起業したいと思っても、何から始めればいいのか、資金はどうすればいいか、など疑問点は多いものです。
誰かに聞きたくても、誰に聞けばいいかわからない…そんな人も少なくありません。
起業を相談できる窓口は、いくつかあります。相談内容によっては、その分野の専門家に相談する必要があります。
この記事では、起業前に相談でき、信頼がおける12の窓口を紹介します。相談前にしておくべきこと、相談時の注意点なども解説するので参考にしてください。
起業前に相談しておきたいこと
起業前に相談したいことはたくさんあります。もちろん自分が聞きたいことを聞けばよいのですが、次のようなポイントを押さえておくと、起業までの流れがスムーズになります。
- 起業の形態
- 資金調達の方法
- 創業計画の立て方
- 必要な許認可や手続き、書類
起業の形態
起業にも、個人事業主として起業する場合と、会社を立ち上げる場合があります。会社は1人でも作ることができるので、人数で決めればいいわけでもありません。
また、会社を立ち上げる場合、現実的な選択肢となるのは「株式会社」と「合同会社」です。
ただし、どちらにもメリット・デメリットがあるので、決めるのが難しいかもしれません。決め切れなければ窓口で相談してみましょう。
資金調達の方法
資金をどこから調達すればいいかも、多くの起業家が悩むところです。
自己資金や親類から借り入れるなどのほか、金融機関からの融資、自治体の創業支援。そのほか事業によって別の資金調達の方法があるかもしれません。
スタートアップ(革新的な技術やアイデアで起業する)であれば、国からの支援が受けられる可能性もあります。
創業計画(ビジネスプラン)の立て方
起業には、創業計画を立てることが必須です。創業計画は、「創業計画書」として書面にまとめるのが一般的。経営に役立てるのはもちろん、融資の審査でも重要視されます。
とはいえ、いきなり「作れ」と言われても難しいものです。いわゆるテンプレートの空欄を埋めるだけでは足りないので、立て方や押さえるべきポイントなどを知っておきたいものです。
必要な許認可や手続き、書類
起業するには、個人なら開業届、会社なら設立登記を行う必要があります。また、事業によっては許認可や届出等が必要なケースも少なくありません。
自分が行う事業にはどんな手続きが必要か、用意すべき書類やその書き方など、ケースによって違うので確認しておきましょう。
起業の相談前にしておくべき準備
起業を誰かに相談する前に、しておくべきことがあります。5つの準備行動とその理由を見ておきましょう。
- 起業の目的を明確にする
- 本やネットで下調べする
- 聞きたいことを明確にする
- 自分の意見も用意しておく
- 事業や資金について計画を立てる
起業の目的を明確にする
まずは、事業によって何を成し遂げたいのか、起業したい理由や目的を明確にしてください。
事業目的が明確なほど、相手が回答しやすくなり、より最適な答えをもらえます。目的が違えば、回答も違ってくる可能性もあります。
本やネットで下調べをする
人に聞く前に、ひととおりは自分で調べ、最低限の知識は持っておきましょう。起業や経営などについては、本も数多く出版されていますし、ネット上にもたくさんの情報が掲載されています。
ただしネットでの下調べは、情報が間違っていたり、古い情報だったりする可能性もあるので要注意。複数の情報を見る必要があります。
聞きたいことを明確にする
何を相談したいのか、その内容もはっきりさせておいてください。相談者が何を聞きたいかが明確でないと、相手も適切な答えができません。
「起業したいけどアイデアがない」という場合は、少なくとも自分の強みや長所、事業に活かせそうなスキルや資格を洗い出しておきましょう。
自分の意見も用意しておく
相談する事項について、自分なりの考えや希望なども用意しておきましょう。事業を成そうとするなら、まずは自分の考えや意見も持った上で相談すべきです。
自分では何も考えず、ただ答えだけを得ようとする人もいます。しかし、それでは時間を割いてくれる相手にも失礼ですし、自覚や責任感を疑われてしまいます。
事業や資金について計画を立てる
相談前に、自分なりにできる限り事業計画や資金計画を立ててみてください。
起業未経験で事業計画や資金計画を立てるのは難しく、誰かに相談したいと思うのは当然です。
少なくとも事業にどれくらいの資金が必要で、自分はどこまで出せるかをはっきりさせましょう。ある程度までは作ったけれどここがわからない、ここはこういう内容で問題ないか、といった相談の仕方をするのがベターです。
最適な回答を得るための注意点
せっかく相談するなら、自分が納得できる、悩みが解消できる答えが欲しいものです。それには、次の3つの注意点を押さえておきましょう。
- 信頼できる相手を選ぶ
- 調べればわかることを聞かない
- 事実を正確に正直に話す
信頼できる相談相手を選ぶ
秘密を守って真摯に相談に乗ってくれる、信頼できる相手を選んで相談しましょう。
情報を誰かに漏らすような人や、親身になってくれない人、知識や経験のない人では、有益な回答も期待できません。
すでに起業し、成功している人や、公的な相談窓口、起業や経営に詳しい専門家などに聞くことをおすすめします。
調べればわかることを聞かない
ネットで調べればすぐにわかるようなことを、人に相談しないようにしましょう。その時点で、起業への姿勢や起業家としての資質が問われます。
人に頼るのは悪いことではないにしても、まずは自分で解決策を探してみてください。
事実を正確に正直に話す
相談する際は、事実を隠すことなく正直に伝えましょう。見栄を張ったり、隠し事をしたりしてしまうと、最善・最適な答えがもらえない可能性が高いです。
嘘をついた部分が、相談の答えを出すのに重要だったりすることはよくあること。事実でない内容でいくらアドバイスをもらっても、重要な問題が隠されていればうまくはいきません。
起業について相談できる窓口
では、実際に誰に相談すればいいのでしょう。まずは、無料で幅広い内容について相談できる窓口を利用するのがおすすめです。
この章では、起業についての無料相談が可能な公共性の高い窓口を紹介していきます。
- 商工会議所・商工会
- 自治体の中小企業支援センター
- よろず支援拠点
- 日本政策金融公庫
- 中小機構
- Plus One(プラスワン)
それぞれ説明します。
商工会議所・商工会
起業に関する全般、特に創業計画書の策定やビジネスモデルの構築、ビジネスパートナー探しなどの相談に向いているのが、商工会議所や商工会です。
商工会議所も商工会も、地域経済の発展や中小規模の事業主への支援を行う団体です。商工会議所は主に「市」単位、商工会は「町村」単位で存在しています。
「商店街の空き店舗を借りて事業を始めたい」というようなケースでも、話が早く進むでしょう。
事業を始めようとする地域の、商工会議所あるいは商工会が相談窓口です。
自治体の中小企業支援センター
ベンチャーやスタートアップの起業、ビジネスプランの策定や資金調達などに関して相談できるのが、各自治体にある中小企業支援センターです。
全国47都道府県のほか、政令指定都市にあり、地域の中小企業・小規模事業者のサポートをしています。
名称は各地で異なりますが、いずれも公益財団法人であり、「(地名)産業振興センター」「(地名)産業振興財団」など類似しています。
都道府県等中小企業支援センター(令和5年9月現在)|中小企業庁
よろず支援拠点
中小企業や小規模事業者の起業や経営に関するあらゆる相談に乗ってもらえるのが、全国にある「よろず支援拠点」です。国が運営する相談所なので、安心して利用できます。
さまざまな専門家が集まっているので、あちこちに相談に行かずともここだけで解決できる可能性もあります。
日本政策金融公庫
創業計画や資金計画の策定、融資による資金調達の相談に向いているのが、日本政策金融公庫です。
国が100%を出資する政府系の金融機関なので信頼度が高く、創業時に融資を受ける人が多いことで知られています。全国各地に支店があります。
民間の銀行でも相談には乗ってもらえます。しかし、「自行の利益になるかどうか」が影響し、偏った回答になるおそれもあります。
中小機構
中小機構(独 中小企業基盤整備機構)でも、起業や経営に関するあらゆる相談が可能です。
例えば、これからニーズが高まるビジネスを知りたい、事業に使える公式な補助金制度を知りたい、自己破産の過去があっても会社設立が可能か知りたい、など。
スタートアップや海外に向けたビジネスに関する相談にも向いています。
ここで言う「スタートアップ」は、創業時の企業全般ではなく、独創的な技術やアイデアで急成長が見込める企業を指します。
AIチャットボットや専門家にチャットで相談できるサービスもあります。
Plus One(プラスワン)
スタートアップの場合、研究開発などに多額の費用がかかります。そんな資金面やビジネスマッチング、知財の実用化などについて相談したい、国の援助を受けたいという場合には、「Plus One(プラスワン)」の利用がおすすめです。
「Plus One(プラスワン)」は、スタートアップを支援する政府系の16機関による、ワンストップの相談窓口です。
起業の際に相談できる専門家
相談したい分野が限られている場合は、次のような各分野の専門家に相談した方が話が早いでしょう。
名称 | 専門分野 |
---|---|
弁護士 | 法律に関する全般 |
税理士 | 税金に関する全般、企業経営、補助金申請 |
司法書士 | 会社設立などの登記・供託、裁判所等への書類作成 |
行政書士 | 行政機関に提出する書類の作成 |
社会保険労務士 | 雇用・労働保険、社会保険、助成金申請 |
中小企業診断 | 中小企業の経営指南、課題解決 |
ただし、専門家個人や民間法人に相談する場合は、相談が無料かどうかを確認してから利用するのがおすすめです。
ここでは無料の窓口も紹介していくので、賢く利用してください。
弁護士
起業には、さまざまな法律も関わってきます。特に注意すべきなのは、立ち上げる事業に法的な問題がないか、ということです。
新たなビジネスであれば特に、どんな法律が関わってくるのかを知り、遵守する必要があります。弁護士は法律全般のプロなので、事前に相談すると安心です。
日本弁護士連合会(日弁連)では、中小企業向けの相談ダイヤル「ひまわりホットダイアル」を設置しています。
税理士
法人税や確定申告、インボイス制度など税金に関することは、税理士の専門分野です。
また、税理士は事業計画や経営支援も行っているほか、補助金の申請などにも精通しています。そのため、税理士と顧問契約を結び、経営に関する相談もしている事業主が多いです。
各地方の税理士会では、税金に関する無料相談を行っています。「○○(地名) 税理士会」でネット検索してみてください。
司法書士
司法書士は、会社設立に必須の「登記」の専門家です。そのほか、株式会社の設立に欠かせない、「定款(会社の基本事項を定めたもの)」を公証役場に認証してもらう手続きの代行も可能。
法務局や裁判所・検察庁などに提出する書類の作成もしてくれます。
各地の司法書士会で、無料の法律相談を行っています。「○○(地名) 司法書士会」でネット検索してみてください。
行政書士
起業に際しては、さまざまな場面で法的な書類を作る必要があります。国や自治体の役所といった行政機関に提出する書類の作成については、行政書士が専門家となっています。
営業許可の取得が必要な業種などは、書類の書き方が許認可の可否を左右することも少なくありません。自分で作成することに限界を感じたら相談してみましょう。
行政書士会でも、各地で無料相談を受け付けています。「○○(地名) 行政書士会」で検索してみてください。
社会保険労務士
起業と同時に会社を設立したり、従業員を雇ったりする場合に頼れるのが社会保険労務士です。
雇用保険・労働保険といった保険の手続きや、就業規則の作成、雇用関連の助成金申請などを専門としています。労基法の遵守も必須ですので、事前に相談しておくとよいでしょう。
各地の社会保険労務士会で、無料相談を行っています。「○○(地名)社労士会」で検索してみてください。
中小企業診断士
中小企業診断士は、文字通り中小企業が持つ課題の解決をサポートする専門家です。ビジネスモデルから資金繰り、集客、ITの活用など、経営に関するあらゆることを相談できます。
中小企業診断士は、上で紹介したよろず支援拠点や、商工会議所の相談窓口でも活躍しています。
中小企業診断士協会も各地にありますが、無料相談は行っているところと行っていないところがあります。「○○(地名)中小企業診断士協会」で検索してみてください。
起業の相談は信頼できる窓口へ
起業には不安や疑問がつきものです。経営となるとわからないこともたくさんあるでしょう。しかし、国や各地に相談できる窓口が設置されています。
自分である程度は調べるなどして、どうすればいいかについても意見を用意した上で、信頼できる専門家に相談してください。
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