
前回の記事では、実際に会社設立の手続きに入る前の基礎知識を紹介しました。この記事では、具体的な会社設立手続きの説明に入ります。
役所に提出する書類は複雑で面倒、そう思う人も多いかもしれません。ですが、手続きは専門家でなくてもできるものです。あらかじめ全体の流れと必要な書類を把握しておきましょう。
なお、記事の最後では「会社設立までに必要なものチェックリスト」PDFのダウンロードリンクもあります。
ぜひご活用ください。

目次
Step1. まずは事前準備から!会社設立前にやること

以下のようなことがらは、会社設立の手続きに着手する前のタイミングで決定しておくのが望ましいでしょう。
- 発起人決定
- 事業計画の立案
- 基本事項の決定
- 資本金額の決定
これらのことがらが事前に決定していれば、会社設立の手続きはスムーズに進めていくことができます。
(逆に、これらのことを決める前に会社設立の手続きに着手してしまうと、手続きが前後する可能性がありますから注意してください)
それぞれどのようなことを決めておく必要があるのか?について、おおまかな内容を理解しておきましょう。
発起人の決定
発起人(ほっきにん)とは、ごく簡単に言えば会社設立の手続きを行う株主のことを言います。
個人事業から法人成りするようなケースでは、社長自身が発起人となるケースが多いでしょう。「個人事業時代の社長=会社設立手続き時の発起人=会社設立後は代表取締役」というイメージです。
なお、発起人は必ず株主とならなくてはなりませんので、設立する会社が発行する株式を1株以上引き受ける必要があります。
会社設立の手続きで、この際の「発起人の決定書」を提出する必要があります。
事業計画の立案
会社として事業を始めるには、どのような事業をどのようなビジネスモデルで展開するか、何をセールスポイントとして他社とどう差別化するか、売り上げ見込みはどれくらいか、といった計画を作成します。これを創業計画書(または創業時に限定しない事業計画書)と呼びます。
事業計画がしっかりと立ててあれば、事業経営の方向性が定まり、目標に向かってなすべきことも見えてきます。そのため、事業の成功に大いに役立つのです。
また、会社設立に必要な自己資金が足りず、金融機関からの融資を受けようとする人も多いでしょう。融資を受けるにも、融資するに値する企業・事業なのか、借入金の返済能力があるのかなどを判断するのに創業計画書の提出が必須です。
基本事項の決定
会社設立にあたっては、以下のような「基本事項」を定める必要があります。
- 会社の名前(商号)
- 会社の事業目的
- 会社の本店所在地
- 会社株式の譲渡制限の有無
- 会社の決算時期
- 会社の組織設計
特に、会社の事業目的は重要です。
会社設立時にメインで営んでいる事業のほかにも、将来的に取り組みたいと考えている事業を包括的に含める内容にしておきましょう。
ここで決めた会社の基本事項は、この後に説明する会社の定款に記載しなくてはならないので、事前に決めておく必要があります。
資本金額の決定
会社の設立後は、経営者のお金と、会社のお金とは厳密に分けて管理しなくてはならなくなります。
そのため、会社設立後~最初の売上入金があるまでに要する支出は、資本金の中からまかなうことになります。
最低でも、事業固定費の3か月分程度は資本金として準備しておくのが望ましいでしょう。
法律上、資本金は最低額が撤廃されたので1円以上あれば問題ないことになっていますが、通常は最低でも100万円~300万円程度のお金を準備するケースが多いです。
また、資本金の金額をいくらにするかによって、消費税の課税事業者となるか、法人地方税の負担額、法人設立登記の金額など、税負担が変わるケースがあるのにも要注意です。
Step2. いよいよ手続きスタート!会社設立時にやること

ここまで見てきた「発起人の決定~資本金額の決定」が完了したら、いよいよ会社設立の手続きに着手します。
具体的には、次のような流れで進めます。
- 定款の作成と認証
- 資本金払込
- 登記書類の作成
- 登記書類の申請
(専門家に依頼した場合、手続き完了までは早くとも2週間~1カ月程度の時間が必要です)
それぞれの項目について、順番に見ていきましょう。
定款の作成と認証
「会社設立前にやること」で決めた内容を、定款(ていかん)という書類にまとめます。
法律により、定款には大きく分けて次の3つの記載項目があります。
絶対的記載事項 | 定款に必ず記載しないといけない項目 |
相対的記載事項 | ルールとして定めた場合には定款にも記載が必要な項目 |
任意的記載事項 | 定款に記載してルール化するほか、定款以外でルール化するのでもよい項目 ※定款以外でのルール化は定款への記載不要 |
絶対的記載事項は、上の「会社設立前にやること」で説明した基本事項が該当します。
具体的には、次のような項目が定款の絶対的記載事項です。
- 会社の名前(商号)
- 会社の事業目的
- 会社の本店所在地
- 資本金の金額
- 発起人の氏名と住所
- 発行可能株式総数
「発行可能株式総数」は厳密にいうと絶対的記載事項を定めた会社法第27条とは異なる条項(会社法第37条)で義務付けられたものです。しかし会社設立登記までには記載が義務付けられているため、同等に考えてよいでしょう。
相対的記載事項とは、何かを決める際には定款への記載が必須となるもの、任意的記載事項は、言ってみれば記載してもしなくてもどちらでもよい内容です。
また、株式会社の設立には、作成した定款が法律のルールに従って作成されているかを確認してもらい、「公証役場」という役所で「認証」の手続きを受けなくてはなりません。
資本金の払い込み
公証役場での定款認証が完了したら、次に資本金の払い込みを行います。
定款に記載した発起人は出資者でもあります。出資者の銀行口座から、発起人の個人口座に振り込みの形で入金しなくてはなりません。「確かに出資者がお金を入れている」と証明できるように、口座に名前が残るようにする必要があります。
個人事業主から会社設立をする場合、まずは1人で会社を始めるという人も多いでしょう。その場合、面倒でもいったん資本金額(またはそれ以上)の額を口座から引き出し、改めて入金をするという形を取らなくてはなりません。1つの口座しかない場合には、振り込みでなく預け入れでもよいでしょう。通帳のコピーを取っておくとともに、「払込証明書」を作成しておきます。
登記申請書類の作成・準備
資本金の払い込みが完了したら、2週間以内に法務局に対して登記申請を行います。ここで用意するのは、次のような書類です。
- 登記申請書
- 定款(公証役場で認証済のもの)
- 発起人の決定書
- 取締役の就任承諾書
- 代表取締役の就任承諾書
- 監査役の印鑑証明書
- 資本金の払込証明書
- 設立する法人実印の印鑑届出書
- 添付書類(登記すべき事項を記載したもの)
登記書類の申請
申請書類が準備できたら、法務局に提出します。
登記には登録免許税が課されます。必要な税額の収入印紙を郵便局などで購入し、申請書類に貼り付けます。
万が一不備があった時に備え、申請書の左上に申請者の連絡先(昼間に繋がる電話番号)を鉛筆などで記載しておくのが一般的です。
問題がなければ、申請後1週間以内に登記が完了し、会社としてスタートします。
法務局の窓口あるいは公式サイトに「登記申請の完了予定日」が表示されているますので、確認しておきましょう。
Step3. これで「終わり」じゃない!会社設立後にやること

ここまで説明した内容で会社設立の手続きは完了しますが、設立が完了した後にも必要な手続きがあります。
法務局で法人設立の手続きを行っただけでは、その他の関係各所はまだ会社が設立されたことを把握していません。
そのため、個別に「会社を新しく作りました」ということを知らせる必要があるというわけです。
法人設立後に行う手続きとしては、以下のようなことがあります。
- 税務署への届出
- 各地方自治体への開業届
- 社会保険への加入
- 法人用口座の作成
こちらも順番に見ていきましょう。
税務署への届出
会社を設立したら、毎年税務署に対して法人税・消費税・所得税(従業員の税金)といった税金を納めないといけません。
管轄の税務署に対しては、以下のような書類を提出します。
- 法人設立届出書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
また、税金の納付について特例的な扱いを受けたい場合には、以下のような書類も提出しておくのが一般的です。
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- 青色申告の承認申請書
- 減価償却資産の償却方法の届出書
- 棚卸資産の評価方法の届出書
どのような書類を提出しておくかは、選択する経理方法などによって異なります。顧問税理士などに確認するようにしてください。
各地方自治体への開業届
地方自治体に対しても、法人の設立を申告しなくてはなりません。
提出先は、設立する会社(本社)がある地域の都道府県税事務所と市区町村役場です。
- 法人設立等申告書(都道府県税事務所に提出)
- 法人設立等申告書(市区町村役場に提出)
なお、名称は自治体により異なります。また、申告書には定款や法人の登記簿謄本を添付します。
社会保険への加入
会社を設立したら、役員も雇用する従業員も社会保険(健康保険と厚生年金)の対象となります。従業員が1人でもいるなら、労災保険や雇用保険(あわせて労働保険)への加入も義務付けられています。
健康保険と厚生年金に関しては、次のような書類を年金事務所に提出します。
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届
労働保険については、まず次の書類を労働基準監督署に出す必要があります。
- 保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
その後、雇用保険についてハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」を提出、従業員ごとに「雇用保険被保険者資格取得届」を出して、加入の手続きをします。
法人用口座の作成
法人設立の手続きが完了したら、法人名義の銀行口座を作れるようになります。次のような書類を準備して銀行の窓口に行き、手続きを行いましょう。
- 代表取締役となる人の印鑑証明
- 会社の登記簿謄本
- 会社の定款
- 会社の実印
- 代表取締役の身分証明書
- 銀行印として使う印鑑
ただし近年、架空の口座、架空の企業による不正・犯罪が増えたことなどから、法人の銀行口座開設は非常に厳しく審査がなされます。どの銀行で口座開設するのかは自由ですが、大手銀行ほど開設を断られる可能性も高くなるので注意してください。
特に会社の実態の有無が疑われやすいのは、例えば資本金の額が極端に少ない、自宅や事務所に固定電話を設置していない、バーチャルオフィスを使っている、といった状態。いずれも犯罪目的で設立される会社に共通する特徴です。
口座開設の手続きには会社の代表者が出向き、事業実態が第三者にもわかるような資料を持って行くなど、真摯に説明して信用を勝ち取りましょう。
まとめ
会社設立の流れを、時系列に沿って解説しました。
会社設立は、誰にでも行える手続きです。しかし簡単かというとそうではなく、必要書類などさまざまな準備をしなくてはなりません。
書類の不備などにより二度手間になったりするのを避けるため、専門家のサポートを受けるのが得策でしょう。
当サイトを運営するBricks&UKは、税理士法人を主体として、社会保険労務士や司法書士とも連携する総合事務所です。会社設立が安くできるキャンペーンも実施しているので、ぜひお気軽にご相談ください。

【便利ツール】設立までに必要なものチェックリスト
本文で説明した、「会社設立手続きで必要な書類」を一覧にまとめました。
これから会社設立手続きを始める方は、チェックリストとしてぜひご活用ください。
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