が使えないことから、金融機関からの融資を受ける、補助金を申請するなど限られた方法で工面するしかないことも、合同会社のデメリットの1つです。

会社設立の手続きをする前に考えておくべきこと

会社設立前に考えておくこと

株式会社にしろ合同会社にしろ、会社設立にあたって考えておくべき多くのことは共通しています。例えば次のような点も、あらかじめ決めておくべきポイントです。

  • 会社や事業の規模、従業員の人数
  • 本店所在地の移転の可能性
  • 専門家や代行業者との契約

それぞれ見ていきましょう。

会社や事業の規模、従業員の人数

会社設立は、1人でも何人かが集まってでもできます。設立後にはどれくらいの人数で組織を作っていくか、規模感を考えておくとよいでしょう。

行き当たりばったりで「今足りないから」とどんどん人を増やし、パソコンや机を追加購入して広い事務所に移転したりするのにはリスクが伴います。

風向きが悪くなれば一気に人員過剰となり、人件費など経費が経営を圧迫しかねません。

本店所在地の移転の可能性

本店所在地など、登記が必要な事項については、変更する可能性も考えておいてください。

とりあえずの住所で登録してしまった場合、登記事項を変えるには変更登記の手続きが必要。登記手続きを行う、登録免許税を納めるといった手間や費用の負担が生じます。

専門家や代行業者との契約

会社設立にあたり専門家と契約を結ぶ様子

事業の経営にあたり、法律や税金、雇用関連の専門家との契約を結ぶことも考えておくとよいでしょう。

会社を設立したら、会社法など法令も遵守しなくてはなりません。そのためには、事業運営に関してどのような法規制が関連するのかなども知っておく必要があります。

決算書類の作成や法人税の申告などにも専門知識が不可欠となりますし、従業員を雇うなら労働関連法の知識のほか就業規則や勤怠管理などの環境づくりも必要となってきます。こういったことは自分で一から勉強するより、専門家に任せることをおすすめします。

会社設立の具体的な手続きの流れ

会社設立の流れ

ではいよいよ、会社設立の具体的な手続きを追っていきましょう。会社設立に必要なのは、次のようなことです。

  • 会社の基礎的な事項を定める
  • 代表者や取締役個人の印鑑証明書を取得する
  • 法人用の印鑑を作り、印鑑証明書を取得する
  • 定款を作成する
  • 定款の認証を受ける
  • 発起人の口座に資本金を払い込む
  • 登記申請に必要な書類を準備する
  • 登記を申請し、設立登記を完了する

それぞれについて詳しく見ていきましょう。すべての手続きが完了するまでには、およそ2週間~1カ月程度の期間が必要です。

会社の基本的な事項を定める

まずは、会社や行う事業について次のような基本事項を定めましょう。

  • 商号(会社名)
  • 事業の目的
  • 発起人
  • 取締役
  • 監査役(設置する場合)
  • 資本金の額
  • 事業年度(決算期)
  • 本店の所在地

商号について

商号を決める際は、すでにその商号を使用する別の会社が存在しないかを調べておく必要があります。
インターネットで商号を調査する方法が、法務省の公式サイトに記載されています。

オンライン登記情報検索サービスによる商号調査ついて|法務省公式サイト

発起人について

発起人とは、資本金を準備したり会社設立の手続きをしたりする人のこと。会社設立には1人以上の発起人が必要です。

取締役・監査役について

取締役とは、重要事項の決定権を持ち、業務を執行する役員のこと。株式会社には1人以上の取締役が必須です。発起人が取締役を指名しますが、1人で会社を立ち上げるなら自分が発起人として自分を取締役に指名することも可能です。

取締役が3人以上いる場合には取締役会の設置ができるので、設置するかどうかも決めておきます。監査役を置くかどうかは任意ですが、取締役会を設置する場合は監査役も必須です。

役員の設置についてはこちらの記事も読んでみてください。

事業年度について

会社の事業年度の決め方

事業年度は、4月から3月、1月から12月など自由に決められます。必ずしも3月を決算月とする必要はありません。

決算の日から2カ月以内に納税しなくてはならないので、事業の繁忙期や棚卸などの時期を考慮して決めてください。

期間は1年以内で設定すればよく、1年未満でも可能ですが、1年とするのが一般的です。

資本金の額について

資本金の額は、かつてあった法律上の制限がなくなったため、理論上は1円でも可能です。しかし、取引先や金融機関からの信用を考えると現実的ではありません。
少なくとも運転資金の3~6カ月分は必要です。

では、会社設立手続きの各タイミングでやることを具体的に見ていきましょう。

法人の印鑑(代表者印)を作る

会社設立時に作っておく丸印

会社設立には、この後に説明する「登記」を行う必要があります。その際に必要となるのが代表者の印鑑です。

代表者印は登記申請書に押印が必要で、その印鑑は申請と同時に登記所に提出する印鑑届書の印鑑と同じでなくてはなりません。

刻印の内容に指定はなく、広く使われているのは、円に沿って外側に商号が彫られ、中央部分に縦に「代表社印」などと彫られているものです。代表者印、会社実印、丸印とも呼ばれています。

サイズには決まりがあり、一辺が1cm以上の長さで、3cm以内の正方形に収まるものでなくてはなりません。

悪用を防ぐため、印鑑はどこでも買える既製のものでなく、独自のものを専門店で作ってもらいましょう。手彫りの場合は作成までに2週間程度はかかるので、余裕を持って早めに注文しておくと安心です。

印鑑は、類似の商号が他にないことを確認し、商号が確定してから作成することをおすすめします。

同時に作っておきたい便利な印鑑

会社設立後には、取引契約や雇用契約などさまざまなケースで印鑑を使う必要があります。

オンライン化が進むと考えられるものの、印鑑(実物)の必要性が一気になくなるとは考えにくく、重要な契約には必要となる可能性も高いです。

代表者印だけでなく、同時に「角印」と呼ばれる社印や銀行印、住所の入ったゴム印を作っておくのが一般的です。

個人の印鑑証明書を取得する

会社設立に必要な印鑑証明書

会社設立に伴う定款認証や登記の申請には、法人用ではなく発起人と取締役の個人の印鑑登録証明書を添付しなくてはなりません。1人での会社設立で「発起人=取締役」の場合は、自分個人の印鑑証明書を2通用意します。

取締役会を置く場合、登記申請時のみ代表取締役の印鑑証明書があれば、他の取締役の分は提出不要です。

印鑑証明書は発行から3カ月以内のものと限定されているので注意してください。

あわせて読みたい

登記に必要な印鑑登録や印鑑証明については、こちらの記事で説明しています。

定款を作成する

定款とは、会社の基本事項をルールとして定めたものです。会社を設立する際には必ず作成しなくてはなりません。

記載内容については、「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」、「任意的記載事項」とされているものがあります。

区別概要
絶対的記載事項すべての会社が定款に記載しなくてはいけない項目
相対的記載事項会社のルールとして定めたい場合は、定款に記載しておかなくてはならない項目
任意的記載事項定款に記載しなくても会社のルールとして有効だが、定款に記載しておくことも可能な項目

それぞれどういうものかを説明します。

なければ定款が無効に!絶対的記載事項

定款の絶対的記載事項とは、記載がなければ定款そのものの効力がなくなるというほど重要なものです。

具体的には、会社法第27条で定められた次の項目です。

  • 事業の目的
  • 商号(社名)
  • 会社の本店所在地
  • 出資される財産の額または最低額
  • 発起人の住所・氏名

定款に記載した事項は、簡単に書き換えるようなことはできません。

変更する場合には株主総会の特別決議やその議事録の作成・提出などの手続きを踏まなくてはならず、最初に作成した定款(原始定款)は残し、変更履歴が加わる形になります。
変更の必要がないよう、よく考えて決めることをおすすめします。

また、会社法27条にはありませんが、会社設立の登記までに定款に記載しなくてはならない事項として「発行可能株式総数」があります。これは文字どおり、会社が発行する株の上限を定めるものです。

株式を無制限に発行できてしまうと、株主が不利益を被ったり不信感を持ったりするおそれがあります。それを避けるため、あらかじめ決めておく必要があるのです。

決めるなら定款への記載が必須「相対的記載事項」

相対的記載事項には、例えば株主の譲渡に制限を設ける場合や、現物出資を行う場合などについて決めた事項を記載します。

株式の譲渡に制限を設けるとは、例えば家族経営で他人が経営に関わることを防ぐため、などの目的で用いられる手段です。現物出資を行う場合は、出資者の氏名やその名称のほか、価値も明らかにしなくてはなりません。

相対的記載事項は、決めたなら定款への記載がなくては効力がないので注意が必要です。

事業運営をスムーズにする「任意的記載事項」

定款に記載しなくても規定を作れば効力が認められるのが任意的記載事項です。

任意的記載事項とされる項目には、事業年度や取締役の数、定期的に招集する株主総会の時期や招集方法、株主が誰なのかを明確にする基準日などが当てはまります。

定款に記載した場合は、変更する際に株主総会の招集などをしなくてはならなくなります。

定款の認証を受ける

定款を作成したら、公証役場にて公証人による認証を受ける必要があります。作っただけで認証を受けていない定款では、このあと説明する株式会社の設立登記手続きはできません。

公証人とは、法律関連の手続きが正しく行われていることをチェックする役割を持つ人のこと。主に弁護士や検察官、裁判官などの有資格者が国から任命されます。

定款認証の手続き

認証の手続きは、公証人が定款の記載内容が法のルールに則っているかどうかを確認、問題がなければ認証する、というものです。

定款の作成には専門知識が不可欠のため、認証を受ける前に公証人に事前相談・確認してもらう流れが一般的です。管轄の公証役場で確認をしてください。

定款認証に必要なもの・費用

定款認証に必要となるのは、次の書類および費用です。

  • 定款 3通
  • 発起人の印鑑登録証明書
  • 3~5万円の認証手数料(資本金額による)
  • 4万円の収入印紙(紙での申請時のみ)
  • 謄本手数料(1枚250円)

定款の認証手数料は、資本金額が100万円未満の場合は3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、300万円以上の場合は5万円です(令和4年1月に改定済)。

謄本はこの後の登記申請で使います。1枚につき250円ですが、8枚くらいとなるのが一般的なので一部につき約2,000円を目安とするとよいでしょう。

定款認証は電子手続きも可能

定款認証は、紙によるものだけでなくオンラインでの電子認証という方法もあります。
この場合は収入印紙を貼る必要がないため、費用が安くなります。しかし、電子申請のためのソフトウェアなどを購入する必要が出てきます。

オンラインでできるとはいえ簡単ではないため、専門家に依頼するのが安心です。専門家ならソフトウェアも持っているでしょうし、知識もあるのでスムーズな申請が可能です。

発起人の口座に資本金を払い込む

定款の認証を受けたら、発起人本人が資本金の払込手続きを行います。払込手続きは、定款の認証日より後の日付でしてください。
振り込まれたお金が会社設立以外の目的によるものでないことを示すためです。

しかしこの時点ではまだ、 法人口座の開設ができません。そのため、 払い込み先は発起人本人の個人口座です。普段から利用している口座でよく、このために新たな個人口座を作る必要はありません。

資本金の払い込みが完了したら、通帳のコピーをとります。表紙と表紙の裏、振り込み内容が記帳されたページのコピーを取ってください。登記手続きの際に必要となります。

登記申請に必要な書類を準備する

定款認証が終わり払込手続きも完了したら、いよいよ会社設立の商業登記を行いましょう。

商業登記をすることで、法に基づき設立された企業としてその存在や権利を公に認められたことになります。同時に社会的な義務も生じます。

登記申請は、法務局に行います。紙面で提出あるいは郵送することもできますし、オンラインによる申請も可能です。

会社設立の登記に必要な書類の一覧

書面での設立登記申請に必要なのは、次のような書類です。

  • 定款の謄本
  • 株式会社設立登記申請書(様式あり)
  • 登録免許税の収入印紙貼付台紙(上記申告書内)
  • 登記すべき事項をまとめた文書
  • 資本金の払込証明書
  • 印鑑証明書
  • 印鑑届書(様式あり)
  • その他の添付書類(ケースによって異なる)

定款は、認証時に取っておいた謄本を提出します。電子認証の場合は、データの入ったCD-Rなどのディスクを提出します。

設立登記申請書は、様式を法務局の公式サイトからダウンロードし、必要事項を記入して押印します。

上記のリストで「様式あり」とした登記申請書と印鑑届書は、法務局の公式サイト(クリックで移動)からダウンロードして記入します。

その他、特にわかりにくい3点について見ていきましょう。

登録免許税の収入印紙貼布台帳

各種登記を行うには、「登録免許税」が課されます。

株式会社設立の登録免許税は、税率が資本金の額の「1000分の7」。これが15万円に満たない場合は一律で15万円と決められています。
資本金が2143万円未満であれば、登録免許税の額は15万円です。

登録免許税は、現金で納める方法と収入印紙で納める方法がありますが、収入印紙で納めるのが一般的となっています。
収入印紙は郵便局などで購入し、登記申請書の様式の最後にある貼付台紙の指定の位置に貼ってください。

収入印紙に押印(消印)があると無効になるので、印鑑を押してはいけません。

登記すべき事項をまとめた文書

会社設立時に登記すべきことのリスト

設立登記で登記すべき事柄は、会社法で定められています。
事業の目的や商号、本店所在地のほか、場合によっては29もの項目を記載する必要があります。

このすべてを記載するにはかなりのスペースを要するため、登記申請書のほかに別紙として、あるいはCD-Rにして添付するのが一般的です。
このとき、申請書には「別紙のとおり」などと記入しておきます。

資本金の払込証明書

会社設立時に必要な払込証明書を閉じるホチキス

発起人の口座に資本金を払い込んだ際にとった通帳のコピーは、ここで使います。

かつては金融機関が発行した払込証明書が必要でしたが、時間がかかるなどのデメリットがあったため簡略化され、通帳のコピーを提出するだけでよくなりました。

コピーしたものとは別の用紙で代表取締役による「払込証明書」を作成し、それにコピーを合わせて綴じたものを提出します。

その他の添付書類について

添付書類として何が必要かは、各々のケースで異なります。

例えば発起人以外の人が取締役となるなら取締役の、監査役を置く「監査役設置会社」なら監査役の「就任承諾書」も必要です。

また、発起人が出資する資金を「モノ」で支払う「現物出資」をした場合には、裁判所が選任した検査役の調査報告書やその附属書類も添付しなければなりません。

必要な書類が揃ったら、法務局への法人設立登記申請を行いましょう。

登記を申請し、設立登記を完了する

登記申請の手続きは、出資金の払込完了日、あるいは発起人が定めた日から2週間以内に行わなくてはいけません。

申請は法務局の窓口に出向くほか、郵送やオンラインでも可能です。
ただし申請先は、設立する会社の本店所在地を管轄する法務局に限ります。管轄となる法務局がどこかをあらかじめ確認しておきましょう。

申請後、登記の審査には1~2週間程度の期間がかかります。
申請書に不備があった場合には修正などの指示があります。その際には期日も決められるので、必ず守ってください。

問題がなければ、設立登記は完了です。

会社設立の手続きは自分でもできる、でも

会社設立を自分で私用か悩む人

会社設立に伴う定款の作成から認証、登記申請に至るまで、行おうと思えば自分でも不可能ではありません。

しかし、上記のように各手続きで必要書類などを正確に記入し、もれなく揃える必要があります。状況によって必要書類も異なるため、簡単ではありません。
修正や再提出などの手間をかけずスムーズに終わらせるには、専門家に依頼するのが得策です。

自分で行うか専門家に頼むかは自分で判断したいという人は、メリットとデメリットの両面で考えてみてください。

会社設立を自分でするメリット

会社設立を自分でするメリット

会社設立手続きを自分ですることには、コストの面と経験値において大きなメリットがあります。具体的には次のようなことです。

  • 専門家に支払う報酬分のコストが浮く
  • 会社運営に関する法律や税金の知識が身につく
  • 信頼できる専門家を探す・選ぶ手間が省ける
  • 設立手続きが自分のペースで行える
  • 自力で手続きした経験値や達成感が得られる

一番目のコストについては説明するまでもないでしょう。その他について説明していきます。

法律や税金の知識が身につく

会社設立には、法律・税金などが大きく関わってきます。設立時の手続きを自分ですれば、自ずと必要な知識も身につきます。

会社運営後も法律・税金についての知識が必要となる場面は多いので、きっと役に立つはずです。

信頼できる専門家を探す手間が省ける

専門家に依頼しない分、コストが抑えられるだけでなく、信頼できる専門家を探す手間も省けます。

数多く存在する専門家の中から、報酬などが自社に見合った、かつ信頼できる専門家を探すのは簡単ではありません。料金とサービスを比較する手間や時間だけでも、結構な負担となるでしょう。

自分のペースで手続きできる

専門家に依頼する場合、事務所の営業時間などに合わせてこちらが動く必要があります。

設立時に副業の段階だったりして平日の昼間に時間が取れない場合、やり取りに時間がかかる恐れもあります。思うように進まずストレスとなることもあるでしょう。

経験値や達成感が得られる

これはあくまで最後についてくるものですが、何事も自分で行うことによって得られるもの、見えてくるものがあります。

専門用語などを自身で調べたり関係機関に問い合わせたりして自分で手続きが完了できれば、大きな経験値となるでしょう。
意外に簡単だと感じるかもしれませんし、「難しそうだな」とやみくもに人に頼る必要もなくなるかもしれません。

会社設立の手続きを自分でするデメリット

会社設立を自分でしようとして苦労する人

自分で会社設立の手続きをすると、メリットもある一方で次のようなデメリットもあります。

  • 手続きに時間や手間がかかる
  • 提出書類に不備や記入ミス、漏れなどが生じる
  • 知識不足などによりコストがかさむこともある

時間や手間がかかる

定款の作成や認証手続き、登記申請に至るまで、慣れない手続きをすべて自分で行っていくには、相当の労力が必要です。事業の立ち上げで多忙な中、同時進行するのは容易ではありません。

不備や記入ミス、漏れなどのおそれがある

専門的な知識がなければ、どうしても書類のもれや記入間違いなどが起きやすいもの。修正や再提出などを行うのに時間を無駄に使うことになりかねません。

予想外のコストがかかる可能性もある

知識がない状態で作成すると、予期せず変更せざるを得なくなる可能性も高いです。

特に定款や登記の内容は、一度承認されれば、変更にも決議や変更の届出等が必要となり、その都度コストもかかります。

会社設立を専門家に依頼するメリット・デメリット

会社設立の専門家と契約し握手する人

では改めて、専門家に依頼する場合のメリット・デメリットも説明します。

専門家に依頼するメリット

会社設立を専門家に依頼するメリットの最たるものは、事業の立ち上げに専念できることです。

ただでさえ時間的にも精神的にも忙しくなる中、事業に直接関連がなくこの先そうそう使うこともない知識を学び、難しい手続きをするような余裕はないですよね。

登記の専門家は司法書士、文書作成は行政書士、税務は税理士など、それぞれに国家資格を持つ専門家がいます。つまり、資格を与えるほど高度な知識が必要だということ。
専門的な知識や実務経験があってこそ、手続きの無駄を省いたり効率よく動いたりできるのです。

設立後にも、会社運営には専門家の知識や知恵を借りるべき局面が数多くあります。顧問契約を結んでおけば、あらゆる場面で力となってくれるはずです。

専門家に依頼するデメリット

デメリットとなるのは、やはり専門家への依頼には「報酬」というコストがかかることです。

専門家も世の中には多数存在するため、サービス内容などを比較検討しなくてはなりません。良い業者を選ばなくては、高い報酬を支払ったのに十分なメリットが得られないおそれもあります。

費用面でのデメリットよりトータルで見た場合のメリットが大きいと思えたら、一度相談してみましょう。

手続きを依頼できる専門家とは?

会社設立にかかる登記手続きの代行は、司法書士にしかできません。定款の作成は、税理士や行政書士も行うことができます。
そのほかにも、何をするかで依頼すべき専門家は異なります。

例えば、営業許認可の取得に必要な文書の作成は行政書士。会計や税金の関連は税理士。雇用関連、例えば社会保険や就業規則の作成については社会保険労務士、など。

注意しておきたいのは、それぞれの専門家にしかできない「独占業務」があること。不十分な知識で引き受けてはいけない業務を行ったりする業者も中には存在します。

どこにどの業務を…となるとややこしくなりがちです。税理士や司法書士、行政書士などが連携する総合事務所に依頼すると、より手間が省けるでしょう。

会社設立したらこれも必須!法人にかかる税金の知識と手続き

会社を設立したら、税務上「法人」となり、個人とは異なる税金を納めなくてはなりません。

法人が納めるべき税金の種類

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 消費税
  • 固定資産税

それぞれどのような税金なのか、見ていきましょう。

法人税

法人税は、個人でいうところの所得税にあたる税金です。事業によって得られた所得に対して課税されます。決算日から2カ月以内に確定申告と納税が義務付けられています。

個人の場合は累進課税といって所得が多いほど税率も上がっていきますが、法人の場合の税率は比例課税であり、所得に関わらず一定の税率が適用されます。

資本金1億円超の法人の法人税率は、23.2%です。

ただし資本金1億円以下の普通法人であれば税率が一部軽減され、年800万円以下の部分については15%、800万円を超える部分には23.2%の税率が適用されます(令和4年5月現在)。

法人住民税

個人が居住する地域に住民税を払うように、法人も地域を構成する人格の1つとして、事業所のある地域に法人住民税を納める必要があります。

法人住民税は、都道府県と市区町村の双方から課税されます。また、資本金額に応じて課される「均等割」部分と、所得の額に応じて課される「法人税割」部分とで構成されています。

均等割部分は所得に関わらず必要です。つまり事業が赤字となった場合でも納税しなくてはなりません。

法人事業税

法人事業税とは、事業を営むことに対して都道府県から課される地方税です。

事業運営にあたり道路や上下水道、ごみ処理などの行政サービスを受けることから必要とされ、義務付けられました。

法人事業税の額は、資本金の額などによって課税方式や税率が異なります。
例えば資本金1億円以下の普通法人の場合は所得割のみで、所得により3.5%~7%の税率です。資本金が1億円を超える場合は、所得割のほか付加価値割と資本割で計算されます。

消費税

消費税は、2年前の事業年度の課税売上高が1000万円以上の場合に課税されます。基準となる年度が存在しない会社設立時は免税となります。

ただし、会社設立時の資本金額が1000万円以上の場合、あるいは事業開始後6カ月間で課税売上高が1000万円を超えている場合には免税されず、課税対象となります。

固定資産税

土地や建物、工作機械などの償却資産といった固定資産を持っている場合には、固定資産税を納める必要もあります。

納税額などについては、市区町村から送られてくる納税通知書と課税明細書で確認します。

税金に関して行っておくべき手続き

会社設立をしたら、上記の税金を納めるための届出も必要です。

税金に関する届出と届け出先の一覧

国税に関する手続きは納税地(本店の所在地)を管轄する税務署、地方税の手続きは都道府県税事務所や市区町村役場に行います。

届け出先期間届出書
税務署・法人設立届出書
・給与支払事務所等の開設届出書 ※
・源泉所得税の特例に関する届出書
・青色申告承認申請書
・消費税に関する各種届出書 ※
・棚卸資産の評価方法の届出書 ※
・減価償却の償却方法の届出書 ※
都道府県税事務所 法人の設立(変更)等の申告書
(名称は各自治体で異なる)
市区町村役場 法人設立・事務所等開設申告書
(名称は各自治体で異なる)

※印の届出は、該当する場合には提出が必要です。

都道府県税事務所や市区町村に提出する書類は、法人設立届出書と同じような内容を記入すればよく、難しい書類ではありません。

税務署に提出する書類について、それぞれどんな書類か、どんな場合に必要かなどを見ていきましょう。

法人設立届出書

国内に本店や事務所を置く場合には、「法人設立届出書」を税務署に提出します。添付書類として定款も必要です。

提出期限が「設立登記をした日から2カ月以内」と決められています。

給与支払事務所等の開設届出書

会社を設立し、給与の支払いをすることになった場合には、「給与支払い事務所等の開設届出書」を税務署に提出します。

この手続きは、会社設立から1カ月以内にしなくてはなりません。

源泉所得税の特例に関する届出書

給与等を支払う際には、所得税を源泉徴収、いわゆる給与から天引きすることとされています。差し引いたお金は原則として、支払った月の翌月10日までに納税しなくてはなりません。

源泉所得税を納める時期を、月々でなく半年に1度にするために必要となるのがこの届出です。

正しくは「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」といいます。給与を支払う事務所所在地の管轄税務署に提出します。

消費税に関する各種届出書

消費税の課税対象となるのは、基準期間(前々年度)の課税売上額が1000万円を超えた場合です。

原則として新規に会社設立をした当初は免除となりますが、設立時でも資本金あるいは出資金額が1000万円以上の場合は納税が必要です。これを「消費税の新設法人に該当する」といいます。

消費税を納める必要が生じた場合には、税務署に消費税の課税事業者となったことを届け出なくてはなりません。この場合、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」の提出が必要です。

ただし、上記の「法人設立届出書」の中に、新設法人に該当する場合について記載する欄があります。
そこに記入して提出すれば、この届出書は必要ありません。

会社設立の後、基準期間の課税所得が1000万円を超えた場合には、「消費税課税事業者届出書」の提出が必要です。

青色申告承認申請書

所得税の確定申告を青色申告にするために必要な届出です。

会社設立1年目から青色申告にするには、提出期限を守らねばなりません。期限は、「設立日から3カ月が経過した日」あるいは「設立1年目の事業年度終了日」の「いずれか早い方の前日まで」ですので注意してください。

棚卸資産の評価方法の届出書

棚卸資産の評価について、「最終仕入原価法」でない方法をとりたい場合には、この届出を設立1年目の確定申告書の提出期限までに出さなくてはなりません。

棚卸資産とは、商品や製品、原材料などのいわゆる「在庫」のこと。棚卸資産がどれだけあるのかは、決算時に数を明確にし、評価額を決算書(貸借対照表)に記載する必要があります。

この棚卸資産の評価額を決める方法は複数あり、棚卸資産の種類別に「個別法」「平均原価法」など別々の選択もできます。しかしこの届出を出さなかった場合は、最終仕入原価法を採用したと見なされます。
評価方法は、原則として3年は変更不可なので注意が必要です。

減価償却資産の償却方法の届出書

減価償却資産の償却方法についても、選択したい場合にはこの届出を出す必要があります。期限も同じく1年目の確定申告の締め切り、つまり設立翌年の3月15日です。

償却資産とは、年数を経るにつれてその価値が下がっていく資産のことです。

この届出をしなければ、法定の償却方法(旧定額法または定額法)で償却することとなります。

有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書

株式などの有価証券を購入した場合には、 有価証券を譲渡する際などに必要な 「一単位当たりの帳簿価額」の算出方法を決めておく必要もあります。

算出方法には、有価証券を購入するごとに計算する「移動平均法」と、期末に総額から算出する「総平均法」の2つの方法があります。

この届出を出さなければ、法定の算出方法である移動平均法をとることになります。

移動平均法は、その都度の計算が必要となる上、総平均法より複雑です。有価証券での取引が多く事務的な負担を軽減するためには、総平均法を選択する方が得策かもしれません。

会社設立したら社会保険や労働保険も対象に

たとえ自分1人の会社であっても、従業員(働く人)が常時いる場合には社会保険の適用事業所となり、社会保険(厚生年金保険と健康保険)への加入が義務づけられています。

まずはこの手続きについて説明します。

社会保険の新規適用事業所となるには

社会保険の適用事業所となる条件を満たしたら、次の書類を年金事務所に提出します。

  • 新規適用届
  • 登記簿謄本
  • 法人番号指定通知書等のコピー

登記簿謄本は、登記が完了したら法務局で取得できます。

法人番号指定通知書は、設立登記が完了したら登記した住所に郵送で届きます。紛失したなどでコピーが用意できない場合には、国税庁の法人番号公表サイトに掲載された法人情報の画面のプリントでも可能です。

この届出は、加入すべき要件を満たした場合にはその5日以内に提出することとされています。しかし登記簿謄本は5日以内には手に入りません。
登記簿謄本が取得できたらすぐに手続きを行いましょう。

自分や従業員が社会保険に加入するには

会社が社会保険の適用事業所となったら、次は従業員を健康保険と厚生年金保険の被保険者とする届出を行う必要があります。

手続きは、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」という届出書を年金事務所に提出して行います。

パートタイマーなど短時間労働者を雇った場合でも、条件によっては社会保険に加入させる必要があるので注意が必要です。

具体的には、1週間の所定労働日数・時間が正社員の4分の3以上の人のほか、4分の3未満であっても労働時間が週20時間以上、1年以上の雇用見込みがある、月給が8.8万円以上であるなどの条件を満たせば、社会保険の被保険者となります。

人を雇った場合には労働保険の対象にもなる

社会保険に関しては自身も従業員としての扱いですが、1人でも人を雇って賃金を雇うとなれば、労働保険への加入対象にもなります。
労働保険は、事業主(雇用主)は対象外です。

労働保険とは労災保険と雇用保険のこと

労働保険とは、次の2つの保険の総称です。

  • 労災保険…通勤中や業務中のケガや病気などに備える保険
  • 雇用保険…退職し失業状態となった場合などに給付金が受けられる保険

別々の保険制度ですが、農林水産業や建設業などでなく一般的な業種の場合、保険料はまとめて納めます。

労働保険料は会社が全額を負担、雇用保険料は労働者と折半することになっています。

雇用保険を納めているかどうかは、雇用関連の助成金を受ける際にも支給要件として重視されます。

労働保険への加入手続き

従業員を1人でも雇ったら、10日以内に「労働保険保険関係成立届」をハローワークまたは所轄の労基署に提出します。

また、50日以内には概算の保険料(年度内の賃金の見込み総額に保険料率をかけた額)を申告・納付しなくてはなりません。

その従業員の労働時間などが雇用保険の対象となった場合には、次の2つの書類も提出してください。

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

農林水産業や建設業などの場合は、労災保険と雇用保険の手続きを別々に行う必要があります。労基署かハローワークで確認してください。

会社設立したらこれも必須!事業を行う環境の整備

会社という枠組みができたら、いよいよ事業のスタートです。それには次のような環境の整備が欠かせません。

  • 銀行等の法人口座の開設
  • 社内インフラの整備
  • スムーズな取引のためのツールの準備

それぞれ具体的に見ていきましょう。

銀行の法人口座の開設

会社を設立したなら、銀行に会社名義の法人口座を開いておくことをおすすめします。手順は次のように進めます。

  • 金融機関を決める
  • 必要書類を準備する
  • 口座開設申し込みをする
  • 金融機関による審査~審査結果の連絡
  • 通帳・キャッシュカードの受け取り

法人口座の開設に必要な書類とは、口座開設の依頼書、登記簿謄本、定款、会社印と印鑑証明書、代表者の実印と印鑑証明書や身分証明書など。

会社を設立したからと言って、法人名義の口座を開設する義務はありません。しかし、会社と個人のお金が同じ口座に入っているとなれば、不都合も出てきます。

自身での管理がしにくいこともその1つですし、取引先や金融機関から見ても個人口座での管理は管理体制に疑問が生じます。脱税など何らかの狙いがあるのでは?と疑われてしまうおそれも。

ただ、最近では法人口座の設立も難しくなっている状況です。口座開設をどこですべきか、開設申し込みで気を付けるべき点については、こちらの記事を参考にしてください。

社内インフラや備品の整備

会社設立で必要となる社内インフラ

事業を始めるには、社内のインフラや備品など業務ができる環境づくりも必要です。
事業内容や業種によって必要性も異なりますが、業種によって必要とされる施設の条件、管理方法などが設けられている場合には、条件を満たさなくてはなりません。

特に決まりのないものについては、必要な物と適切な数量を考え、無駄のないように手配しておきましょう。

設備にお金をかけすぎて、事業が軌道に乗る前に運転資金が底をつくケースも多く見られます。スタート時の設備投資は、必要最小限にしておくことをおすすめします。

必要となる主な設備の一覧

一般的なオフィスであれば、次のような準備が必要です。

  • 電気やガス、水道などの公共サービス
  • 電話回線(電話番号)
  • インターネット回線
  • パソコン、オフィス用複合機
  • ITツール・ソフト
  • 机や椅子、書類保管用キャビネット
  • ゴミ箱、シュレッダー、傘立て、コートハンガーなど

それぞれについて説明していきます。

電気やガス、水道などの公共サービス

電気やガスは供給会社の自由化により複数の選択肢があります。
料金プランの安さだけでなくサービス内容なども比較して最適なものを選んでください。

電話回線(電話番号)

会社設立で必要となる電話機

会社を設立するなら、電話もスマートフォンだけでなく固定電話を契約しておきたいもの。会社の連絡先が携帯電話では、社会的な信用度が低くなります。

必ずしも固定電話の契約、というのではなく、インターネット回線を利用したIP電話などを利用するのも1つの方法です。

インターネット回線

インターネット回線にもさまざまなタイプがあります。会社であれば固定の光回線を利用するのが、通信が安定していて速度も速めなので安心です。

業者やプランは複数存在するので、まずは自社がサービスエリアに入っているかどうかの確認から。料金はもちろん、通信速度やサポート体制なども考慮して選びましょう。

パソコン、オフィス用複合機

会社設立で必要となるオフィス機器

パソコンや、コピー機やファックス、スキャン等ができる複合機も、必要に応じて揃えましょう。複合機は高額でメンテナンスも必要なため、リース契約をするのが一般的です。

パソコンについては、必要な台数のほかデスクトップ型かノート型か、またスペック等も必要性を考慮して選んでください。

ITツール・ソフト

パソコンの使いみちによって、必要なツールやソフトなどの購入・契約も必要です。業務に必要なものはもちろん、従業員が多いなら、勤怠管理やスケジュールの管理・共有ができるシステムがあると便利です。

日々の連絡に使う「Chatwork」や「LINE WORKS」といったビジネス用チャットツールや、「Zoom」のようなweb会議用のアプリなど、何が必要か、どれを使うかを決めて準備しておきましょう。

机や椅子、書類保管用キャビネット

事務作業を行うオフィスなら、机や椅子、書類を保管するキャビネットなどのオフィス家具・備品も必須です。長い時間および期間にわたり利用するものなので、使いやすさや耐久性を重視して選ぶ必要があります。

個人情報を大量に扱う業種であれば、シュレッダーやカギ付きの保管庫なども必要となるでしょう。

ゴミ箱、傘立て、コートハンガーなど

用意を忘れがちなのが、業務には直接的に関係がないものの、「ないと困るもの」です。

オフィスの環境を整えておくことは、業務の効率化にも必要なこと。重要度が低そうなゴミ箱や傘立てやコートハンガーなども、ないと事務所内が整頓できず、落ち着いて仕事ができる環境ではなくなってしまいます。

従業員のことを考えれば、冷蔵庫や電子レンジ、ロッカーなどの用意もしておきたいものです。

スムーズな業務遂行のためのツールの準備

取引先とのやり取りや知名度の向上、集客などのため、次のような準備もしておくとよいでしょう。

  • 名刺の作成
  • ロゴ・ロゴマークの作成
  • 公式webサイトの制作
  • 社名入りの封筒

それぞれ見ていきましょう。

名刺の作成

会社設立にあたり作っておきたい名刺

会社を設立して活動するなら、取引先と対面する際に名刺が不可欠です。社名や担当業務(部門)、氏名と連絡先が書いてあるので、ビジネスにおいて身元を示す手段としてだけでなく、営業ツールとして活用できます。

あらかじめ作っておかなければ、取引先に出向いた際や来客の際に手渡すことができません。「名刺がまだなくて…」というのも残念な印象になるので、事業開始に間に合うように作っておきたいものです。

名刺を作る際には、文字の羅列だけでなく会社のロゴやロゴマークもあるとよいでしょう。

ロゴ・ロゴマークの作成

どのような会社なのかを端的に表すのがロゴ(文字)やロゴマークです。看板やwebサイトなどには、ロゴがあってこそ会社らしくなりますし、企業イメージを形作るものでもあります。

ロゴやロゴマークは、事業の特徴や企業理念、ターゲット層にあった色やデザインにすることが必要。そのうえ、既存企業のロゴマークなどと類似しないことが重要です。

そのため、作成はできれば知識もスキルもあるデザイン会社に依頼したいところ。費用を抑えるには、クラウドサービスやスキルマーケットで個人のクリエイターに依頼する方法や、無料でロゴが作成できるwebサイトを利用する方法もあります。

公式webサイトの制作

会社設立で行っておきたい公式webサイトの制作

会社設立直後では、知名度や実績がないため信頼してもらう材料がありません。

そのため、目に見えるものとして経営の方針や事業の目的、商品やサービス例などを掲載したwebサイトを作るとよいでしょう。自社サイトがあるというだけでも、信用度をアップできます。

サイトの制作は、自分で本などを見ながら作ることもできますが、デザインや見せ方には工夫が必要です。また、ネット検索で上位に表示されなくては見てもらえません。費用はかかりますが、知識のあるweb制作会社に依頼するのがおすすめです。

社名・ロゴ入りの封筒

会社設立時に作っておきたい社名入り封筒

契約書や商品など、郵便物を送る必要性があるなら社名やロゴ入りの封筒も、作っておきたいものの1つ。入れるものによって使い分けられるよう、異なるサイズを2種類くらい用意しておくと便利です。

一般的なのは、A4サイズがそのまま入る角形2号と、A4用紙の三つ折りが入る縦型の長形3号。事業で郵送する物に合わせて用意してください。

茶封筒や白い封筒でも代用は可能ですが、封筒1つでも印象は変わり、信頼度も増すので、用意することをおすすめします。

会社設立に必要な準備はBricks&UKにお任せください

会社設立に必要なことをメモしている人

会社の設立には、まず商号や資本金額など基本的な事柄を決めて定款を作成、認証を受けたら資本金を払い込み、法務局に登記申請を行います。

こうして文字で見ると簡単そうですが、決めるべき事項や揃えるべき書類、付随して行うべきことも多数あります。

さらに税金や保険に関する手続き、環境の整備など、やるべきことは盛りだくさんです。

すべてを自分で行うには、事業開始の準備に大きな負担ともなり得ます。任せられる部分は任せて、効率よく進めていくのがおすすめです。

当サイトの運営会社「Bricks&UK」では、会社設立と印鑑や名刺の作成をお得なセットにした会社設立手続きキャンペーンを行っています。

税理士法人を母体とし、司法書士・社会保険労務士などが連携した総合事務所ですので、会社設立にかかるさまざまな場面でワンストップによるご対応が可能。マーケティング部門もあるので、オリジナルなwebサイトの制作も可能です。ぜひ一度ご相談ください。

友だち追加で限定特典GET LINE公式アカウント 友だち追加で限定特典GET LINE公式アカウント

【「起業しようかな?」と思ったら…】起業・開業支援スタッフがご支援します!

【記事を読んで「いいね!」と思ったらシェアをお願いいたします!】

起業前に「何をすればいいの?」とお悩みの方

「起業しようかな?」と思ったら…起業・開業支援スタッフがご支援します!

  • まず何から始めたらいいか基本的な事を知りたい方
  • 起業にあたって客観的な意見が欲しい方
  • ビジネスが成功しそうか相談相手が欲しい方
  • 具体的かつ現実的なアドバイスが欲しい方  ……etc.

起業を決意していざ行動しようとはしたものの、具体的にどのような手順で進めれば良いかわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
TipsNoteではそんな方に向けて、実際に起業するための行動に移すまでのステップを含めて起業・開業のサポートを提供しております。

起業準備を5つのステップに分けて、ビジネスモデルの収益性の検討商圏分析創業計画書の作成サポートなど専門的な視点の必要な項目を支援いたします。

認定支援機関の「税理士法人Bricks&UK」なら、起業をトータルでサポート!

税理士法人Bricks&UKは約3,200超の顧問契約数を持つ税理士法人です

名古屋、東京、三重県四日市、沖縄、そしてタイのバンコクにまで事務所を構え、税理士法人としての基本機能である会計・税務申告や経営アドバイスで様々な業種のクライアントを総合的に支援しております。

【「起業しようかな?」と思ったら…】起業・開業支援スタッフがご支援します!

まずは無料相談からお気軽にお申込みくださいませ!


起業は5ステップで準備しよう!詳しくはこちら

TipsNoteはあなたの
起業・開業を応援します

起業・開業まず何をすればいい?
融資のこと色々教えてほしい
手続きについて聞きたい