
多様な働き方が認められつつある現在、会社という組織に縛られず自分のペースで働きたい、という人が増えています。
しかし、独立開業といっても簡単には決心できませんよね。
いざ独立しても成功するとは限りませんし、思わぬ落とし穴のようなデメリットがあるかもしれません。
開業時の設備投資に莫大な資金が必要だったり、開業のために新たな資格を取る必要があったりすれば、開業のハードルは高いでしょう。
本記事では、実際に独立開業する人の多い職種などから、独立開業しやすい仕事の特徴や例、なるべくリスクを抑える方法について解説します。
独立開業しやすい仕事の特徴7つ

次の7つのうちいずれかの特徴がある仕事なら、独立開業も比較的しやすいです。
- 1人でも完結できる
- 大掛かりな設備やスペースが不要
- 在庫を持たずにできる
- 難易度の高い資格を活かせる
- 安定したニーズがある
- 利益率が高い
- 既に独立開業している人が多い
それぞれについて見ていきましょう。
1人でも完結できる

1人で業務を完結できる仕事は、独立開業に向いています。
誰かと共同で作業をしなければならない仕事でなく1人で行える仕事なら、人を雇う必要がありません。
人件費が不要なのは大きいですし、労務管理や人材教育などの必要もありません。
人間関係のストレスも減らせ、自身のペースで仕事に専念できます。
大掛かりな設備やスペースが不要

小さなスペース、小規模な設備で業務ができることも、独立開業がしやすい仕事の特徴です。
独立開業の最大のネックは開業資金と言っても過言ではありません。
例えば、自宅や小さなワークスペースだけで行え、PCとインターネット環境だけ整備すればよい職種。あるいは、出先での作業が主であり、自分の体と持ち運べるツールがあればできるような仕事なら、初期費用は少なくて済みます。
飲食業でいうと、例えばカウンターだけの小さなスペースで、厨房には自分ひとり、メニューも最小限に絞ったようなスタイルであれば、初期費用もランニングコストも抑えられるので開業のハードルも下がります。
在庫を持たずにできる

大量の在庫を持つことなく回していける仕事も、独立開業しやすい仕事の1つです。
例えばモノでなく自分の知識やスキルを提供する職種なら、大量に在庫を抱えてしまう心配がありません。
在庫が不要なことで身軽に事業運営できるのが開業時のメリットですが、過剰な在庫は経営の悪化を招くことになります。それを防げるのも大きいでしょう。
常に一定の在庫を持つ必要のある場合、仕入れにコストがかかる上、在庫管理用のスペースや費用が必要です。
過剰な在庫を抱えるとそのぶん管理費用がかさみ、あるものまで発注するなどの無駄が生まれます。
資金繰りの悪化を防ぐため、適正な在庫を保つ努力も必要となります。
難易度の高い資格を活かせる

難易度の高い資格が必要な職種にも、独立開業する人が多いという特徴があります。
例えば弁護士、公認会計士といったいわゆる士業は専門性が高く、誰でも簡単に参入できる仕事ではないのがポイントです。
そのため一般的な職種に比べてライバルが少なく、また仕事の単価も比較的高く設定できます。
いったん顧問契約を結び、滞りなく業務を進めていけば、早いうちに事業を軌道に乗せられる確率も高いです。
安定したニーズがある

独立開業をするにあたって、必ず考えなくてはならないのが「事業としてやっていけるだけのニーズがあるかどうか」です。
安定したニーズがあると確信できれば、独立開業もしやすくなります。
自身のキャリアや経験が活かせても、開業した場所ではニーズがない、長期的な需要が見込めない、という状態では事業として生き残れません。
ニーズについては、職種だけでなく場所やターゲット設定といった視点も重要になってきます。
利益率が高い

利益率が高い、つまり少ない投資で高い利益が上げられる仕事も、独立開業に向いていると言えます。
利益率が高い仕事の特徴は、家賃や設備といった固定費や経費などのランニングコストが比較的低く、売上が収益に直に結びつきやすいことです。
例えば、前述の弁護士や税理士などのように専門職の高い仕事や、ウェブデザイナーやシステムエンジニアなどIT系の職種。飲食系であれば、安い材料費で高く売れる、いわゆる原価率が低いものほど利益率は高くなります。
すでに独立開業している人が多い
すでに世にある、独立開業している人が多い職種というのも狙い目でしょう。
十分な需要があり、かつ利益を生み出しやすいということが証明されているようなものだからです。
仕事としてニーズがあり携わる人が多ければ、収益を上げるためのビジネスモデルも確立されているものと考えられます。
ただしライバルが多い分、開業する場所を吟味するなどして集客を確保する努力や工夫も欠かせません。
独立開業しやすい仕事の例
上記の特徴を踏まえて、具体的にどんな仕事が独立開業しやすいのかの例を見ていきましょう。
経営・税務・会計などのコンサルタント業

コンサルタントと一口に言っても、いくつかの種類があります。
- 経営・戦略コンサルタント
- ITコンサルタント
- 財務・会計コンサルタント
- 人材育成コンサルタント
企業経営や税務、会計の実務経験やコンサルティング経験を積んだ人なら、その知識を活かしてコンサルタントとして独立するのがスムーズな開業方法です。
業界を問わず会社を立ち上げる人は多くいますが、本業の実務経験はあっても経営や財務などの深い知識まで持っている人はなかなかいません。
そのため、会社経営に不可欠な専門知識を持つ人へのニーズは確実にあります。
資格がなくてもできる、というのもコンサルタント業が独立開業しやすい点の1つです。しかし弁護士や公認会計士、税理士などの士業には独占業務があり、特定の業務を請け負うには資格が必須です。
また、資格が不要な業務でもコンサルタントとして選ばれるには実績が問われます。個人として評価される実績を積んでおく必要があります。
不動産関連業(宅建業)

不動産関連の仕事も、主に次のような業種に分けられます。
- 不動産賃貸仲介業
- 不動産売買仲介業
- 不動産買取再販業
- 不動産管理業
土地や建物を売りたい人や貸したい人と、買いたい人や借りたい人を結ぶいわゆる不動産仲介業は、この中でも独立開業しやすい仕事の1つです。
多くは不動産会社で働いた経験があり、その間に資格を取得済みの人が独立する形です。
在庫を持たない仕事でもあり、開業のハードルは比較的低いと言えます。
また、不動産業においても社長の高齢化や後継者不足が問題となっているため、独立開業のチャンスも十分にあるでしょう。
ただ、不動産会社として開業するには、仲介などの業務に対し社内に「宅地建物取引士」の資格を持った人が必要です。また、営業保証金の供託あるいは宅地建物取引業協会への加入料の支払いが必須です。
また、不動産業では地域とのつながりや人脈も重要ですが、大手不動産会社から独立してもその人脈がそのまま使えるわけではないことに注意が必要です。
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大工など土木・建築関係の職人

大工などとして働いている人が独立開業する場合、いわゆる一人親方として個人事業を立ち上げる方法と、工務店(会社)を始める方法があります。
独立開業のハードルが低いのは一人親方の方で、「まずは1人で始め、上手くいけば事業を拡大して法人化を考える」という人もたくさんいます。
建築・建設関連にはさまざまな職種があり、いずれも一定の技能や資格が必要です。
- 大工
- 塗装工
- 左官職人
- 内装工
- とび職
- 足場職人
- 溶接工
専門性の高い職種ですが、特に大工はなり手不足や職人の高齢化により数が減少傾向にあります。
しかし建物や設備などは必ず朽ちていくものであり、修理やメンテナンスは欠かせません。そのため仕事は豊富にあり、独立開業しやすい環境といえます。
web系のクリエイター

IT・web系の仕事も独立する人が多いことで知られています。例えば次のような職種です。
- webディレクター
- webデザイナー
- プロダクトマネージャー
- システムエンジニア
- webライター
いずれも実務経験や専門性が必要となる職種ですが、どの業種でも今や積極的なIT活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)は欠かせなくなっています。そのためニーズが高く、人手不足の状態が続いています。
また、これらの仕事はパソコン1台でほぼ完結することもできるため、独立して在宅で仕事を始める人も多いのが特徴です。
企業に属することで長時間労働などの問題が起きていることもその一因かもしれません。
とはいえ、デザイナーやコーダーなど単一のスキルより複数のスキルを備えた人の方が需要が高くなっています。デザインもできるディレクターなど、複数の業務に対応できる方がよりニーズが高く、高収入も期待できます。
ただ、この中でwebライターに関しては、ライティング1本で生活するのは難しいケースも。
クラウドソーシングを介した場合には単価が低くシステム利用料なども必要となるため、数をこなす必要があります。複数の企業と直接契約を結び、継続して仕事が受けられる状況であれば可能性もあるでしょう。
美容師、エステティシャンなど美容系

美容系の仕事には、自宅を改装して始められるものも多く、育児や子育てで職場を離れなくてはならないことの多い女性の独立開業にも向いています。例えば次のような仕事です。
- 美容師
- アイリスト
- ネイリスト
- エステティシャン
- ボディケアセラピスト
- アロマセラピスト
この中で、美容師とアイリストは美容師免許がないと独立開業はできません。
開業に必要な設備としては、施術をする店舗や設備機器が必須です。ネイリストであれば比較的小さなスペースで、大きな機器の導入も必要なく始められます。
エステなどは、高い効果を狙うには高額な機械を使う必要があります。経営の成功には顧客ターゲットや価格設定も重要となるでしょう。
修理業・代行業・便利業

技術とフットワークの軽さが問われるのが、修理業や代行業、便利業といった仕事です。主に次のようなものがあります。
- 電気機械器具修理
- 時計修理
- 自動車整備
- 洋服リフォーム
- 便利業
- 家事代行サービス
- 掃除代行サービス
いわゆる「なんでも屋」と呼ばれる、生活の困りごとを解決する便利業や、あらゆるモノを直す修理業、共働き家庭や高齢者にニーズがある家事・掃除の代行サービスなどがあります。
便利屋ではさまざまな仕事を請け負いますが、開業に資格や許可は必要ありません。高度なテクニックや知識がなくてもできる作業的な仕事も行います。
ただし、電気工事などを請け負うには「第二種電気工事士」の資格が必要。その他、取り扱う業務内容に応じて必要な許可や資格の要否を確認しておくことが必要です。各種の専門業者と提携するという方法もあります。
学習塾、習い事など教える仕事

何かを教える仕事は多種多様にあり、昔から個人が教える教室が多数存在しています。種類はニーズさえあればアイデア次第で増えていくでしょう。今ある主なものをざっと挙げてみます。
- 英会話など外国語
- ピアノ・バイオリンなど楽器
- 声楽・ボイストレーニング
- 料理・製菓・製パン
- 毛筆・硬筆・カリグラフィー
- 絵画
- 写真
- 木工
- 陶芸
- 手芸・編み物
- ヨガ・ピラティス
かつては生徒が教室に通うか、もしくは講師が生徒の自宅や自宅外の教室に出向くかのどちらかでした。しかし現在はインターネットを通じたオンラインでの教室を開く人も増えています。
自身のスキルや経験を活かすには最適の仕事ですが、中には着付け教室のように独自の資格を必要とするものもあるので独立前に調べておきましょう。
また、自分でやることと人に教えることは違うため、「教える」ことも経験しておきたいものです。
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リスクをおさえて独立開業する方法
独立開業は、サラリーマンにはできない自由な働き方を実現できる手段です。
しかし自由になる代わりにすべての責任やリスクも自分が負わなくてはなりません。
何より、社会では会社組織の方が個人より信用度が高く、独立開業しても成功するとは限りません。
そこでこの章では、リスクを極力抑えて独立開業する方法を3つ紹介します。
フリーランス向けのエージェントを利用する

独立開業してすぐの段階では実績も知名度もないため、自身で仕事を獲得するのは容易ではありません。
そこで利用したいのが、フリーランス向けのエージェントサービスです。転職エージェントが転職者と企業の橋渡しをしてくれるように、フリーランサーと企業とを結び付けてくれます。
エンジニア向けなら「レバテックフリーランス」や「Midworks(ミッドワークス)」などがあります。
ほとんどが無料で利用できるので、複数に登録しておくとよいでしょう。
サービス内容は各社で異なるので、仕組みなどを必ず確認してください。
フランチャイズに加盟する

飲食やコンビニなどの場合、フランチャイズに加盟するというのもリスクを減らす1つの方法です。
フランチャイズなら大手企業などが運営するフランチャイズ本部と契約を行い、知名度のあるブランド名で店舗運営ができます。
運営や人材教育のノウハウも知ることができ、仕入なども安く済みます。集客についても全国的なキャンペーンなどで効果が見込めます。
ただし、エリアや店舗には本部からの担当者が来て指示やアドバイスなどを行うため、頼りにはなるものの自由度という点では制約が多くなります。
ロイヤリティを支払う必要もあるため、経営は簡単ではありません。
▼フランチャイズについてはこちらもぜひ参考にしてください▼
M&Aで会社を買う

独立開業のリスクを抑えるためには、M&Aによる会社の買収も1つの方法です。ゼロから会社を作り上げるのではなく、すでに事業を行っている会社のオーナーとなるのです。
M&Aによる開業には、初期費用を削減できること、事業の安定化までの期間を短縮できること、人材や設備などすでにある資産をそのまま活用できること、などのメリットがあります。
ただし、買取の際にわからなかった債務(簿外債務、偶発債務)があるかもしれないリスクや、既存の従業員とのコミュニケーションに軋轢が生じるといった恐れもあります。
▼M&Aでの起業について詳しくはこちら▼
▼こちらで紹介した仕事も独立起業するのに適しています▼
まとめ

独立開業には、サラリーマン時代の経験をそのまま活かし1人で完結できること、初期投資が少なく始められることなど、少ないリスクで事業を軌道に乗せやすい仕事が向いています。
まずは1人で始め、軌道に乗れば規模を広げて従業員を募る、会社を設立するなど徐々に進めていくのが安心でしょう。
一人での起業でわからないことがあれば、専門家のサポートを受けることも視野に入れてみてください。
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