多様な働き方が認められつつある現在、会社という組織に縛られず、独立して自分のペースで働きたい、という人が増えています。
しかし、どんな仕事でも独立して成功できるかと言えば、そうではないので気を付けたいところです。
この記事では、独立開業しやすい仕事の特徴や例、なるべくリスクを抑える方法について解説します。
目次
まずは統計で見る「開業率の高い業種」
開業のしやすさは、実際に開業した人が多いかどうかで測ることができます。まずは実際の開業状況を見ておきましょう。
直近の開業業種ランキング
「中小企業白書2022」によると、開業率の高い業種の上位5位は次のとおりです。
- 1位:宿泊業・飲食サービス業
- 2位:生活関連サービス業、娯楽業
- 3位:電気・ガス・熱供給・水道業
- 4位:不動産業、物品賃貸業
- 5位:情報通信業
開業する人がもっとも多いのは宿泊業・飲食サービス業で、他の業種を大きく上回っています。次いで生活関連のサービス業、娯楽業などが続きます。
廃業率の高い業種も要チェック
次に、廃業率も見ておきましょう。失敗・撤退する人が多いのは次のような業種です。
- 1位:宿泊・飲食サービス業
- 2位:生活関連サービス業、娯楽業
- 3位:金融業・保険業
- 4位:小売業
- 5位:電気・ガス・熱供給・水道業
1位の宿泊・飲食サービス業と2位の生活関連サービス業、娯楽業については、開業率と廃業率のどちらも高くなっています。つまり「開業はしやすいが継続は難しい」業種とも言えるので要注意です。
独立開業しやすい仕事の特徴8つ
独立開業がしやすいのは、次の条件に当てはまる仕事です。
- 1人で完結できる
- 大掛かりな設備やスペースが不要
- 在庫を持たずにできる
- 難易度の高い資格を活かせる
- 資格や許認可が必要ない
- 安定したニーズがある
- 利益率が高い
- すでに独立開業している人が多い
すべてを網羅する仕事である必要はありません。それぞれについて説明します。
1人で完結できる
独立開業しやすい仕事の筆頭が、1人で業務を完結できる仕事です。思い立ったらすぐ始められます。
人を雇う必要がなければ人件費もかからず、労務管理や人材教育などの必要もありません。人間関係のストレスとも無縁で、仕事に専念できます。
大掛かりな設備やスペースが不要
独立開業の最大のネックは開業資金と言っても過言ではありません。
そのため、小規模でお金がそれほどかからずできる仕事なら、独立開業もしやすいです。
例えば、自宅でPCとインターネット環境だけあればできるウェブ関連の仕事。
飲食業でいうと、例えばカウンターだけの小さなバーや、建築業の1人親方なども起業しやすい仕事に入ります。
在庫を持たずにできる
大量の在庫を必要としない業種も、独立開業しやすいと言えます。在庫が大量に必要となれば、まず仕入れにお金がかかり、保管する場所の家賃などもかかります。
例えば、受注生産のような仕事や、モノでなく自分の知識やスキルを提供する職種なら、大量に在庫を抱えてしまう心配がありません。
多くの在庫を必要とする場合、開業後も管理不足だと無駄な在庫発注が増え、経営悪化を招く恐れもあります。
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難易度の高い資格を活かせる
難易度の高い資格が必要な職種も、独立開業しやすい仕事と言えます。
例えば弁護士や司法書士、税理士や社会保険労務士や一級建築士といったいわゆる「士業」は国家資格が必要で専門性が高く、誰でも簡単にできる仕事ではないのがポイントです。
そのため一般的な職種に比べてライバルが少なく、また仕事の単価も比較的高く設定できます。
ただし、継続的な利益を得るには、クライアントの信頼を得て顧問契約を結ぶ必要があります。
資格や許認可が必要ない
上の項の話とは逆に、開業に特別な資格や許認可が必要ない仕事も独立開業しやすい仕事の1つです。
ただし資格などが必要ないため開業自体のハードルは低いものの、ライバルは多い傾向です。そのため生き残りには一層の工夫が必要です。
安定したニーズがある
独立開業して成功するには、事業としてやっていけるだけのニーズがあることが不可欠です。
ニーズが高ければ、協力者が現れる可能性も高いでしょう。安定したニーズがあると確信できれば、自信を持って独立できます。
自身のキャリアや経験が活かせても、開業した場所ではニーズがなかったり、一過性のブームだったりすれば生き残れません。
ニーズについては、職種だけでなく場所やターゲット設定の視点も重要です。市場分析、競合分析は欠かせません。
利益率が高い
利益率が高い、つまり少ない元手で多くの利益が得られる仕事も、独立開業がしやすいです。
元手が少ないとは、初期費用や毎月の固定費・経費が少なくて済むこと。商材は、モノよりサービスの方が利益率が高いです(旅行サービス業など手数料が収入のメインとなる業種を除く)。
飲食業も、利益率が高めで始めやすい事業の1つです。安い材料費で高く売れる、いわゆる原価率が低いものを選ぶとよいでしょう。
すでに独立開業している人が多い
すでに独立開業している人が多い職種というのも狙い目です。
十分な需要があり、かつ利益を生み出しやすいということが証明されているようなものだからです。収益を上げるためのビジネスモデルも確立されている可能性が高いです。
ただしライバルも多いため、開業はしやすくても成功は簡単ではありません。特に飲食の流行りものでは、「今すごく流行っている」という時点で始めるのはもう遅いです。
独立開業しやすい仕事の例
上記の特徴を踏まえて、独立開業しやすい仕事の中でもおすすめのものをピックアップして紹介します。
ウェブ系の仕事・クリエイターなど
IT・ウェブ系の業種は、独立する人が多い業種の1つです。例えば次のような職種があります。
- プログラマー
- システムエンジニア
- ネットワークエンジニア
- ウェブディレクター
- ウェブデザイナー
- プロダクトマネージャー
- ウェブライター
特にシステムエンジニアやプログラマーなどのITエンジニアはニーズが高く、人手不足の状態が続いています。
この中で最も難易度が低いのはウェブライターの仕事。初心者でもスキルを身につけやすいからです。仕事はクラウドソーシングでも探せますし、パソコン1台で完結できるため、在宅で手軽に始められます。
ただ、ウェブライターの場合は特にクラウドソーシングを介すると単価が低く、それだけで生計を立てるのは難しいのが現状です。
このように、開業しやすい仕事と儲かりやすい仕事はイコールではないので要注意です。
【よくある疑問】アフィリエイター・ユーチューバーは?
作業的に始めやすい、という点で言えば、ブログやYouTubeの動画配信などでのアフィリエイト(成果報酬型の広告収入)も始めやすい仕事と言えます。
ただ、成功者は華やかに見えるものの、事業として安定した収入を確保するにはかなりの時間と労力、そして工夫が必要。それでも結果が出ず挫折する人も多い分野です。動画配信は特に、編集機材などに費用もかかるほか、すべてを1人で行うのも困難です。
収入もかなり不安定なので、副業から始めるのがマストでしょう。
大工など土木・建築関係の職人
大工などで独立開業する際には、いわゆる一人親方として個人事業を立ち上げる方法と、工務店(会社)を始める方法があります。
独立開業のハードルが低いのは一人親方の方で、まずは1人で始め、上手くいけば事業を拡大して法人化するというケースも多いです。
建築関係の職種とは次のようなものです。
- 大工
- 塗装工
- 左官職人
- 内装工
- とび職
- 足場職人
- 溶接工
特に大工は「なり手不足」や職人の高齢化により人数が減少傾向です。
建物や設備に修理やメンテナンスは欠かせないため仕事は豊富にあります。この環境も独立開業を後押ししているのかもしれません。
美容師、エステティシャンなど美容系
美容系の仕事には、自宅を改装して始められるものも多く、育児や子育てで職場を離れた女性の独立開業にも向いています。例えば次のような仕事です。
- 美容師
- アイリスト
- ネイリスト
- エステティシャン
- ボディケアセラピスト
- アロマセラピスト
いずれもスキルを活かして独立することが可能な職種。ただし、美容師とアイリストには美容師免許が必要です。
開業には、施術をする場所や設備機器が必須です。例えばネイリストなら比較的小さなスペースで始められます。美容師の場合は、面貸しのシステムで他の美容室を借りる手もあります。
エステなどは、高い効果を狙うには高額な機械を使う必要があります。経営の成功には顧客ターゲットや価格設定も重要となるでしょう。
学習塾、習い事など教える仕事
自分のスキルを活かして何かを教える仕事も、多種多様にあります。今あるのは下に挙げるようなものですが、ニーズさえあれば、アイデア次第で新たなビジネスを生み出すことも可能です。
- 英会話など外国語
- ピアノ・バイオリンなど楽器
- 声楽・ボイストレーニング
- 合唱(コーラス・ゴスペル)、民謡、詩吟など
- 料理・製菓・製パン
- 毛筆・硬筆・カリグラフィー
- 絵画(油絵・日本画・水彩画など)
- 写真
- 木工(木彫、家具製作など)
- 陶芸
- 洋裁・和裁、手芸・編み物など
- 運動系(ダイビング・水泳・ゴルフなど)
- ヨガ・ピラティスなど
かつては生徒が教室に通うか、もしくは講師が生徒の自宅や自宅外の教室に出向くかのどちらかでした。しかし現在はインターネットを通じたオンラインでの教室を開く人も増えています。
自身のスキルや経験を活かすには最適の仕事ですが、中には着付け教室のように独自の資格を必要とするものも。
トラブルが生じないようあらかじめ調べておきましょう。
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修理業・代行業・便利業
技術とフットワークの軽さがあれば独立にも向いているのが、次に挙げるような修理業や代行業などの仕事です。
- 電気機械器具修理
- 時計修理
- 自動車整備
- 洋服リフォーム
- 便利業
- 家事代行サービス
- 掃除代行サービス
- 運転代行サービス
家事や掃除の代行サービスは、共働き家庭や高齢者のニーズが高まっています。
便利屋ではさまざまな仕事を請け負いますが、開業に資格や許可は必要ありません。
ただし、例えば電気工事を請け負うための「第二種電気工事士」の資格など、業務内容に応じて必要な許可や資格の要否を確認しておくことが必要です。
資格が必要な業務の部分のみ専門業者と提携するという手もあります。
不動産関連業(宅建業)
不動産関連の仕事も独立開業する人の多いジャンルです。細かくは次のような種類があります。組み合わせて開業すれば仕事も受けやすくなります。
- 不動産賃貸仲介業
- 不動産売買仲介業
- 不動産買取再販業
- 不動産管理業
中でも不動産仲介業は人気の業種です。多くの場合、不動産会社で働く間に資格を取得し、辞めて独立するという形です。
不動産業では社長の高齢化や後継者不足も問題となっているため、独立開業のチャンスも十分にあります。
不動産会社として開業するには、仲介などの業務に対し社内に「宅地建物取引士」の資格を持った人が必要です。
また、営業保証金の供託あるいは宅地建物取引業協会への加入料の支払いが必須です。
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経営・税務・会計などのコンサルタント業
コンサルタントと一口に言っても、いくつもの種類があります。
- 経営コンサルタント
- 戦略コンサルタント
- ITコンサルタント
- 財務・会計コンサルタント
- 人材育成コンサルタント
専門的な知識や実務経験があり、ニーズがあればこれ以外のジャンルでもコンサルタントになり得ます。
士業とは異なり、資格がなくてもできるのもコンサルタント業が独立開業しやすい理由の1つです。
ただし特定の業務を請け負うには資格が必須なので要注意。
弁護士や公認会計士、税理士などには、その資格を持つ人だけに許された独占業務があります。それを無資格の人が有償で請け負うことはできません。
失敗リスクをおさえて独立開業する方法
独立開業は、サラリーマンにはできない自由な働き方を実現できる手段です。しかし自由になる代わりにすべての責任やリスクも自分が負うことになります。
何より、社会では会社組織の方が個人より信用度が高く、独立したら受注が難しくなります。最も心配なのは、独立開業してすぐの段階では実績も知名度もないため、自身で仕事を獲得するのが困難だということです。
リスクを抑えて独立開業する方法として、次のような方法があります。
- まずは副業で始める
- フリーランス向けのエージェントを利用する
- フランチャイズに加盟する
- M&Aで会社を買う
まずは副業として始める
会社を辞めてしまってから開業するのではなく、会社勤めをしながらまずは副業として始めるのがおすすめです。
事業が軌道に乗るまでには、平均でも半年ほどはかかると言われています。それまで赤字経営でも事業と生活を両立させねばなりませんし、融資を受けていれば返済も必要です。
副業で始めれば、給料という定期的・安定的な収入を確保できるため、経済的にも精神的にも余裕が持てます。
ただし、会社が副業を禁止している場合は規則を守るべきです。また、副業がOKでも内容が利益相反となる場合には許されないことも。
情報漏えいをしないといったルールも守らなければ、損害賠償など訴訟問題になりかねません。
フリーランス向けのエージェントを利用する
独立するなら実績を作ることが大切です。そのため、最初はエージェントを利用するのも1つの方法です。
転職者と起業を結び付ける転職エージェントというサービスがありますが、同じように、フリーランスとクライアントを結び付ける各種のエージェントサービスがあります。
自分の強みや条件などを登録することで、条件に合った仕事が効率よく探せるのが最大のメリットです。
例えばエンジニア向けなら「レバテックフリーランス」や「Midworks(ミッドワークス)」などのエージェントがあります。
ほとんどが無料で利用でき、得意とするクライアント先などが異なるので、複数に登録しておくとよいでしょう。
ただしサービス内容は各社で違うので、必ず確認してください。
フランチャイズに加盟する
飲食やコンビニなどの場合、フランチャイズに加盟するというのもリスクを減らす1つの方法です。
フランチャイズなら大手企業などが運営するフランチャイズ本部と契約することで、知名度のあるブランド名で店舗運営ができます。
運営や人材教育のノウハウも確立されているので、仕入が安くできたり、全国的なキャンペーンで集客できたりします。
ただし、エリアや店舗にはフランチャイズ本部からの担当者が来て指示やアドバイスなどを行うため、制約も多くなります。これを「独立」と言えるかどうかは微妙なところです。
また、フランチャイズ本部に支払うロイヤリティが経営に大きな負担ともなり得るので要注意です。
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M&Aで会社を買う
独立開業のリスクを抑えるためには、M&Aによる会社の買収も1つの方法です。ゼロから会社を作り上げるのではなく、すでに事業を行っている会社のオーナーとなるのです。
M&Aによる開業には、初期費用を軽減できること、事業の安定化までの期間を短縮できること、人材や設備などすでにある資産をそのまま活用できること、などのメリットがあります。
ただし、場合によっては開示されていない債務が潜んでいるリスクや、既存の従業員との関係性に軋轢が生じるなどトラブルの可能性も。
リスクをあらかじめ把握することや、相手を尊重する姿勢も重要です。
実際にM&Aで起業した先輩の体験談
当サイトでは、実際にM&Aによる起業に成功した先輩起業家にお話を伺っています。
M&Aでの起業に伴う苦労、参考にしたい工夫など、いろいろと教えてくださいました。ぜひ読んでみてください!
M&Aを利用した起業について解説した記事もあります。
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独立開業に成功するための必要条件
独立開業する際に最も気になるのは、独立してやっていけるのかどうか、成功できるのかどうかということでしょう。
独立開業がしやすい仕事を選ぶのも、1つの方法ではあります。しかし、次のようなポイントを押さえることの方が重要です。
- 開業する業種での実務経験があること
- 家族の理解があること
- 所属する会社を円満退職すること
- 協力してくれる人がいること
- 事業資金がある程度貯めてあること
それぞれ見ていきましょう。
開業する業種で十分な経験があること
独立に成功するには、その業種でのこれまでの経験がものを言います。経験者でなくては新規参入できない業種もあります。業務の一部を担当していただけの人と、マネジメント経験もある人とでは、成功の可能性も大きく異なります。
まったく未経験の分野・業種で成功するのは、よほどの知識があるか、有力な協力者がいるか、または相当の時間をかけなければ難しいでしょう。
例えば資金調達に銀行の融資を申請しようとしても、審査では実務経験の長さが重要視されます。
配偶者など家族の理解があること
独立開業することは、会社を辞める前に配偶者など家族に話し、理解を得ておく必要があります。独立開業は家族の生活にも大きな影響があるからです。
事業の経営が軌道に乗るまでには、数カ月~半年はかかるのが一般的。それまでは、赤字経営で乗り切らねばならない可能性が高いです。
そのため、事業資金や生活費など、お金が出ていくだけの状態がしばらくは続きます。事業に専念し、十分な休養も取れない生活を余儀なくされる人もいます。家族の理解がなければ、その状態で事業を続けることはできません。
所属する会社を円満退職すること
退職する際は、就業規則などで義務付けられている退職申出の記述を守り、業務の引き継ぎなども責任をもって行い、円満に退職しましょう。
円満退職することで、退職日までの有給休暇を開業準備に効率よく使え、何より晴れ晴れとした気持ちで前に進むことができます。
特に同業種での独立は、会社との関係悪化が事業への悪影響となりかねません。
また、退職時に顧客の引き抜きなどを行って、会社から訴えられるケースもあるので注意が必要です。それを防ぐために、誓約書を書かされるケースも少なくありません。
協力してくれる人がいること
一人で事業を始めるにしても、協力者は必要です。その人数が多いほど、成功の確率は高まります。
例えば顧客を紹介してくれる人や、すでに決まっている得意先、独立開業に成功した同業の成功者、税金に関するプロである税理士のサポートを受けている、など。
自分の弱い分野に精通する協力者がいれば、事業の基盤を強くできます。事業での経験同様、協力者がいるかどうかも、銀行での融資審査のポイントとされます。
事業資金がある程度貯めてあること
まず、ほとんどの場合、事業を始めるには資金が必要です。そして前述のとおり、開業して経営が軌道に乗るまでには時間がかかるため、それまでの事業資金や生活費も必須です。
事業資金を銀行で借りるのが一般的ではありますが、ある程度は自己資金もないと銀行はお金を貸してくれません。
融資を申し込むにしても、事業に必要な資金総額の3分の1以上は自己資金として持っていないと、成功の見込みは低いと見なされます。これとは別に、当面の生活費も必要であることも忘れてはいけません。
【業界共通】独立開業に必要な知識やスキル
独立したら、それまでは会社が部署ごとに行ってきたさまざまなことを、基本的にはすべて自分で行うことになります。
そのため、事業の経験だけでなく次のような知識やスキルもなくては、継続は難しくなります。
独立開業に必要な知識
開業時から持っておくべきなのは、次のような知識です。
- ビジネスマナーと礼儀
- 経理・会計に関する知識
- 関連する法令の知識
- マーケティングの知識
それぞれ説明していきます。
ビジネスマナーと礼儀
マナ―や礼儀が備わっていないと、相手によっては「この人は自分を軽視している」と受け取られます。また、自分も相手から低く見られてしまいます。
今も昔も、ビジネスは人と人とのやり取りです。マナーや礼儀を欠いたというだけでも、契約締結など重要な場面に支障をきたすことがあります。
経理・会計に関する知識
日々や月々、年単位での収支の管理や資金繰り、所得税の申告なども事業経営には必須です。
税理士など専門家をつけるにしても、基礎的な簿記・会計の知識は持っておかねばなりません。法人化すれば決算書類の作成も必須です。
関連する法令の知識
事業をするには、民法のほか商法、下請法や公正取引などの独占禁止法、知的財産法、従業員を雇うなら労働法などなど、あらゆる法令を守る必要があります。事業内容や職種に特有の法令もあります。
法令違反は「知らなかった」では済まされず、場合によっては営業停止などの処分対象になります。軽視は禁物です。
マーケティングの知識
事業を継続していくのに欠かせないのが「集客」です。集客をするには、ターゲットとする市場・顧客のニーズを知るためのマーケティングが欠かせません。
市場調査・業界分析、商品企画や開発、販促活動など、商品を買ってもらうための行動はすべてマーケティングだと言えるでしょう。
独立開業に必要なスキル
事業経営には、次のようにさまざまなスキルが必要です。
- 決断力・行動力
- 持久力
- 時間管理能力
- 営業力
- コミュニケーション能力
- 課題発見能力・問題解決能力
- パソコンのスキル
それぞれ説明します。
決断力・行動力
独立開業するなら、業務を指示出しするのも実行するのも自分です。チャンスを逃さずタイミングを見極めて、スピーディかつ的確に決断・実行しなくてはなりません。
持久力
経営が軌道に乗るまで、半年程度は赤字が続くのが一般的です。少なくともそれまでは諦めずに努力し続けなくては、そこで終わってしまいます。
時間管理能力
日本のビジネスでは、時間を守ることも最低限のマナーです。アポイントの時間や納期、支払い期日など、相手に迷惑をかけないよう気を付けなくてはなりません。
また、1人ですべてを行うには時間が足りないおそれも。やるべきことに優先順位をつけ、効率よく行わなければ健康にも支障をきたしてしまいます。
営業力
仕事の受注や集客も、自分から多方面に働きかけて売り込む必要があります。いくらよい商品・よいサービスでも、アピールしなくては買ってもらえません。
コミュニケーション能力
クライアントや顧客など、事業にかかわるすべての人々とは密にコミュニケーションを取ることも重要です。もちろん、相手によってコミュニケーションの仕方を変えるなどの工夫も。
情報を得る、競合他社を抑えて選ばれるといった場面で、日頃のコミュニケーションが功を奏すことは多いものです。
課題発見能力・問題解決能力
例えば注文が来ない・売れないならその原因を突き止め、対処していかなくてはなりません。
自分の課題を見つけるのは難しく、客観的・冷静に物事を見ることも必要です。他社との比較研究なども行い、何をすべきかも自分で見つけて解決する必要があります。
PCなどのスキル
今やどのような業種でもIT化が進んでいます。SNSやブログ、ホームページなどの集客ツールとしても欠かせません。
日々の連絡ごとから役所での各種手続きまで、あらゆることがインターネットで効率化できます。接続などがうまくいかない場合の対処法も知っておきたいところです。
独立開業時にやることリスト
独立開業を考えるなら、その前に何をしておくべきかも把握しておきましょう。サラリーマンから個人事業主として独立開業すると、次のような手続きが必要となります。
- 事業計画書の作成
- 店舗・事務所の物件決め
- 資金の調達
- 必要な営業許可などの申請
- 国民年金・国民健康保険への加入
- 独立・開業
- 事業用の印鑑の作成
- 事業用の銀行口座の開設
- 開業届など税金関連の書類の届出
- 名刺やホームページなどの作成
それぞれ説明します。
事業計画書の作成
まずは独立開業する事業について、頭の中にあるビジョンや計画を書面にします。これにより、何をすべきか、何が足りないかなどが明確になります。
また、融資を依頼する金融機関など第三者も事業の概要を把握できるようになります。融資の審査では、事業計画書がいかに具体的で現実的かが見られます。
事業計画書に記載するのは、事業主の経歴や事業内容、ビジネスモデルや売上見込み、開業に必要となる資金の用途と金額などです。
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店舗・事務所の物件決め
事業の拠点となる物件は、開業する日の約3カ月前くらいに決めるのが目安です。ただし、早く契約すると開業までの家賃支払いが負担となるので、開業・開店日とのタイミングに注意が必要です。
飲食店など店舗ビジネスの場合は、店舗の立地が売り上げを大きく左右します。あらかじめ商圏分析などをして慎重に決めなくてはなりません。
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資金の調達
具体的な計画を立て、物件にも目途がついたら、必要な資金を調達します。自己資金で足りない分は、銀行からの融資などで補わなくてはなりません。
創業時の融資で最も有力候補となるのは、日本政策金融公庫の創業融資です。日本政策金融公庫は、政府が100%の出資をしている金融機関です。
政府には起業家を増やしたいという思惑があるため、民間の銀行よりも創業期の融資に前向きな対応をしてくれます。
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必要な営業許可などの申請
事業によっては、開業するのに営業許可や免許、登録などを必要とします。登録や許可なしに営業するのは違法であり、法的な処分が科されます。
例えば建設業は国土交通大臣または都道府県、食品製造業は保健所など、それぞれ申請先も異なります。必要な書類や手続き等も異なるため、最新の情報を確認しておきましょう。
また、例えば飲食業の営業許可を取得するには、申請してから2~3週間はかかるのが一般的。保健所への事前相談なども必要となるので注意が必要です。
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国民年金・国民健康保険への加入
正社員などフルタイムで働いているなら、独立すると社会保険の加入先を変える必要があります。いわゆる「社保の切り替え」です。
会社勤めの間はほとんどの場合、社会保険は会社を通じて入り、保険料は給与から天引きされているでしょう。この場合、年金は厚生年金保険で、健康保険は会社などの健康保険組合か協会けんぽの健康保険です。
これが、独立すると自分自身で保険に加入することになり、厚生年金は国民年金に、健康保険は国民健康保険となります。
このとき、退職に伴う保険の脱退(資格喪失)手続きは、会社がしてくれるケースもあれば、してくれないケースもあります。どうすべきかを退職前に必ず確認してください。
ちなみに、厚生年金や組合などの健康保険は労使折半で会社が半分負担してくれています。そのため、独立すると自己負担額は増えます。
また、厚生年金は国民年金の上乗せなので、保障が手厚くなっています。独立して国民年金になると、その点でも変わります。
独立・開業
独立開業のタイミングは人それぞれですが、営業許可などが必要な場合は必ず開業前に取得する必要があります。
また、この後説明する「開業届」は、開業してからでないと提出できません。
銀行口座の開設・印鑑の作成
個人事業の場合、銀行口座や印鑑の作成は必須ではありません。
しかし、口座は事業用と個人用で分けた方が、資金の管理は断然しやすくなります。金融機関の中には、屋号付きの名義で口座開設できるところもあります。
印鑑についても、事業用に認印があると便利です。最近では電子印鑑で契約などできるケースや、印鑑が不要となった手続きもあります。
それでも、印鑑は昔から縁起物を事業スタートの記念として作ったり、お守りのような存在としたりする人もいます。
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会社を設立する場合は、会社の代表者印を作ることが必要です。こちらの記事で解説しています。
開業届など税金関連の届出
独立開業すると、会社で給料から天引きされていた税金の支払いも自分で行わなくてはなりません。そのため、次の手続きが必要です。
税務署 | ・開業届 ・青色申告承認申請書 | 所得税に関する手続き |
県税事務所 | ・事務所等設置届 (名称は自治体により異なる) | 個人事業税に関する手続き |
青色申告承認申請書は、所得税の確定申告を青色申告にしたい場合に提出するものです。青色申告の方が帳簿付けなどに手間がかかりますが、控除額などのメリットが大きくなります。
市区町村によっては、市区町村役場への届出を必要とするところもあります。
税務署には、このほか所得税について減価償却の方法を定額法以外にしたい場合や、家族に給与を支払って経費にしたい場合、従業員を雇って給与を支払う場合には、それぞれ税務署に届け出る必要があります。
ちなみに、住民税も給与から天引き(特別徴収)されていた場合、手続きは会社側がするため、何もする必要はありません。退職後は毎年6月に市区町村から納付書が送られてきます。
ただし、1月~4月に退職する場合、5月分までの住民税を給与や退職金から一括で徴収される決まりです。
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名刺やホームページなどの作成
独立開業のあいさつ回りや取引先や顧客の新規開拓の際には、相手に渡す名刺が必要です。自社の事業やコンセプトなどをアピールする最初のツールなので、ロゴなどもこだわって作りたいものです。
また、現在は業種にかかわらずホームページの作成も必須です。ホームページがあることで、第三者からの信頼性が上がります。ブランディングや集客力・受注量のアップのためにも作っておくべきでしょう。
どちらも自分で作ることは可能ですが、独立開業という重要な時期でもあり、名刺やホームページ作成の業者に委託するのが得策です。
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独立開業がしやすい仕事とは、サラリーマン時代の経験をそのまま活かし1人で完結できる仕事や、少ない初期投資で始められる、つまりリスクの低い仕事だと言えます。
まずは1人で始め、軌道に乗れば従業員を募る、会社を設立するなど徐々に規模を大きくしていくのが安心です。
1人での起業で不安なことがあれば、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
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